社内恋愛の破局トラブル、会社が取るべき3つの対処法

社内恋愛の破局トラブル、会社が取るべき3つの対処法 労務管理
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「別れた後も同じ職場で働いているふたりのこと、どこまで会社が口を出せるんだろう……」。ある日、総務を兼務している部長からそんな相談を受けた経営者の方は少なくないはずです。社内恋愛の破局がきっかけで、職場の空気が一変する。被害を訴える声はあるのに、「私的なことだから」と踏み込めずに時間が過ぎていく。しかし、その放置が後に会社の法的責任につながるケースがあります。この記事では、社内恋愛の破局後トラブルに対して会社が取るべき対処法を、法的根拠と実務手順とともに解説します。

「私的なことだから」では済まない理由

社内恋愛の破局後のトラブルは、たとえ関係の始まりが私的なものであっても、職場内で行われている言動はハラスメントとして会社の対応義務が発生します。この点を最初に理解しておくことが、すべての対応の前提になります。

職場で起きた言動はハラスメントの定義に該当する

厚生労働省のパワーハラスメント・セクシュアルハラスメントの定義は、行為が「職場において行われること」または「職場の人間関係を利用して行われること」であれば適用されます。当事者間に交際歴があったかどうかは関係ありません。

たとえば、別れた後に元交際相手に対して職場で無視を続ける、業務上の連絡を意図的に無視する、休憩室で繰り返し詰め寄るといった行為は、労働施策総合推進法第30条の2に基づくパワーハラスメント(精神的攻撃・人間関係からの切り離し)に該当する可能性があります。また、性的な言動が続く場合は男女雇用機会均等法第11条のセクシュアルハラスメントとして、会社に雇用管理上の措置義務が生じます。

会社が知っていて放置すると「安全配慮義務違反」になる

会社がトラブルを認識しながら適切な対処をしなかった場合、被害を受けた従業員から損害賠償を請求される可能性があります。根拠となるのは民法第715条(使用者責任)と労働契約法第5条(安全配慮義務)です。

労働契約法第5条は「使用者は、労働者がその生命・身体等の安全を確保しながら労働できるよう、必要な配慮をする義務を負う」と定めています。「知っていたのに何もしなかった」という事実が残ると、裁判では会社側に不利な判断がなされやすくなります。規模が小さい会社ほど経営者自身が状況を把握しやすい立場にあり、それだけ「知らなかった」という言い訳が通りにくい面もあります。

「被害者も相談しないでほしいと言っている」という場合も同様

被害を受けている従業員が「大げさにしたくない」「自分で解決できる」と言っているケースも少なくありません。しかし会社の対応義務は、被害者の意思表示とは切り離して考える必要があります。会社が問題を把握した時点から、環境改善のための合理的な措置を検討する義務は生じています。被害者の意向を尊重しながらも、「何もしない」ではなく「どこまでできるかを整理して記録に残す」という姿勢が重要です。

就業規則でどこまで動けるかを確認する

会社が介入するためには、就業規則上の根拠があるかどうかを先に確認することが大切です。現状の規則でも対応できる場合がありますが、明文化が不十分な部分があると、処分の際に法的トラブルに発展するリスクがあります。

既存のハラスメント禁止規定・職場秩序規定が使える

多くの会社の就業規則には「ハラスメントの禁止」と「職場秩序を乱す行為の禁止」が盛り込まれています。この2つは、社内恋愛破局後のトラブル対応においても有効な根拠になります。ポイントは、「私的関係に起因する場合も、職場内での言動には本規定を適用する」という趣旨の文言が入っているかどうかです。明記されていなくても、職場内の行為である以上は適用できると解釈されることが多いですが、将来的な備えとして明文化しておくことを推奨します。

「社内恋愛禁止規定」の有効性と限界

就業規則に社内恋愛を禁止・届出義務とする規定を設けること自体は違法ではありません。ただし、「交際していた」という事実だけを理由に懲戒処分を行うことは、職業選択の自由やプライバシー権(憲法・民法)との関係で有効性に疑義が生じやすいです。裁判例でも、禁止規定違反のみを根拠とした解雇が無効とされたケースがあります。

規定を設けるとしても「禁止」より「ハラスメント化した場合の対応を定める」という方向性の方が実務的に機能しやすく、従業員にも受け入れられやすいです。

就業規則の主な根拠条項と機能の整理

規定の種類 内容 トラブル対応での機能
ハラスメント禁止規定 セクハラ・パワハラ・その他ハラスメントの禁止 懲戒処分の根拠。私的関係起因の場合も適用される旨を明記しておくとより確実
職場秩序維持規定 職場の秩序を乱す行為の禁止 嫌がらせ・無視・業務妨害等への包括条項として機能
懲戒規定 違反に対する処分内容(戒告・降格・解雇等) 処分の相当性と手続きが明記されていることが必要
相談窓口・調査手続規定 調査権限・守秘義務・不利益取扱い禁止 被害者保護と調査の正当性の根拠

会社が取るべき対処法

社内恋愛破局後のトラブルに対して会社が取るべき対処は、事実確認・環境分離・再発防止の3段階で考えることが基本です。それぞれの段階で「やってはいけないこと」も押さえておく必要があります。

事実確認のヒアリングを適切な手順で行う

まず最初に行うのは、当事者双方と必要に応じて周囲の従業員へのヒアリングです。ただし、やり方を誤ると情報漏洩・二次被害・関係のさらなる悪化につながるため、以下の原則を守ることが重要です。

  • 被害者と行為者のヒアリングは必ず別々に行う(同席させない)
  • ヒアリング内容は守秘義務があることを明示し、記録に残す
  • 「あの人が言っていた」という形での情報伝達は絶対に行わない
  • 周囲へのヒアリングは必要最小限の範囲にとどめ、「噂話」を広げない
  • 被害者に対して「もう少し我慢できないか」「あなたにも原因があるのでは」といった言動は厳禁(二次ハラスメントになる)

専任人事がいない場合、ヒアリングは経営者または信頼できる管理職が担当します。事前に「何を確認するか」「記録様式をどうするか」を決めておくことで、後の対応が安定します。

物理的・業務的な分離を被害者不利にならない形で実施する

次に検討するのが、当事者間の接触を減らす環境整備です。ここで中小企業特有の課題が出てきます。部署が少なく配置転換の選択肢が限られているため、「とりあえず被害者を別フロアに移す」という対応をとりがちですが、それは被害者への不利益取扱いになる可能性があります。

優先すべきは行為者を移動させることです。業務上の合理的な理由がある形で座席や担当業務を変更し、被害者が通常業務を続けられる環境を整えます。物理的分離が困難な場合は、「業務上の連絡はチャットのみ」「ミーティングは第三者が同席」など、接触ルールを会社として明示することも有効です。

懲戒処分・再発防止策を就業規則に基づいて実施する

ヒアリングの結果、ハラスメントに該当する事実が認定できた場合は、就業規則の懲戒規定に基づいて処分を検討します。処分の重さは行為の態様・継続性・反省の程度などによって判断し、戒告・減給・出勤停止・降格など段階的に対応します。

「社内恋愛が原因だから」「当事者同士の問題だから」という理由で処分を軽くすることは適切ではありません。同種のハラスメントが他の従業員間で起きた場合と同等の基準で処分することが、公平性と法的安全性を確保するうえで重要です。また、処分後も再発がないか定期的にフォローアップを行い、その記録を残しておくことが後のリスク管理に役立ちます。

会社規模別・状況別の対応判断

会社の規模や就業規則の整備状況によって、取れる対応の幅は変わります。自社の状況に合わせて、現実的な対応ラインを判断することが大切です。

就業規則が整備されている場合

ハラスメント禁止規定・懲戒規定・相談窓口規定が整備されている会社は、規則に基づく対応フローが機能しやすい状況にあります。この場合は、規則に沿った手順でヒアリングと事実認定を進め、必要に応じて処分を行います。ただし、規定の文言が「社内恋愛起因のケース」を明示的に想定していない場合は、対応と並行して規則の補強を検討してください。

就業規則が未整備・形式的な場合

就業規則が「ひな形のまま」だったり、ハラスメント規定が具体性に欠ける場合は、まず現状でできる範囲の対応(ヒアリング・記録・接触制限)を進めながら、規則の整備を急ぎます。従業員数10人以上の会社は就業規則の作成・届出が労働基準法上の義務(第89条)です。10人未満の場合も、実態として機能する運用ルールを文書化しておくことを強く推奨します。

産業医・外部専門家の活用を検討するタイミング

被害者がすでにメンタル不調の状態にある場合、または行為者が感情的に不安定で対話が困難な場合は、社内だけで抱え込まず外部の専門家を入れることを検討してください。産業医(従業員50人以上の企業は選任義務あり)がいる場合は早期に連携します。50人未満の企業でも、外部の社労士・産業カウンセラー・EAPサービスなどを活用することで、対応の質と記録の信頼性が上がります。

「でも実際のヒアリングや処分手続きについて、社内だけで判断するのは不安」という声も多く聞きます。このような場合は、人事労務の専門家に相談することで、対応の妥当性を第三者視点で整理できます。

まとめ

社内恋愛の破局後トラブルは、「私的なこと」という理由で放置することが最大のリスクです。職場内での言動はハラスメントの定義に該当し、会社が認識しながら対応しなかった場合は安全配慮義務違反(労働契約法第5条)・使用者責任(民法第715条)を問われる可能性があります。対応は、事実確認のヒアリング・行為者を優先した接触分離・就業規則に基づく処分と再発防止策という段階で進めることが基本です。就業規則の整備状況や会社規模によって取れる手段は異なりますが、「何もしない」が最もリスクの高い選択です。

「自社のケースでどう対応すればいいか判断に迷ったときは、人事労務の専門家の目を入れることで、対応の漏れやリスクを減らすことができます。

よくある質問

Q. 被害者本人が「会社に動いてほしくない」と言っています。それでも対応が必要ですか?

A. はい、会社の対応義務は被害者の意思表示とは切り離して考える必要があります。被害者の意向を十分尊重しながらも、会社として「どのような措置が可能か・とったか」を記録に残しておくことが重要です。何もしないでいると、後に「会社は知っていたのに放置した」として安全配慮義務違反を問われるリスクがあります。被害者には「あなたを守るための確認をする」という趣旨を丁寧に伝えながら進めましょう。

Q. 就業規則にハラスメント禁止の規定はありますが、「社内恋愛後のトラブル」とは書かれていません。それでも処分できますか?

A. ハラスメントの定義は関係の経緯ではなく「職場内での言動の内容」で判断されるため、既存のハラスメント禁止規定・職場秩序維持規定を根拠に処分を行うことは可能です。ただし、規定が曖昧な場合は処分の有効性に疑義が生じることがあります。対応と並行して、「私的関係に起因する場合も適用する」旨を就業規則に明記する改定を検討することをお勧めします。

Q. 加害者側の従業員が「これは私的なことで会社に関係ない」と主張しています。どう対応すればよいですか?

A. 「関係の始まりが私的なものであっても、職場内で行われた言動はハラスメントの対象になる」という原則を会社として明確に伝えることが必要です。口頭だけでなく、書面(注意・警告書)で伝え記録に残しておくことが重要です。加害者がこの説明を理解したうえでも行為を継続した場合は、より重い懲戒処分を検討する根拠にもなります。

Q. 被害者がすでにメンタル不調になっている場合、会社はどう対応すれば良いですか?

A. まず被害者の安全と健康を最優先に、業務負荷の軽減や休暇取得のサポートを行います。従業員50人以上の企業は産業医と連携してください。50人未満の場合は、外部の産業カウンセラーやEAPサービス(従業員支援プログラム)の活用を検討します。メンタル不調が業務起因と認定された場合は労災(精神障害の業務上認定)の問題にも発展しうるため、対応記録を丁寧に残しておくことが重要です。

Q. 今後のために「社内恋愛禁止規定」を就業規則に入れることを検討しています。効果はありますか?

A. 禁止規定を設けること自体は違法ではありませんが、「交際していた」という事実だけを理由とした懲戒処分は職業選択の自由・プライバシー権との関係で有効性が認められないリスクがあります。実務的には、禁止よりも「交際関係が業務上の問題(ハラスメント・利益相反など)につながった場合の対応手続きを明確にする」という形の規定の方が機能しやすいです。自社の業種・規模・過去のトラブル状況に合わせた規定設計を社労士などに相談することをお勧めします。

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人事労務の判断で悩んだときは、一度ウェルセンス株式会社にお声がけください。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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