試用期間中の無断欠勤で困ったら読む対応手順

試用期間中の無断欠勤で困ったら読む対応手順 労務管理
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月曜日の朝、新しく採用したばかりの社員が出社しない。電話をかけても繋がらない。火曜日も、水曜日も——気づけば1週間が過ぎてしまった。「試用期間中だから解雇できる」と思いつつも、手続きを間違えたら後で問題になるのではと不安が募るばかり。そんな状況に置かれた経営者・人事担当者のために、今日からすぐ動ける対応手順を法的根拠とともに整理しました。

試用期間中の無断欠勤、まず全体の流れを把握する

試用期間中に無断欠勤が発生した場合、「安否確認→接触試行の記録→書面送付→退職・解雇処理」という順番で対応を進めるのが原則です。焦って解雇通知を出す前に、踏むべきステップがあります。

対応の全体フロー

対応の流れを時系列で示すと以下のとおりです。

フェーズ 内容 目安時期
安否確認 電話・メール・SMS・LINEで複数回接触、記録を残す 欠勤当日〜翌日
緊急連絡先への連絡 採用時届出の家族等に状況を確認 2〜3日目
自宅訪問の検討 近距離なら2名で訪問・記録。遠方は次のステップへ 3〜5日目
書面送付 内容証明郵便で出勤督促・回答期限を通知 5〜7日目
就業規則確認・処分判断 懲戒解雇条項の確認、普通解雇との選択 7〜10日目
退職・解雇処理 通知書発行・社会保険喪失・給与清算・貸与品回収 処理後すみやかに

「試用期間中なら自由に解雇できる」は誤解

試用期間は「解約権留保付き労働契約」と法的に位置づけられています(最高裁昭和48年12月12日・三菱樹脂事件)。これは「採用を取り消す権利を会社が留保しつつも、労働契約自体はすでに成立している」という意味です。つまり、試用期間中であっても客観的・合理的な解雇理由と適正な手続きが必要です。手続きを省略した解雇は後から無効とされるリスクがあります。

「14日ルール」を最初に確認する

労働基準法第20条・第21条により、採用から14日以内であれば解雇予告なしに即日解雇が可能です。しかし14日を超えると、30日前の予告か解雇予告手当(平均賃金の30日分)が必要になります。試用期間中の社員が無断欠勤をしている場合、採用日からの日数をまず確認してください。多くのケースでは14日を超えているため、予告手当の用意が現実的な対応になります。

安否確認はどこまでやればいいか

会社が最低限行うべき安否確認の範囲は、「複数の連絡手段で接触を試み、緊急連絡先にも確認する」ことです。この記録が後の処分手続きの根拠にもなります。

連絡手段を複数使い、すべて記録する

電話・メール・SMS・LINEなど使える手段を複数組み合わせ、日時・手段・既読状況を記録してください。LINEであればメッセージが既読になったかどうかのスクリーンショット(日時が映る状態で保存)が証跡になります。電話は発信履歴をスクリーンショットに残しておきましょう。「連絡しようとしたが届かなかった」という事実を客観的に示せることが重要です。

緊急連絡先(家族等)への連絡は原則として行う

採用時に緊急連絡先の届出を得ている場合、家族への連絡は実施すべきです。個人情報保護法上も「人の生命・身体・財産の保護」に必要な場合は第三者提供が認められており(個人情報保護法第23条1項1号に相当する規定)、安否不明という状況はこれに当たりうると考えられます。家族への連絡では「本人が出勤せず連絡も取れていない」という事実を伝えるにとどめ、懲戒・解雇の話題はこの時点では持ち出しません。

自宅訪問と警察への相談

3〜5日経っても連絡が取れない場合、自宅訪問の検討が必要です。訪問は必ず2名で行い、日時・対応内容を記録してください。不在の場合は「連絡を求める書面」をポストに投函し、その写しを保管します。事故・急病の可能性がぬぐえない場合は、警察に「安否確認のための状況相談」をすることも選択肢に入ります(行方不明者届は原則として家族が行いますが、会社として相談すること自体は可能です)。

書面送付と証拠保全の具体的な方法

書面は「送った事実」と「内容」の両方を証明できる手段で送ることが原則です。内容証明郵便+配達証明の組み合わせが最も確実です。

内容証明郵便の使い方

内容証明郵便は、「いつ・どんな内容の書面を送ったか」を郵便局が証明するサービスです。配達証明を合わせてつけることで、「相手の住所へ届いた事実」も証明できます。書面には「無断欠勤の事実(日付)」「出勤を求める旨」「○月○日までに連絡がない場合は退職・解雇処理を進める旨」「会社の連絡先」を明記します。宛先が正しい住所であれば、受け取りを拒否されても「送達の試行」として記録が残ります。

就業規則の懲戒規定を確認する

処分を進める前に、就業規則の懲戒規定を必ず確認してください。「無断欠勤○日以上で懲戒解雇とする」という条項が明記されていれば、懲戒解雇の根拠となります。条項がない、または日数要件を満たしていない場合は、普通解雇(解雇予告手当付き)の手続きに切り替えます。就業規則がない(従業員10名未満で作成義務がない企業など)場合は、普通解雇一択になります。就業規則のコピーはこの時点でファイルに保存しておきましょう。

記録として残すべきもの一覧

  • 電話発信履歴・メール・LINE既読状況のスクリーンショット(日時入り)
  • 緊急連絡先に連絡した日時・内容・相手の反応のメモ
  • 自宅訪問の日時・同行者・対応内容の記録
  • 内容証明郵便の控えと配達証明のハガキ
  • 勤怠記録(タイムカード・シフト表・勤怠システムの印刷)
  • 就業規則の該当箇所のコピー
  • 解雇通知書または退職処理書類のコピー

解雇か退職扱いか——処理方法の選び方

連絡が取れないまま一定期間が経過した場合、「懲戒解雇」「普通解雇」「自然退職」の3つの処理方法から状況に応じて選択します。どれを選ぶかは就業規則の規定と欠勤日数によって決まります。

懲戒解雇が選択できるケース

就業規則に「無断欠勤○日以上は懲戒解雇」と明記されており、かつその日数要件を満たしている場合に選択できます。懲戒解雇は解雇予告手当が不要になりますが、労働基準監督署への「除外認定」申請が必要なケースもあります(労働基準法第20条ただし書き)。手続きを誤ると後から「解雇無効」と争われるリスクがあるため、社会保険労務士または弁護士に確認してから進めることを強く推奨します。

普通解雇が現実的な選択になるケース

就業規則に懲戒規定がない、規定はあるが日数要件を満たしていない、あるいはリスクを避けたい場合は普通解雇が現実的です。採用から14日超であれば解雇予告手当(平均賃金30日分)が必要です。解雇通知書を書面で作成し、内容証明郵便で送付します。書面には「解雇の事実・理由・解雇日・予告手当の支払い方法」を明記してください。

就業規則に「自然退職」条項がある場合

就業規則に「無断欠勤○日以上で自然退職とみなす」という条項がある場合は、その条項に基づき退職処理が可能です。この場合も、本人への書面通知(内容証明)は必ず行い、「○月○日付で退職処理を行った」という事実を記録に残してください。本人から後になって「解雇された」と主張されるリスクを防ぐためです。

退職処理後の実務——社会保険・給与・貸与品

退職処理が決まったら、社会保険の喪失手続き・給与の清算・貸与品の回収という後処理を速やかに進める必要があります。放置すると会社側に余計なコストや法的リスクが生じます。

社会保険の資格喪失手続き

退職日(解雇日)の翌日が社会保険の資格喪失日となります。事業主は資格喪失の事実が確認できたら、速やかに「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を年金事務所または健康保険組合に提出します。健康保険証の回収が必要ですが、本人と連絡が取れない場合は「保険証回収不能届」を提出することで対応できます。手元に保険証があるまま喪失手続きが遅れると、退職後の医療費を会社が立て替えなければならないケースが発生することがあります。

給与の清算と控除の処理

退職月の給与は実際の勤務日数に基づいて日割り計算します。未払い給与がある場合は、退職後7日以内に支払い義務があります(労働基準法第23条)。一方、会社側に損害が生じている場合でも、給与からの一方的な損害賠償の控除は原則として違法です。別途請求の手続きが必要になります。

貸与品の返還請求

社員証・鍵・制服・会社携帯・PCなどの貸与品は、書面で返還を請求してください。内容証明で送付した書面に「○月○日までに返還がない場合は然るべき対応を取る」旨を明記しておくと後の対応がスムーズです。返還がない場合の実力行使(自宅への取りに行きなど)はトラブルの元になるため、法的手段(少額訴訟・支払督促など)を検討します。

まとめ

試用期間中の無断欠勤対応は、「安否確認→記録→書面送付→就業規則確認→処分判断→後処理」という順番で進めることが基本です。試用期間中であっても解雇には合理的理由と適正手続きが必要であり、採用14日超なら解雇予告手当も発生します。「勝手にいなくなったから退職でいい」と処理を省略すると、後から「不当解雇」と争われるリスクがあります。記録をしっかり残し、書面は内容証明で送ることが自社を守る最大の対策です。

こうした対応を一人で判断するのは簡単ではありません。ウェルセンス株式会社では、中小企業の経営者・兼務人事担当者からの「何から手をつければいいかわからない」という段階のご相談にも対応しています。処分手続きの方針整理から書面の確認まで、実務に沿ってサポートします。

専任人事がいない中での判断が不安でしたら、ウェルセンス株式会社へお気軽にご相談ください。個別の状況に応じた対応方針をお伝えします。

よくある質問

Q. 試用期間中でも解雇予告手当は必要ですか?

A. 採用から14日以内であれば解雇予告・予告手当なしで即日解雇が可能です(労働基準法第21条)。ただし14日を超えた場合は、30日前の予告か平均賃金30日分の解雇予告手当が必要です。無断欠勤が発生したときに採用から何日目かを最初に確認してください。

Q. 就業規則がない会社でも懲戒解雇はできますか?

A. 就業規則に懲戒規定がない場合、懲戒解雇は原則として行えません。就業規則のない会社(常時10名未満で作成義務のないケースなど)では、普通解雇(解雇予告手当付き)が現実的な選択肢になります。懲戒解雇は「就業規則に明記された根拠がある」ことが適法性の前提条件です。

Q. 内容証明郵便が受け取り拒否された場合、どうすればよいですか?

A. 受け取り拒否または不在で返送された場合でも、「送付の事実」と「内容」は内容証明郵便の記録として残ります。実務上は、「届けようとしたが受領されなかった」という記録自体が対応の証跡になります。その後の対応(退職・解雇処理)を進める際に、この記録を保管しておいてください。法的判断が必要な局面では、社会保険労務士または弁護士への相談を推奨します。

Q. 無断欠勤のまま1週間が経過しています。今から安否確認や書面送付を始めても手遅れではないですか?

A. 手遅れではありません。1週間経過した時点でも、今日から記録を残しながら接触試行と書面送付を進めることに意味があります。「適正な手続きを踏んだ」という記録が後の処分の正当性を裏付けます。対応が遅れた理由(担当者不在・社内での情報共有の遅れなど)も簡単にメモしておくと、万一のトラブル時に状況を説明しやすくなります。

Q. 無断欠勤後に本人から「体調不良だった」と連絡が来た場合はどう対応すればよいですか?

A. 体調不良を理由に事後連絡があった場合は、まず事実確認(医療機関の受診記録や診断書の提出依頼)を行ってください。理由の有無にかかわらず「連絡なしに欠勤した事実」は残るため、書面で指導・注意を行い、再発防止の意思確認を記録として残します。メンタルヘルス上の問題が背景にある可能性もあるため、状況に応じて産業医・支援機関への相談を検討することも選択肢のひとつです。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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