アルバイトが無断欠勤で連絡つかない…退職扱いにできる?

アルバイトが無断欠勤で連絡つかない…退職扱いにできる? 労務管理
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「もう3日連絡がない。シフトに穴が開いたまま、どうすればいい?」——アルバイトスタッフの無断欠勤に直面したとき、多くの経営者・兼務人事担当者がこうした状況に戸惑います。待つべきか、動くべきか。退職扱いにしてしまって法的に問題はないか。この記事では、無断欠勤から退職扱いにするまでの実務的なステップ、必要な手続き、就業規則がない場合の対応を整理します。

無断欠勤を退職扱いにするための前提条件

アルバイトの無断欠勤を退職扱いにできるかどうかは、「就業規則に無断欠勤時のみなし退職規定があるか」によって対応が大きく変わります。この前提を押さえないまま動くと、後から「不当解雇だ」と言われるリスクが生じます。

「自然退職(みなし退職)」と「解雇」の法的な違い

無断欠勤への対応には、法的に異なる2つのルートがあります。

区分 概要 必要な条件
自然退職(みなし退職) 一定条件を満たした時点で退職の効果が自動的に生じる 就業規則に明文規定が必須(例:「無断欠勤14日で退職とみなす」)
普通解雇 会社が労働契約を一方的に終了させる意思表示 客観的に合理的な理由+社会通念上の相当性(労働契約法第16条)

就業規則がない場合は必ず「解雇」手続きが必要

20〜50名規模の中小企業では、就業規則そのものが整備されていないケースが珍しくありません。その場合、みなし退職の根拠がないため、「普通解雇」の手続きを踏む必要が生じます。就業規則がある場合でも、規定の文言が曖昧だったり、アルバイトが適用対象外だったりするケースがあるため、事前に内容を確認することが大切です。

「勝手に退職扱い」では法的効果が発生しない理由

本人に何も通知せず、シフトを削除して給与振込を止めるだけでは、法的に退職の効果は生じません。後日「雇用は続いていたはずだ」と主張された場合、未払い賃金の請求や不当解雇の訴えに発展するリスクがあります。退職の意思表示や解雇の通知は、必ず「書面」で行い、記録を残すことが法的な防御になります。

何日の無断欠勤で対応できるか

法律に「○日で自動退職」という絶対的な定めはありません。ただし、就業規則の有無によって実務上の目安が異なります。

就業規則に規定がある場合

就業規則に「無断欠勤○日を超えた場合は退職とみなす」という規定があれば、その日数に到達した時点で自然退職の通知を発することができます。実務では5日から14日の設定が多く見られます。

ただし、日数が短すぎる設定(例:2~3日)は、合理性を欠くとして裁判所に否定される可能性があります。規定を整備する際は、「連絡なく欠勤が続いている」「出勤督促の通知を送付した」という事前の手順をセットで定めておくことが重要です。

就業規則に規定がない場合

規定がない場合、解雇の合理的理由として認められやすい実務的な目安は、無断欠勤が概ね2週間程度継続し、かつ連絡も取れない状態です。ただしこれは絶対的な基準ではなく、その間に会社側が連絡を試みた事実があるかどうかも大きな判断材料になります。「待っているだけ」では記録として弱いため、後述する連絡の手順を確実に踏むことが必須です。

無断欠勤から退職処理までの実務対応フロー

無断欠勤が始まった日から退職処理完了まで、やるべきことを時系列で整理します。焦って動きすぎても、待ちすぎても問題になるため、段階を踏んだ対応が会社を守ります。

欠勤初日から1週間以内:連絡試行と記録作成

欠勤初日に、電話・メール・LINEなど使えるすべての手段で連絡を試みてください。このとき、送信日時が確認できる形で記録を残しておくことが法的な防御になります。スクリーンショットを保存するか、送信内容をメモに転記しておくと良いでしょう。

欠勤2日目から3日目に、採用時に届け出ている緊急連絡先(家族など)に連絡を入れます。欠勤が5日から7日に達したら、内容証明郵便で「出勤督促・連絡要請」を本人の住所へ送付します。内容証明郵便は郵便局が文書の内容と送付日を公式に証明してくれるため、後日のトラブルを防ぐうえで非常に重要です。

2週間前後:退職または解雇の意思表示

出勤督促への反応がなく、連絡不通の状態が続く場合、就業規則の規定日数に到達した時点(規定がない場合は概ね2週間前後)で、退職通知または解雇通知を内容証明郵便で送付します。

通知書には以下の内容を明記してください:

  • 退職(または解雇)の日付
  • 理由(無断欠勤が継続しており連絡も取れない状態であること)
  • 給与・荷物の扱いについて

送付後は受領証を保管してください。

解雇予告手当の扱いに注意する

解雇の場合、原則として30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です(労働基準法第20条)。「無断欠勤が続き連絡もつかない」という状況は「労働者の責に帰すべき事由」として解雇予告の除外申請ができる場合がありますが、これは労働基準監督署長の認定を受けて初めて適用されるものです。

認定申請をしないまま予告なしで解雇通知を出してしまうと、後から解雇予告手当を請求されるリスクがあります。判断に迷う場合は、労働基準監督署か社会保険労務士に確認することをお勧めします。

退職後に発生する行政手続きを忘れずに

本人が行方不明に近い状態でも、雇用保険・社会保険の手続き期限は容赦なく進行します。放置すると会社側に行政上のペナルティが生じる可能性があるため、退職処理と並行して進めることが必須です。

雇用保険と社会保険の手続き期限

雇用保険については、退職(離職)の翌日から10日以内にハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出し、離職票を発行する必要があります。健康保険・厚生年金については、退職日の翌日から5日以内に日本年金機構へ資格喪失届を提出します。本人と連絡が取れない場合でも、手続きは会社側で進めることができます。離職票は本人の住所へ郵送してください。

未払い賃金・私物・貸与品の処理方法

最後の給与は通常の支払日に本人名義の口座へ振り込みます。振込先が不明な場合や口座が解約されている場合は、供託(法務局に金銭を預ける手続き)という方法があります。

会社が貸与した制服・社員証・鍵などが返却されていない場合は、退職通知書の中に返却を求める旨を明記し、返却期限と送付先を伝えます。私物が社内に残っている場合は、一定期間保管した上で本人へ連絡し、それでも引き取りがなければ対応を検討します。荷物の廃棄は本人の同意なしに行うとトラブルになるため、慎重に対応してください。

後から「不当解雇」と言われないための法的防御

無断欠勤からの退職処理において会社が守られるかどうかは、「連絡を試みた事実が記録として残っているか」に大きく左右されます。

証拠として保管しておくべき記録

後日のトラブルに備えて保管しておくべき記録は以下のとおりです。

  • 電話の発信履歴
  • メール・LINEの送受信記録(スクリーンショット)
  • 内容証明郵便の差出人控えと配達証明書
  • 緊急連絡先への連絡日時と内容のメモ
  • 退職通知書または解雇通知書のコピー

これらは少なくとも退職後3年間は保管しておくことをお勧めします(労働基準法第109条の帳簿等の保存義務に準じた対応)。

就業規則を今から整備することの重要性

今回のような事態が起きたとき、就業規則にみなし退職の規定があるかないかで対応の手間とリスクが大きく変わります。常時10名以上の労働者を使用する事業場では就業規則の作成・届出が法律上の義務ですが(労働基準法第89条)、10名未満でも整備しておくことが実務上のリスク管理として有効です。

「アルバイト用の簡易規則を作りたい」という場合は、社会保険労務士に相談することで比較的低コストで対応できます。

まとめ

アルバイトの無断欠勤・連絡不通への対応は、就業規則の有無によって「みなし退職」か「普通解雇」かが分かれます。いずれの場合も、連絡を試みた記録の積み重ねと、内容証明郵便による通知が会社を守る基本です。「何日待てばいいか」という問いに対しては、就業規則に規定があればその日数、規定がなければ概ね2週間の連絡不通が一つの実務的な目安になりますが、絶対的な基準ではありません。雇用保険・社会保険の手続き期限は本人が行方不明でも進行するため、退職処理と並行して進める必要があります。

ウェルセンス株式会社では、専任の人事担当者がいない中小企業の経営者・兼務人事の方から、「対応の手順が合っているか確認したい」「就業規則を整備したいが何から始めればいいかわからない」「無断欠勤の対応に迷っている」といったご相談を多くいただいています。突発的な人事対応に迷ったときは、一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 就業規則がない場合、3日間の無断欠勤で即時解雇しても問題ありませんか?

A. 就業規則がない場合、3日間の無断欠勤で即時解雇するのはリスクがあります。解雇が有効と認められるには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要(労働契約法第16条)であり、欠勤日数が短い段階では合理性を欠くと判断されやすいです。また、即時解雇には原則として解雇予告手当の支払いが必要です。まずは連絡を試み、内容証明で出勤督促を行うなど、段階的な手順を踏んでから対応することをお勧めします。

Q. LINEで「もう来ません」と送ってきた場合、退職の意思表示として有効ですか?

A. LINEメッセージでも退職の意思表示として有効と解される場合があります。ただし、後日「言っていない」「アカウントを乗っ取られていた」などと主張されるリスクがゼロではありません。そのため、LINEのスクリーンショットを保存した上で、「退職の意思を確認した」旨を書面(メールや郵便)でも本人に送付し、記録を重ねておくことをお勧めします。

Q. 連絡が取れないアルバイトの給与は振り込まなくていいですか?

A. 無断欠勤中であっても、実際に働いた日数分の賃金は支払う義務があります。通常の支払日に本人名義の口座へ振り込んでください。口座が利用できない場合は、法務局への供託(お金を法務局に預ける手続き)という方法があります。賃金を差し引いたり支払いを止めたりすることは、賃金不払いとして労働基準法違反になる可能性があるため注意が必要です。

Q. 内容証明郵便は自分で送れますか?費用はどのくらいかかりますか?

A. 内容証明郵便は郵便局の窓口またはインターネット(e内容証明サービス)から自分で送ることができます。費用は通数や文字数によって異なりますが、基本的な1通あたりの費用はおおむね数百円から千数百円程度です(配達証明を付加する場合は別途加算)。文書の作成に自信がない場合や、法的効果の高い文書にしたい場合は、社会保険労務士や弁護士に作成を依頼することも選択肢です。

Q. 無断欠勤したアルバイトが突然戻ってきた場合、拒否できますか?

A. 退職通知または解雇通知をすでに送付済みで、その効力が生じている場合は、労働契約が終了しているため復帰を拒否することができます。一方、まだ退職・解雇の手続きを取っていない段階であれば、原則として就労を拒むことは難しい場合があります。「事実上の解雇」や「無言の戦力外通告」は法的に無効となるリスクがあるため、戻ってきた場合でも手続きを省略せず、書面で対応することが重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
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