慶弔規定がない中小企業、突然の訃報にどう対応すればいい?

慶弔規定がない中小企業、突然の訃報にどう対応すればいい? 組織運営
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「部下から『父が亡くなりました』と連絡が入った。何日休ませればいい?香典はどうする?」——規定のない中小企業でこうした事態が起きると、経営者や兼務の人事担当者は対応の正解がわからないまま、その場の判断で動くしかなくなります。忌引き休暇は法律で定められた休暇ではないため、規定がなければ何もしなくても違法ではありません。しかし、適切な対応は社員との信頼関係に直結します。この記事では、規定がない状態での緊急対応と、再発防止のための規定づくりを実務目線で解説します。

忌引き休暇は「法律の義務」ではないが、対応しないとリスクがある

忌引き休暇(慶弔休暇)は、労働基準法が定める法定休暇ではなく、会社が任意で設ける「法定外休暇」です。規定がなければ法的な付与義務はありません。ただし、対応を怠ると社員の信頼を大きく損なう可能性があります。

法定休暇と法定外休暇の違い

年次有給休暇・産前産後休業・育児介護休業などは、労働基準法や育児・介護休業法が会社に義務づけた「法定休暇」です。一方、忌引き休暇・夏季休暇・リフレッシュ休暇などは会社が自主的に設ける「法定外休暇」であり、付与するかどうか、何日認めるか、有給か無給かはすべて会社が自由に決められます。逆に言えば、規定がなければ付与しなくても違法にはなりません。

「規定がないから対応しない」が招くリスク

法的義務がないとはいえ、社員が身内を亡くしたタイミングで「うちには規定がないので……」と曖昧な対応をすると、社員のエンゲージメントや職場の雰囲気に深刻なダメージを与えます。また、「Aさんのときは特別に休ませてもらえたのに、なぜ自分のときは違うのか」という不公平感は、退職や不満の連鎖につながります。規定がない状態での場当たり対応こそが、後々の人事トラブルを生む最大の原因です。

有給休暇の取得は別の話として押さえておく

忌引き専用の規定がない場合でも、社員が年次有給休暇の取得を申し出た場合、会社は原則としてこれを拒否できません(労働基準法第39条)。「忌引き規定がないから休めない」という対応は誤りです。忌引き休暇と年次有給休暇は別の制度として整理し、混同しないようにしましょう。

訃報が入ったときの緊急対応の順序

規定がない状態で訃報が届いたら、まず社長や責任者が方針を決め、本人に連絡する流れを最優先にします。以下の順序で動くことで、混乱を最小限に抑えられます。

即時対応の優先順位と判断のポイント

対応順序 アクション 判断のポイント
最初 社長・責任者への報告と方針決定 「今回どう対応するか」を決める権限者を明確にする
次に 忌引き日数の暫定決定と本人への連絡 有給消化か特別休暇(無給)かを明示して伝える
その後 弔電・供花・香典の手配 続柄・社風・金額相場をふまえ社長が判断する
並行して 業務の引き継ぎ・代替対応の手配 不在期間中の業務フローを関係者に共有する
最後に 今回の対応を記録・文書化する 次回の規定化のベースラインとして残す

忌引き日数の「暫定決定」をどうするか

規定がない場合、一般的な民間慣行を参考に暫定日数を決めるのが現実的です。たとえば、配偶者・父母・子が亡くなった場合は3〜5日、兄弟姉妹・祖父母・義父母の場合は1〜3日程度が広く用いられている目安です。ただし、これはあくまで参考水準であり、法的な根拠はありません。「今回は〇日を特別休暇として認める。有給扱い(または無給扱い)とする」と口頭だけでなくメールやメモで明示しておくことが重要です。曖昧なまま対応すると、後から「言った言わない」のトラブルになります。

香典・弔電・供花の判断基準

会社としての弔意表明は義務ではありませんが、社内の慣習や社員との関係性を考えると、何らかの対応をするのが一般的です。弔電は比較的低コストで送ることができ、遺族への配慮として適切な選択です。香典の金額は、社員本人の直系家族(配偶者・父母・子)の場合は5,000〜10,000円、その他の続柄は3,000〜5,000円程度が一般的な目安として使われています。ただし、会社の規模や業界慣習によって異なるため、社長が「うちの会社らしい金額」を判断することが大切です。どの続柄に対応するかの基準を今回の対応をもとに記録しておくと、次回の規定づくりに役立ちます。

規定がないまま「今回だけ特別対応」する際の注意点

前例のない対応を「社長判断」で行う場合、その内容を必ず記録に残し、将来の基準にすることを明言しておくことが重要です。これを怠ると、次の社員が同じ状況になったときに「なぜ扱いが違うのか」というトラブルの火種になります。

「前例をつくる」ことを意識した記録の残し方

今回の対応(続柄・忌引き日数・有無給の別・弔電や香典の有無と金額・申請の流れ)を社内メモや議事録として残しておきましょう。「今回の対応を基準として、今後慶弔規定を整備する」という一文を添えておくと、社員への説明もしやすくなります。記録することは、後の不公平クレームを防ぐための最低限の保護策になります。

社員への伝え方で信頼を守る

対象の社員には、「規定として整備されていないため、今回は〇〇という対応を会社として決めました」と明確に伝えましょう。曖昧なまま「とりあえず休んでいいよ」という伝え方は、社員に余計な不安を与えます。また、周囲の社員には個人情報への配慮から詳細を広めすぎず、「〇〇さんは忌引きで不在です」という事実のみを共有するにとどめます。

その場対応だけで済ませると、後の不公平トラブルに発展しやすい。できるなら今回を機に規定整備を進めることをお勧めします。

慶弔規定の作り方——今回を機に整備する

慶弔規定は、一度作ってしまえば今後の対応を大幅に楽にしてくれる制度です。難しく考える必要はなく、最低限の項目を決めるだけで実務的に十分機能します。

規定に盛り込む最低限の項目

慶弔規定として整備すべき主な内容は以下のとおりです。まず対象となる続柄の範囲と忌引き日数を決めます。次に有給か無給かを明記します。さらに慶弔見舞金の有無と金額・支給条件を定めます。加えて弔電・供花・香典の会社としての取扱い方針、申請手続きや証明書類(会葬礼状等)の要否も明記しておくと運用がスムーズです。

  • 対象続柄の範囲(配偶者・父母・子・兄弟姉妹・祖父母・義父母など)と日数
  • 有給か無給かの明示
  • 社員本人が喪主でない場合の取扱い
  • 慶弔見舞金の有無・金額・支給条件
  • 弔電・供花・香典の会社方針
  • 申請手続きと証明書類(会葬礼状など)の要否

現代の家族形態に対応した「続柄の範囲」の考え方

かつては戸籍上の親族関係のみを対象とするのが一般的でしたが、現在は内縁関係や同性パートナーを対象に含める企業も増えています。どこまで対象にするかは会社の判断ですが、「適用するかどうかを都度判断する」という柔軟条項を入れておくと、予見しにくいケースにも対応しやすくなります。また、社員が喪主でない場合(例:遠方の親族が亡くなったが、葬儀に参列するだけの場合)の日数を本来の日数より短く設定しておくと、現実的な運用につながります。

就業規則との整合と届出手続き

慶弔規定は就業規則の付属規程として位置づけるのが一般的です。常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準法第89条により就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務づけられています。慶弔規定を新設・変更した場合も、就業規則の変更として労働者代表の意見聴取と届出が必要です。常時10人未満の事業場であれば届出義務はありませんが、社員に周知することは必須です。また、法定外休暇として有給で付与する場合は、有給であることを就業規則に明記する必要があります(労働基準法第89条第1号)。

社員数・状況別の対応判断ポイント

会社の規模や就業規則の整備状況によって、優先すべき対応が変わります。自社の状況に照らし合わせて判断の参考にしてください。

就業規則がすでにある場合

就業規則本体に「慶弔休暇については別途定める」という記載がある場合は、付属の慶弔規程を早急に作成することが必要です。就業規則に何も記載がない場合は、慶弔規程の新設に合わせて就業規則本体も変更し、整合性を保ちましょう。変更後は、常時10人以上の事業場であれば労働基準監督署への届出と労働者代表の意見聴取が必要です。

就業規則が未整備の場合(従業員10人未満)

従業員が常時10人未満の事業場は、就業規則の作成義務はありません。ただし、社内のルールが曖昧なままだと人事トラブルの原因になります。まず「慶弔対応ガイドライン」として社内文書を作成し、全員に共有するだけでも大きな前進です。将来的に10人以上になる見込みがあれば、今のうちに就業規則の整備を始めることを検討してください。

人事規定の作成・整備は、法務知識がないと不安が残るもの。専門家のアドバイスをもらいながら進めるのが確実です。

まとめ

慶弔規定がない中小企業で社員の訃報が入ったとき、まず動くべきは「社長・責任者による方針決定と本人への明確な連絡」です。忌引き休暇は法定外休暇であるため、規定がなくても違法にはなりませんが、場当たり対応は不公平感やトラブルの温床になります。今回の対応を記録し、慶弔規程の整備につなげることが最も重要なステップです。規程作成では、対象続柄・日数・有給か無給か・見舞金・弔電の方針・申請手続きを最低限盛り込みましょう。就業規則との整合と届出手続きも忘れずに確認してください。

「どこから手をつければいいかわからない」「今の対応が正しいか確認したい」という場合は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。人事専任担当者がいない中小企業の実態に合わせて、規定の整備から社員対応の進め方まで、具体的にサポートいたします。

よくある質問

Q. 慶弔規定がなければ忌引き休暇を与えなくても違法にはなりませんか?

A. 忌引き休暇は法定外休暇であるため、規定がなければ付与の法的義務はなく、直ちに違法にはなりません。ただし、社員が年次有給休暇の取得を申し出た場合は原則拒否できません(労働基準法第39条)。また、規定のない場当たり対応は後の不公平トラブルにつながるため、早期の規定整備を強くお勧めします。

Q. 香典や弔電は会社として必ず出さなければいけませんか?

A. 法律上の義務はありません。ただし、弔意を示すことは社員との信頼関係の維持に重要です。一般的には、社員本人の直系家族(配偶者・父母・子)が亡くなった場合は弔電や香典を出すケースが多く見られます。対応する・しないの基準を規定として明文化しておくと、判断がしやすくなります。

Q. 慶弔規定は就業規則がなくても単独で作れますか?

A. 従業員が常時10人未満で就業規則の作成義務がない場合は、「慶弔対応ガイドライン」などの社内文書として単独で作成し、全員に周知することが可能です。ただし、常時10人以上の事業場では就業規則への記載と労働基準監督署への届出が必要になるため、慶弔規程と就業規則を一体で整備することをお勧めします。

Q. 社員が喪主でない場合も忌引き休暇を認めるべきですか?

A. これは会社が自由に決められる事項です。喪主でない場合は葬儀への参列のみとなるケースが多いため、喪主の場合より日数を短く設定する企業が多いです。たとえば「喪主の場合は5日、参列のみの場合は1〜2日」のように明文化しておくと、判断のブレがなくなります。規定を作る際に「喪主か否か」の区分を設けておくことをお勧めします。

Q. 今回の対応を「前例」として次回も同じ対応をしなければいけませんか?

A. 法律上「今回と同じ対応をしなければならない」という義務はありません。ただし、社員から見ると対応が変わること自体が不公平感の原因になります。今回の対応を参考に慶弔規定を整備し、「今後はこの規定に基づいて対応する」と社員に明示することで、前例との齟齬を合理的に説明できるようになります。規定がないまま場当たりで対応を続けるより、早期に基準を明文化することが最善の策です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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