休職者の健康保険証、回収すべき?3つのケース別対応ガイド

休職者の健康保険証、回収すべき?3つのケース別対応ガイド 休職・復職対応
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「休職に入った社員の保険証、このままにしておいていいの?」——初めて休職対応をする方ほど、こうした疑問を抱えながら手探りで対応しているのではないでしょうか。休職者の健康保険証を回収すべきか、本人に持たせておくべきか、退職になったときどうすればいいか。判断を誤ると、手続き違反やトラブルにつながることもあります。この記事では、休職者の健康保険証の回収について「3つのケース別」にわかりやすく整理します。

休職者の健康保険証は「回収不要」が原則

在籍中は被保険者資格が継続している

休職中の社員は、会社を辞めているわけではありません。雇用契約が継続している限り、社会保険の被保険者資格も維持されます。健康保険法第54条では、健康保険証(被保険者証)は「被保険者が携帯・使用するもの」と定められています。つまり、休職中であっても在籍している社員には保険証を保持させるのが正しい取り扱いです。

「会社の管理物だから回収すべきでは?」と感じる方も多いですが、これは誤解です。保険証は会社の備品ではなく、社員本人が使用するための証明書です。休職中に通院が必要になることも当然あります。保険証を回収してしまうと、社員が医療機関を受診できなくなるという深刻な問題が生じます。

保険証を回収すべきケースは資格喪失時だけ

健康保険証の回収が必要になるのは、社員が社会保険の「被保険者資格を失う」タイミングだけです。具体的には、退職・解雇・雇用契約の終了などが該当します。休職はあくまで在籍中の状態であるため、資格喪失には該当しません。

この原則を押さえておくだけで、「保険証を回収すべきか」という判断に迷うケースの大半は解消できます。判断の出発点は「その社員は今も在籍しているか」という一点です。

ケース別・保険証の回収対応ガイド

ケース1:休職中(復職を前提としている場合)

休職中で復職を前提としている社員については、保険証は本人がそのまま保持します。会社側がすべき特別な手続きは基本的にありません。ただし、休職期間中の社会保険料の支払いについては、会社と社員の間で取り決めが必要です。給与が支払われていない場合でも、社会保険料は毎月発生するためです。一般的には、社員が会社に毎月振り込む方法か、復職後に一括精算する方法が取られます。

なお、傷病手当金を受給している場合でも、保険証の扱いは変わりません。傷病手当金は健康保険からの給付ですが、これは被保険者資格が継続していることを前提とした制度です。保険証はそのまま本人が保持することで問題ありません。

ケース2:休職から退職に移行する場合

保険証の回収でトラブルが最も起きやすいのが、このケースです。休職が長引いて退職となる場合、会社は退職日(資格喪失日)から5日以内に、健康保険の資格喪失届と保険証を協会けんぽまたは健康保険組合に提出しなければなりません(健康保険法施行規則第51条)。この期限を過ぎると、事業主が手続き違反になるリスクが生じます。

問題になりやすいのは、連絡が取れない・郵送してもらえないといった回収困難なケースです。対応としては、まず退職確定時点で保険証返却を求める書面を郵送します。それでも返却がない場合は、内容証明郵便で返却を求める文書を送ることが有効です。万が一、期限までに回収できないときは、その旨を保険者に報告したうえで喪失手続きを進めることができます。回収できなかった経緯を記録として残しておくことが重要です。

また、退職後も元社員が保険証を使用し続けた場合、元社員は詐欺罪・不正請求のリスクを負います。会社側も回収義務を怠ったとして保険者から問題視される可能性があるため、早期の対応が不可欠です。

ケース3:休職中に保険証を紛失した場合

休職中に社員から「保険証をなくした」と連絡が入ることがあります。このとき、再発行手続きは事業主経由で行う必要があります。「健康保険被保険者証再交付申請書」を協会けんぽまたは健康保険組合に提出することで、新しい保険証が発行されます。費用は原則無料です。

あわせて、本人に対して警察への紛失届の提出を促してください。これは不正使用リスクを低減するための重要な対応です。第三者に拾われて不正利用された場合、会社が責任を問われる可能性は低いものの、トラブルの芽は早めに摘んでおくことが大切です。手続きを放置して保険証が2枚存在する状態が続くことは、管理上のリスクになります。

2024年12月以降、マイナ保険証移行による変化

従来の保険証カードから制度が転換する

2024年12月2日以降、従来の健康保険証カードは新規発行が停止されました。既存のカードについては最長1年間(2025年12月1日まで)の経過措置として引き続き使用可能ですが、いずれは従来型の保険証は完全に廃止されます。

マイナ保険証を持っている社員については、退職時に「回収するカード」が存在しません。マイナンバーカードそのものは個人の所有物であり、会社が回収することはできないためです。その代わり、会社が速やかに資格喪失手続きを行うことで、システム上の使用資格が自動的に停止されます。これにより、退職後の不正利用は制度的に防がれる仕組みになっています。

経過期間中の旧保険証と新制度の混在対応

現在は、従来の保険証カードを持つ社員とマイナ保険証を使う社員が混在している状態です。経過措置期間中は、旧保険証を持つ社員には従来どおりの返却対応が必要です。一方、マイナ保険証の社員については、退職時の返却対象が「資格確認書」または「資格情報のお知らせ」に切り替わっていきます。

社内のルールが旧制度のままになっていると、対応が混乱します。休職・退職対応の手順書を2025年中に見直しておくことを強くお勧めします。

退職移行時のスムーズな保険証回収フロー

退職日が確定から5日以内を意識したスケジュール管理

退職日が確定した時点で、保険証回収のカウントダウンが始まります。まず退職確定の連絡と同時に、保険証返却を求める書面を本人に送付します。書面には「退職日」「返却期限」「返却先の住所」「返却方法(郵送可)」を明記してください。返却用の封筒(切手貼付済み)を同封すると、スムーズに回収できます。

退職日から5日以内という期限は非常に短いため、退職確定前から準備を始めることが実務上のポイントです。退職合意書や退職届の受領と同時に、保険証返却の依頼書類を渡す手順を社内フローに組み込んでおきましょう。

連絡が取れない場合の対応ステップ

メンタルヘルス不調で休職した社員が退職に至るケースでは、本人との連絡がスムーズに取れないことがあります。この場合、段階的な対応が効果的です。

  • 1段目:郵送での返却依頼を試みる
  • 2段目:それでも返却がない場合、内容証明郵便で正式な返却要求を行う
  • 3段目:緊急連絡先の家族に協力を依頼することも選択肢だが、個人情報の取り扱いに注意が必要

最終的に回収できなかった場合でも、手続きを止めるわけにはいきません。その旨を協会けんぽまたは健康保険組合に報告し、資格喪失の手続きを進めてください。「回収できなかった経緯」を記録として残しておくことで、後日のトラブル対応にも備えられます。

休職対応を属人化させないための仕組みづくり

チェックリストで保険証対応の漏れを防ぐ

専任人事がいない中小企業では、休職対応の担当者が変わるたびに「前任者はどうしていたか」がわからなくなりがちです。保険証の対応一つとっても、休職開始時・退職移行時・紛失時で対応が異なります。これらをフェーズ別にチェックリスト化しておくことで、誰が担当しても同じ品質で対応できます。

チェックリストには以下の項目を入れておくと、手続きの抜け漏れを防げます。

  • 保険証の状態確認(旧保険証かマイナ保険証か)
  • 資格喪失日の確認
  • 返却依頼書送付日
  • 返却確認日
  • 喪失届提出日

休職者への丁寧なコミュニケーション設計

保険証の返却を求める連絡は、メンタルヘルス不調で休職している社員にとって精神的な負担になることがあります。文書の書き方一つで、社員との関係性に影響することも少なくありません。「手続き上必要なため」という事務的な文書よりも、本人の状況に配慮した言葉遣いを心がけることで、スムーズな対応につながります。

また、退職に至るケースでは、保険証の回収と並行して「健康保険の任意継続」や「国民健康保険への切り替え」についても情報提供することが、社員への適切な配慮になります。退職後の保険証の空白期間をなくすための情報を会社から提供することは、トラブル防止の観点からも重要です。

まとめ

休職者の健康保険証の回収は、「在籍中は回収不要」「退職時は5日以内に返却・手続き」「紛失時は事業主経由で再交付申請」という3つの原則を押さえることが基本です。さらに2024年12月以降のマイナ保険証移行により、従来の「カードを回収する」という手順も変わりつつあります。社内の対応フローが旧制度のままになっていないか、この機会に見直してみてください。

とはいえ、「仕組みづくりを進めたいけれど、日々の業務で手が回らない」という方も多いはずです。ウェルセンス株式会社

よくある質問

Q. 休職中の社員から「保険証を会社に預けてほしい」と言われました。預かっていいですか?

A. 法的には問題ありませんが、推奨されません。休職中も通院が必要になる場面があり、保険証が手元にないと社員が困ります。「在籍中は本人が保持するもの」という原則をあらためて社員に説明し、手元で保管してもらうよう案内してください。

Q. 退職日から5日以内に保険証を回収できなかった場合、会社はどうすればいいですか?

A. 回収できなかった経緯を記録したうえで、協会けんぽまたは健康保険組合に状況を報告し、資格喪失手続きを進めてください。手続きを止めることはできません。回収のために取った手順(郵送依頼・内容証明など)を記録として残しておくことで、後日の問い合わせに対応できます。

Q. マイナ保険証を持っている社員が退職する場合、何を回収すればいいですか?

A. マイナ保険証(マイナンバーカード)は個人の所有物のため、会社が回収することはできません。退職時に必要なのは、資格喪失の届け出をすみやかに行うことです。手続きが完了すれば、システム上で使用資格が停止されます。なお、「資格確認書」が発行されている場合はその返却が必要になります。

Q. 休職中に保険証を紛失した社員から連絡がありました。再発行の費用は会社が負担しますか?

A. 再発行の手数料は原則無料です。ただし、手続きは事業主経由で行う必要があるため、「健康保険被保険者証再交付申請書」を協会けんぽまたは健康保険組合に提出してください。あわせて、本人に警察への紛失届の提出を促すことで、不正使用リスクを低減できます。

Q. 退職した元社員がその後も保険証を使い続けていた場合、会社に責任はありますか?

A. 会社が資格喪失の手続きを速やかに行い、回収の努力をしていた場合、会社側の責任は限定的です。一方、手続きを怠ったまま放置した場合は、給付過払いが発生した際に保険者から問題視される可能性があります。退職確定後は速やかな手続きと回収依頼の記録が重要です。

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【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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