復職診断書が届いたらすぐ復職させるべき?

復職診断書が届いたらすぐ復職させるべき? 休職・復職対応
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「主治医から復職可能の診断書が届いた。これはもう受け入れるしかないのか…」そう焦ってしまう経営者・人事担当者は少なくありません。しかし、復職診断書の受領がすぐに復職義務を意味するわけではありません。この記事では、復職診断書が届いた後に会社がとるべき正しいプロセスと、再休職を防ぐための準備について、法的根拠も含めて実務的に解説します。

復職診断書が届いても、すぐ復職させる義務はない

主治医の「復職可能」は日常生活レベルの回復を示すもの

主治医が発行する復職診断書は、「日常生活を送れるまで回復した」という医学的判断を示すものです。しかし、職場で実際に業務をこなせるかどうか、つまり就労可能性の判断は、また別の話です。

主治医は患者の治療を担う立場であり、職場の業務内容や職場環境を詳細に把握しているわけではありません。たとえば、デスクワーク中心の職場への復職であれば、ある程度の体力回復で対応できるかもしれません。一方、複数のプロジェクトを同時並行で管理する役職や、ノルマのある営業職であれば、日常生活が送れるレベルとは別の判断基準が必要になります。

「診断書があるからすぐ復職」と思い込んでしまうのは、この医学的回復と就労可能性の違いが見えていないからです。

会社には独自に復職可否を審査する権限がある

実は、多くの裁判例において「会社が独自に就労可能性を審査することは正当な権限の行使である」と認められています。就業規則に「会社が復職可否を審査する」旨の規定を設けておけば、合理的な期間の審査は法的に問題ありません。

実務的な審査期間の目安は2週間〜1ヶ月程度が一般的です。重要なのは「感情的・恣意的な理由での拒否ではなく、客観的な根拠に基づいた判断である」という点です。「なんとなく不安だから」という理由では通りません。後述する産業医の意見取得やチェックリストの活用が、この客観性を担保するために非常に効果的です。

就業規則に復職手続きの規定がない場合のリスク

中小企業に多いのが「就業規則に復職診断書や復職手続きの規定がない」あるいは「規定はあっても運用実態がない」ケースです。この状態では、万一トラブルが発生した際に「不当な復職拒否だ」と主張されたとき、会社側の根拠が薄くなります。

就業規則の整備は、従業員を守るためだけでなく、会社を守るためにも不可欠です。復職手続きに関する規定がない場合は、まず就業規則の見直しを検討しましょう。

審査期間を設けることは違法にならないのか

合理的な審査期間の設定は法的に認められている

「復職診断書をもらったのに、少し待ってもらうのは不当な復職拒否になるのでは?」という不安をお持ちの方は多いです。結論から言うと、合理的な理由と期間があれば、審査期間の設定は法的に問題ありません。

ただし、2つの条件が重要です。まず「就業規則に審査に関する規定があること」、次に「審査の目的や期間を本人に明確に伝えること」です。理由を説明せずに待たせたり、不当に長期間放置したりすることは問題になり得ます。

「会社としても確実に復職を成功させたいため、職場の状況確認と受け入れ体制の整備に2週間程度いただきたい」という形で伝えることが重要です。

賃金支払いと休職満了日への注意

審査期間中の賃金については、原則として休職期間内であれば支払い義務は生じません。ただし、休職満了日との兼ね合いには細心の注意が必要です。

審査期間を設けているうちに休職満了日を超えてしまうと、復職の機会を失わせたとして問題になる場合があります。審査を開始する時点で、休職満了日まで残り何日あるかを必ず確認し、余裕をもったスケジュールで動くことが大切です。診断書を受け取ったその日に、休職満了日を確認する習慣をつけましょう。

復職診断書を受け取った後にやるべき復職前チェック

産業医または会社指定医の意見を取得する

復職可否の判断において、もっとも重要なステップが産業医(または会社指定医)による意見取得です。産業医は職場環境と医学的知識の両方の視点を持つ専門家であり、その意見は復職可否判断の「客観的根拠」となります。

万一、復職判断をめぐってトラブルが生じた場合にも、産業医の意見書は会社側の正当性を示す重要な証拠になります。

中小企業では産業医との契約がないケースも多く見られます。50名未満の事業所は産業医の選任義務がないため、「そもそも産業医がいない」という状況は珍しくありません。その場合は、外部の産業医紹介サービスや、産業保健総合支援センターの相談窓口を活用することも一つの選択肢です。

職場視点でのチェックポイントを確認する

医療的な判断と並行して、職場の現場視点でも確認すべき事項があります。以下のような点を、上長や関係者を交えて確認しましょう。

  • 復職後に担当してもらう業務の内容・量・難易度は適切か
  • 直属の上長や同僚との関係性に問題はないか(休職の背景に職場の人間関係がある場合は特に注意)
  • 時短勤務・残業制限など、段階的な就業条件の設定が可能か
  • 本人の体調変化を早期に察知できるフォロー体制があるか
  • 万一、再び体調が悪化した場合の対応フローを整備しているか

これらを確認しないまま「診断書が来たからすぐ復職させた」という対応が、3週間後の再休職につながるケースは実際に多く見られます。

試し出勤・リハビリ出勤の活用を検討する

厚生労働省が推奨する「試し出勤(リハビリ出勤)」は、本格復職前に段階的に職場に慣れてもらうための仕組みです。たとえば、最初の2週間は午前中だけ出社してもらい、業務は軽作業から始めるといった形です。法的義務ではありませんが、再休職リスクを大幅に下げる効果があります。

ただし、試し出勤中の労働時間の取り扱いや賃金の扱いは、事前に明確にしておく必要があります。「試し出勤をしていたら、いつの間にか正式復職扱いになっていた」というトラブルを防ぐためにも、期間・条件・目的を書面で確認し合うことが重要です。

本人への伝え方:「もう少し待ってほしい」を丁寧に説明する

審査期間を設ける理由を丁寧に説明する

精神疾患からの休職者に対して、「まだ受け入れられない」と伝えることは、担当者にとって非常に難しいコミュニケーションです。しかし、伝え方次第で本人の受け取り方は大きく変わります。

重要なのは「拒絶している」のではなく「確実に復職を成功させるための準備をしている」というメッセージを伝えることです。たとえば以下のような言い方が有効です。

「診断書を受け取りました。○○さんが回復されていることは嬉しく思っています。ただ、会社としても復職後に無理なく長く続けていただけるよう、業務内容や受け入れ体制を整えるために、2週間ほど時間をいただけますか。準備が整い次第、改めてご連絡します。」

期間を明示し、準備中であることを具体的に伝えることで、「放置されている」という不安を軽減できます。

本人の家族からのプレッシャーへの対応

復職を急ぐよう、本人の家族から直接連絡が来るケースもあります。そのような場合は「現在、会社として復職に向けた準備を進めており、○日までにご連絡します」と、対応中であることを明確に伝えましょう。判断が曖昧なまま引き延ばすと、家族の不安が増大し、さらなるプレッシャーにつながります。

また、家族への対応窓口を一本化しておくことも重要です。担当者によって伝える内容がバラバラになると、誤解やトラブルの原因になります。

再休職を防ぐための復職支援プランの作り方

復職支援プランに盛り込むべき内容

復職を成功させるためには、「何となく戻ってきてもらう」のではなく、業務内容・勤務時間・フォロー体制を書面化した復職支援プランを作成することが重要です。プランには以下の要素を含めましょう。

  • 復職初日から3ヶ月間の業務内容と業務量の目安(段階的に増やすスケジュール)
  • 勤務時間・残業制限の条件(例:最初の1ヶ月は残業禁止、時短勤務など)
  • 上長との定期的な面談の頻度とテーマ(例:隔週で15分の状況確認)
  • 体調悪化のサインが見られた場合の対応フロー
  • 産業医・外部相談窓口への連絡ルート

このプランは、本人・直属の上長・人事(担当者)の三者で内容を確認し、署名捺印することでより実効性が高まります。

復職後フォローアップ面談の仕組みづくり

復職後の最初の1〜3ヶ月は、再休職リスクが最も高い時期です。この時期に定期的なフォローアップ面談を行うことで、体調の変化や業務上の困りごとを早期に察知し、対応できます。

1ヶ月後に再休職した事例を振り返ると、「復職直後は張り切りすぎて、徐々に疲弊していった」「業務量の戻し方が早すぎた」というパターンが非常に多く見られます。フォロー面談は形式的なものではなく、本人が正直に話せる関係性と場づくりが肝心です。

面談担当者は、上長よりも人事・外部の専門家が担う方が、本人が話しやすい場合もあります。

まとめ

復職診断書が届いても、会社はすぐに復職させる義務はありません。主治医の診断書はあくまで日常生活レベルの回復を示すものであり、職場での就労可能性は会社が独自に審査できます。合理的な審査期間(目安2週間〜1ヶ月)を設け、産業医の意見取得・職場視点のチェック・復職支援プランの作成を経て、段階的に復職を進めることが再休職防止のカギです。

ただし、就業規則に復職手続きの規定がない場合はリスクが高まるため、まずルールの整備から始めることをお勧めします。

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よくある質問

Q. 復職診断書が届いたら、すぐに復職を認めなければなりませんか?

A. いいえ、すぐに復職を認める義務はありません。主治医の診断書は日常生活レベルの回復を示すものであり、職場での就労可能性の判断は会社が独自に行えます。就業規則に復職審査の規定があれば、2週間〜1ヶ月程度の審査期間を設けることは法的に問題ありません。ただし、審査の理由と期間を本人に明確に伝えることが大切です。

Q. 復職審査のために待機させている間、給与は払わなければなりませんか?

A. 休職期間内であれば、審査期間中の給与支払い義務は原則として生じません。ただし、審査期間中に休職満了日を超えないよう注意が必要です。診断書受領時に休職満了日を確認し、余裕を持ったスケジュールで審査を進めることが重要です。

Q. 産業医がいない場合、復職診断書をもらった時はどうすればよいですか?

A. 50名未満の事業所は産業医の選任義務がないため、社内に産業医がいないケースは多くあります。その場合は、外部の産業医紹介サービスや産業保健総合支援センターを活用する方法があります。また、専門の人事・メンタルヘルス支援会社に相談することで、復職判断をサポートする体制を整えることも可能です。

Q. 復職後すぐに再休職になった場合、どう対応すればよいですか?

A. 再休職が起きた場合は、まず本人の状況を確認しつつ、就業規則の規定に従って手続きを進めます。同時に、再休職に至った原因(業務量・職場環境・復帰時のサポート不足など)を振り返り、次回の復職支援プランに反映することが重要です。再休職を繰り返すケースでは、外部の産業保健専門家や支援会社との連携を検討することをお勧めします。

Q. 就業規則に復職手続きの規定がありません。今から整備できますか?

A. はい、今からでも整備できます。就業規則の変更は、労働者代表への意見聴取と労働基準監督署への届け出が必要ですが、手続き自体は難しくありません。重要なのは「会社が復職診断書受領後に可否を審査する権限を持つこと」「審査期間の目安(2週間〜1ヶ月)」「産業医の意見を取得すること」などを明記することです。規定がないまま対応を続けることの方がリスクが高いため、早めの整備をお勧めします。

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