診断書の偽造を見抜く確認方法と受領ルールの整え方

診断書の偽造を見抜く確認方法と受領ルールの整え方 休職・復職対応
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「提出された診断書、本当に本物だろうか」——そう感じた瞬間、どう動けばいいかわからず、結局そのまま休職を認めてしまった経験はないでしょうか。専任人事がいない中小企業では、診断書の受領ルールが曖昧なまま運用されているケースが少なくありません。この記事では、診断書の真偽を確認する具体的な方法と、トラブルを未然に防ぐ受領ルールの整え方を実務目線で解説します。

診断書の偽造が疑われやすい場面とは

こんな状況で「おかしい」と感じたら要注意

診断書の偽造や改ざんは、決して珍しい話ではありません。実際に疑念が生じやすいのは、次のような場面です。まず、突然の休職申請と同時に診断書が提出される場合。通常、初診から診断書発行まで一定の時間がかかるため、「昨日初めて受診して今日診断書をもらってきた」という状況には違和感があります。

次に、短期間で複数回の診断書を取得しているケース。1か月ごとに新しい診断書を提出するたびに医療機関が変わっていたり、毎回休職期間がちょうど延長される内容だったりすると、注意が必要です。また、書式が手書きで不自然に整っている、病院名や医師名がインターネット検索で確認できない、といった外観上の不審点も見逃せません。

「感覚」で終わらせず、記録に残す習慣を

「なんとなくおかしい」と感じたとき、その感覚を記録に残しておくことが後の対応を大きく左右します。受領日時、診断書の内容、気になった点をメモしておくだけで、後から証拠として活用できます。感情的な対応や「見て見ぬふり」は後のトラブルを招くため、落ち着いてチェックリストに沿って確認する仕組みを持つことが重要です。

診断書の真偽を確認する具体的な方法

医療機関への問い合わせは「発行事実」の確認にとどめる

会社として医療機関に問い合わせること自体は違法ではありません。ただし、確認できる範囲には明確な限界があります。個人情報保護法や医師の守秘義務の観点から、医師が病状の詳細を会社に開示する義務はありません。実務上できる確認は、「この診断書は貴院が発行したものですか」という発行事実の確認だけです。

なお、医療機関によって対応はさまざまで、電話で回答してくれる場合もあれば、「本人の同意なしには答えられない」と断られる場合もあります。リスク回避の観点から、問い合わせ前に必ず本人から書面で同意を取得しておくことが基本です。口頭の同意だけでは後々トラブルになりかねません。

診断書受領時に確認すべき6つのポイント

診断書を受け取った際、以下の項目を一つひとつ確認することが実務の基本です。

  • 発行医療機関名・所在地・電話番号:ウェブ検索や電話帳で実在を確認できるか
  • 医師の氏名と署名:署名があるか、印鑑が押されているか
  • 発行日:休職申請日との整合性があるか
  • 傷病名:「体調不良」など曖昧すぎないか
  • 休職が必要な期間の明示:「加療を要する」だけでは不十分。具体的な期間が記載されているか
  • 病院の公印:正式な院印が押されているか

これらが一つでも欠けている場合、追加書類の提出を求めるか、医療機関への確認を行う根拠になります。「提出されたから受け取るしかない」という受け身の姿勢を、チェックリストの運用によって変えていくことが大切です。

産業医・外部専門家を活用した二重確認

主治医が発行した診断書の内容に疑問がある場合、会社は産業医に意見を求めることができます。「主治医の判断が絶対」という思い込みを持つ担当者は多いのですが、主治医はあくまで患者側の視点で記述するため、就労可否の判断は別の専門的視点で検討する余地があります。

50名未満の事業場には産業医の選任義務はありませんが、外部産業医と契約することは任意で可能です。また、就業規則に定めがある場合には、会社が指定する医師への受診を命じることも、裁判所の判例で認められています。主治医と会社指定医の意見が異なる場合は、産業医が仲裁的な役割を担う運用が実務上の標準的なアプローチです。

診断書の偽造が発覚した場合の対応と法的根拠

診断書の偽造は刑事事件になり得る

診断書の偽造・改ざんは、刑法上の「私文書偽造罪(刑法第159条)」に該当し得ます。医師(私人)が作成した文書を無断で変造した場合がこれにあたります。さらに、偽造した診断書を会社に提出する行為は「同行使罪(刑法第161条)」となり、実際に刑事告訴・被害届の提出に発展したケースも存在します。

会社としては、偽造が疑われる診断書の原本を保全し、医療機関への確認を経て証拠を確保することが先決です。警察への相談・告訴は、証拠が揃ってから行うことで手続きをスムーズに進めやすくなります。

懲戒処分・解雇の根拠となるための条件

診断書の偽造が判明した場合、懲戒解雇を含む懲戒処分の根拠にすることが可能です。ただし、そのためには就業規則に「不正行為」「詐欺的行為」に関する懲戒条項があらかじめ明記されていることが必須条件です。就業規則に根拠がなければ、懲戒処分は無効となるリスクがあります。

また、処分を行う際には、本人への事実確認と弁明の機会の付与が適正手続きの観点から求められます。感情的に対応せず、証拠の確保→本人への確認→専門家への相談→処分判断というステップを踏むことが、会社を法的リスクから守ります。

診断書の受領ルールを整備する方法

就業規則・休職規程に盛り込むべき事項

「何でも受け取るしかない」という状態を根本から変えるには、就業規則や休職規程に診断書の受領要件を明記することが不可欠です。具体的には、以下の内容を規程に盛り込むことをお勧めします。

  • 診断書に記載が必要な事項(医療機関名・医師署名・発行日・傷病名・休職期間など)
  • 診断書の有効期間(例:発行日から1か月以内のものに限る)
  • 休職延長の際の更新頻度(例:1か月ごとに提出)
  • 会社が指定する医師への受診命令の根拠規定
  • 診断書の内容が不十分な場合の再提出要求権

これらが整備されることで、担当者が属人的な判断をする必要がなくなり、従業員間の公平性も確保されます。

主治医との情報連携をルール化する

厚生労働省の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」では、主治医・産業医・会社の三者連携を推奨しています。主治医に対して「診療情報提供書」を依頼することで(本人の書面同意が必須)、就労可否に関するより詳細な情報を得られる場合があります。

これをルールとして定着させるには、休職申請時の初動フローに「主治医への情報提供依頼」を組み込むことが効果的です。初めて休職申請が出た時点で本人の同意を取得し、主治医・会社・産業医の情報共有ルートを確立しておくことで、後手に回る対応を防げます。

担当者が迷わないためのチェックリストとフローの整備

ルールは整備しても、現場で使われなければ意味がありません。特に専任人事がいない中小企業では、担当者が「どうすればいいかわからない」状況に陥りがちです。診断書受領時に使える確認チェックリスト、疑義が生じた際のエスカレーションフロー、偽造が判明した場合の対応フローチャートの3点を整えておくことで、担当者が落ち着いて対応できる体制が整います。

実際に支援先企業でチェックリストを導入した後、「感覚で判断していた部分が明確になり、従業員へ毅然と対応できるようになった」という声は少なくありません。ツールの整備は、担当者の心理的負担の軽減にも直結します。

小規模企業が今すぐできる3つのアクション

現状の就業規則の診断書関連条項を確認する

まず最初に行うべきは、現在の就業規則に休職・診断書に関する条項がどこまで整備されているかを確認することです。多くの中小企業では、「休職期間は最大3か月」という記載はあっても、診断書の様式・記載要件・有効期限については一切触れられていないケースがほとんどです。現状を把握することが整備の出発点です。

診断書受領の社内ルールをA4一枚で可視化する

次に、受領時の確認事項をA4一枚のチェックリストとして可視化することをお勧めします。法律の条文を読む必要はありません。「発行日の確認」「病院名の実在確認」「休職期間の明示があるか」といった実務的なポイントを箇条書きにするだけで、担当者の対応が格段に安定します。

外部の専門家に「診断書対応」の相談をしてみる

診断書の真偽確認や休職対応には、労務・法律・医療の複合的な知識が求められます。一人で抱え込まず、社会保険労務士や産業医、弁護士といった外部専門家に相談することで、法的リスクを回避しながら適切な対応が取れるようになります。特に「偽造の疑いがある」「すでに休職が長期化している」といったケースでは、早期の専門家介入が解決を早めます。

まとめ

診断書の偽造に対応するには、疑わしい場面を見逃さない目を持つこと、医療機関への確認方法と法的根拠を理解すること、そして受領ルールをあらかじめ整備しておくことの三つが欠かせません。特に専任人事がいない中小企業では、「都度対応」の限界が早期に訪れます。就業規則への明記、チェックリストの整備、外部専門家との連携という土台を整えることで、担当者の負担を減らしながら適切な対応が取れるようになります。

ウェルセンス株式会社では、診断書受領ルールの整備から休職・復職対応の仕組みづくりまで、20〜50名規模の企業に寄り添った支援を行っています。「うちの会社の状況だとどうすればいいか」と感じたら、まずは気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 会社が医療機関に電話で診断書の真偽を確認することは、法律上問題ありませんか?

A. 「この診断書は貴院が発行したものですか」という発行事実の確認を行うこと自体は、直ちに違法とはなりません。ただし、個人情報保護法や医師の守秘義務の観点から、病状の詳細まで開示を求めることは適切ではありません。また、問い合わせ前に本人から書面による同意を得ておくことが、法的リスクを避けるうえで重要です。医療機関によって対応が異なるため、同意書を持参・提示してから確認するフローが実務上の標準です。

Q. 診断書の偽造が発覚した場合、すぐに解雇できますか?

A. 偽造が確認されれば懲戒解雇の根拠になり得ますが、就業規則に「不正行為」「詐欺的行為」に関する懲戒条項が明記されていることが前提条件です。また、本人への事実確認と弁明の機会の付与といった適正手続きを踏まないと、後から解雇が無効とされるリスクがあります。証拠の保全→本人確認→専門家への相談→処分判断の順で進めることをお勧めします。

Q. 従業員が50名未満で産業医がいない場合でも、会社側で診断書の内容を検討できますか?

A. 50名未満の事業場には産業医の選任義務はありませんが、外部産業医と任意で契約することは可能です。外部産業医に診断書の内容についての意見を求めることで、主治医の判断を鵜呑みにするだけでない二重確認の体制が整えられます。また、社会保険労務士や弁護士への相談も有効な選択肢です。専任人事がいない中小企業こそ、外部専門家との連携が重要になります。

Q. 診断書の記載が「加療を要する」だけで休職期間の記載がない場合、受け取り拒否できますか?

A. 就業規則に「休職に必要な診断書の記載要件」を明記していれば、記載が不十分な診断書に対して再提出を求めることができます。記載要件が規程にない場合でも、「休職期間の判断ができないため、期間を明記した書類を再度提出してほしい」と本人に依頼することは合理的な対応です。一方的な受け取り拒否はトラブルになり得るため、あくまで「補完資料の提出依頼」という形をとることが適切です。

Q. 診断書の受領ルールを整備するには、就業規則の変更が必要ですか?

A. 正式に「会社として求める診断書の要件」を定めるには、就業規則や付属の休職規程への明記が最も確実です。ただし、就業規則の変更手続き(従業員への意見聴取・労働基準監督署への届け出)が必要になります。短期的な対応としては、「社内ガイドライン」や「休職申請時の案内書」を整備する方法もあります。いずれにせよ、ルールを文書化して従業員に周知することが、トラブル防止の第一歩です。

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【監修】ウェルセンス株式会社
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