「診断書を受け取ったけど、次に何をすればいいのかわからない」——そんな不安を抱えたまま、とりあえず休んでもらっている状況になっていませんか?専任の人事担当者がいない中小企業では、休職対応のマニュアルがなく、担当者が一人で抱え込んでしまうケースは珍しくありません。
この記事では、休職診断書を受け取った直後にやるべき手続きを、実務の流れに沿ってわかりやすく解説します。手続きを正しい順序で進めることが、従業員と会社の双方を守ることにつながります。
診断書を受け取ったらまず内容を確認する
確認すべき3つの記載項目
休職診断書は医師が発行する意見書であり、会社は原則として受理しなければなりません。受け取り拒否は違法リスクを伴うため、まずは内容を落ち着いて確認することが大切です。
確認するポイントは大きく3つあります。
一つ目は「休職が必要とされる期間の目安」です。「3ヶ月の加療が必要」などと記載されていることが多く、この期間が社内の休職制度と整合しているかを後の手順で照合します。
二つ目は「就労の可否」です。完全な就労不能なのか、軽作業なら可能なのかによって、休職命令の内容が変わります。
三つ目は「傷病名の記載の有無」です。傷病名が書かれていない診断書もありますが、傷病手当金の申請では健康保険組合側が確認するため、会社として病名を無理に聞き出す必要はありません。
診断書は「会社の判断」の起点にすぎない
注意が必要なのは、診断書はあくまで医師の意見であり、「休職命令を出すかどうか」は会社の判断権限の範囲内という点です。ただし、就労不能と判断された従業員を無理に働かせた場合、労務管理上の重大なリスクが生じます。診断書の内容を踏まえ、速やかに次のステップへ進みましょう。
就業規則の休職規定を確認・整備する
規定がない場合の深刻なリスク
診断書を受け取った段階で、多くの中小企業が直面するのが「そもそも休職制度が就業規則に明記されていない」という問題です。休職規定がない状態で従業員を休職させようとすると、「自然退職」や「解雇」と紙一重の状況になり、労働トラブルに発展するリスクがあります。
就業規則に休職制度を設ける場合、最低限以下の5項目を明記する必要があります。
- 休職事由(どのような場合に休職できるか)
- 休職期間の上限(最長何日間休職可能か)
- 休職中の賃金・社会保険の取り扱い
- 復職の条件(医師の診断など)
- 休職期間満了時の取り扱い(復職か退職か)
20〜50名規模の企業でも、これらが曖昧なままになっているケースは非常に多く見られます。
休職期間の設定は慎重に
診断書に「3ヶ月の加療が必要」と記載されていても、会社として認める休職期間をどう設定するかは別の問題です。一般的には、勤続年数に応じて休職期間の上限を変える設計が多く、たとえば「勤続3年未満は3ヶ月、3年以上は6ヶ月」といった運用が見られます。
期間の設定が合理的でない場合、復職後のトラブルにつながることもあるため、専門家への相談も視野に入れて検討することをお勧めします。
本人との初回面談を適切に進める
聞いていいこと・いけないことの線引き
診断書受領後、できるだけ早めに本人と面談の場を設けます。このとき多くの担当者が悩むのが「どこまで聞いていいのか」という点です。
病名や治療の詳細は「要配慮個人情報」(個人情報保護法第2条第3項)に該当するため、業務上必要がない場合は取得を控えるべきです。
一方で、以下の情報は手続きを進める上で必要なため、本人の同意を得た上で確認して構いません。
- 休職開始を希望する日程
- 休職前に年次有給休暇を充当したいかどうか
- 傷病手当金申請に関する意向
- 休職中の連絡先と連絡頻度の希望
これらは業務上の必要性が明確であり、プライバシーの侵害にはあたりません。
面談の記録を必ず残す
面談の内容は、後のトラブル防止のために書面または記録として残すことが不可欠です。録音する場合は本人に事前に伝えることが望ましいです。
特に「有給休暇の充当を本人が希望したかどうか」は後々争点になりやすい項目のため、書面での確認を強くお勧めします。強制的に有給休暇を充当させることは労働基準法第39条に違反するため、必ず本人の意思確認を行ってください。
休職辞令と休職通知書を発行する
口頭対応では後のトラブルリスクが高まる
休職の開始にあたっては、「休職辞令」または「休職通知書」を書面で発行することが不可欠です。口頭だけで休職を認めてしまうと、休職期間の起算日や条件についての認識が双方でずれ、後になって「そんな話はしていない」というトラブルになるケースがあります。
休職通知書には、以下の項目を明記します。
- 休職開始日
- 休職期間の上限
- 休職中の賃金の取り扱い
- 社会保険料の本人負担分の支払い方法
- 連絡ルール
- 復職の手続きについての概要
これが後の傷病手当金申請や復職面談でも参照される基準書類になります。
休職期間の延長ルールも明記する
診断書の記載期間が終了しても回復しない場合に備え、「医師の診断書を提出することで更新が可能」といった延長ルールも通知書内に記載しておくと、運用がスムーズになります。延長の上限は就業規則の規定と整合させることが重要です。
給与・社会保険の手続きを正確に進める
傷病手当金の仕組みと会社の役割
休職中に従業員が受け取れる主な経済的保障が「傷病手当金」です。傷病手当金は健康保険の給付であり、申請主体は従業員本人ですが、会社は「事業主記入欄」に証明を行う義務があります。この証明が遅れると、従業員の受給が遅れることになります。
傷病手当金の支給条件を整理しておきます。
- 業務外の傷病であること
- 療養のために働けない状態であること
- 連続3日間の待期期間(この3日間は支給対象外)を経た4日目から支給が始まる
- 支給期間は支給開始日から通算1年6ヶ月(2022年1月法改正後の現行ルール)
- 支給額は標準報酬日額の約3分の2
申請は1ヶ月ごとに行うのが一般的ですが、遡及申請も可能です。
給与処理と社会保険料の立替対応
休職中の給与は、就業規則の規定に基づき「無給」とするケースがほとんどです。ただし、本人が有給休暇の充当を希望した期間については、通常通りの給与支払いが発生します。
無給処理が始まった月からは給与明細上で社会保険料の個人負担分が発生するため、会社が一時的に立て替えて本人に後日請求する「立替・後払い方式」か、銀行振込で毎月請求するかを事前に取り決めておく必要があります。この取り決めも書面で明確にしておきましょう。
休職中の連絡ルールと業務引き継ぎを整備する
連絡頻度と手段を書面で合意する
休職中に会社から従業員へ頻繁に連絡を入れることは、回復の妨げになる場合があります。一方で、全く連絡を取らないと手続き上の問題が生じることもあります。
一般的には「月1回程度、メールやLINEなどの非同期ツールで現状報告を受ける」という形が、従業員の負担を最小限にしながら状況を把握できる方法として有効です。
連絡ルールは休職通知書と同じタイミングで書面化し、双方が確認・署名する形をとると理想的です。「連絡がないから様子を見に行く」という行動は、場合によってはハラスメントと受け取られるリスクもあるため、ルール外の接触は控えましょう。
職場の業務引き継ぎと周囲への説明方法
当該従業員の業務については、職場のリーダーと協力して速やかに引き継ぎ計画を作成します。その際、休職の理由(特に病名)を他の社員に開示することは個人情報の観点から問題があります。
「体調不良で一定期間休むことになった」という最小限の説明にとどめ、詳細は開示しないのが原則です。
現場リーダーには「詮索しない・噂を広げない」よう事前に伝えておくことも、職場環境の維持には有効です。このような対応を積み重ねることが、休職後の職場復帰をスムーズにする土台になります。
まとめ
休職診断書を受け取った後の初動対応は、以下の流れで進めることが基本です。
- 診断書の内容確認
- 就業規則の確認・整備
- 本人との初回面談
- 休職通知書の発行
- 給与・社会保険の手続き
- 傷病手当金の案内
- 連絡ルールと業務引き継ぎの整備
これらを正しい順序で進めることが、従業員の回復を支えながら会社を法的リスクから守ることにつながります。
ただし、専任人事がいない中小企業では「わかっていても、いざとなると判断が難しい」という場面が多く出てきます。ウェルセンス株式会社では、休職初動対応のサポートから就業規則の整備、傷病手当金の手続き支援まで、実務に即した形でお手伝いしています。「うちのケースはどう対応すればいい?」という段階のご相談も歓迎しています。まずはお気軽にお声がけください。
よくある質問
社会保険労務士・産業カウンセラーと連携し、中小・成長企業の人事課題に向き合う実務ノウハウをお届けします。

