メンタル不調の面談記録、何をどう残せばいい?

メンタル不調の面談記録、何をどう残せばいい? メンタルヘルス対応
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「面談はしている。でも、何をどう記録すればいいのかわからない」——メンタル不調を抱える社員と向き合うたびに、そんな不安を感じていませんか。記録を残さなければいけないとはわかっていても、具体的な書き方や保管方法となると手が止まってしまう。専任人事がいない職場では、なおさらです。この記事では、安全配慮義務の観点から「何を・どの粒度で・どう残すか」を実務的に解説します。

面談記録が「証拠」になる条件

面談を実施したという事実の記録だけでは、安全配慮義務を果たした証拠にはなりません。裁判所が評価するのは「面談で何を確認し、何を判断し、どう対応したか」というプロセス全体です。

「面談した」と「適切に対応した」は別物

よくある落とし穴が、「面談を実施した」という記録と「適切な対応をした」という記録を混同してしまうことです。たとえば面談記録に「体調について話し合いました」とだけ書かれていた場合、面談を「した」ことは証明できても、何を確認してどう動いたかは一切証明できません。労働契約法第5条が定める安全配慮義務は、不調のサインを把握し、措置を講じ、その後も継続してフォローするという一連のプロセスを会社が履行したかどうかを問うものです。記録はそのプロセスをすべてカバーして初めて機能します。

裁判実務で問われるプロセス

メンタル不調に関する訴訟では、会社が以下の3段階を「した・しなかった」が主な争点になります。

  • 把握義務:不調のサインを認識できる状況にあったか
  • 措置義務:認識した後に業務軽減・受診勧奨など適切な対応をとったか
  • 継続確認義務:措置後の状況を継続的にフォローしたか

面談記録はこの3段階すべてに対応する内容を含んでいなければなりません。「把握した」記録はあるが「その後どう動いたか」が残っていない、というケースは非常に多く見られます。

記録の「作成タイミング」も評価される

面談後できるだけ早く、遅くとも翌営業日中には記録を作成する習慣をつけてください。後日まとめて作成した記録は、争訟の場で「都合よく書いたのではないか」と評価が下がるリスクがあります。日付・時刻の正確な記載と、作成した日付(面談日と作成日が異なる場合は両方)を残しておくことも重要です。

メンタル不調 面談記録に含める最低限の項目

面談記録に必ず含めるべき項目は、大きく6つのカテゴリに整理できます。このカテゴリを押さえていれば、専任人事がいなくても実務的に機能する記録を作ることができます。

6つのカテゴリと記載内容

カテゴリ 記載すべき内容
基本情報 面談日時・場所・参加者(氏名と役職)
確認した事実 本人が話した症状・業務状況・睡眠・食欲など
会社側の判断 把握した内容に対してどう評価・判断したか
対応・指示内容 本人に何を伝えたか、何を約束したか
次のアクション 次回面談の予定、受診勧奨の有無、業務調整の内容
本人確認 内容を本人に確認したか(可能であれば署名欄を設ける)

受診勧奨の記録は特に丁寧に残す

上の表の中でも、受診勧奨に関する記録は特に重要です。「いつ・どのような方法で・受診を勧めたか」「本人はどう反応したか」を具体的に書いてください。この記録がないと、会社が不調を認識していなかった、または認識しても何もしなかったとみなされるリスクがあります。たとえば「〇月〇日の面談で、睡眠障害が続いていることを踏まえ、心療内科への受診を勧奨。本人は『考えてみる』と回答」というように、事実ベースで残します。

「個人情報だから詳しく書かない」は逆効果

プライバシーへの配慮から記録を曖昧にしてしまう担当者は少なくありません。しかし、詳しく書かないことで安全配慮義務の履行を証明できなくなり、会社のリスクがかえって高まります。記録は閲覧権限を限定した上で適切に管理することで、プライバシー保護と証拠としての機能を両立できます。「書き方を丁寧にする」ことと「管理を厳格にする」ことはセットで考えてください。

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上司の1on1メモと人事面談記録を混同しない

上司が日常的につける1on1のメモと、人事担当者が行う面談記録は、目的も書き方も保管方法もまったく別物として扱う必要があります。この区別ができていないと、後日トラブルの原因になります。

1on1メモが「証拠」として機能しないケース

上司が1on1でメンバーの様子を気にかけ、メモを残しているケースは多いですが、そこには上司個人の感情的な評価や主観が混在していることがあります。「最近元気がなさそう」「ちょっと心配」といった表現は、個人的な観察であって、会社として把握・判断・対応したことの証明にはなりません。むしろ、こうしたメモが後から「会社は不調を知っていたはずだ」という主張の根拠として使われるリスクもあります。

人事面談記録が担う役割

人事面談の記録は、会社として公式に状況を把握し、対応を判断したという証拠書類です。作成者は人事担当者または経営者とし、記録には会社としての判断・対応内容を明示してください。上司から「最近〇〇さんの様子が心配だ」という報告を受けて面談を設定した場合も、面談記録の中に「上司からの報告を受けて面談を実施した」と経緯を書いておくと、把握義務を果たしていることの流れが明確になります。

初回相談なら外部の専門家に判断してもらうことも選択肢です。記録の書き方から対応の適切さまで、プロの視点でアドバイスを受けるだけで安心感が変わります。

記録の保管方法と閲覧権限の設定

どれだけ丁寧に記録を作っても、保管ルールが整っていなければ実務での継続と法的な信頼性の両方が担保できません。小規模企業であっても、最低限のルールを決めておくことが重要です。

紙とデジタル、それぞれの注意点

紙で管理する場合は、施錠できるキャビネットに保管し、閲覧できる人を人事担当者・役員など必要最小限に限定してください。一般の業務書類と混在させないことが原則です。デジタルで管理する場合は、アクセス権限の設定とバックアップ体制が必要です。クラウドストレージを使う場合も、フォルダごとに権限を設定し、面談記録フォルダは担当者のみ閲覧可能にしてください。

保存期間の目安

面談記録の保存期間については法定義務の定めがありません。ただし、民事上の損害賠償請求権との関係から、実務上は在職中および退職後3年から5年程度を目安にする意見が多く見られます。なお、健康診断結果については労働安全衛生法により5年間の保存義務が定められており、面談記録もこれに準じた期間を確保しておくと安心です。

担当者交代時の引き継ぎルール

小規模企業でよくある問題が、担当者が異動・退職したときに記録が引き継がれないことです。面談記録は個人の持ち物ではなく会社の管理資料であることを明確にし、保管場所とアクセス方法を複数の担当者が把握できるようにしておきましょう。引き継ぎチェックリストに「メンタル面談記録の所在確認」を含めることも有効です。

自社の状況に応じた記録対応の判断基準

記録体制の整え方は、企業規模や産業医・就業規則の有無によって変わります。自社の状況に合わせた対応レベルを確認しておきましょう。

産業医が選任されていない場合(50名未満の企業)

労働安全衛生法上、産業医の選任義務は常時50名以上の事業場に生じます。50名未満の場合、産業医との連携は義務ではありませんが、メンタル不調対応の記録においては、社内判断だけでなく外部の専門家(かかりつけ医・産業保健総合支援センター等)への相談経緯も記録しておくと、会社が専門的な判断を踏まえて対応したことの補強になります。地域の産業保健総合支援センターは無料で利用できます。

就業規則に休職規定がない場合

就業規則に休職や復職の規定がない場合、メンタル不調対応の流れそのものが曖昧になりやすく、記録の基準も定まりません。面談記録の書式を整備するタイミングで、就業規則の整備も合わせて検討することをお勧めします。就業規則があることで「会社としての対応ルール」が明確になり、記録の内容も自然と整います。

様式テンプレートを自作する場合の最低ライン

厚生労働省は「メンタルヘルス対策に関する各種ガイドライン」を公開しており、参考になる情報が掲載されています。ただし、そのまま使えるシンプルな面談記録様式が用意されているわけではないため、前述の6つのカテゴリをもとに自社でシンプルなA4一枚のフォームを作ることが現実的です。最初から完璧なものを作ろうとするより、まず使い始めて運用しながら改善する姿勢の方が定着しやすいです。

まとめ

メンタル不調の面談記録において重要なのは、「面談を実施した」事実だけでなく、「何を確認し・どう判断し・何を対応したか」というプロセス全体を残すことです。記録には基本情報・確認した事実・会社の判断・対応内容・次のアクション・本人確認の6項目を盛り込み、面談後できるだけ早く作成する習慣が安全配慮義務の履行証明につながります。保管は閲覧権限を限定し、担当者交代時の引き継ぎルールまで含めて整備しておきましょう。

「記録の書き方は何となくわかったけれど、自社の対応全体が適切かどうか自信がない」という場合や、「人事対応を一人で判断するのは心配」という方は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。面談記録の様式づくりから、休職・復職対応の流れ整備まで、専任人事がいない中小企業の実情に合わせてサポートします。初回相談からスタートしていただけますので、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 面談記録は必ず紙で残す必要がありますか?

A. 紙でなければならないという法的な定めはありません。デジタルでの保存も有効ですが、アクセス権限の設定・バックアップ体制・作成日時の記録が明確に管理されていることが重要です。クラウドストレージの場合はフォルダごとに閲覧権限を設定し、担当者以外がアクセスできない状態にしてください。

Q. 社員本人が記録の開示を求めてきた場合、見せなければいけませんか?

A. 個人情報保護法上、本人は自己の個人情報の開示を請求する権利を持っています。面談記録に本人の個人情報が含まれる場合、原則として開示に応じる必要があります。ただし、第三者(上司や同僚)の情報が含まれる部分はマスキングする対応が一般的です。開示請求への対応ルールを事前に整備しておくと安心です。

Q. 面談記録は何年間保存しておけばいいですか?

A. 面談記録の保存期間を定めた法律上の規定はありません。実務上は、民事上の損害賠償請求権の消滅時効との関係から、在職中および退職後3年から5年程度を目安にする意見が多く見られます。トラブルの可能性が高かった事案については、より長期の保存を検討してください。

Q. 社員が面談を拒否した場合でも、記録を残すべきですか?

A. はい、面談を打診したこと、本人が拒否したこと、その後どう対応したかを記録しておくことが重要です。会社が働きかけを行ったにもかかわらず本人が拒否したという事実は、会社側の対応努力を示す証拠になります。拒否の経緯・日時・対応内容を記録し、その後も継続的に状況を確認した記録と合わせて保管してください。

Q. 厚生労働省が公開している面談記録のテンプレートはありますか?

A. 厚生労働省はメンタルヘルス対策に関する各種ガイドラインや資料を公開していますが、すぐに使えるシンプルな面談記録様式が単独で用意されているわけではありません。本記事で紹介した6つのカテゴリ(基本情報・確認した事実・会社の判断・対応内容・次のアクション・本人確認)をもとに、A4一枚程度のシンプルな自社フォームを作ることが現実的な対応です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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