「診断書が届いた。でも、これから復職までに面談を何回やればいいんだろう?」——専任の人事担当者がいない職場では、こんな疑問をひとりで抱えながら対応を進めることになりがちです。回数が少なすぎて再休職を招いてしまうのも怖い。かといって頻繁に呼び出して「監視されている」と感じさせたくない。法律に「何回やれ」という決まりもなく、手探りのまま復職日を迎えてしまうケースは少なくありません。この記事では、復職受け入れ面談の回数・タイミング・参加者の役割分担を、20〜50名規模の企業の実情に合わせて整理します。
「何回やればいい?」に答える前に知っておくこと
復職面談の回数に法的な義務はありません。ただし、労働契約法第5条に定める安全配慮義務の観点から、適切な状態確認を怠ると使用者責任を問われるリスクがあります。回数の「正解」はなくとも、「やらなかったこと」は後から問われます。
面談の目的を整理する
復職面談には大きく二つの目的があります。ひとつは「この職場・この業務に今の状態で戻れるかを判断すること」、もうひとつは「本人と会社が復職の条件・進め方を合意すること」です。この二つが混在したまま「とりあえず話した」だけでは、面談を重ねても機能しません。各回の面談に「何を決めるか」をあらかじめ設定しておくことが、回数の設計より先に必要なステップです。
診断書は「面談の起点」であって「終点」ではない
主治医から「復職可」の診断書が届いたとき、「これで復職させてOK」と判断してしまう経営者・担当者は少なくありません。しかし主治医の診断書はあくまで「医療的な観点で就労可能な状態にある」という判断であり、「その職場の、その業務量で、その人間関係のなかでやっていけるか」を保証するものではありません。診断書が届いてからが復職受け入れ面談設計の出発点です。
厚労省の「5ステップモデル」を参照する
厚生労働省が公表している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下「復職支援手引き」)は、復職支援を5段階のステップで整理しています。面談はおもに「第3ステップ(職場復帰の可否判断と復帰支援プランの作成)」「第4ステップ(最終的な職場復帰の決定)」に位置づけられています。この手引きは無料で入手できるため、社内の対応フローを整備するうえでの参考資料として活用してください。
復職受け入れ面談:最低でも3回の構成が実務上の目安
復職決定から初出勤までの間に設ける復職受け入れ面談は、実務上「最低2〜3回」が目安とされています。それぞれの面談に異なる目的を持たせることで、回数を重ねても本人への負担を最小限に抑えられます。
復職可否の判断面談(診断書受領後すぐ)
診断書を受け取ったタイミングで、まず人事担当者(または経営者)が本人と面談します。この場では「診断書の内容を共有し、主治医の意見をどう会社として受け止めるか」を確認します。本人の状態・生活リズム・通院状況・本人自身の復職意欲を把握し、復職を進めるかどうかの社内判断材料を集める場です。まだ「復職決定」の場ではなく、あくまで「判断のための情報収集」です。
復職条件の合意面談(復職予定日の2〜4週間前)
復職を進めることが社内で決まったら、直属上司も交えた三者面談(本人・上司・人事)を行います。この面談で決めるべき主な内容は、業務の範囲・残業の制限・通院のための中抜けの扱い・勤務時間の調整(時短勤務の可否)などです。ここで合意した内容は必ず文書化し、後述する「面談メモ+確認メール」の形で残しておくことが重要です。
最終確認面談(復職の1週間前前後)
初出勤の約1週間前に、直前の状態確認と当日の段取りを確認する場を設けます。「通勤練習はできているか」「睡眠は取れているか」「不安な点はあるか」といった点を短時間で確認し、職場の受け入れ態勢(チームへの周知内容・座席・業務量)を本人に伝えます。産業医が選任されている場合(従業員50名以上の企業が対象)はここで同席を依頼するのが理想ですが、50名未満で産業医不在の場合は人事・上司の二者で進めて問題ありません。
面談の参加者と役割分担
「全部自分でやるしかないのか」という不安をよく耳にします。参加者の組み合わせは面談のフェーズによって変えることが基本です。小規模企業では兼務が避けられませんが、「誰が何を担うか」を意識するだけで面談の質が変わります。
フェーズ別の参加者の目安
| 面談フェーズ | 参加推奨者 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 復職可否の判断面談 | 人事(経営者)・本人 | 状態確認・情報収集・社内判断材料の整理 |
| 復職条件の合意面談 | 人事・直属上司・本人 | 業務範囲・勤務形態の合意・文書化 |
| 最終確認面談 | 人事・直属上司・本人(+産業医が可能なら) | 直前状態確認・当日の受け入れ段取りの共有 |
上司の役割と「中立性」の問題
20〜50名規模の職場では、面談参加者が「経営者と本人だけ」になってしまうことがあります。このとき、経営者が業務の判断者・評価者・相談相手を兼ねると、本人が本音を話しにくい状況になりがちです。可能であれば、外部の支援機関(産業カウンセラー・社会保険労務士・EAP事業者など)をフォロー役に加えることで、中立的な場をつくりやすくなります。
産業医がいない場合の対応
労働安全衛生法第13条により、産業医の選任義務があるのは常時50名以上の事業場です。50名未満の企業は選任義務がなく、産業医なしで復職判断を進めるケースが多くなります。この場合、主治医への情報提供依頼書(同意書取得のうえで)や、地域産業保健センター(無料相談窓口)の活用が実務上の代替手段になります。「産業医がいないから何もできない」ではなく、「どの外部リソースを使うか」で考えると対応の幅が広がります。
復職後フォロー面談:再休職を防ぐ「観察点」を設ける
面談は初出勤で終わりではありません。復職後のフォロー面談を計画に組み込むことが、再休職リスクを下げる最も現実的な手段です。
フォロー面談のタイミングの目安
復職後は、まず復職から1週間以内に短時間の状態確認を行います。「通勤はできているか」「睡眠に変化はないか」「業務量は重くないか」という3点を確認するだけで十分です。次に復職から1か月後に少し踏み込んだ面談を行い、業務の負荷感・職場の人間関係・通院継続状況を確認します。さらに3か月後に、復職条件の見直し(業務範囲の拡大可否など)を検討する面談を設定すると、段階的に通常業務へ移行するプロセスが明確になります。
面談記録を残す習慣をつける
復職後フォロー面談で特に重要なのが「記録」です。面談を実施しても議事録や合意内容が文書化されていないと、後に「そんな条件で合意した覚えはない」という認識の齟齬が生じます。また、万が一再休職・紛争に発展した際に、安全配慮義務を履行していたことを証明できません。形式は簡易なもので構いません。面談後に「今日確認した内容」をまとめたメールを本人に送るだけでも、記録としての機能を果たします。
「監視」ではなく「伴走」として設計する
面談の頻度が高すぎると、本人が「信用されていない」「試されている」と感じることがあります。逆に間隔が空きすぎると「放置された」と感じるケースもあります。面談の冒頭に「定期的に確認することで、あなたのペースに合わせて調整しやすくするための場です」と伝えるだけで、本人の受け取り方が変わります。面談の「目的」を明示することが、回数や頻度と同じくらい重要です。
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よくある失敗と対策
復職受け入れ面談を設計・実施する際に、小規模企業ほど陥りやすい落とし穴があります。事前に把握しておくことで、対応の質が変わります。
面談を「形式的にこなすだけ」にしない
「一応やりました」で終わる面談は、本人にも会社にも意味をなしません。各回の面談前に「今日この面談で決めること・確認すること」を1〜2項目に絞ってアジェンダを設定し、終了後に合意事項をメールで共有するという流れを標準化することで、面談の実効性が高まります。
就業規則に復職手続きが書かれていない場合
就業規則に復職の手続き・基準・面談のフローが明記されていないと、ケースごとに対応がバラバラになります。今後の対応を標準化するためにも、「復職支援規程」または就業規則の附則として復職フローを文書化しておくことを検討してください。これは次の社員が同様の状況になったときの引き継ぎ資料にもなります。
主治医との連携を活かす
主治医から診断書と併せて「職場への意見書」をもらえるケースがあります。本人の同意を得たうえで、主治医宛に「情報提供依頼書」を送付し、業務負荷・勤務時間・職場環境について意見をもらう方法があります。主治医の意見を復職受け入れ面談に反映することで、会社の判断に医療的な裏付けが加わり、本人・会社双方の安心感につながります。
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まとめ
復職受け入れ面談の回数に法律上の決まりはありませんが、「判断面談・条件合意面談・最終確認面談」の3回構成が実務上の目安です。さらに復職後1週間・1か月・3か月のフォロー面談を計画に組み込むことで、再休職リスクを大きく下げることができます。参加者は面談のフェーズによって変え、記録を必ず残す習慣をつけることが、安全配慮義務の履行と本人との信頼関係の両方を守ることにつながります。
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よくある質問
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