業務委託は偽装請負になっていない?

業務委託は偽装請負になっていない? 労務管理
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「業務委託契約を結んでいるから大丈夫」と思っていませんか?実は、契約書の名称よりも日々の業務の実態が問われます。気づかないうちに「偽装請負」の状態になっており、ある日突然、受託者から労働基準監督署に申告される——そんなリスクが、専任人事のいない中小企業ほど高まっています。この記事では、偽装請負の判断基準と見直しポイントをわかりやすく解説します。

「業務委託契約だから問題ない」は大きな誤解

契約書の名称より「実態」が判断される

多くの経営者が「業務委託契約書を交わしているから労働者ではない」と考えています。しかし、労働基準監督署や裁判所は、契約書の名称ではなく、働き方の実態をもとに「労働者かどうか」を判断します。どれだけ丁寧に契約書を整備していても、日常の業務指示や時間管理の実態が雇用関係に近ければ、「労働者」と認定されるリスクがあります。

偽装請負とは何か

偽装請負とは、契約形式は「業務委託(請負・委任)」でありながら、実態として発注者(会社側)が受託者(フリーランス・個人事業主など)に対して直接、指揮命令を行っている状態のことです。法的には労働者派遣法が定める適正な請負・派遣の区別に違反するとされ、職業安定法(労働者供給事業の禁止)にも抵触しうる重大な問題です。

「コスト削減のために業務委託を活用している」という企業は多いですが、社会保険料や採用コストを節約できる一方で、実態が伴っていなければ後に多額のペナルティを受けるリスクがあることを理解しておく必要があります。

中小企業で特に起きやすい理由

専任の人事担当者がいない中小企業では、ネットで入手したひな型契約書をそのまま使い続けているケースが多く見られます。また、経営者自身が現場の業務に深く関わるため、気づかないうちにフリーランスの方へ細かな指示を出してしまいがちです。「仲良くやっているから問題ない」という感覚的な判断が、法的リスクを見えにくくしています。

偽装請負かどうかを判断する5つの基準

指揮命令関係があるかどうか(最重要)

最も重く見られるのが「指揮命令関係」の有無です。具体的には、次のような状態が該当します。

  • 「今日はこの作業をやってください」と発注者が直接、具体的な業務指示を出している
  • 毎日決まった時間に出社させている、または勤務時間を指定している
  • 作業手順や使用ツールを会社側が一方的に決めている

SlackやLINEで「今日中に〇〇お願い」と日常的に送っている場合、それ自体が指揮命令の証拠として残ります。チャットツールでのやりとりも「指揮命令」に該当しうるため、注意が必要です。

時間・場所の拘束があるかどうか

業務委託では本来、受託者は自分の裁量で働く時間や場所を決められるはずです。しかし実態として、「毎日9時〜18時でうちのオフィスに来てもらっている」「テレワーク中でも始業・終業の連絡を求めている」という状況は、雇用関係に近いと判断されます。場所・時間の両方または片方に拘束がある場合は要注意です。

報酬の性質と事業者性の有無

報酬が「成果物に対する対価」ではなく「働いた時間・日数に対して発生する」形になっている場合も、労働者性が高いと見なされます。たとえば「月20日稼働で月30万円」という取り決めは、実質的に時給換算に近く、雇用関係に類似していると判断されやすいです。

また、受託者が自分の設備やツールを持って仕事をしているか、他の複数の発注者とも取引しているかといった「事業者としての独立性」も重要な判断材料になります。専属状態(御社の仕事しかしていない)が長期間続いている場合は、特にリスクが高まります。

雇用認定されたとき、どんな損害が発生するか

未払い残業代・社会保険料の遡及請求

雇用認定が下された場合、過去にさかのぼって労働基準法上の義務が適用されます。具体的には、残業代・深夜割増賃金・有給休暇の未払い分を最大3年分請求される可能性があります(2020年の法改正により消滅時効が延長)。さらに、健康保険・厚生年金の事業主負担分も最大2年分遡って追徴されます。

たとえば、月30万円で2年間業務委託していた方が雇用認定を受けた場合、社会保険料の追徴だけで数十万円単位になることも珍しくありません。複数名の業務委託者がいる企業では、連鎖的に見直しを迫られるリスクもあります。

労災・損害賠償リスク

業務委託として扱っている間は労災保険が適用されません。もし受託者が業務中に怪我をした場合、会社が損害賠償責任を問われるリスクがあります。「業務委託だから会社に責任はない」と考えていても、実態が雇用関係に近ければ、裁判所は会社側の責任を認める判断を下すことがあります。

行政指導・フリーランス保護新法への対応

労働基準監督署による是正勧告を受けた場合、対応が遅れたり悪質と見なされると書類送検・公表につながるケースもあります。また、2024年11月に施行されたフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、報酬の不当な減額や契約内容の書面不交付が規制対象となりました。ひな型契約書を使い続けている企業は、この新法への対応も含めて早急な見直しが必要です。

今すぐ確認すべき「偽装請負」チェックポイント

契約書と実態を照らし合わせる

まず最初に、現在の業務委託契約書を手元に出し、実際の業務の進め方と照らし合わせてみてください。次のような乖離がある場合は要注意です。

  • 契約書には「成果物の納品」と書いてあるが、実態は毎日タスクを指示している
  • 「業務の進め方は受託者に委ねる」と書いてあるが、実際には手順書やマニュアルを指定している
  • 契約書に勤務場所の規定がないが、毎日自社オフィスに来させている

契約書と実態の乖離が大きいほど、偽装請負リスクは高まります。

日常的なコミュニケーションを見直す

次に、SlackやLINE、メールでの日々のやりとりを振り返ってみてください。「今日中にこれをやってください」「明日の朝までに対応して」といった指示が日常的に飛び交っている場合、それが指揮命令の証拠として問題視されることがあります。

適法な業務委託の形に整えるには、「成果物・納期・品質基準を事前に合意した上で、進め方は受託者に任せる」というコミュニケーション設計が必要です。

専属性・継続期間を確認する

同じ受託者と長期間・専属で取引を続けている場合は、労働者性が高まっている可能性があります。「3年以上、ほぼ毎月発注している」「他の仕事をしている様子がない」という状態であれば、契約内容の見直しまたは雇用への切り替えを検討するタイミングかもしれません。

偽装請負リスクを解消するための実務的な対応

契約書を実態に合わせて整備する

ネットで入手したひな型をそのまま使っている場合は、現在の業務の実態に合わせて契約書を書き直す必要があります。具体的には、成果物の定義・納期・報酬の根拠(時間ではなく成果ベース)・業務の独立性(進め方は受託者が決める)などを明記します。また、フリーランス保護新法の施行に伴い、契約内容の書面交付も義務化されています。書面なしでの口頭発注は、それ自体が違反になりえます。

業務フローと指示の出し方を変える

契約書を整えるだけでなく、日常業務のやりとり自体も見直す必要があります。業務委託者への依頼は「何を・いつまでに・どのクオリティで」という成果ベースで行い、「どうやるか」は受託者の裁量に委ねる形が基本です。毎日の進捗管理や細かな指示は、指揮命令と見なされやすいため、週次の確認ミーティングや納品時のフィードバックに切り替えることが有効です。

雇用への切り替えを検討するケースを見極める

実態として雇用関係に近い場合は、無理に業務委託を維持しようとするよりも、正社員またはパート・アルバイトとして雇用に切り替える方がリスクを抑えられる場合があります。「コストが増える」というジレンマはありますが、雇用認定後に遡及請求された場合の損害と比較すれば、早めの対応の方が合理的です。受託者との関係を維持しながら、双方が納得できる形で移行交渉することも十分可能です。

まとめ

業務委託契約は、適切に運用すれば会社・受託者双方にメリットのある働き方です。しかし、契約書の名称だけでは法的リスクを回避できません。日々の指示の出し方・時間管理・報酬の設計・専属性といった「実態」が問われる以上、現在の契約と業務フローを定期的に見直すことが不可欠です。

「うちの契約は大丈夫なのか判断できない」「契約書を見直したいが何から手をつければいいかわからない」という場合は、ぜひ一度、ウェルセンス株式会社にご相談ください。専任人事がいない中小企業の実情に合わせて、実務的な視点からサポートいたします。まずは気軽なご相談から、現状のリスクを一緒に整理しましょう。

よくある質問

Q. チャットで業務の進捗確認をするだけでも「指揮命令」になりますか?

A. 成果物の進捗を確認するだけであれば、直ちに指揮命令とは判断されません。ただし、「今日は〇〇の作業を優先してください」「この手順でやってください」といった具体的な作業指示が含まれる場合は、指揮命令と見なされるリスクがあります。やりとりの内容と頻度を意識することが重要です。

Q. 長年お付き合いのある業務委託の方がいます。今から契約を見直すのは難しいですか?

A. 難しくはありません。まず現在の契約書と実態のズレを整理し、必要に応じて契約書の更新・業務フローの調整・雇用への切り替え検討という順で対応できます。相手方との信頼関係がある分、丁寧に説明すれば合意形成はしやすいケースも多いです。一人で判断せず、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

Q. 受託者が個人事業主として開業届を出していれば、雇用認定されないですか?

A. 開業届の有無は、雇用認定の判断においてほとんど影響しません。繰り返しになりますが、判断されるのはあくまで「実態」です。開業届を持つ個人事業主であっても、指揮命令・時間拘束・専属性などの実態が認められれば、労働者と判断される可能性があります。

Q. フリーランス保護新法(2024年11月施行)で、具体的に何が変わりましたか?

A. フリーランス保護新法では、主に以下の点が義務化・規制されました。契約内容(業務の内容・報酬額・支払期日など)を書面またはメール等で明示すること、報酬の支払期日を納品から60日以内とすること、不当な報酬の減額や契約解除の禁止などです。口頭での発注や曖昧な契約条件のまま業務委託を続けている場合は、早急に対応が必要です。

Q. 業務委託者から突然、労働基準監督署に申告された場合、どう対応すればよいですか?

A. まず慌てず、申告の内容と根拠を正確に把握することが先決です。労働基準監督署から調査が入る場合は、契約書・業務指示の記録・報酬の支払い実績などを整理して対応します。自社だけで判断・対応しようとすると事態が悪化することがあるため、社労士や弁護士への相談を早めに行うことを強くおすすめします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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