複数社員が同時に不調のとき会社がすべき4つの対応手順

複数社員が同時に不調のとき会社がすべき4つの対応手順 休職・復職対応
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「Aさんの休職手続きがやっと動き出したと思ったら、今度はBさんが毎朝遅刻するようになった。どこから手をつければいいのか、もう頭が真っ白です」——そういった状況に、突然放り込まれた経験はありませんか。

複数の社員が同時に不調を示すとき、対応する側の判断負荷は単純に2倍になるわけではありません。「誰を優先するか」「これは組織の問題か」「自分ひとりで抱えていいのか」という問いが同時に押し寄せ、結果的にどの対応も後手に回ってしまいます。

この記事では、複数社員の同時不調という緊急事態において、会社(経営者・兼務人事担当者)がとるべき対応手順を実務の優先順位にそって整理します。専任人事がいない20〜50名規模の企業でも、今日から動ける具体的な行動指針をお伝えします。

状況を「見える化」して全体像を把握する

複数の不調が重なったとき、まず最初にすべきことは「今、何人が、どの状態にいるのか」を紙一枚に書き出して把握することです。頭の中だけで情報を抱えると、判断基準がぶれ、優先順位が感情的になります。

情報を一覧化して「トリアージ」の判断軸を持つ

医療現場のトリアージ(緊急度による選別)と同じ考え方が、複数社員への対応にも有効です。以下の表を参考に、各社員の状況を簡単に書き出してみてください。

確認項目 休職申請者 不調サインがある社員
診断書の有無 あり/なし 未確認
就労継続の可否 主治医が判断 本人・上司の観察が必要
緊急度 高(手続き優先) 中〜高(早期声かけが必要)
直近のアクション 休職手続きを最短で進める 非評価的な面談を設ける

「直列対応」の罠に気づく

「Aさんの休職手続きが終わってからBさんに対応しよう」という直列対応は、一見すると合理的に見えますが、複数不調の場面では危険な先送りになります。休職申請者の手続きが完了するまでに数週間かかることもあり、その間にBさんの状態が悪化すれば、連鎖休職のリスクが現実になります。二本立ての並行対応を、最初から前提として組み立ててください。

記録を「今日から」残す

面談した日時・話した内容・そのときの判断理由を、メモやメールで残してください。これは後々、労働契約法第5条が定める安全配慮義務を尽くしたことの証跡になります。「気づいていたのに何もしなかった」という評価を避けるためにも、記録は初動から習慣化することが重要です。

休職申請者への対応を速やかに完結させる

診断書が出ている社員については、手続きの「宙吊り状態」を最短で解消することが最優先です。手続きが長引くほど、本人の不安が増し、会社側の法的リスクも高まります。

就業規則の確認から始める

休職・復職の手続きは、法律で一律に定められたルールがなく、各社の就業規則に基づきます。就業規則がない、または内容があいまいな場合は、手続きの根拠が不明確になり、後々トラブルの原因になります。まず就業規則を確認し、休職期間の上限・給与の扱い・復職の判断基準が明記されているかを確認してください。

就業規則が整備されていない場合は、今回の対応と並行して社労士に相談し、最低限の雛形を整えることを強くお勧めします。

本人・主治医・会社の三者の情報を整理する

休職開始にあたって確認すべき事項は次のとおりです。

  • 診断書に記載された「休養期間の目安」と「就労可否の判断」
  • 傷病手当金申請が必要かどうか(健康保険に加入していれば通常対象)
  • 業務の引き継ぎ先と引き継ぎ期間の確認
  • 休職中の連絡方法と頻度(本人の回復を妨げない範囲で設定)

これらを整理しておくことで、担当者が変わっても対応が継続できます。

産業医の有無で対応が変わる

産業医が選任されている場合(常時50人以上の事業場では義務)は、主治医の診断書と産業医の意見書を照合した上で休職・復職の可否を判断することが実務の標準です。50人未満の企業で産業医がいない場合は、主治医の診断書を基本としながら、必要に応じて外部の産業医サービスや産業保健総合支援センターに相談する体制をつくっておくと安心です。

不調サインのある社員に「早期に」声をかける

不調サインが見える社員への早期アクションは、連鎖休職を防ぐ上でもっとも効果的な手段です。「何を言えばいいかわからない」という不安は、声かけの目的を「診断」ではなく「傾聴」に切り替えることで解消できます。

声かけは「評価しない」ことが原則

不調サインのある社員への最初の声かけは、「仕事の評価」や「原因の追及」ではなく、「心配していることを伝える」場として設計してください。たとえば「最近しんどそうに見えたので心配していました。少し話せますか?」という言葉は、相手に評価や詮索のプレッシャーを与えず、安心して話せる入口になります。

この場面で「なぜそうなったのか」「いつから?」と原因究明を急ぐと、社員が防衛的になり、本当のことを話さなくなります。まず聴く、が鉄則です。

緊急度を判断するサインを知っておく

以下のサインが複数見られる場合は、緊急度が高く、産業医や外部の相談窓口(EAP:従業員支援プログラム)へのつなぎを早急に検討してください。

  • 無断欠勤・遅刻が増え、連絡が取れない時間帯がある
  • 表情が乏しく、会話のキャッチボールが極端に少なくなった
  • ミスが急増し、本人が「もうどうでもいい」という言動を見せる
  • 「消えたい」「もう限界」といった言葉が出た場合は即日対応が必要

面談後は必ず記録し、次のアクションを決める

声かけ面談の後は、話した内容の概要・社員の様子・次回の確認日をメモに残してください。「話を聴いた」で終わらせず、「次に何をするか」を担当者の中で明確にしておくことが、継続的なサポートにつながります。

「組織的問題かどうか」を多角的に見極める

複数の社員が同時に不調になったとき、「これは組織の問題なのか、個人の事情が重なっただけなのか」を見極めることが、根本的な対策につながります。ただし、特定の人物を即座に「原因」と決めつける前に、複数の視点から事実を確認することが不可欠です。

三つの軸で事実を確認する

組織的問題かどうかを判断するための確認軸は次の三点です。

  • 所属の一致:不調を抱える社員が同じチーム・同じ部署に集中していないか
  • 業務負荷の集中:特定のプロジェクトや繁忙期に時期が重なっていないか
  • 人間関係の共通点:同じ上司・同じ業務フロー上に複数の不調者がいないか

この三軸をすべて確認した上で、「組織的問題の可能性が高い」と判断した場合に初めて、環境改善・ハラスメント調査・業務負荷の見直しといった対策に移ります。

上司を「問い詰める」前に考えること

複数の不調が同じ上司のチームで発生している場合でも、その上司を即座に「原因」と見なして詰問するのは危険です。その上司自身が過大な業務負荷やプレッシャーのもとでバーンアウト寸前である可能性があります。「あなたの下で何人も不調になっている」という責め方は、上司まで休職に追い込む最悪の連鎖を引き起こしかねません。上司にも「最近チームの状況はどうですか」という傾聴ファーストのアプローチで話を聴く機会を設けてください。

パワーハラスメント防止措置義務との関係

労働施策総合推進法第30条の2に基づくパワーハラスメント防止措置義務は、2022年4月から中小企業にも適用されています。複数の不調の背景に特定の上司との関係が疑われる場合、「様子を見る」という判断は法的にも実務的にも許容されません。社内で客観的な事実確認(ヒアリング・記録の確認)を行い、必要であれば外部の専門家(社労士・弁護士)に調査設計を依頼してください。

連鎖休職を防ぐために残存社員への配慮を設計する

休職者が出た後、最大のリスクは「残った社員への負荷集中による連鎖休職」です。20〜50名規模の企業では、1人の休職でも他のメンバーへの影響が大きく、この段階での配慮が組織の持続性を左右します。

業務の再分配を「見える化」して合意する

休職者の業務を誰かが引き受けるとき、「なんとなく頼む」のではなく、担当範囲・期間・対価(残業手当や評価への反映)を明確にして合意することが大切です。曖昧なまま負担を押しつけると、引き受けた側が「自分だけが損をしている」という不満を蓄積し、次の不調者になるリスクが高まります。

1on1や声かけを「制度として」組み込む

不調の早期発見には、上司と部下の定期的な1on1(週次または隔週)が有効です。ただし20〜50名規模では「制度として決めないと誰もやらない」という現実があります。「月に1回、全員と15分話す」というシンプルなルールを設けるだけで、早期発見のアンテナが機能し始めます。特に残存社員に対しては、休職者発生後の1〜2週間以内に必ず声かけの機会を設けてください。

対応する側(担当者自身)のセルフケアを忘れない

複数社員の不調対応に追われる経営者・兼務担当者は、自分自身も相当のストレス下にあります。「自分が弱音を言える立場ではない」という思い込みから限界を超えて対応し続けると、判断力が低下し、対応の質が落ちます。「自分も助けを求めていい」という認識を持ち、信頼できる社外の専門家や経営者コミュニティに状況を話す機会を意識的につくってください。

まとめ

複数社員が同時に不調を示す状況は、対応する側に「誰を優先するか」「これは組織の問題か」「自分の限界はどこか」という問いを一度に突きつけます。この記事でお伝えした対応の流れを改めて整理すると、まず全体像を一覧化してトリアージの軸を持つこと、次に休職申請者の手続きを速やかに完結させながら並行して不調サインのある社員に早期の声かけを行うこと、そして複数不調の背景を多角的に確認して組織的問題かどうかを判断すること、最後に残存社員と対応する自分自身へのケアを設計することが重要です。

「どこから手をつければいいかわからない」という状態こそ、専門家の力を借りるべきタイミングです。ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・兼務担当者が直面するメンタルヘルス対応・休職復職支援・人事労務の課題を、実務に即した形でサポートしています。複数社員の同時不調に直面した際の判断基準の整理、不調サインへの対応方法、組織的問題の有無判断など、この記事で取り上げた各段階でのご相談をお受けしています。「うちの状況はどうすればいいのか」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 休職申請者の対応と不調サイン社員への声かけは、本当に同時並行でできますか?

A. できます。休職申請者への対応は「書類の準備・主治医との確認・業務引き継ぎの段取り」という手続き作業が中心なので、隙間時間に不調サイン社員への15分程度の声かけ面談を入れることは十分に可能です。「完璧に対応してから次へ」という発想を捨て、「どちらも動かし続ける」という意識の切り替えが重要です。

Q. 「組織的な問題がある」と判断した場合、まず何をすべきですか?

A. まず「事実の確認」から始めてください。不調者が同じチームに集中しているか、同じ上司のもとにいるか、業務負荷の集中はないか、という三軸で情報を集めます。その後、関係者へのヒアリング(詰問でなく傾聴のスタンスで)を行い、ハラスメントの可能性があれば社労士や弁護士に調査設計を依頼します。憶測や感情で動く前に、事実確認を徹底することが対応の信頼性を高めます。

Q. 産業医がいない50人未満の企業では、誰に相談すればいいですか?

A. 各都道府県に設置されている「産業保健総合支援センター」では、産業医や保健師への無料相談ができます。また、外部のEAP(従業員支援プログラム)サービスや、メンタルヘルスに詳しい社労士・コンサルティング会社に相談する方法もあります。ウェルセンス株式会社でも、産業医なし・専任人事なしの企業向けの支援を行っています。具体的な対応方法やサービス内容についてのご質問も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. 不調サインのある社員に声をかけて「余計なお世話だ」と思われませんか?

A. 声かけの入り方を「評価・詮索」でなく「心配している」という姿勢に徹すれば、ほとんどの場合、本人にとってマイナスにはなりません。「最近しんどそうに見えたので声をかけました。もし話せることがあれば聞きます」という一言は、たとえ本人がその場で何も話さなくても、「会社は気にかけてくれている」という安心感として機能します。逆に、気づきながら何もしないほうが、後で「見捨てられた」という不信感につながるリスクがあります。

Q. 就業規則に休職に関する規定がない場合、どうすればいいですか?

A. 休職制度は法律で義務付けられたものではなく、就業規則がなければ原則として会社に休職を認める義務はありません。ただし、診断書が出ている社員を就業規則なしのまま対応すると、「解雇か在籍か」の判断が法的にグレーになりトラブルの原因になります。今回の案件への対応と並行して、社労士に依頼して最低限の休職・復職規定を盛り込んだ就業規則を整備することを強くお勧めします。ウェルセンス株式会社でも、就業規則整備と同時進行で対応する企業をサポートした実績があります。

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【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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