急成長期に古参社員が壊れる3つの兆候と対策

急成長期に古参社員が壊れる3つの兆候と対策 メンタルヘルス対応
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「採用がうまくいって、組織が大きくなってきた。なのに、なぜか昔からいるメンバーの様子がおかしい」——そう感じたことのある経営者は少なくないはずです。新しいメンバーが増え、会社が活気づいているはずのタイミングに、むしろ会社の根幹を支えてきた古参社員がメンタル不調に陥る。この「逆説的な現象」は、急成長期の組織において非常によく起こります。専任人事がいない中で、どうすれば早期に兆候をつかみ、手を打てるのか。本記事では、そのメカニズムと具体的な対策を解説します。

なぜ急成長期に古参社員が不調になるのか

急成長期に古参社員が不調に陥るのは、組織拡大が彼らにとって「大切なものを奪われる体験」になりやすいからです。経営者にとっては喜ばしい成長も、古参社員の目線では別の意味を持ちます。

「リソースを失う」という心理的ダメージ

心理学者ホッボルが提唱した「リソース保存理論(COR理論)」によれば、人は職場における重要なリソース——役割、関係性、日常のルーティン、自己効力感、承認——を失うときに強いストレスを感じます。組織の急拡大は、新しいメンバーにとっては「機会の獲得」ですが、古参社員にとっては「これまで築いてきた職場内の存在意義・ポジション・人間関係」の喪失体験になりやすいのです。

「変化の速さ」が適応を困難にする

急成長期は意思決定のスピードが上がり、組織構造・評価制度・業務プロセスが短期間に変わります。新しいメンバーはその環境に「入社時から適応している」のに対し、古参社員は「かつての状態」を知っているぶん、変化のギャップをより強く感じます。「前はこうじゃなかった」「自分の居場所がなくなってきた」という感覚は、じわじわとモチベーションとメンタルを蝕んでいきます。

「古参だから大丈夫」という思い込みの危険性

採用・育成・新規事業にリソースが集中する急成長期、経営陣の目は自然と「新しいメンバーや課題」に向きます。「あの人は長くいるから安心」「頼りになるベテランだから問題ない」という無意識の思い込みが、古参社員への関心を構造的に後回しにします。当の本人も「自分が弱音を吐いてはいけない」という責任感から、SOSを出しにくい状態にあります。

見逃しやすい3つの兆候

古参社員のメンタル不調は、突然の休職申請として表面化することが多く、その時点ではすでに深刻な状態になっています。早期に気づくために、次の3つの兆候を知っておきましょう。

言動の「引き算」が起きている

不調の初期段階では、派手な問題行動より「何かが減っていく」変化として現れます。たとえば、会議での発言が急に減った、雑談に加わらなくなった、以前はよく出していた改善提案がなくなった、といったサインです。「最近おとなしいな」で済ませがちですが、これは心理的エネルギーが枯渇し始めているサインである場合があります。特に、もともと発言が多く積極的だった社員にこの変化が現れたときは注意が必要です。

仕事の質やスピードが「説明のつかない形」で落ちる

「最近あの人の仕事が遅い」「細かいミスが増えた」という変化を、単純なパフォーマンス問題として扱ってしまうと、対応を誤るリスクがあります。メンタル不調による認知機能の低下(集中力・判断力・記憶力の低下)は、業務の質やスピードに如実に現れます。業務量が変わっていないのに成果が落ちている場合や、以前はできていたことに手間取っている場合は、能力や意欲の問題ではなく、心理的負荷の蓄積を疑うべきサインです。

新参メンバーや会社の変化への「冷めた態度」

新しく入ったメンバーや新制度に対して、表面上は穏やかでも、どこか冷めた・距離を置くような態度が見られるようになる。これも重要なサインです。「どうせ自分たちの意見は通らない」「もう前の会社じゃない」という諦めや疎外感が、言葉や態度の端々ににじみ出てきます。「馴染もうとしていないだけ」と見過ごすのではなく、心理的な孤立が進んでいないか確認する必要があります。

兆候の見分け方と経営者が判断すべきポイント

「業務上の問題」なのか「メンタルヘルスの問題」なのかを正確に見極めることが、適切な対応への第一歩です。以下の観点で整理すると、自社の状況に当てはめやすくなります。

変化の「きっかけ」と「期間」を確認する

まず確認したいのは、変化がいつ頃から始まり、何がきっかけだったかです。組織変更・新しい上司の着任・評価制度の変更・大型採用などのタイミングと変化が重なっている場合、それが心理的負荷のトリガーになっている可能性が高いです。また、変化が2週間以上継続している場合は、一時的な気分の落ち込みではなく、継続的なストレス状態と捉えるべきです。

自社の状況別・判断の目安

確認ポイント 「業務課題」として扱う場合 「メンタルヘルス課題」として扱う場合
変化の始まり 特定のプロジェクト・業務上の失敗がきっかけ 組織変更・カルチャー変化のタイミングと重なる
変化の範囲 特定の業務・タスクのみ 仕事全般・プライベートの様子にも波及
本人の反応 指摘すると改善への意欲を示す 指摘しても「すみません」だけで変化なし・謝罪のみ繰り返す
身体的サイン 特になし 遅刻・体調不良による早退・顔色が悪い

「気になる」と感じたら早めに1on1の場を設ける

判断がつかない場合は、まず1対1で話す機会をつくることが最善です。「最近どうですか?」という漠然とした問いかけではなく、「最近の組織の変化について、率直にどう感じているか聞かせてほしい」という具体的な問いかけが効果的です。古参社員ほど「弱みを見せてはいけない」という意識が強いため、経営者・上司側から積極的に場を設けることが重要です。

判断がつかない場合こそ、専門家への相談が有効です。兆候の見分けに迷ったときは、早期段階での外部相談が後の対応を大きく左右します。

専任人事なしでできる予防的対策

大企業のような専門部署や産業医体制がなくても、急成長期の古参社員を守る仕組みをつくることは可能です。ポイントは「仕組み化」と「変化の伝え方」の2点です。

定期的な1on1を「義務」として組み込む

厚生労働省のメンタルヘルス指針では、「ラインによるケア(上司・経営者による関与)」が中小企業において最も現実的かつ重要な対策として位置づけられています。月1回・30分程度の1on1を全社員に対して定期的に行う仕組みをつくるだけで、早期発見の確率は大きく上がります。特に古参社員については、経営者または直属の上長が直接関わる機会を意識的に設けてください。

組織変更・制度変更の「伝え方」を変える

「決定事項の通知」として一方的に変化を伝えるのか、「背景の説明・意見を聴く場の設置・移行期間の確保」というプロセスを踏むのかで、古参社員の受け取り方は大きく変わります。特に古参社員は「会社の方向性を一緒に作ってきた」という意識が強いため、変化の意思決定プロセスに「関与した感覚」を持てるかどうかが重要です。たとえ結果が同じでも、「相談してもらえた」という体験がストレスを緩和します。

安全配慮義務として認識する

労働契約法第5条に定められた安全配慮義務は、メンタルヘルスにも適用されます。組織変化によるストレスがメンタル不調・休職につながった場合、「急成長期で忙しかった」「知らなかった」は免責理由になりません。20~50名規模の会社でも、組織変更に際して古参社員への配慮措置(1on1の実施、変化の説明、相談窓口の設置など)を取ったかどうかが、後に問題が生じた際の判断基準になります。「善意」ではなく「義務」として捉えることが、経営者として正しいスタンスです。

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兆候が出てしまったときの初動対応

兆候を見つけた後、最初の対応を誤ると状況を悪化させるリスクがあります。初動では「評価より傾聴」を優先することが基本です。

「業績の話」を先にしない

メンタル不調の兆候が見られる社員に対して、「最近仕事が遅いけど、どうしたの?」という切り出し方は避けてください。本人が「責められている」と感じ、かえって心を閉じてしまいます。まず「最近の職場環境についてどう感じているか」「変化への戸惑いはないか」など、環境や感情に焦点を当てた問いかけから始めましょう。

産業医・外部相談窓口へのつなぎ方を準備する

従業員数50人未満の事業場では産業医の選任は義務ではありませんが、外部の相談窓口(EAP:従業員支援プログラムや社外相談窓口)を設けておくことは有効です。経営者・上司が「聴く役割」を担いながら、必要であれば専門家につなげる導線を事前に整えておくことで、問題が深刻化する前に対処できます。就業規則に休職・復職の規定がない場合は、この機会に整備しておくことも重要な備えです。

「本人の意向」を尊重したペースで進める

不調のサインが見られても、本人が「大丈夫です」と言っている間は強引に介入することは逆効果になる場合があります。「いつでも相談できる」という安心感を繰り返し伝え、定期的な関わりを続けることが重要です。「見守っている」というメッセージを継続的に送ることが、本人が自分でSOSを出せるタイミングをつくります。

休職に進む前に、専門家との連携が後々の対応を円滑にします。複雑な対応や判断に迷ったときは、人事労務と心身の両面からサポートする外部専門家の活用が現実的です。

まとめ

急成長期に古参社員がメンタル不調に陥るのは、組織拡大が彼らにとって「大切なリソースを失う体験」になりやすいからです。兆候は「言動の引き算」「業務の質・スピードの低下」「変化への冷めた態度」として現れますが、いずれも見過ごされやすいサインです。専任人事がいない環境でも、定期的な1on1の仕組み化・組織変更の伝え方の工夫・安全配慮義務の認識という3点を整えるだけで、予防的な対処は十分に可能です。

もし「うちの会社でも同じことが起きているかもしれない」と感じたら、あるいは「すでに気になる社員がいるが、人事対応に不安がある」という方は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。急成長期の組織課題・メンタルヘルス対応・休職復職支援を専門とする私たちが、御社の規模・体制に合った現実的なサポートをご提案します。経営者の判断だけでなく、専門家のサポートを活用することで、古参社員の心身を守り、組織全体の安定性を高めることができます。まずはお気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 古参社員が「大丈夫です」と言っているので、様子を見ていていいですか?

A. 「大丈夫」という言葉を額面通りに受け取るのは危険です。古参社員ほど会社への責任感や「弱みを見せてはいけない」という意識が強く、不調を抱えていても自分から言い出せないケースが非常に多いです。「大丈夫」と言われても定期的な1on1を続け、「いつでも相談できる」という雰囲気を維持することが重要です。変化のサインが継続して見られる場合は、本人の申告に頼らず専門家への相談も検討してください。

Q. 従業員が30名程度で産業医もいません。どこから手をつければいいですか?

A. まずは月1回・全社員対象の1on1を仕組みとして導入することをおすすめします。産業医が選任義務の対象となるのは従業員50人以上の事業場ですが、それ以下の規模でも労働安全衛生法に基づくメンタルヘルスへの配慮は事業主の努力義務です。外部の相談窓口(EAPサービスや社労士・専門家との顧問契約)を活用し、「経営者・上司が聴く→必要なら外部専門家につなぐ」という流れを整えるだけでも対応力は大きく変わります。

Q. 新しく着任した上司(外部採用の管理職)と古参社員の関係が悪化しています。どう対処すればいいですか?

A. 「新参上司が古参部下を管理する」という構造は、急成長期の組織で非常に多く発生するトラブルの温床です。パワハラ防止法(労働施策総合推進法)は中小企業にも2022年4月から適用義務化されており、管理職のマネジメント不足がハラスメントに発展するリスクがあります。新任管理職へのマネジメント研修・1on1の実施義務化・経営者が定期的に古参社員の声を直接聞く機会の設置、といった複合的な対応が有効です。関係悪化が深刻な場合は、早めに外部専門家への相談をおすすめします。

Q. 古参社員がメンタル不調で休職した場合、どんな対応が必要ですか?

A. 休職に至った場合、まず就業規則に休職・復職に関する規定があるかを確認してください。規定がない場合は、休職期間・復職の条件・満了後の扱いなどが曖昧になり、トラブルの原因になります。休職中は定期的な状況確認(過度な接触は避けながら月1回程度)と、復職に向けた段階的な準備(試し出勤制度など)が重要です。復職後の業務内容・環境の調整が不十分だと再休職リスクが高まります。対応に不安がある場合は、専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。

Q. メンタル不調の兆候がある社員に、業績評価や指導を行っていい時期はいつですか?

A. メンタル不調の兆候が見られる時期の業績指摘・強い指導は、状態を悪化させるリスクが高いため慎重に判断してください。まず「心身の状態を整えること」を優先し、専門家(医師・カウンセラー)の関与を経て状態が安定してから、段階的に業務・評価の話に戻るのが基本的な流れです。「今は業績より健康を優先する」という姿勢を本人に伝えることが、信頼関係の維持と早期回復にもつながります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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