介護休暇の規定がなくて困ったら最初にすべき対応

介護休暇の規定がなくて困ったら最初にすべき対応 コンプライアンス
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「介護で休むと言ってきたけど、就業規則には何も書いていない。どう対応すればいいんだろう」——中小企業の経営者や兼務人事担当者から、こうした相談が増えています。少子高齢化が進む中、家族の介護を抱える従業員は今後さらに増えていきます。規定がないまま対応を続けると、後から法的リスクが生じることもあります。この記事では、就業規則に介護休暇の規定がない状態で突発的な欠勤が繰り返されているとき、最初に何をすべきかを実務ベースで解説します。

「規定がないから認めなくていい」は法律上通じない

就業規則に介護休暇の規定がなくても、育児・介護休業法に基づく権利は従業員に自動的に発生します。「うちには規定がないので」という理由で休暇申請を断ることは、法律違反になる可能性があります。

法律の権利は就業規則より優先される

介護休暇・介護休業は、育児・介護休業法によって定められた法定の権利です。会社が就業規則に記載しているかどうかにかかわらず、対象要件を満たす従業員には取得する権利があります。就業規則の不備は「会社が対応しなくてもよい理由」にはならず、むしろ行政指導や是正勧告を受けるリスクを高めることにつながります。

欠勤扱いにすることのリスク

介護を理由とした欠勤が繰り返されている場合、その欠勤が法定の介護休暇に該当する可能性があります。従業員が制度を知らずに「欠勤」として届け出ていたとしても、会社が適切な制度案内をしていなかった点でリスクが生じます。また、欠勤扱いとして皆勤手当を不支給にするなどの不利益を与えると、育児・介護休業法第16条の10が禁じる「介護を理由とした不利益取扱い」に該当しうります。

就業規則の整備義務について

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準法第89条により、就業規則に休暇・休業に関する事項を記載し、労働基準監督署へ届け出る義務があります。10人未満の事業場であっても、育児・介護休業法の定める制度は適用されます。自社の従業員数を確認し、届出義務の有無を把握しておきましょう。

介護休暇と介護休業の違いを正確に把握する

現場で混乱しやすい「介護休暇」と「介護休業」は、目的・日数・申請方法がまったく異なります。突発的な欠勤が繰り返されているケースでは、多くの場合「介護休暇」の問題として対応することになります。

介護休暇:短期・突発的な休みに対応する制度

介護休暇は、通院の付き添いや急な体調変化への対応など、日常的・突発的な介護ニーズに対応するための制度です。付与日数は、介護が必要な対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日です。2021年の法改正以降、時間単位での取得も可能になっています。当日や前日の申出であっても、原則として認める方向で運用する必要があります。賃金については法律上は無給でかまいませんが、会社が有給と定めることも可能です。

介護休業:長期にわたる介護のための制度

介護休業は、要介護状態にある対象家族を介護するために、まとまった期間休業できる制度です。対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できます。申出は原則として開始予定日の2週間前までに書面等で行います。賃金は法律上無給でよく、雇用保険から介護休業給付金(休業前賃金の67%相当)が支給されます。有期雇用の従業員も一定の要件を満たせば取得できます。

介護休暇と介護休業の比較

項目 介護休暇 介護休業
目的 短期・突発的な介護対応 長期にわたる介護
日数 年5日(対象家族2人以上で年10日) 通算93日(3回まで分割)
申請タイミング 当日・前日でも原則可 原則として2週間前まで
賃金 法律上は無給(会社判断で有給も可) 法律上は無給(雇用保険給付あり)
時間単位取得 可能 不可

今すぐ取るべき対応:規定がないときの緊急対処法

就業規則が未整備でも、目の前の欠勤に対応しなければなりません。まず従業員と対話して状況を把握し、法律に基づいた休暇として適切に処理することが最優先です。

従業員との面談で状況を確認する

まず最初に、従業員と落ち着いて話せる場を設けましょう。確認すべきポイントは次の通りです。介護が必要な家族は誰か(配偶者・父母・子など対象家族の範囲に含まれるか)、介護の状態はどの程度か(要介護状態かどうか)、今後も同様の休みが発生する見込みはあるか、の3点です。この情報をもとに、介護休暇・介護休業のどちらに該当するかを判断します。なお、対象家族の範囲は育児・介護休業法で定められており、配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫が含まれます。

過去の欠勤を遡って再処理することを検討する

これまで「欠勤」として処理してきた休みが、実際には介護休暇に該当するケースもあります。会社が制度案内をしていなかった場合、従業員が知らずに欠勤申請をしていた可能性があります。遡って介護休暇として処理し直すことが望ましいケースもあります。皆勤手当の不支給など、欠勤扱いによる不利益が生じていた場合は特に注意が必要です。対応に迷う場合は、社会保険労務士に相談することをお勧めします。

対応の記録を必ず残す

規定がない状態での対応は、担当者によってバラつきが生じやすく、後から「あの人には認めたのに」という不平等取扱いの主張を招くリスクがあります。誰がいつどのような理由でどう対応したかを記録に残すことが重要です。面談の記録、休暇申請の内容、会社の対応内容を書面で保管する習慣をつけましょう。記録は後々の労務トラブルを防ぐ最大の防衛策です。

介護休暇の対応に不安がある場合は、社会保険労務士や人事労務の専門家に相談することで、法的リスクを未然に防ぐことができます。

介護を理由とした突発欠勤が繰り返されるとき、会社はどこまで対応が求められるか

法定の介護休暇・介護休業の付与義務を果たしたうえで、業務への影響が大きい場合には、適切な範囲で業務調整や話し合いを行うことは会社の権限として認められます。ただし、介護を理由にした懲戒・解雇は非常に高いリスクを伴います。

法定日数を超えた欠勤への対応

介護休暇の法定付与日数(年5日または10日)を超えた欠勤については、会社のルールに基づいて対応できます。有給休暇の取得を促す、欠勤控除を行う、業務体制の見直しを話し合うなどの対応が考えられます。ただし、この場合も「介護を行う従業員であるから」という理由で不利益な扱いをすることは禁じられています。対応の根拠を明確にし、他の従業員との公平性を保つことが重要です。

懲戒・解雇を検討することの危険性

「欠勤が多いから懲戒・解雇を検討できる」と考えるのは非常に危険です。介護を理由とした欠勤が法定の介護休暇・介護休業の範囲内であれば、それを理由とした解雇は無効となる可能性が高く、不当解雇として訴訟リスクが生じます。また、会社が制度案内をしていなかった状況で懲戒を行うことは、行政指導の対象になりうります。「業務への影響が大きい」と感じる場合でも、まず業務体制の見直しや配置転換の可能性を探ることが先決です。

周囲の従業員への配慮も同時に行う

介護中の従業員をフォローする周囲の従業員の負担が増えることも、会社として対処すべき課題です。「言えない雰囲気」のまま放置すると、フォロー担当者が疲弊し、別の離職リスクが生まれます。業務の再分配、一時的な業務委託、応援体制の整備など、組織全体で対応する姿勢を示すことが、長期的な職場環境の維持につながります。

就業規則への介護休暇規定の追加:整備のポイント

緊急対応が落ち着いたら、就業規則への介護休暇・介護休業規定の整備に着手することが不可欠です。規定を作ることで、会社・従業員双方にとって対応の基準が明確になります。

規定に盛り込むべき最低限の内容

就業規則に介護休暇・介護休業を規定する際、育児・介護休業法の定める内容を下回ることはできません。最低限盛り込むべき内容は次の通りです。対象者の要件(雇用形態・勤続年数など)、付与日数と取得単位(時間単位取得を認めるか等)、申請手続きの方法と期限、賃金の取扱い(無給か有給か)、職場復帰後の処遇についての考え方、です。厚生労働省が公表している「育児・介護休業等に関する規則の規定例」を活用すると、規定作成の出発点として役立ちます。

従業員数による対応の違い

従業員数によって、就業規則に関する義務の範囲が異なります。常時10人以上の労働者を使用している場合は、就業規則の作成・届出が法律上義務です。10人未満の場合は届出義務はありませんが、育児・介護休業法の適用は受けます。規定を文書化しておくことで、対応の一貫性が保たれ、従業員への説明もスムーズになります。従業員数にかかわらず、対応ルールを文書として整備することを強くお勧めします。

整備のタイミングと優先度

「今すぐ完璧な規定を作らなければ」と身構える必要はありません。まず当面の対応ルール(申請方法・賃金処理の方針など)を社内メモや覚書として文書化し、その後社会保険労務士と相談しながら正式な就業規則に落とし込む、という2段階のアプローチが現実的です。専任人事のいない中小企業では、完璧を目指すより「対応の根拠を文書に残す」ことを優先しましょう。

まとめ

就業規則に介護休暇の規定がなくても、育児・介護休業法に基づく権利は従業員に自動的に発生します。「規定がないから認めなくていい」という対応は法律上通じず、むしろ不利益取扱いや行政指導のリスクを高めます。突発的な欠勤が繰り返されているときは、まず従業員と面談して状況を把握し、法定制度に照らして適切に処理することが最初の一歩です。対応の記録を残しながら、並行して就業規則の整備を進めることが、会社と従業員双方を守ることにつながります。

人事の課題を一人で抱えず、気軽に相談できるパートナーを持つことで、判断の質が大きく変わります。ウェルセンス株式会社では、介護休暇の対応から就業規則整備まで、実務に即したサポートを行っています。

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よくある質問

Q. 就業規則に介護休暇の規定がない場合、従業員からの申請を断ることはできますか?

A. 原則としてできません。育児・介護休業法に基づく介護休暇・介護休業の権利は、就業規則への記載の有無にかかわらず発生します。「規定がないから」という理由での拒否は法律違反となる可能性があり、行政指導の対象になりえます。まず法律に従った対応を行いながら、並行して規定の整備を進めることが重要です。

Q. 介護休暇と介護休業はどう違いますか?どちらを使うべきですか?

A. 介護休暇は通院付き添いや急な体調変化への対応など、短期・突発的な休みに使う制度で、年5日(対象家族2人以上は年10日)が付与されます。介護休業は、まとまった期間介護に専念するための制度で、通算93日まで取得できます。突発的な欠勤が繰り返されている場合は、多くのケースで介護休暇が該当します。どちらを使うべきかは、介護の状況や期間の見込みによって異なりますので、まず従業員と状況を確認することをお勧めします。

Q. 介護休暇中の賃金は支払わなければなりませんか?

A. 法律上、介護休暇中の賃金は無給でも違法ではありません。ただし、会社が有給と定めることも可能です。無給とする場合は、就業規則にその旨を明記しておく必要があります。なお、介護休業については雇用保険から介護休業給付金(休業前賃金の67%相当)が支給される仕組みがありますが、介護休暇に対する同様の給付制度は現時点ではありません。

Q. 介護を理由に欠勤が多い従業員を解雇・懲戒することはできますか?

A. 非常に慎重な対応が必要です。欠勤が法定の介護休暇・介護休業の範囲内であれば、それを理由とした解雇は無効となる可能性が高く、育児・介護休業法が禁じる不利益取扱いに該当しうます。また、会社が制度案内を行っていなかった状況での懲戒は、さらにリスクが高まります。業務への影響が大きい場合でも、まず業務体制の見直しや配置転換の可能性を検討し、専門家に相談することを強くお勧めします。

Q. 従業員数が10人未満でも介護休暇の付与義務はありますか?

A. はい、あります。就業規則の作成・届出義務は常時10人以上の事業場に課されるものですが、育児・介護休業法による介護休暇・介護休業の付与義務は従業員数にかかわらず適用されます。従業員が1人でも対象要件を満たせば、会社には取得を認める義務があります。従業員数が少ない企業でも、制度の内容を正確に把握し、必要に応じて社内ルールを文書化しておくことが重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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