入社半年未満でメンタル不調、有給なし休職の3ステップ対応

入社半年未満でメンタル不調、有給なし休職の3ステップ対応 メンタルヘルス対応
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「入社して3ヶ月なのに、突然出社できなくなってしまって……どうすればいいですか」——そんな電話を受けた月曜日の朝、あなたはどう動けばいいか、すぐに答えが出てきますか。有給休暇もない、休職規定も曖昧、傷病手当金の手続きも初めて。専任の人事担当がいない職場では、こうした状況がそのまま「対応の空白」になりがちです。この記事では、入社半年未満でメンタル不調が起きたときに、経営者・兼務人事担当者が取るべき実務的な対応を3つのステップで整理します。

まず確認すべき「有給なし欠勤」の基本ルール

有給休暇が付与されていない社員が欠勤する場合は、原則として無給処理(欠勤控除)で対応します。これは法律に反する対応ではなく、労働契約の基本原則に沿った正しい処理です。

有給休暇が発生するタイミング

労働基準法第39条により、年次有給休暇は「入社後6ヶ月継続勤務かつ出勤率8割以上」を満たした時点で初めて付与されます。入社3ヶ月や4ヶ月の段階でメンタル不調が起きた場合、法定の有給休暇はまだ存在していません。ただし、就業規則に「入社直後から使える特別有給休暇」を設けている会社は別です。まず自社の就業規則を確認してください。

ノーワーク・ノーペイの原則とは

民法第624条および労働契約の基本原則である「ノーワーク・ノーペイ」に基づき、働いていない日に対して賃金を支払う義務は会社にはありません。欠勤控除の計算方法(例:月給÷所定労働日数×欠勤日数)は就業規則に定められているはずなので、まず規定を確認します。記載がなければ、この機会に整備することを検討してください。

「無給でいいのか」と迷ったときの判断ポイント

欠勤控除の処理をためらう理由のひとつは、「社員に悪い印象を与えるのでは」という心理的なものです。しかし、正しい処理を行わないまま曖昧にすると、後になって「実は給与が過払いだった」「社員との間で合意内容が食い違う」といったトラブルに発展します。丁寧に事実を説明したうえで欠勤控除を適用することが、双方にとって誠実な対応です。

傷病手当金は入社半年未満でも受け取れる

入社半年未満であっても、健康保険に加入していれば傷病手当金を受け取れます。これは多くの担当者が誤解しているポイントです。

受給要件と支給額の目安

傷病手当金は健康保険法第99条に基づく制度で、以下の要件をすべて満たす場合に支給されます。

  • 業務外の疾病・負傷であること(業務起因性がある場合は労災保険の対象となります)
  • 療養のために就労不能であること(医師の意見書・診断書が必要)
  • 連続する3日間の待期期間を満たしたこと(この3日間は支給されない)
  • 4日目以降も就労不能であること

支給額は「標準報酬日額の3分の2」で、最長1年6ヶ月受給できます。仮に月給25万円の社員であれば、おおよその日額換算で5,500円前後が目安になります(標準報酬月額の区分によって異なります)。

「待期期間の落とし穴」に注意する

見落とされやすいのが、「連続3日間」という要件です。たとえば月曜日に休んで火曜日に出社し、また水曜日に休む——というように断続的な欠勤が続く場合、待期期間が完成せず、4日目以降の支給が始まりません。社員がメンタル不調で「なんとなく休んだり出たりを繰り返す」状態になったとき、早めに医療機関への受診と診断書の取得を促すことが、本人の経済的保護にもつながります。

会社の役割は「証明」のみ

傷病手当金を支払うのは健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)であり、会社が費用を負担するものではありません。会社に求められるのは、申請書の「事業主記載欄」への記入(欠勤の事実・給与支払いの有無の証明)だけです。申請は社員本人が行います。担当者は「申請の仕方」を社員に案内する役割を担う、という理解で動くと整理しやすいでしょう。

休職制度がない会社でも取れる対応フロー

休職は法律上の義務ではなく、就業規則に定めて初めて成立する制度です。規定がなくても、段階を踏んで対応することで会社・社員双方のリスクを減らせます。

就業規則に休職規定があるかを確認する

まず自社の就業規則を開き、「休職」に関する条項が存在するか確認します。20〜50名規模の企業では、就業規則が10年以上更新されていないケースも少なくありません。休職の発令要件(例:欠勤が連続○日以上)、休職期間の上限、復職条件、休職満了時の取り扱いが明記されているかをチェックしてください。

規定がない場合の実務的な進め方

就業規則に休職規定がない場合でも、「療養専念の合意書」を取り交わすことで、事実上の休養期間を設けることは可能です。この際、以下の点を文書で合意しておくと後のトラブルを防げます。

  • 休養開始日と期間(目安として1〜3ヶ月が多い)
  • その間の給与の扱い(無給であること)
  • 傷病手当金の申請案内
  • 復帰の条件(主治医の診断書が必要など)
  • 期間満了後の取り扱い(更新の有無、退職の可能性)

この段階で社会保険労務士や専門家に相談しておくと、文書の内容を適切に整えられます。

本人・家族とのコミュニケーションの作法

メンタル不調の社員に対して「いつ戻れますか」と繰り返し聞くことは、本人への精神的な負担になります。連絡は週1回程度、状況確認を兼ねた短いメッセージにとどめ、「早く戻ってきてほしい」という意味合いのプレッシャーをかけないよう注意してください。診断書の提出を求めることは会社として正当な対応ですが、「取れなければ休めない」という圧力にならないよう伝え方を工夫することが大切です。

解雇・退職を検討するときの法的リスク

入社半年未満だからといって自由に解雇できるわけではありません。メンタル不調を理由にした解雇には、法的に無効となるリスクが伴います。

解雇予告と解雇権濫用法理

試用期間中・入社半年未満であっても、14日を超えて継続勤務した社員を解雇する場合は、労働基準法第20条により30日前の解雇予告または解雇予告手当(平均賃金の30日分)が必要です。さらに、労働契約法第16条の「解雇権濫用法理」により、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当でない解雇は無効となります。メンタル不調は、それだけで「合理的な解雇理由」にはなりません。

休職制度を経ずに解雇することのリスク

休職の機会を与えずにいきなり解雇すると、「解雇回避努力を怠った」と判断されるリスクが高まります。実務上は、まず休養・療養の機会を提供し、休職期間満了後も復職が難しい場合に雇用終了を検討する、という順序が適切です。「試用期間中だから」という理由だけで即時解雇を選ぶことは避けてください。

自己都合退職と合意退職の違い

社員が「辞めたい」と申し出た場合でも、メンタル不調の状態での退職意思は後から「強迫・錯誤による意思表示」として争われることがあります。退職の意思確認は本人が落ち着いた状態で行い、退職届の日付・退職理由・退職日を明記した書面を必ず取り交わしてください。不安がある場合は、合意書の作成前に専門家に相談することを強くお勧めします。

状況別・対応の選択肢一覧

「自社がどのケースに当たるか」によって、取るべき対応が異なります。以下の表で自社の状況を確認してください。

状況 主な対応 注意点
就業規則に休職規定あり 規定に沿って休職を発令。傷病手当金を案内する 休職期間・復職条件を書面で通知する
就業規則に休職規定なし 療養専念の合意書を取り交わし、事実上の休養期間を設ける 合意内容を必ず文書化する。専門家に相談推奨
欠勤が断続的で待期期間が完成しない 医療機関受診を促し、診断書取得と連続休養への切り替えを検討 傷病手当金が受給できないまま無給期間が長引くリスクあり
試用期間中・入社14日以内 解雇予告なしの解雇が法的には可能だが、慎重な判断が必要 メンタル不調を理由とした解雇は解雇権濫用法理の対象になりうる
社員が退職を申し出ている 本人が落ち着いた状態で意思確認。合意退職の書面を作成 不調状態での退職意思は後から争われることがある

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実務フロー:3つのステップで動く

複雑に見えるこの対応も、「事実確認」「制度案内」「継続対応」という3つの流れで整理すると動きやすくなります。

事実と状況を確認する

まず最初に確認するのは、(a)いつから休んでいるか、(b)医療機関を受診しているか、(c)診断書はあるか、(d)本人の希望(休養したいのか、退職を考えているのか)、の4点です。焦って「休職か退職か」の結論を急ぎすぎず、現状把握を優先してください。この段階で就業規則の休職規定の有無も並行して確認します。

給与・手当の処理と案内を行う

次に、欠勤控除の処理と傷病手当金の案内を行います。「会社から支払いはないが、健康保険から手当が出る制度がある」ということを本人に丁寧に説明することで、経済的な不安を和らげることができます。申請書類(協会けんぽの場合は「傷病手当金支給申請書」)の入手方法や、会社の事業主記載欄への記入が必要であることも合わせて伝えましょう。

休養期間中の継続的なフォローを設計する

最後に、休養開始後の連絡頻度・方法、復職判断の基準(主治医の診断書が必要など)、休養期間の上限と満了後の取り扱いを書面で明確にします。「何もルールがないまま漠然と休んでいる」状態は、本人にとっても会社にとっても不安が大きくなります。期間と条件を明文化することが、双方の安心につながります。

まとめ

入社半年未満でメンタル不調が起きた場合、「有給がない=何もできない」ではありません。欠勤控除という正当な処理を行いながら、傷病手当金の案内で本人の経済的不安を軽減し、休職規定の有無に応じて休養の枠組みを設計する——この流れが基本です。解雇は最後の手段であり、休養の機会を設けずに行うことは法的リスクを伴います。

「うちの場合はどうなるのか」「就業規則をどう整備すればいいか」など、自社の状況に照らした判断に迷ったときは、一人で抱え込まずに相談が近道です。ウェルセンス株式会社では、20〜50名規模の企業における休職・復職支援や人事労務の課題に対して、実務に即した形でご支援しています。まずは気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 入社3ヶ月の社員が突然休み始めました。すぐに欠勤控除して構いませんか?

A. 有給休暇が付与されていない段階での欠勤は、原則として欠勤控除(無給処理)で対応します。これはノーワーク・ノーペイの原則に基づく正当な処理です。ただし、自社の就業規則に「入社直後から使える特別有給休暇」が定められている場合は、そちらを先に確認してください。

Q. 傷病手当金は会社が申請して、会社が負担するのでしょうか?

A. 傷病手当金は健康保険組合または協会けんぽが支給する制度であり、会社が費用を負担するものではありません。申請は社員本人が行います。会社の役割は申請書の「事業主記載欄」(欠勤の事実・給与支払いの有無の証明)への記入のみです。社員に申請書の入手方法と会社の記入対応について説明することが大切です。

Q. 就業規則に休職規定がない場合、休職させることはできませんか?

A. 休職は法律上の義務ではなく、就業規則に定めることで成立する制度です。規定がない場合でも、「療養専念の合意書」を社員と取り交わすことで、事実上の休養期間を設けることは可能です。休養期間・給与の扱い・復職条件を書面化することが重要です。この対応に不安がある場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

Q. 試用期間中なら自由に解雇できますか?

A. 試用期間中であっても、14日を超えて継続勤務した社員を解雇する場合は、労働基準法第20条による解雇予告(30日前)または解雇予告手当が必要です。また、労働契約法第16条の解雇権濫用法理により、メンタル不調を理由にした解雇は客観的に合理的な理由がないと判断される可能性があります。休職の機会を設けずに解雇することは法的リスクが高く、慎重な判断が必要です。

Q. 断続的に休んでいる社員がいます。傷病手当金は受け取れますか?

A. 傷病手当金を受給するには「連続する3日間の待期期間」が必要です。1日休んで出社し、また休む——という断続的な欠勤が続く場合、待期期間が完成せず支給が始まらないことがあります。このような状況では、早めに医療機関を受診して診断書を取得し、連続した休養に切り替えることを検討するよう本人に案内することが重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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