休職申請はプライベートでも認めるべき?判断基準と対応のポイント

休職申請はプライベートでも認めるべき?判断基準と対応のポイント メンタルヘルス対応
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「離婚調停が重なって、しばらく休ませてほしい」——ある朝、従業員からそう告げられたとき、あなたはどう答えますか?仕事のミスや体調不良が原因ではなく、完全にプライベートの事情。業務パフォーマンスも今のところ問題ない。こんなとき、「会社として休職を認める必要があるのか」と迷う経営者・人事担当者は少なくありません。この記事では、法的な整理から実務の判断基準まで、プライベート事由の休職申請にどう対応すべきかを解説します。

休職制度の大前提:法律は「認めなさい」と言っていない

まず知っておくべき重要な事実があります。労働基準法には、休職制度を設ける義務の規定がありません。休職は、各企業が就業規則によって任意に定める制度です。つまり、判断の出発点は「法律」ではなく、「自社の就業規則に何と書いてあるか」になります。

就業規則が判断のすべての基準になる

休職を認めるかどうかは、就業規則に定められた「休職事由」「対象者の要件」「手続き」によって決まります。就業規則に該当する規定がなければ、会社は休職を付与する義務を負いません。逆に言えば、就業規則に「私傷病休職」の規定があれば、その要件を満たすかどうかが問われることになります。

まず手元の就業規則を開いて、「休職」の章を確認することが最初の作業です。規定がそもそも存在しない、あるいは10年以上更新されていないケースも、20〜50名規模の企業では珍しくありません。

「私傷病休職」とは何を指すのか

多くの就業規則には「私傷病休職」の条項があり、「業務外の傷病により欠勤が〇日以上継続したとき」のような文言で定められています。ここで重要なのは、「業務外」という条件はあっても、「原因が仕事かプライベートか」は問われていない点です。あくまで「医学的に療養を要する傷病が存在するかどうか」が要件の核心です。

プライベートが原因でも休職が認められるケース

プライベートのトラブルが原因であっても、そこから疾病が生じていれば、私傷病休職の対象になり得ます。判断のポイントは「原因」ではなく「結果としての傷病の有無」です。

メンタル不調が絡む場合は私傷病休職の対象となる

離婚調停、家族の介護、多重債務といったプライベートの問題を抱えた結果、適応障害やうつ病が発症することは珍しくありません。この場合、「傷病の原因はプライベートだが、結果として業務外の傷病(精神疾患)が存在する」という状況になります。精神疾患は私傷病の範囲に含まれますから、欠勤日数などの要件を満たせば私傷病休職を適用できます。

「仕事は普通にできている」と本人が言っていても、睡眠障害・集中力の低下・感情の不安定さといった兆候が見られる場合は注意が必要です。こうしたサインは、適応障害やうつ病の初期症状である可能性があります

診断書がない段階では受診勧奨が適切な対応

「まだ病院には行っていないけれど、精神的につらい」という状態で休職を求められるケースもあります。この段階では、就業規則上の休職要件(診断書の提出など)を満たしていないことがほとんどです。無理に休職を認める必要はありませんが、受診を勧めること(受診勧奨)が現実的かつ適切な対応です。

受診の結果、医師から診断書が発行されれば、私傷病休職として制度的に処理できます。「まず病院を受診してください。診断書をもとに、会社として対応を検討します」という流れを伝えることが、従業員にとっても会社にとっても安全な進め方です。

傷病のないプライベート事由は休職事由にならない

一方、傷病のない状態で「プライベートが大変だから休みたい」という申請は、就業規則上の私傷病休職の要件を満たしません。この点は明確に整理しておく必要があります。

離婚・借金・家族問題は「傷病」ではない

離婚調停、多重債務、家族との不和といった事情それ自体は、医学的な「傷病」ではありません。したがって、これらを理由とした休職申請は、私傷病休職の対象外です。この場合の対応の原則は、有給休暇の消化や欠勤扱いの範囲内で対応することです。

ただし、後述するように「放置すればよい」というわけでもありません。背後にメンタル不調が隠れていないかを確認するプロセスが重要です。

就業規則に「任意休職」規定がある場合は別の判断が必要

就業規則に「会社が特に認めた場合」「やむを得ない事由がある場合に会社が休職を命じることができる」といった裁量的な休職規定(任意休職)がある企業もあります。この規定があれば、傷病がなくても会社の判断で休職を認めることが可能です。

ただし注意点があります。一度認めると、それが社内の前例として機能します。「あのときは認めてもらえた」という認識が従業員の間に広がると、運用の一貫性を保つのが難しくなります。認める場合は、条件・期間・復職要件を明文化し、書面で合意を取ることが必須です。

認めた場合・認めなかった場合のリスク

判断を誤ると、どちらの選択にもリスクが伴います。「認める」「認めない」それぞれのリスクを正確に把握した上で対応することが重要です。

判断 主なリスク・留意点
認める(制度適用) 前例化のリスク。就業規則の根拠が曖昧なまま認めると、次の申請を断りにくくなる。条件・期間を書面で明確化することが必要。
認めない(制度不適用) メンタル不調が背後にあった場合、放置により症状が悪化するリスク。安全配慮義務違反(労働契約法第5条)を問われる可能性がある。
即答する 「認めると言った/認めないと言われた」という認識の食い違いが後のトラブルに発展しやすい。面談では即答せず、就業規則確認後に書面で回答する。

「放置」は安全策ではない——安全配慮義務の観点から

「業務外のことだから会社は関与しなくてよい」という判断は危険です。労働契約法第5条は、「使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。これを安全配慮義務といいます。

プライベートの問題を抱えた従業員を放置し、その後に自傷行為・突然の無断欠勤・体調の急激な悪化が起きた場合、会社がこの義務を果たしていなかったとして責任を問われるリスクがあります。「業務外だから無関係」とは言い切れないのが現実です。

面談での即答を避け、書面で記録を残す

休職申請を受けたとき、その場で「認める」「認めない」を口頭で答えてしまうケースが多く見られます。後から「あのとき認めると言った」「断られた」という食い違いが生じると、対応が一気に複雑になります。

面談ではまず「確認します」と伝え、就業規則の該当条項を照らし合わせた上で、書面または電子メールで回答するプロセスを徹底してください。この一手間が、後のトラブルを防ぐ最も確実な方法です。

判断の手順:実務でどう動くか

実際に申請を受けたとき、どの順番で何を確認すればよいかを整理します。流れを事前に把握しておくだけで、慌てずに動けます。

就業規則の確認から始める

まず、自社の就業規則を開いて「休職」に関する条項を確認します。確認すべきポイントは「休職事由の定義」「適用の要件(欠勤日数・診断書の有無など)」「休職期間の上限」「復職の条件」の4点です。これらが明記されていれば、申請内容と照らし合わせて判断できます。

就業規則に休職規定がない、または内容が曖昧な場合は、専門家(社会保険労務士など)への確認を先行させることを強くお勧めします。不備のある就業規則のまま対応すると、後で「根拠がない判断だった」と問題になることがあります。

傷病の有無を確認し、必要に応じて受診勧奨する

次に、申請者に医師の診断書があるかどうかを確認します。診断書がある場合は、傷病名・療養期間の記載をもとに私傷病休職として処理できるか判断します。診断書がない場合は、受診勧奨を行い、「診断書をご提出いただいた上で改めて検討します」と伝えます。

この際、受診勧奨は「命令」ではなく「提案」として伝えることが重要です。「病院に行ってください」という強制的な表現は避け、「状況をしっかりサポートするために、まず専門家に診ていただくことをお勧めします」といった伝え方が適切です。

企業規模・体制による分岐を意識する

産業医が選任されている企業(原則50名以上)であれば、産業医に状況を共有し、就業上の配慮についての意見をもらうことができます。産業医がいない20〜49名規模の企業では、主治医の診断書が主な判断根拠になります。就業規則の整備状況も含め、社会保険労務士への相談を活用することが現実的な選択肢です。

まとめ

休職申請の理由がプライベートであっても、「会社として何もしなくてよい」という判断は誤りです。判断の出発点は自社の就業規則であり、傷病の有無が適用可否の核心です。プライベートのトラブルが原因であっても、適応障害やうつ病が発症していれば私傷病休職の対象になります。一方、傷病のない状態での申請は原則として対象外ですが、放置は安全配慮義務の観点からリスクを伴います。いずれの場合も、就業規則の確認・受診勧奨・書面による記録という基本の流れを守ることが、会社と従業員双方を守る対応につながります。

「就業規則がそもそも整備されていない」「申請を受けたが、どう判断すればよいかわからない」という状況はよくあります。ウェルセンス株式会社では、こうした休職対応の判断に迷う経営者・人事担当者からのご相談を受け付けています。個別の事情に合わせて、実務的なアドバイスをお伝えします。

よくある質問

Q. 離婚調停中の従業員から「しばらく休みたい」と言われました。就業規則に私傷病休職の規定はありますが、診断書はありません。休職を認める必要がありますか?

A. 診断書がない段階では、私傷病休職の要件(傷病の存在を医学的に確認すること)を満たしていません。まずは受診を勧め、「診断書が提出されれば就業規則に基づいて対応します」と伝えるのが適切です。診断書なしで即時に休職を認める義務はありません。ただし、本人の状態が明らかに悪化しているようであれば、有給休暇の取得を促しながら受診につなげることも選択肢の一つです。

Q. 休職申請を断った場合、従業員から訴えられるリスクはありますか?

A. 就業規則の要件を満たしていない申請を断ること自体は、直ちに違法にはなりません。ただし、断った後に従業員の状態が悪化し、「会社が適切な対応をしなかった」と安全配慮義務違反(労働契約法第5条)を問われるリスクはあります。断ったとしても、受診勧奨や状況確認のフォローは続けることが重要です。

Q. 今回特別に認めたことが「前例」になるのを防ぐにはどうすればよいですか?

A. 認める際に「今回限りの特別な対応であること」「適用の条件・期間・復職要件」を書面に明記し、本人の署名をもらうことが有効です。また、対応の記録(面談メモ・書面)を社内に保管し、次に類似ケースが発生した際に「あのときとは条件が違う」と説明できる状態にしておくことが重要です。

Q. 就業規則に休職の規定がまったくありません。この場合、どう対応すればよいですか?

A. 休職規定がない場合、欠勤が続いたときの対応根拠がなくなり、解雇の可否など難しい判断を迫られる場面が出てきます。目先の対応としては、有給休暇の消化・欠勤扱いを軸に個別交渉することになりますが、中長期的には就業規則を整備することが不可欠です。社会保険労務士に相談し、自社の実態に合った休職規定を設けることを強くお勧めします。

Q. 産業医がいない会社でも、メンタル不調の従業員に対して適切な対応はできますか?

A. 産業医が選任されていない規模(49名以下)の企業でも、主治医の診断書を判断の主な根拠とし、必要に応じて社会保険労務士や外部のメンタルヘルス支援機関を活用することで対応できます。産業医がいないことはハンデになりますが、外部の専門家をうまく活用することで、適切な判断と記録の整備は十分に可能です。

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