「また月曜日に休んでいる…でも、どうすればいいかわからない」。そんなもどかしさを感じている経営者・人事担当者は少なくありません。欠勤が多い社員への対応は、タイミングを誤ると本人の状態悪化にもチームの疲弊にもつながります。この記事では、欠勤が多い社員への早期介入の判断ポイントと具体的な動き方を、現場目線でわかりやすく解説します。
「なんとなく休みが多い」を放置してはいけない理由
気づいていたのに動かなかったは法的リスクになる
「まあ、様子を見よう」という判断が続くうちに、社員のメンタル不調が深刻化するケースは非常に多く見られます。実は、使用者(会社)には労働契約法第5条に基づく安全配慮義務があります。これは、社員の生命・身体・精神の安全に配慮しなければならないという義務です。「気づいていたのに何もしなかった」という状況は、この義務違反として問われる可能性があります。欠勤が頻発しているにもかかわらず対応を先送りにすることは、善意の「様子見」ではなく、法的なリスクを伴う「不作為」になりえます。
放置コストは目に見えにくいが確実に積み上がる
欠勤が多い社員が出ると、その分の業務は周囲のメンバーが肩代わりします。20〜50名規模の会社では、1人が抜けたときの穴は特に大きく、「また休んだ」という空気がチーム全体の士気や不満につながっていきます。さらに、本人の対応に時間を取られることで、採用・評価といった本来の人事業務まで止まってしまいます。このような間接的なコストは数字として見えにくいため、対応の優先度が上がりにくいのが現実です。しかし、対応を1ヶ月先送りするごとに、チームへのダメージは静かに蓄積されています。
早めに動くことが本人にとっても最善
メンタル不調は、早期に気づいて適切なサポートにつなげるほど、回復が早く休職期間も短くなる傾向があります。「大丈夫です」と本人が言っていても、欠勤パターンが続いているなら、それはすでにSOSのサインである可能性があります。早期介入は本人を追い詰めるためではなく、状態が深刻になる前に手を差し伸べるための行動です。
欠勤が多い社員に早期介入すべき判断基準
頻度とパターンで客観的に見る
「なんとなく休みが多い気がする」という感覚を、できるだけ客観的な基準に置き換えることが大切です。欠勤が多い社員への早期介入を検討すべき目安として、次のような状況が参考になります。
まず月に2回以上の欠勤が続いている場合、または連続して2日以上休む日が発生している場合です。次に、月曜日や金曜日など特定の曜日への欠勤集中、あるいは連休前後への集中が見られる場合。こうした「パターン」は、体調不良が週末や休日への不安・疲弊と連動しているサインである可能性があります。さらに、このような状態が1ヶ月以上継続しているなら、「様子見フェーズ」ではなく「対応フェーズ」に入っていると考えてください。
欠勤以外の変化にも目を向ける
欠勤が多い社員の対応では、欠勤の頻度だけでなく、以下のような「周辺の変化」も重要なサインです。
- 業務パフォーマンスの低下(ミスの増加・締め切りの遅延)
- コミュニケーションの減少(返信が遅い・会議での発言が減った)
- 遅刻・早退の増加
- 表情や雰囲気の変化
こうした変化が欠勤と重なって見られるときは、単なる体調不良ではなくメンタル面の問題が背景にある可能性が高くなります。「最近なんか元気がないな」という直感は、意外と正確なサインであることが多いです。
「診断書がない=問題ない」ではない
欠勤理由が曖昧で診断書もない場合、「証拠がないから動けない」と感じる方も多いですが、それは誤解です。診断書がなくても、欠勤の頻度・パターン・業務への影響という事実があれば、会社として声かけ・面談を行う根拠は十分にあります。むしろ、診断書が出る前の段階でこそ、早期介入の効果が最大になります。
「ハラスメントになるのでは」という不安を解消する声かけの作法
事実ベースの声かけがハラスメントを防ぐ
「なぜ休んだんですか?」という詰問ではなく、「最近、体調はいかがですか?」「何か気になることがあれば話してもらえると助かります」というような、事実と配慮を組み合わせた声かけが基本です。ポイントは「原因の追及」ではなく「状態の確認と支援の提示」です。この違いを意識するだけで、同じ内容を伝えても受け取り方がまったく変わります。また、1対1の面談で話すことで、本人が話しやすい環境を作ることも大切です。オープンスペースでの声かけは避けましょう。
「腫れ物扱い」もハラスメントになりうる
メンタル不調が絡む可能性があると、何も言わず距離を置くケースもあります。しかし、必要なコミュニケーションを避け続けることは、本人の孤立感を高め、状態をさらに悪化させる可能性があります。「声をかけない」という選択肢が、必ずしも安全とは限りません。メンタルに配慮した関わり方を学ぶことで、適切に声をかけることができるようになります。
メンタル不調を理由にした不利益取扱いは禁止されている
「欠勤が多いから」「メンタルの問題があるから」という理由で解雇・降格・減給を行うことは、労働契約法や障害者雇用促進法等に基づき、違法となる可能性があります。欠勤対応の目的は「処罰」ではなく「支援と職場復帰」であるという基本姿勢を会社として持つことが、ハラスメントリスクを下げることにもつながります。
記録を残す習慣が後の対応を左右する
口頭だけのやり取りが後から困る原因になる
欠勤の連絡を口頭や電話でやり取りするだけで、記録が残っていないケースは非常に多く見られます。いざ休職や労務トラブルの話になったとき、「いつから欠勤が増えたか」「どんな声かけをしたか」「本人は何と言っていたか」を証明できる資料がないと、会社側の対応が適切だったかどうかを示すことができなくなります。特に、後に解雇や休職発令の判断が必要になったとき、経緯の記録がないと大きなリスクになります。
記録すべき内容と残し方
記録として残しておくべき基本的な項目は、以下の通りです。
- 欠勤の日付・理由(本人申告)・対応した担当者名
- 面談を行った場合の日時・話した内容・本人の言葉・次のアクション
- その後のフォローアップの有無
Excelや専用のシートで構いません。「いつ・誰が・何を・どう対応したか」が後から追えるようにしておくことが重要です。記録は本人を監視するためではなく、会社が誠実に対応してきた証跡を残すためのものです。
就業規則の整備も欠かせない
欠勤・休職・復職に関するルールが就業規則に明記されていない場合、会社の対応が「恣意的」と見なされるリスクがあります。具体的には、以下のような内容が必要です。
- 欠勤が何日続いたら休職発令になるか
- 休職中の給与・社会保険の扱い
- 復職の判断基準(主治医の診断書+産業医の意見など)
これらが明文化されていることで、本人にも「会社のルールに基づいた対応」として説明できるようになります。
専門家との連携タイミングと相談先の整理
「自分だけで判断しなければ」という思い込みを手放す
専任人事がいない職場では、経営者や兼務の人事担当者が一人で抱え込んでしまうことがよくあります。しかし、欠勤対応・メンタルヘルス対応には複数の専門職が関わることが前提であり、一人で完結しようとすること自体が課題を大きくする原因になります。「誰に相談すればいいかわからない」という声も多いですが、まずは「今の状況を整理して第三者に話してみる」だけでも、対応の方向性が見えてくることがほとんどです。
産業医・社労士・外部支援機関の役割分担
産業医は、医学的な観点から就業可否や業務軽減の意見を出す専門家です。「本人が大丈夫と言っているが信用していいか判断できない」「休職発令のタイミングを医学的に判断してほしい」というケースに向いています。
社労士は、就業規則の整備や休職中の社会保険手続き、労務リスクの確認に強みがあります。
外部の人事支援・EAP(従業員支援プログラム)などの専門機関は、面談の設計・同席・記録フローの整備など、実務的な対応プロセス全体を一緒に進める役割を担います。これらを状況に応じて使い分けることが、現実的な対応につながります。
外部に相談するタイミングの目安
以下のような状況になったら、社内だけで抱え込まず外部の専門家に相談することを検討してください。
- 本人が「大丈夫」と言い続けているにもかかわらず欠勤パターンが変わらない場合
- 管理職・経営者として次にどう動けばいいかわからなくなってきた場合
- 他の社員からも「あの人の仕事が回ってきて大変」という声が上がり始めた場合
「まだ大丈夫かな」と思っているうちに相談するほど、選択肢が広がります。
まとめ
欠勤が多い社員への対応で大切なのは、「病気かサボりか」を断定することではありません。欠勤の頻度・パターン・周辺の変化という客観的な事実に基づいて、適切なタイミングで声をかけ、記録を残しながら対応を進めることです。ハラスメントを恐れるあまり何もしないことも、逆に安全配慮義務の観点からリスクになりえます。
「どのラインで動くべきか」「どう声かけをすればいいか」「誰に相談すればいいか」——そうした判断に迷ったとき、一人で抱え込まず外部のサポートを活用してください。ウェルセンス株式会社では、欠勤対応・休職支援・人事労務の課題について、中小企業の経営者・人事担当者の方に向けた相談窓口を設けています。「今の状況が早期介入のフェーズかどうか確認したい」「面談の進め方を一緒に考えてほしい」といった段階からでも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
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