休職申請前に欠勤が続く社員への対応で困ったら

休職申請前に欠勤が続く社員への対応で困ったら メンタルヘルス対応
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月曜日の朝、いつも早めに来るはずの社員が出社しない。電話をかけても出ない。メールも既読にならない。そのまま火曜日、水曜日と欠勤が続く——。こんな状況に直面したとき、「どうすれば正解なのか」がわかりにくく、対応が後手に回ってしまう経営者・人事担当者は少なくありません。休職申請もなく、診断書もなく、本人とも連絡が取れない。この「宙ぶらりん」の状態で給与処理や今後の手続きをどう進めるか、法的リスクをどう避けるかを、本記事では実務の流れに沿って整理します。

休職申請前の欠勤が会社にもたらすリスク

休職申請が正式に受理される前の欠勤期間は、給与処理も身分上の分類も宙に浮いた状態になりやすく、後からトラブルになりやすいフェーズです。早めに「欠勤」か「休職」かの区分を整理し、対応の記録を残すことがリスク管理の基本になります。

欠勤と休職の違いを整理する

欠勤は「労働義務があるにもかかわらず、労働者が働かない状態」です。一方、休職は「就業規則上の手続きを経て、労働義務が一時的に免除された状態」です。この区分が定まらないと、給与計算・社会保険手続き・傷病手当金申請のすべてが止まります。

本人から正式な休職申請がなく、診断書も提出されていない段階は、法律上は「欠勤」として扱うのが原則です。ただし、欠勤が長期化し、業務上の精神疾患が疑われる場合には、会社側から積極的に休職へ移行させる手段(後述の職権休職)を検討する必要があります。

欠勤期間の給与処理は慎重に判断する

労働基準法第24条および「ノーワークノーペイの原則」により、労働の提供がない日については原則として賃金を支払う義務はありません。そのため、欠勤日数に応じた欠勤控除を行うことは、法律上認められています。

ただし注意が必要なのは、欠勤の原因が業務起因(業務による過重労働や職場環境が原因の精神疾患など)である場合です。この場合、欠勤控除を一方的に行うことが後から問題になるケースがあります。「業務起因かどうか」は本人や医師の見解だけでなく、労働時間記録・上司との面談記録なども踏まえて判断する必要があります。不明な場合は、社会保険労務士や弁護士に確認しながら進めることをおすすめします。

有給休暇の充当は本人同意が原則

本人の同意なしに会社側が一方的に有給休暇を充当することは、労働基準法第39条の趣旨に照らして認められません。ただし、就業規則に「欠勤した場合に有給休暇を先に充当する」旨の規定があり、かつ入社時に本人へ説明していた場合は、実務上許容されるケースもあります。

規定がない場合や、規定があっても本人と連絡が取れない場合は、一旦欠勤控除で処理し、後から本人と合意できた時点で遡って有給充当する方法が現実的です。いずれの選択をした場合も、その判断の根拠と経緯を記録しておくことが大切です。

連絡が取れない社員への正しいアプローチ

本人と連絡が取れない状況であっても、会社は「合理的な対応をした」という記録を残し続けることが、安全配慮義務の観点から不可欠です。放置は、会社側にとって最もリスクの高い対応です。

安全配慮義務とは何か

労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。連絡が取れないからといって何もしないでいると、「会社は社員の安全を確認しようとしなかった」として安全配慮義務違反を問われるリスクがあります。

連絡手段を組み合わせ、すべて記録に残す

連絡手段は、電話・メール・書面(郵送)を組み合わせて行い、すべて記録に残します。以下のような台帳を作成し、日付・手段・内容・返答の有無を管理してください。

日付 連絡手段 内容 返答の有無
○月○日 電話(携帯) 出社確認・体調確認 なし(不在着信)
○月○日 メール 欠勤状況確認・折り返し依頼 なし
○月○日 書面(郵送) 欠勤状況確認・診断書提出依頼 受け取り確認済み

電話は1日に何度もかけると「しつこい」として問題になる可能性があります。1〜2日に1回程度の頻度を目安にしながら、連絡の記録を積み重ねていきましょう。

本人と連絡が取れない場合は緊急連絡先への連絡も検討

本人と一切連絡が取れない場合、雇用契約書や入社時の書類に登録された緊急連絡先(家族等)に連絡を入れることが現実的な選択肢です。ただし、連絡の目的は「安否確認」であり、詳細な病状や職場の評価を伝えることはプライバシーの観点から避けてください。「○日から連絡が取れない状態が続いており、体調を心配しています」という範囲にとどめるのが適切です。

なお、家族への連絡が後から「勝手に個人情報を漏らした」と問題になるリスクを下げるために、緊急連絡先への連絡目的を雇用契約書・就業規則に明記しておくことが理想的です。

診断書がない状態で休職へ移行する方法

診断書の提出がなくても、会社側の判断で休職を命じることが可能な場合があります。「職権休職」の規定が就業規則にあるかどうかを確認するのが最初のステップです。

職権休職とは何か

職権休職とは、本人の申請を待たず、会社が必要と判断して休職を命じる制度です。就業規則に「会社が必要と認めた場合、休職を命じることができる」といった規定があれば、この制度を活用できます。欠勤が続いているが本人から申請がない場合、職権休職を発令することで欠勤と休職の区分が明確になり、給与処理・社会保険手続きの起点が定まります。

就業規則に職権休職の規定がない場合は、今後のリスク管理のためにも規定の整備を検討してください。20〜50名規模の企業でも、休職規定の不備が後からの紛争原因になるケースは少なくありません。

診断書の提出を求める際の手続き

体調不良や精神的不調が欠勤理由として窺われる場合、会社は書面で診断書の提出を求めることができます。提出期限(例:欠勤開始から2週間以内)と、未提出の場合の取り扱い(欠勤継続扱い、または就業規則の自然退職・懲戒規定の適用検討)を書面に明記した上で送付します。

この書面は、内容証明郵便で送ると「会社が送付した事実と内容」が公的に証明されるため、後のトラブル防止に有効です。

傷病手当金の案内も早期に行う

欠勤が続く社員の生活保護の観点からも、健康保険の傷病手当金制度を早い段階で案内することが重要です。傷病手当金は、療養のため労務不能であること・連続3日間の待機期間(初日から3日間は支給対象外)などの要件を満たした場合に支給されます。会社が正式に休職命令を発令する前の段階でも、本人・家族から申請すること自体は可能です。案内を早めに行うことで、経済的な不安から本人との関係が悪化するリスクを軽減できます。

無断欠勤が長期化した場合の対応と解雇のリスク

無断欠勤を理由に即座に解雇することは、法的に非常にリスクが高い判断です。就業規則の規定・書面での通知・弁明機会の付与という手順を踏まずに解雇すると、解雇権の濫用として無効になる可能性があります。

解雇権濫用法理と欠勤日数の関係

労働契約法第16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。無断欠勤が続いていたとしても、会社が連絡を試みたか、弁明の機会を与えたか、就業規則に手続きが規定されているかが問われます。

「何日欠勤したら解雇できるか」という明確な法定基準はありません。一般的に就業規則には「正当な理由なく○日以上欠勤した場合は懲戒解雇・自動退職の対象とする」といった規定が設けられており、その規定に基づいて判断することになります。規定がない企業は、この機会に整備を検討してください。

解雇を検討する場合の必須手順

万一、欠勤が長期化して退職・解雇を検討する場合でも、以下の手順を踏むことが不可欠です。

まず最初に、本人への書面(内容証明等)による状況確認と出社・連絡の要請を行います。次に、それでも応答がない場合は、弁明の機会を与える書面(「○月○日までに連絡がない場合は就業規則第○条の規定を適用します」等)を送付します。最後に、就業規則の手続きに則った上で、社会保険労務士・弁護士に相談しながら対応を進めます。

この手順を踏まずに解雇した場合、後から不当解雇として争われるリスクが高まります。

企業規模と就業規則の有無による対応の違い

  • 就業規則がある場合(10人以上の企業は届出義務あり):休職制度・自然退職規定・職権休職の条文を確認し、規定に沿った手続きを取る。規定が古い・不備がある場合は速やかに整備を。
  • 就業規則がない・整備が不十分な場合:法定の最低基準(労働基準法・労働契約法)に従いながら対応。個別の雇用契約書の内容を確認。専門家(社労士・弁護士)への相談を強くおすすめします。
  • 産業医がいる場合(50人以上の事業場は選任義務):産業医の意見書を取得することで、職権休職の根拠を明確にできます。
  • 産業医がいない場合(多くの中小企業):主治医の診断書・本人の同意を得た上での受診勧奨が現実的な手段です。

欠勤から休職移行までの対応フロー

欠勤が始まってから休職へ移行するまでの対応は、「連絡・確認→書面対応→休職命令→給与・手続き整理」という流れが基本です。各フェーズで何をすべきかを把握しておくことで、担当者が迷わず動けるようになります。

欠勤発生直後(1〜3日目)の対応

まず最初に、電話・メールで本人へ連絡を試みます。連絡の日時・手段・内容を記録する台帳を作成し、記録を始めます。欠勤理由が体調不良と分かっている場合は、無理に出社を促すのではなく「体調が心配です。連絡をください」という内容にとどめます。3日が経過しても連絡がない場合は、緊急連絡先(家族等)への安否確認を検討します。

欠勤が1週間以上続いた場合の対応

書面(郵送)で正式な状況確認を行います。欠勤の事実・診断書の提出依頼・連絡の要請・回答期限を明記した文書を送付します。この段階で傷病手当金の案内も同封することを推奨します。就業規則に職権休職の規定がある場合は、規定に基づいて休職命令を発令することを検討し始めます。

休職移行後に整理する事項

休職開始日が決まったら、給与処理(欠勤控除の期間・休職中の無給または有給の区分)・社会保険の手続き(健康保険・厚生年金の保険料徴収方法)・傷病手当金の申請サポートを整理します。休職期間の上限・復職条件・休職満了時の取り扱いについても、就業規則の規定を本人に書面で説明しておくと、後のトラブル防止になります。

まとめ

休職申請前の欠勤が続く場合の対応は、「記録を残しながら連絡を試み続ける」「欠勤か休職かの区分を早期に整理する」「職権休職や診断書要請などの手段を活用して宙ぶらりんの状態を解消する」という3点が核心です。放置は安全配慮義務違反、即解雇は解雇権濫用——どちらも会社にとって大きなリスクになります。

「就業規則に休職規定がない」「本人と連絡が取れず次の手が分からない」「給与処理をどうすべきか迷っている」という状況は、専門家に相談することで一気に整理できます。ウェルセンス株式会社では、20〜50名規模の企業における休職・復職支援や人事労務の課題を、経営者・兼務人事担当者の方と一緒に考えるサポートを提供しています。不確実な対応で後々の紛争リスクを高めるのではなく、まずは「うちの会社はどう対応すればいいのか」を気軽に相談いただける窓口として、ウェルセンス株式会社をご活用ください。

よくある質問

Q. 社員が無断欠勤を続けています。何日欠勤したら解雇できますか?

A. 法律上、「何日で解雇できる」という明確な基準はありません。就業規則に「正当な理由なく○日以上欠勤した場合は懲戒解雇・自然退職の対象」といった規定があれば、その規定に基づいて判断します。ただし、解雇を行う前に書面での連絡・弁明の機会の付与などの手続きが必要です。手続きを踏まずに解雇すると、労働契約法第16条の解雇権濫用として無効になるリスクがあります。まずは社会保険労務士や弁護士へ相談することをおすすめします。

Q. 本人から休職の申請がなくても、会社から休職を命じることはできますか?

A. 就業規則に「会社が必要と認めた場合に休職を命じることができる」旨の職権休職規定があれば、本人の申請を待たず会社側から休職を命じることが可能です。この方法により、欠勤と休職の区分が明確になり、給与処理や社会保険手続きの起点が定まります。規定がない場合は整備が必要です。

Q. 欠勤中の給与は支払わなければいけませんか?

A. 原則として、労働の提供がない日(欠勤日)については賃金を支払う義務はありません(ノーワークノーペイの原則・労働基準法第24条)。ただし、欠勤の原因が業務起因(業務による精神疾患など)である場合は例外的な扱いが必要なケースもあります。業務起因性が疑われる場合は、専門家に相談しながら対応することをおすすめします。

Q. 欠勤中の社員に有給休暇を充当してもよいですか?

A. 有給休暇は、原則として労働者が時季を指定するものです(労働基準法第39条)。会社が一方的に充当することは本人の同意なしには認められません。ただし、就業規則に「欠勤した場合に有給休暇を先に充当する」旨の規定があり、入社時に説明していた場合は実務上許容されるケースがあります。規定がない場合は、本人と連絡が取れた段階で合意を取った上で遡って処理する方が安全です。

Q. 本人と連絡が取れないとき、家族に連絡を取ってもよいですか?

A. 本人と連絡が取れない場合、雇用契約書や入社書類に登録された緊急連絡先(家族等)に安否確認の連絡を取ることは、安全配慮義務の観点から認められます。ただし、伝える内容は「連絡が取れず体調を心配している」という安否確認の範囲にとどめ、詳細な病状や職場での評価を伝えることはプライバシーの観点から避けてください。就業規則や雇用契約書に緊急連絡先への連絡目的を明記しておくと、トラブル防止に役立ちます。

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