「在留カードは確認した。でも、週28時間のルールって、自社のシフトだけ見ていれば大丈夫なんですよね?」——実は、この認識が最も危険です。留学生を雇用している中小企業の経営者・人事担当者の方に向けて、会社側に求められる確認義務の内容、超過就労が発覚したときのリスク、そして人事専任がいない環境でも回せる実務フローを、法令の根拠とともに解説します。
留学生が「就労できる」かどうか、会社はどう判断するのか
留学ビザ(「留学」在留資格)を持つ外国人は、原則として就労できません。就労が認められるのは、出入国在留管理庁から「資格外活動許可」を受けた場合に限られます。会社側はこの許可の有無を自ら確認する義務があります。
在留カードのどこを見るか
採用時に留学生本人から在留カードを提示してもらい、表面と裏面の両方を確認します。表面には在留資格(「留学」と記載)と在留期限が記載されています。裏面には「資格外活動許可欄」があり、ここに「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」と記載されていれば、就労が可能な状態です。この欄が空欄、または「許可なし」であれば、就労させることはできません。
在留カードの確認義務は、入管法第19条の18に定められています。単に「見た」だけでなく、在留資格・在留期限・就労可否の内容を正しく読み取ることが求められます。
在留カードだけでは足りないケース
在留資格には「留学」以外にも、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「永住者」「定住者」など多くの種類があります。外見や日本語能力だけでは判断できません。「名前が外国人らしい」「日本語が上手い」という理由で在留資格の確認を省略するのは絶対に避けてください。採用のたびに必ずカードを提示してもらい、記録として保管することが重要です。
在留期限が切れていたらどうなるか
在留期限が過ぎた状態での就労は、それ自体が不法就労にあたります。採用時に確認するだけでなく、在職中も在留期限を定期的に確認し、更新後の新しい在留カードを再度確認する仕組みが必要です。在留期限の管理は、後述する定期チェックの運用フローに組み込むことで漏れを防げます。
週28時間の上限、「自社だけ」で管理するのが最大の落とし穴
週28時間の上限は、留学生本人のすべての雇用先の就労時間を合算して計算されます。自社のシフト内に収まっていても、他社でのアルバイトと合算して超過していれば、自社も違反に加担したとみなされるリスクがあります。
合算ルールが意味すること
たとえば、自社で週18時間のシフトを組んでいる留学生が、別の飲食店で週15時間アルバイトをしていた場合、合計33時間となり週28時間の上限を超えます。自社の勤怠システムには何も問題が出ませんが、法律上は自社も規則違反に関与していることになります。「うちは守っていた」という主張は、法律上の免責にはなりません。
他社での就労時間を把握するための書類管理
会社側が他社のシフトを直接確認することはできません。そのため、採用時に「他の雇用先での週あたり就労時間申告書」を本人から取り付け、定期的(月1回程度)に更新申告を求める運用が現実的です。申告書には「虚偽申告があった場合の責任は本人が負う」旨を明記し、署名を得ておくことで、会社側の善意・注意義務の履行を記録として残せます。
現場のシフト担当者への周知が鍵
中小企業では、シフトを組むのが現場のリーダーや店長であるケースが少なくありません。「この人まだ入れる」という感覚でシフトを埋めてしまうと、知らぬ間に超過させてしまいます。シフト作成時に「留学生の週間時間数チェック」を必須ステップとして組み込み、シフト担当者が独自判断で調整できる仕組みにしておくことが重要です。
長期休暇の週40時間特例、適用条件を正確に理解する
大学等の学則に定める長期休業期間中に限り、週28時間の上限が週40時間に緩和されます。ただし、この特例は「夏休みだから」という会社側の判断で適用してよいものではありません。
特例が適用される条件
適用されるのは、留学生が在籍する大学・専門学校等の「学則」に明記された長期休業期間に限られます。大学ごとに夏季・冬季・春季の休業期間は異なり、同じ8月でも「学則上の休業期間ではない」大学も存在します。会社が「一般的に夏休みは7月〜8月」と独自に判断して週40時間のシフトを組むのは、特例の誤用です。
学校発行の証明書で確認する
特例を適用する場合は、留学生本人に在籍校が発行する「長期休暇期間証明書」または「在学証明書(休業期間記載あり)」を提出してもらい、会社で保管してください。毎年同じ期間とは限らないため、年度ごとに取得するのが原則です。証明書の取得が難しい場合は、大学の学務課に問い合わせるよう本人に案内することも有効です。
超過就労させてしまった場合、会社が受けるリスク
週28時間を超えて留学生を就労させた場合、会社は「不法就労助長罪」(入管法第73条の2)に問われる可能性があります。「知らなかった」は免責理由にならないケースがある点が、最大の注意点です。
刑事罰の内容
入管法第73条の2に基づき、不法就労者であることを知りながら就労させた場合、または在留カードの確認を怠った結果として不法就労を助長した場合、事業主や担当者個人に対して3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。法人に対しても罰則が適用される両罰規定があります。
「確認した」という記録がなければ意味がない
在留カードを確認した事実が記録として残っていなければ、調査が入ったときに「確認していた」と主張することが難しくなります。採用時に在留カードのコピーを取り、確認した日付と担当者名を記録に残しておくことが、会社側の防御として機能します。
行政・社会的影響も見落とせない
刑事罰に至らなくても、入管当局による調査・指導が入った場合、事業所名や対応状況が記録されます。外国人労働者の受け入れを続ける予定がある企業にとっては、今後の採用活動や取引先への信頼性にも影響しかねません。コンプライアンス上のリスクとして経営判断の俎上に乗せてください。
人事専任がいない会社でも回せる、週28時間管理の運用フロー
留学生の就労時間管理は、複雑に見えますが「採用時」「定期確認」「シフト設計」の三つのタイミングに分けて整理すれば、兼務担当者でも無理なく運用できます。運用フローを作った後の運用管理で迷う、または現在の体制に問題がないか確認したいという場合は、ウェルセンス株式会社にご相談いただければ、御社の状況に応じた改善案をご提案できます。
採用時に整備すべき書類
| 確認・取得する書類 | 目的 |
|---|---|
| 在留カード(表・裏)のコピー | 在留資格・許可内容・期限の記録 |
| 他の雇用先での週就労時間申告書 | 合算超過リスクの把握と責任の明確化 |
| 長期休暇期間証明書(特例適用時) | 週40時間特例の適法な適用根拠 |
| ハローワークへの外国人雇用状況届出 | 労働施策総合推進法第28条に基づく義務履行 |
定期確認のチェックポイント
月に一度、担当者が以下を確認するルーティンを設けてください。まず在留期限が翌月以内に迫っていないかを確認します。次に他の雇用先での就労状況に変化がないか、申告書の更新を本人に求めます。そして週間シフトの実績時間が28時間(または特例期間中は40時間)以内に収まっているかを勤怠データで照合します。カレンダーやスプレッドシートに期限を入力してリマインダーを設定するだけでも、確認漏れを大幅に減らせます。
シフト設計時の安全マージン
週28時間の上限ぴったりまで自社でシフトを組むと、残業や急なシフト追加が発生した場合に即座に超過します。自社のシフトは週20〜22時間程度を上限の目安として設計し、6〜8時間の余裕を持たせておくことが実務上の安全策です。特に飲食・小売業など急な欠員補充が多い業態では、この余裕幅が違反防止に直結します。
まとめ
留学生の週28時間管理において、会社側に求められるのは「在留カードを確認すること」だけではありません。資格外活動許可の有無・他社との合算時間・長期休暇特例の適正適用・定期的な在留期限チェックまで含めた、継続的な管理体制が必要です。そして万が一超過が発覚した場合、「知らなかった」「現場に任せていた」では済まない刑事罰リスクが存在します。
一方で、採用時に適切な書類を整備し、月次の確認ルーティンを設け、シフト担当者に周知する——この三つを仕組み化するだけで、人事専任がいない環境でも大半のリスクは回避できます。
ただし、運用を開始してから「本当にこれで大丈夫か」と感じたり、実際に問題が生じたりすることもあります。そうした時に人事だけで判断せず、専門家に相談できる環境があると、より安心です。ウェルセンス株式会社では、外国人労働者の雇用管理を含む人事労務課題について、スポット相談から継続的なサポートまで対応しています。御社の状況をお聞かせいただければ、実務的で実現可能なアドバイスをいたします。
よくある質問
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