部下のメンタル不調、面談記録はどう書けばいい?

部下のメンタル不調、面談記録はどう書けばいい? メンタルヘルス対応
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「先月、部下と面談したんですが……何をどこまでメモしておけばいいんでしょう?」

専任の人事がいない会社では、こうした疑問を誰にも聞けないまま、管理職が自己流で対応しているケースが少なくありません。面談はしている。でも記録はない。そして問題が深刻化したとき、「いつ・何を話したか」が誰の記憶にも残っていない——。メンタル不調対応において、面談記録は「万が一のときの会社の証明書」です。この記事では、中小企業の管理職・兼務人事担当者が今日から実践できる、面談記録の書き方・管理の仕方を具体的に解説します。

面談記録を残す目的を理解する

面談記録は「何かあったときに会社が適切に対応していた事実を証明するもの」です。この目的を理解していないと、記録の質がどうしても下がります。

安全配慮義務との関係

労働契約法第5条は、会社が従業員の生命・身体・健康を守る「安全配慮義務」を負うことを定めています。メンタル不調の兆候を把握していたにもかかわらず何も対応しなかった場合、この義務違反を問われる可能性があります。逆に言えば、「兆候を把握し、面談を実施し、対応した」という記録が残っていれば、会社が義務を果たしていた証拠になります。

実際に休職・退職・労使紛争に発展したとき、会社側が示すべき証拠の筆頭が「日常的な対応記録」です。弁護士や社労士が真っ先に確認するのも、この記録の有無です。

「言った・言わない」を防ぐ実務上の効果

面談記録のもう一つの重要な役割が、社内での「言った・言わない」トラブルの防止です。本人が「そんなことは聞いていない」と主張したとき、日付・内容・対応が記録された文書があれば、事実確認がスムーズになります。これは法的な問題になる前段階での、日常的な信頼関係の維持にも直結します。

記録がないと何が起きるか

記録がない状態で問題が深刻化すると、「会社は何もしていなかった」と見なされるリスクが生じます。担当管理職が異動・退職していれば、情報は完全に失われます。「面談はしていたはずなのに、証明できない」という状況は、会社にとって非常に不利です。記録は「対応した事実そのもの」ではなく、「対応した事実を示す証拠」として機能します。

記録を残すべきタイミングを知る

面談記録は「休職に入ってから残し始める」では遅すぎます。問題が表面化する前の初期対応こそが、後から最も重要な証拠になります。

日常の1on1・声かけからが出発点

「最近元気がないな」「遅刻が続いているな」と気になった段階、つまり上司が声をかけたそのときから記録は始まります。正式な面談でなくても、廊下での会話でも構いません。「いつ・何を話したか」をメモしておくことが、後から「早期に気づき対応していた」という証明になります。

特に記録を残すべきタイミングの例を挙げると、欠勤・遅刻・早退が増えたとき、本人から体調や悩みの相談があったとき、同僚から心配の声が上がったとき、業務パフォーマンスの急激な低下が見られたとき、などが挙げられます。

休職・復職プロセスで必要な記録の種類

休職に入ると、必要な記録の種類が一気に増えます。あらかじめ把握しておくと混乱が防げます。

フェーズ 必要な記録の種類
不調の兆候期 日常面談記録・声かけメモ
休職前 面談記録・主治医への診断書依頼の経緯・休職の合意内容
休職中 定期連絡の記録・産業医との連絡記録(該当する場合)
復職判定時 復職面談記録・主治医意見書・復職可否の判断根拠
復職後 フォローアップ面談記録・業務負荷調整の経緯

従業員数による違い

労働安全衛生法の規定により、産業医の選任義務とストレスチェックの実施義務は従業員50名以上の事業場から発生します。50名未満の会社では、産業医の関与がない状態で管理職と人事が対応を進めるケースがほとんどです。その分、管理職が残す面談記録の重みが増します。就業規則にメンタルヘルス対応の規定があるかどうかによっても、必要な記録の内容は変わります。自社の状況を確認したうえで、必要な記録の範囲を判断してください。

「使える記録」の書き方

面談記録で最も重要なのは、「事実」と「解釈・評価」を分けて書くことです。この一点を意識するだけで、記録の質は大きく変わります。

記録の3要素:日時・事実・対応

使える記録には必ず次の3要素が含まれています。まず「日時」——いつ、どこで、誰と話したかを明記します。次に「事実」——実際に起きたこと、本人が言ったこと(できる限り発言そのままで)を書きます。そして「対応」——管理職がどのような声かけや措置を行ったかを記録します。この3要素が揃っていれば、後から第三者が読んでも状況が理解できる記録になります。

事実と解釈を分ける

記録でよく見られる失敗が、主観的な言葉だけで書いてしまうことです。

  • 悪い例:「様子がおかしかった。やる気がなさそうで、精神的に不安定だと思われる」
  • 良い例:「面談中、本人が涙ぐむ場面があった(事実)。本人は『最近眠れていない』と話していた(発言の引用)。管理職の所見として、精神的に疲弊している可能性があると判断した(解釈・評価として明記)」

特に注意が必要なのが、断定的・否定的な表現です。「仮病だと思われる」「怠けている」といった記載は、紛争になった際に会社の対応姿勢そのものを疑われる根拠になりかねません。解釈を書く場合は、必ず「管理職の主観として」「所見として」と明記してください。

作成タイミングと書式

記録は面談後できるだけ速やかに作成することが原則です。時間が経つほど記憶は薄れ、後から書いた記録は信頼性が下がります。理想は当日中、遅くとも翌営業日中に作成するルールを設けましょう。書式はWordやGoogleドキュメントのテンプレートを一枚用意しておくと、管理職が「何を書けばいいかわからない」という状態を防げます。テンプレートに含める項目の例は次のとおりです。

  • 面談日時・場所
  • 面談者(管理職名)・対象者(氏名または社員番号)
  • 面談のきっかけ・背景
  • 面談中に確認した事実(本人の発言・行動)
  • 管理職が行った対応・提案・合意事項
  • 次回フォロー予定
  • 管理職所見(解釈・評価として明記)


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記録の管理と共有のルール

健康状態に関する情報は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に当たります。社内共有の範囲と保管方法には、明確なルールが必要です。

誰が保管し、誰と共有するか

基本的な考え方は、「業務上の必要性がある人だけが情報にアクセスできる」です。面談記録は、担当管理職と人事(または経営者)が共有する範囲が一般的です。同僚や他部署の管理職への共有は、原則として避けます。共有する際は口頭ではなく、アクセス管理された共有フォルダやファイルに保存し、紙の場合は施錠できる場所に保管してください。

本人への開示と確認

面談後に記録の概要を本人に共有・確認することは、「言った・言わない」トラブルを防ぐ有効な手段です。「今日の面談で確認した内容をまとめておきました。内容に齟齬があれば教えてください」と伝えることで、本人の信頼感も高まります。ただし、管理職の所見や評価の部分は、本人開示の範囲から外すか、伝え方を慎重に検討してください。

保管期間と廃棄

面談記録の保管期間について法律上の明確な規定はありませんが、労使紛争の時効や在籍期間を考慮すると、少なくとも退職後3〜5年は保管することが実務上の目安とされています。就業規則や社内規程に保管期間のルールを明記しておくと、後の判断がスムーズになります。

まとめ

部下のメンタル不調に関する面談記録は、「会社が安全配慮義務を果たした事実の証明書」です。記録には「日時・事実・対応」の3要素を含め、事実と解釈・評価を明確に分けて書くことが基本です。残し始めるタイミングは「休職後」ではなく、兆候が見え始めた初期段階から。そして記録は要配慮個人情報として、適切な範囲でのみ共有・管理してください。

とはいえ、「実際に自社の管理職に記録をどう徹底するか」「記録をもとに次のアクションをどう判断するか」といった実務の判断は、一人で抱えるには重い問題です。ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・人事担当者の方からのご相談をお受けしています。「まだ大きな問題ではないが、念のため確認しておきたい」という段階でのご相談も歓迎しています。気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 面談記録は必ず紙で残す必要がありますか?

A. 紙である必要はありません。WordやGoogleドキュメントなどのデジタルファイルで問題ありません。重要なのは、アクセス権限を適切に設定して保管することです。誰でも閲覧できる共有フォルダに置くことは避け、担当者のみがアクセスできる環境を整えてください。

Q. 管理職が「記録する必要はない」と言って記録を残してくれません。どうすればよいですか?

A. 「なぜ記録が必要か」の目的を伝えることが先決です。「後で揉めたときに、管理職自身を守る記録でもある」という視点で説明すると、動機につながりやすい場合があります。また、テンプレートを用意して「このシートに記入するだけ」という状態にすることで、記録のハードルを下げることも有効です。

Q. 面談記録を本人に見せた場合、不信感を持たれませんか?

A. 伝え方によります。「記録を残しているのは、あなたのことをきちんとサポートするためです」という文脈で共有することで、多くの場合は不信感よりも安心感につながります。ただし、管理職の評価・所見の部分は開示範囲を慎重に検討してください。

Q. 産業医がいない会社でも、面談記録は同じ形式で残せばよいですか?

A. 基本的な記録の形式は同じです。ただし、産業医がいる場合は産業医との連携記録も対応履歴の一部になるのに対し、50名未満で産業医がいない場合は管理職・人事・主治医(本人経由)の情報だけが記録の柱になります。その分、日常の面談記録の充実度が対応の証明として一層重要になります。

Q. 記録した面談内容が、後から本人の退職や解雇の根拠に使われる可能性はありますか?

A. 記録はあくまでも「対応の事実を示すもの」であり、それ自体が解雇等の根拠にはなりません。ただし、記録に不適切な表現(偏見・感情的な断定)が含まれていると、会社の対応姿勢を問われる材料になりかねません。記録は事実と客観的な対応の記述にとどめることが、会社・本人双方にとって適切な扱い方です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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