休職中に契約期間満了が来たら?雇い止めリスクと正しい対応

休職中に契約期間満了が来たら?雇い止めリスクと正しい対応 休職・復職対応
Photo by www.kaboompics.com on Pexels

「気づいたら、休職中の契約社員の契約期間満了まで1週間を切っていた——」。そんな声が、中小企業の人事担当者から寄せられることがあります。有期契約社員が体調不良で休職している最中に契約期間の満了日が近づいてきたとき、「期間満了だから終了できる」と判断してよいのでしょうか。実はこの場面には、雇い止め無効・労働審判・損害賠償といった深刻なリスクが潜んでいます。この記事では、休職中の有期契約社員への対応を法的根拠とともに整理し、自社がどう動くべきかを具体的に解説します。

「期間満了だから終了できる」は必ずしも正しくない

休職中であっても、有期労働契約の不更新が無効となるケースがあります。「契約期間が終わればそれで終了」という考えは、法的には成り立たない場合があることを、まず理解しておく必要があります。

雇い止め法理とは何か

2013年に施行された労働契約法第19条は、一定の条件を満たす有期労働契約の不更新を制限する規定です。以下のいずれかに該当する有期契約を不更新とするには、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方が必要です。どちらか一方でも欠けると、不更新は無効となり、従前と同一の条件で更新したものとみなされます。

  • 第19条1号:過去に反復更新されており、実質的に無期契約と同視できる状態にある場合
  • 第19条2号:労働者が更新を期待することに合理的な理由がある場合

重要なのは、この法理は「休職中かどうか」を問わず適用されるという点です。休職という状態は、雇い止め法理の適用を免除する理由にはなりません。

雇い止めと解雇はどう違うのか

混同されがちですが、解雇は使用者が一方的に雇用契約を終了させる行為であり、雇い止めは有期契約の期間満了に際して更新をしないことです。法的な根拠条文も異なります(解雇は労働契約法第16条、雇い止めは同第19条)。ただし、実務上の影響は同様に深刻で、雇い止めが無効と判断されれば、未払い賃金の支払いや地位確認訴訟に発展する可能性があります。

「契約期間満了=自動終了」という誤解が招くリスク

「契約書に期間が書いてあるのだから、満了すれば当然終わる」と考える経営者・担当者は少なくありません。しかし、更新を3回以上繰り返している、通算雇用期間が1年を超えている、「よほどのことがなければ更新する」という口頭での約束がある、といった事情が積み重なっていると、労働者側に「更新への合理的期待」が生じていると認められます。この状態で休職中に不更新を告げると、雇い止め無効の主張を受けるリスクが高まります。

雇い止めが無効と判断されやすいケースの見分け方

自社の有期契約社員が雇い止め法理の保護を受けやすい状態かどうかは、いくつかの要素で判断できます。事前にこれを把握しておくことが、対応方針を誤らないための第一歩です。

裁判所が参照する主な判断要素

判断要素 リスクが高い状態
更新回数・通算雇用期間 3回以上の更新、または通算1年超
契約書・通知書の記載内容 「更新する場合がある」とだけ書かれ、上限・不更新の条件が未記載
会社側の言動・慣行 「問題がなければ続けてもらう」などの口頭説明がある
業務内容の恒常性 特定プロジェクト限定ではなく、継続的・恒常的な業務を担っている
他の有期社員との比較 同様の条件の社員が更新され続けている

休職の原因が業務上疾病の場合は特に慎重に

メンタルヘルス不調による休職の場合、その不調が業務に起因している可能性(業務起因性)を見落としてはなりません。もし労働災害(労災)と認定される状況であれば、労働基準法第19条が定める「療養中および療養終了後30日間の解雇制限」の趣旨が、有期契約の不更新場面でも類似の問題として浮上します。「休職中だから更新しない」という判断の動機が、不当なものとみなされるリスクがあります。産業医や主治医の意見書を取得し、業務起因性の有無を早期に確認することが重要です。

就業規則の休職規定との整合性も確認する

就業規則に「休職期間満了をもって自然退職とする」という規定がある会社は多いですが、その規定が有期契約社員にも適用されるかどうかは別に検討が必要です。無期契約社員を念頭に置いて作られた規定がそのまま有期契約社員に適用されると主張することには法的な疑問が生じる場合があります。就業規則の適用範囲を明確にし、有期契約社員への適用条件を別途整備しておくことが望ましいです。

休職中に契約満了が近づいたときの実務対応

休職中の有期契約社員の契約満了日が近づいた場合、まず「更新するか・しないか」の判断を行い、次にその判断に応じた手続きを期限内に完了させることが必要です。放置は最もリスクの高い選択肢です。

更新しない場合:30日前予告と理由の書面化

通算1年を超える有期契約、または3回以上更新した有期契約を不更新とする場合は、少なくとも契約満了の30日前に予告することが義務づけられています(厚生労働省告示第357号「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」)。また、労働者から求めがあれば、不更新の理由を書面で明示する義務もあります。「気づいたら3日前だった」という状態では、この手続き要件を満たせません。契約満了日の2か月前には状況を確認し、方針を固めておくことを目安にしてください。

更新する場合:形式だけの更新を繰り返さない

「とりあえず更新しておけば安全」という判断は短期的には問題を回避できますが、更新を重ねるほど雇い止め法理の適用リスクが高まります。更新する場合でも、その都度、労働条件通知書に「更新の有無」「次回更新しない場合の判断基準」を明記することが必要です。労働基準法施行規則第5条はこれを義務として定めています。更新上限を設ける場合はその旨を明示し、初回契約時から記載しておくことが理想です。

タイムラインを一元管理する

休職中の社員については、契約満了日・更新通知期限・休職期間満了日の三つの日付が重なります。これらを個別に管理していると、気づかないまま期限を過ぎてしまうことがあります。Excelや人事管理ツールに「30日前アラート」を設定するなど、自動的に気づける仕組みを作ることを強くお勧めします。専任人事がいない会社ほど、この管理の抜けが法的リスクに直結します。

不調者対応を、人事だけで抱えない。精神科・心療内科の産業医が初動からサポート | ウェルセンス

契約書・労働条件通知書の整備で将来リスクを減らす

現在のトラブルへの対応と同時に、今後の契約から書類を適切に整備することで、同様のリスクを繰り返さない体制を作ることができます。

労働条件通知書に必ず記載すべき項目

労働基準法施行規則第5条および厚生労働省告示第357号に基づき、有期労働契約の労働条件通知書には以下の事項を記載する必要があります。

  • 契約を更新する場合がある・しない・条件による、のいずれかを明示
  • 更新する場合の判断基準(業務の繁閑、本人の能力・勤務態度、業績、など)
  • 更新回数の上限または通算雇用期間の上限(設ける場合)
  • 不更新とする場合がある条件(休職期間満了時の取り扱いなど)

これらを初回契約時から明示していた場合と、後から付け加えた場合とでは、労働者の「更新への合理的期待」の程度が異なります。後付けで不更新条項を追加することは、「突然の通告」とみなされるリスクがあるため、既存の契約書の見直しは慎重に進める必要があります。

産業医・主治医との連携記録も証拠として残す

休職中の社員について更新・不更新の判断を下す際、その時点での回復見込みに関する医師・産業医の意見書を取得しておくことが重要です。「回復の見込みがあったにもかかわらず不更新とした」という事実認定を避けるためにも、判断の根拠を文書として保存してください。産業医が選任されていない会社(常時50人未満の事業場では選任義務がない)の場合は、主治医への照会や、産業保健総合支援センターへの相談を活用することも一つの方法です。

就業規則における有期契約社員の規定を点検する

就業規則に有期契約社員の休職・復職・退職に関する規定が整備されていない会社では、無期契約社員向けの規定が混同して運用されてしまうことがあります。有期契約社員の取り扱いを別途明記した条文を設けるか、附則・別規程として整備することで、判断の根拠を明確にしておくことができます。

まとめ

休職中の有期契約社員の契約期間が満了しても、「期間満了だから自動終了」という考えは法的に成り立たない場合があります。労働契約法第19条の雇い止め法理は、休職中であっても適用されます。更新回数・雇用継続期間・契約書の記載内容・会社側の言動などの要素が重なることで、不更新が無効と判断されるリスクは高まります。対応の基本は、契約満了の2か月前には方針を確認し、不更新の場合は30日前に書面で予告すること、更新する場合も労働条件通知書の記載を整備することです。業務起因性の可能性があるメンタルヘルス不調の場合は、産業医・主治医の意見書を取得し、判断の根拠を文書として残してください。

「自社の有期契約社員の状況が雇い止め法理に該当するかどうか判断できない」「就業規則や労働条件通知書を整備したいが何から手をつければよいかわからない」「休職中の契約社員への対応がこれで適切か確認したい」——そうした状況に立たされている経営者・人事担当者の方は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。休職・復職支援から雇用契約の整備まで、中小企業の実態に合わせた実務サポートを提供しています。個別の事案に応じた具体的なアドバイスが可能です。

よくある質問

Q. 休職中の有期契約社員の契約を、期間満了を理由にそのまま終了させることはできますか?

A. 状況によっては可能ですが、無条件にできるわけではありません。更新回数が3回以上ある、通算雇用期間が1年を超えている、契約書に不更新の条件が明記されていないなどの事情がある場合、労働契約法第19条の雇い止め法理により、不更新が無効と判断されるリスクがあります。期間満了の前に、雇用継続の実態と契約書の内容を必ず確認してください。

Q. 雇い止めの30日前予告は、すべての有期契約社員に必要ですか?

A. 通算雇用期間が1年を超える場合、または3回以上更新した有期契約の場合に、30日前の予告が義務となります(厚生労働省告示第357号)。初回契約で更新なしの場合は義務の対象外ですが、それ以外のケースでは慎重に確認が必要です。予告が間に合わない場合は、弁護士や社会保険労務士に早急に相談することをお勧めします。

Q. メンタルヘルス不調で休職している社員の場合、対応で特に気をつけることはありますか?

A. 業務起因性(労災)の可能性があるかどうかの確認が最重要です。業務上の原因でメンタルヘルス不調が生じた場合、不更新の判断が「休職を理由とした不当な対応」とみなされるリスクがあります。産業医や主治医の意見書を取得し、回復見込みや業務起因性の有無を書面として記録しておくことが、後のトラブル防止につながります。

Q. 今後の契約から「不更新条項」を入れることはできますか?既存の契約に後から追加することは可能ですか?

A. 今後の新規契約から不更新条項を明記することは適切な対応です。しかし、既存の契約に後から不更新条項を追加する場合は、労働者が「突然の条件変更」と受け取るリスクがあります。既存の社員に対しては、丁寧な説明と合意形成のプロセスを経ることが必要です。一方的な変更通知は、後の紛争の原因になりえます。

Q. 専任の人事担当者がおらず、就業規則も古いままです。どこから手をつければよいですか?

A. まず現在進行中の対応(期間満了が近い社員への対処)を優先し、その後に就業規則・労働条件通知書の整備を進めるのが現実的な順序です。個別のケースへの対応と書類整備を同時に進めようとすると、どちらも中途半端になりがちです。ウェルセンス株式会社では、中小企業の実態に合わせて、今の緊急課題と中長期の体制整備を切り分けて支援しています。まずはご状況をお聞かせください。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

不調者対応を、人事だけで抱えない。

メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。

詳しく見る →

タイトルとURLをコピーしました