入社時の提出書類、何を集めればいい?

入社時の提出書類、何を集めればいい? 組織運営
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「入社のたびに、前回と違う書類を出してもらっている気がする」——そう感じたことはありませんか。専任の人事担当者がいない中小企業では、入社手続きを特定の社員が経験と記憶だけで回してしまいがちです。結果として、書類の漏れや保管場所のバラツキ、マイナンバーの誤った取り扱いなど、後から発覚すると対処が難しいリスクが積み重なっていきます。この記事では「何を集めればよいか」「いつまで保管すればよいか」「どこから整備すればよいか」の3つの問いに、実務ベースでお答えします。

入社時に集める書類は「法定」と「任意」に分けて考える

入社時の提出書類は、法律で定められているものと、会社が運用上必要と判断して集めるものの2種類に分かれます。まずこの区別を理解することが、整備の第一歩です。

法令が根拠となる書類

会社が準備・交付・保管する義務を負う書類の中心は、労働条件通知書(または雇用契約書)です。労働基準法第15条により、採用時に賃金・労働時間・就業場所・業務内容・退職事由などの法定記載事項を書面で明示する義務があります。この書類は「渡した」で終わりではなく、退職後3年間(将来的には5年に延長される方向)の保管が義務付けられています。

また、雇用保険・健康保険・厚生年金への加入手続きに伴う届出書類も、法定書類の範疇です。手続き後の保管については法令上の明確な期限規定は少ないものの、添付書類を含め2年を目安に保管しておくのが実務上の慣行です。

さらに、年末調整に必要な扶養控除等申告書(所得税法第194条が根拠)は7年間の保管義務があります。意外と長い期限なので注意が必要です。

実務上必要な任意書類

法令上の義務はないものの、給与計算・緊急時対応・情報管理のために実務上欠かせない書類があります。代表的なものは以下のとおりです。

  • 給与振込先口座届
  • 通勤経路届・交通費申請書
  • 緊急連絡先届
  • 誓約書(秘密保持・就業規則遵守等)
  • 健康診断書(直近のもの)
  • 資格・免許のコピー(業務上必要な場合)
  • 身元保証書(民法が根拠。有効期間は最長5年)

これらは「昔からなんとなく集めていた」という会社も多いですが、収集の目的と利用範囲を明確にしておくことが個人情報保護の観点から重要です。

保管期限を一覧で把握する

書類ごとに保管期限が異なるため、一覧で把握しておかないと「いつ廃棄してよいか」の判断ができません。退職後も漠然と保管し続けることは、個人情報の不必要な保持につながるリスクがあります。

主な書類の保管期限

書類の種類 根拠法令 保管期限 起算点
労働条件通知書・雇用契約書 労働基準法第109条 3年(当面)※将来5年 退職日
タイムカード等の労働時間記録 労働基準法第109条 3年(当面)※将来5年 退職日
賃金台帳 労働基準法第109条 3年(当面)※将来5年 退職日
扶養控除等申告書 所得税法施行規則 7年 提出年の翌年1月1日
マイナンバー含む書類 番号利用法(マイナンバー法) 利用目的終了次第速やかに廃棄 手続き完了時
社会保険・雇用保険の届出関係 各保険法 2年が目安(法定規定は書類による) 手続き完了日

「退職後もずっと保管」が引き起こすリスク

保管期限が過ぎた個人情報を保持し続けることは、個人情報保護法上の「必要のない個人情報の保有」にあたる可能性があります。特にマイナンバーは番号利用法により、利用目的(雇用保険・社会保険の届出)が完了した時点で速やかに廃棄する義務があります。「念のために手元に置いておく」は明確に違反リスクがある行為です。

退職社員のファイルを定期的に見直し、期限が過ぎたものは適切にシュレッダーや専門業者への廃棄依頼で処分する仕組みを作りましょう。

見落としやすい2つの落とし穴

入社書類の整備で特に誤解が多いのが、雇用契約書と労働条件通知書の関係、そしてマイナンバーの取り扱いです。どちらも発覚後の対処が難しいため、早めに確認することをお勧めします。

雇用契約書を渡せば労働条件通知書は不要、は誤解

「雇用契約書を交わしているから大丈夫」と考えている会社は少なくありません。しかし労働基準法第15条が求める労働条件の明示は、「法定記載事項をすべて含む書面の交付」であり、雇用契約書の形式であっても必須項目が漏れていれば義務違反になります。

明示必須の項目には「就業の場所」「従事する業務の内容」「賃金の計算・支払方法」「退職に関する事由」などが含まれます。自社の雇用契約書がこれらをすべてカバーしているか、一度確認してみてください。テンプレートをそのまま使い回していると、法改正への対応が漏れていることもあります。

マイナンバーの「とりあえずコピーして保管」は違法行為になり得る

マイナンバーは、雇用保険・社会保険の手続きという特定の目的のために収集が許可されています。手続き完了後も「何かに使えるかもしれないから」とコピーを引き出しに保管することは、番号利用法(正式名称:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)違反になるリスクがあります。

適切な運用のポイントは3つです。まず取得するときは「何の手続きのために収集するか」を従業員に説明する。次に手続きが完了したら速やかに廃棄する。そして保管中は鍵付きのキャビネットや暗号化したデジタルフォルダで管理し、アクセス権を限定する。この3点を徹底してください。

整備の着手順——バラバラな現状から標準化する手順

書類整備は一度に完璧にしようとすると手が止まります。現状を棚卸しし、優先度の高いものから順に対処するのが現実的な進め方です。

現状の棚卸しから始める

まず最初に、現在の入社手続きで実際に何を集めているかをリストアップします。担当者の頭の中にあるものを紙に書き出すだけでも構いません。「前回の入社手続きで使ったファイル一式を確認する」という方法が最も手早いです。

その上で、リサーチ結果の法定書類リストと照合し、「集めていないもの」「様式が古くなっているもの」「目的が不明確になっているもの」を特定します。

チェックリストと様式を文書化する

次に、標準チェックリストを作成します。「雇用形態(正社員・パート)」「職種(資格が必要か否か)」によって必要書類が変わる場合は、それぞれのケースに対応したリストを用意するとより実用的です。様式については、厚生労働省や日本年金機構の公式サイトで無料のひな形が公開されていますので、それをベースに自社の実情に合わせて調整するのが効率的です。

チェックリストができたら、それを社内の共有フォルダやクラウドストレージで管理し、誰がやっても同じ手順で進められる状態にします。

保管ルールを決めて運用に組み込む

最後に、書類ごとの保管場所・保管期限・廃棄方法を一覧化したルールを作ります。紙とデータが混在している場合は、「入社書類は紙で収集→スキャン後にクラウド保管→原本は鍵付きキャビネット」のように、フローを明文化しておきます。

従業員が10名未満の段階ではシンプルな運用で問題ありませんが、20〜30名を超えてくると書類量が増え、管理の抜け漏れが起きやすくなります。複数の担当者が関わるようになると、ルール整備の必要性が一気に高まるタイミングです。

会社規模・状況別の優先ポイント

入社書類の整備は「一律に全部やる」より、自社の状況に応じて優先順位をつけることが重要です。ここでは規模や状況別に、特に注意すべきポイントを整理します。

従業員10名未満の段階

この段階では、法定書類の基本を確実に押さえることが最優先です。具体的には、労働条件通知書の法定記載事項が漏れていないかの確認、マイナンバーの取り扱いルールの明確化、扶養控除等申告書の7年保管の徹底です。チェックリストはシンプルな1枚もので十分です。

従業員20〜50名規模で採用頻度が上がった段階

採用のたびに担当者が変わることも増えてくるため、誰でも同じ手順で対応できるチェックリストと様式の標準化が急務になります。また、退職者の書類が蓄積してくるため、保管期限に基づく定期廃棄のルールも整備のタイミングです。

就業規則がまだ整備されていない場合(常時10名以上の従業員がいる場合は労働基準法上の作成・届出義務があります)は、入社書類の整備と合わせて就業規則の見直しも検討してください。

人事担当が兼務で専任がいない場合

専任担当者がいない環境では、「属人化しない仕組み」を作ることが最大の目標です。チェックリスト・様式・保管ルールの3点セットを文書化し、共有フォルダで管理するだけで、担当者が変わったときの混乱を大幅に減らせます。一度整備すれば、その後の維持コストは低いため、まず着手することを優先してください。

書類整備の仕組みづくりは、担当者の経験や知識に頼らず、属人化を防ぐための投資です。「どこから始めたらいいか判断がつかない」という場合は、実務経験から適切な優先順位をお示しできます。

まとめ

入社時の提出書類は、法律で義務付けられた「法定書類」と、実務上必要な「任意書類」に分けて整理することが基本です。労働条件通知書の法定記載事項の確認、マイナンバーの適切な取り扱い、書類ごとの保管期限の把握——この3点が特に見落とされやすいポイントです。整備の進め方としては、現状の棚卸しからチェックリストの文書化、保管ルールの策定という順で進めると、無理なく標準化できます。

「うちの会社の現状、どこから手をつければいいかわからない」というご状況であれば、ウェルセンス株式会社にお気軽にご相談ください。人事の専門知識がなくても対応できるよう、実務に即したサポートをご提供しています。

よくある質問

Q. 雇用契約書を交わしていれば、労働条件通知書は別途用意しなくてもいいですか?

A. 雇用契約書に労働基準法第15条が定める法定記載事項がすべて含まれていれば、別途の労働条件通知書は不要です。ただし「就業の場所」「業務の内容」「賃金の計算・支払方法」「退職事由」などが漏れていると義務違反になります。自社の契約書が法定項目を網羅しているか、一度確認することをお勧めします。

Q. マイナンバーのコピーは、手続き後どう廃棄すればいいですか?

A. 紙のコピーはシュレッダーによる裁断、電子データは完全削除(ゴミ箱からの完全消去・上書き消去ソフトの利用など)が基本です。廃棄した日付と担当者を記録しておくと、万が一の確認の際に役立ちます。専門の情報処理業者に委託する方法もあります。いずれにせよ「利用目的が完了したら速やかに廃棄」が番号利用法の原則です。

Q. 退職した社員の書類は、退職日から何年で捨てていいですか?

A. 書類の種類によって異なります。労働条件通知書・賃金台帳・タイムカードなどの労働基準法関係書類は退職日から3年(将来的には5年に延長予定)、扶養控除等申告書などの所得税関係は7年が保管期限の目安です。マイナンバー含む書類は手続き完了後に速やかに廃棄します。書類ごとに廃棄スケジュールを管理表で管理すると、見落としを防げます。

Q. 入社書類はデジタル(電子データ)で保管しても問題ありませんか?

A. 多くの書類はデジタル保管が認められています。ただし、雇用契約書・労働条件通知書については、2022年以降の法改正により電子交付・電子保存の要件が整備されました。電子データで保管する場合は、改ざん防止措置(タイムスタンプの付与など)や、検索・閲覧が可能な状態での保存が求められます。クラウドストレージを使う場合はアクセス権の設定も適切に行ってください。

Q. 社内に人事の知識がないまま対応してきたので、どこを見直すべきか判断できません

A. 多くの中小企業がその状況です。最初のステップとしては、現在の様式・書類をまとめて一度整理し、法令要件とのズレを把握することをお勧めします。社会保険労務士や人事労務支援の専門家に「診断」を依頼するのも効果的です。ウェルセンス株式会社では、現状の棚卸しからルール策定までを伴走支援しています。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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