人事評価と目標設定がバラバラで困ったら見直したい連動の仕組み

人事評価と目標設定がバラバラで困ったら見直したい連動の仕組み 人事制度
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「評価シートを出して、給与が変わって——気づけばまた目標を書く時期。でも今年の目標、去年とほとんど同じかもしれない。」そんな感覚に覚えがある方は少なくないはずです。評価したはずなのに何も変わらない、目標を立てたはずなのに評価と結びついていない。この「バラバラ感」の正体は、評価と目標設定が別々のイベントとして設計されているところにあります。この記事では、20〜50名規模の企業でも現実的に回せる「評価と目標を連動させる仕組み」を、年間カレンダーや面談の流れまで含めて具体的に解説します。

評価と目標設定が「バラバラ」になる本当の原因

人事評価 目標設定 連動がうまく機能していない最大の原因は、制度の設計ではなく「タイミングと順番」の問題です。この2つを正しい順序でつなぎ直すだけで、運用の質は大きく変わります。

評価が「提出して終わり」になっている

多くの中小企業で見られるのが、評価シートを記入して上長に提出し、承認ルートを経て人事が集計する——という流れで評価サイクルが完結しているケースです。評価結果が本人にどう伝わるか、次の目標設定にどうつながるかの手順が設計されていないため、評価は「記録作業」に終わってしまいます。

目標設定が「評価と切り離された別のイベント」になっている

評価期末から数週間後に「では次期の目標を書いてください」と依頼が来る——この時点ですでに評価結果のフィードバックが終わっていないか、フィードバック自体がなかったりします。評価で何がわかったかを踏まえずに目標を書かせるため、目標が毎年ほぼ同内容になる、あるいは本人が「去年と同じでいいか」と判断してしまいます。

会社の方針と個人目標の順番が逆になっている

個人目標を先に書かせておいて、後から部門方針が降りてくる、というケースも頻繁に起きます。本来は「経営計画→部門方針→個人目標」という上から下へのカスケード(目標の連鎖)が必要で、この順番が崩れると個人目標が会社の方向性と無関係なものになります。経営計画の確定が遅れがちな企業では、意識的に「個人目標の記入開始日を遅らせる」設計が必要です。

年間評価サイクルをカレンダーに落とし込む

人事評価と目標設定を連動させるには、年間の「何月に何をするか」を先に設計することが出発点です特に兼務人事担当者は、自分が動くタイミングを事前に把握することで、日常業務との両立が可能になります。

逆算カレンダーの考え方

4月昇給を例にとると、給与システムへの入力・承認には少なくとも2〜3週間が必要です。そこから逆算すると、評価集計の完了は3月上旬、評価面談は2月中、評価シート記入は1月後半——というように、締め切りを後ろから積み上げていきます。この「逆算カレンダー」を人事が先に設計し、経営陣・マネージャーに年度はじめに共有することが重要です。

4月昇給・年2回評価の場合の年間スケジュール例

時期 人事の作業 マネージャーの作業 従業員の作業
4月上旬 上期目標の承認・登録 目標設定面談の実施 上期目標の提出
9月下旬〜10月 中間評価の集計確認 中間フィードバック面談 上期の自己評価記入
1月 評価シートの配布・回収管理 評価シート記入・評価面談準備 下期の自己評価記入
2月 評価集計・調整会議の準備 評価フィードバック面談の実施 評価フィードバックを受ける
3月上旬 昇給原案の作成・承認 次期目標設定面談の実施 次期目標の提出・合意
3月下旬 給与システム入力・確認 結果の本人通知確認 処遇変更の確認

評価サイクルの回数と規模の関係

年2回評価(上期・下期)は多くの中小企業に適していますが、20名以下の規模では年1回評価のほうが運用負荷が低く現実的な場合もあります。一方、50名に近い規模では、マネージャーの数が増えるため、面談のスケジュール調整や評価の公平性を担保する調整会議(いわゆるキャリブレーション)が必要になってきます。自社の規模と人事リソースに照らし合わせて評価サイクルの回数を決めることが先決です。

評価フィードバックと目標設定面談を正しくつなげる

評価面談と目標設定面談は、目的がまったく異なります。この2つを適切に設計することで、マネージャーの負荷を下げながら、従業員の納得感を高めることができます。

「過去の振り返り」と「未来の合意」は分けて考える

評価フィードバック面談は「過去の行動・成果を振り返り、評価の根拠を伝える場」です。一方、目標設定面談は「次期に何を達成するかを上長と合意する場」です。この2つを1回の面談に詰め込むと、マネージャーが「評価を伝えると目標設定の議論に影響するから言いにくい」という心理的ブレーキを起こし、フィードバックが曖昧になりがちです。推奨は評価フィードバック面談を先に実施し、1〜2週間のインターバルを置いてから目標設定面談を行う2段階設計です。

1回にまとめる場合のアジェンダ設計

マネージャーの数が少なく2回実施が難しい場合は、1回の面談内でアジェンダを明確に分けることが最低限の対策です。たとえば「最初の20分で評価フィードバック、次の20分で目標設定」と時間を区切り、評価フィードバックが終わってから目標の話に移ることをアジェンダに明示します。「評価の話をしている間は目標の話をしない」というルールを事前にマネージャーに共有するだけで、面談の質はかなり変わります。

評価結果の通知を「制度化」する

評価結果(等級・昇降給の有無)をいつ・誰が・どのように本人に伝えるかが曖昧な企業は少なくありません。「給与明細が変わって初めて気づいた」という状態は、従業員の信頼を大きく損ないます。評価結果の通知タイミングと方法を就業規則または評価制度規程に明記し、面談の場で口頭で伝えることを標準化しましょう。

なお、昇降給の基準は労働基準法第89条により就業規則への記載が義務づけられているため(常時10名以上の事業場)、評価結果が賃金に連動する場合はその根拠を就業規則・賃金規程に明記しておく必要があります。

目標設定を「会社の方針」と連動させる仕組み

個人目標を会社の経営方針と結びつけるには、目標の「上から下への連鎖(カスケード)」を設計し、個人目標の記入開始前に会社・部門の方針を確定させることが前提となります。

カスケードの基本的な流れ

まず経営陣が年度の経営目標・重点方針を確定させます。次にその方針を各部門長が自部門の目標に翻訳します。そのうえで個人が自分の役割に応じた目標を設定します。この順序が守られれば、個人目標は自然と会社の方向性と連動したものになります。重要なのは、人事が「経営陣に年度計画の確定期限を合意してもらう」という働きかけを年間スケジュールの最初に行うことです。

目標設定は「提出して終わり」にしない

「本人に書かせて提出させる」だけの運用では、目標の難易度がばらばらになります(簡単な目標しか書かない人、逆に非現実的な目標を書く人)。目標設定のプロセスは「本人が目標案を作成→上長がコメント・修正依頼→本人が修正→上長と合意」という往復プロセスとして設計することが重要です。小規模企業であれば、このやり取りはメールやチャットツールで十分に代替できます。

育児・介護休業取得者の目標設定に注意する

育児・介護休業を取得している従業員の目標設定では、フルタイム勤務を前提とした目標量をそのまま課さないよう注意が必要です。育児介護休業法は休業取得を理由とした不利益取り扱いを禁じており、休業期間中に達成不可能な目標を設定することは、実態として不利益な扱いにあたる可能性があります。目標設定時には勤務形態・在籍期間を踏まえた個別の調整を行うことを、マネージャー向けのガイドラインに盛り込んでおきましょう。

小規模企業が陥りやすい運用の落とし穴と対策

20〜50名規模の企業では、複雑な制度よりも「シンプルで継続できる設計」のほうが圧倒的に重要です。よくある落とし穴を把握しておくことで、制度が形骸化するリスクを大幅に減らせます。

「完璧な制度」を目指して動けなくなる

目標管理制度(MBO)やOKRなど、体系的なフレームワークの解説を読んで「うちには難しすぎる」と感じて何も変えないままになる企業は少なくありません。まず取り組むべきは「評価シートの提出→評価フィードバック面談→目標設定面談→目標の上長承認」という最小限の流れを年間カレンダーに落とし込み、1サイクル回してみることです。最初から全機能を整備しなくても、この流れがあれば評価と目標の連動は始まります。

マネージャー教育なしで面談の質は上がらない

評価面談や目標設定面談を「やってください」と依頼するだけでは、マネージャーによって面談の質にばらつきが出ます。1〜2時間程度の短いマネージャー向け勉強会を評価期前に開催し、面談の目的・アジェンダの進め方・フィードバックの伝え方の基本を共有するだけで、面談の質は大きく変わります。外部の専門家を活用して研修を組むことも、専任人事のいない企業では有効な選択肢です。

就業規則・賃金規程との整合を定期的に確認する

評価基準や目標設定の指標を年度ごとに見直すこと自体は問題ありませんが、その変更が実質的に賃金水準の引き下げにつながる場合は、労働契約法第9条・第10条が定める「合理的な理由」と「従業員への周知」が求められます。評価制度を変更する際には、その内容が就業規則・賃金規程と整合しているかを確認し、必要であれば社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

まとめ

人事評価と目標設定がバラバラになる根本的な原因は、「評価が提出で完結している」「目標設定のタイミングが評価と切り離されている」「会社方針と個人目標の順番が逆になっている」の3点に集約されます。対策の出発点は、年間の評価サイクルをカレンダーに落とし込み、評価フィードバック面談→目標設定面談という2段階の流れを設計することです。小規模企業では完璧な制度よりも「シンプルで継続できる運用」を優先し、まず1サイクル回してみることが大切です。

ウェルセンス株式会社では、20〜50名規模の企業における人事評価制度の設計・運用支援も行っています。「自社の規模でどこから手をつければいいかわからない」「評価と目標設定の連動をゼロから整えたい」という場合は、お気軽にご相談ください。具体的な状況をお聞きしたうえで、現実的な対応方法をご提案します。

よくある質問

Q. 評価面談と目標設定面談を1回にまとめても問題ないですか?

A. 可能ですが、アジェンダを明確に分けることが必須です。「前半20分で評価フィードバック、後半20分で目標設定」のように時間と議題を区切り、評価の話が終わってから目標の話に移るルールをマネージャーに徹底してください。2つを混在させると、フィードバックが曖昧になったり目標設定が評価への反論の場になったりするリスクがあります。人事リソースに余裕があれば、1〜2週間のインターバルを置いて2回に分ける設計が理想的です。

Q. 年1回評価と年2回評価、どちらが小規模企業に向いていますか?

A. 20名以下であれば年1回評価のほうが運用負荷が低く継続しやすいケースが多いです。一方、30〜50名規模になると事業環境の変化に合わせて目標を調整する機会として中間評価が機能するため、年2回評価(上期・下期)が有効になります。どちらを選ぶかは制度の完成度より「実際に回し続けられるか」を基準にして判断してください。

Q. 評価結果を賃金に連動させる場合、就業規則への記載は必ず必要ですか?

A. 常時10名以上の労働者を使用する事業場では、昇給・賞与の算定基準を就業規則に定めることが労働基準法第89条により義務づけられています。評価結果が賃金に反映される場合、その根拠と手順が就業規則または賃金規程に明記されていなければ、評価に基づく昇降給が「一方的な労働条件の不利益変更」とみなされるリスクがあります。制度を整備・変更する際には社会保険労務士に確認することをおすすめします。

Q. 育児休業中の社員の目標設定はどうすればよいですか?

A. 育児休業取得期間中はそもそも目標の対象外とするか、短縮した在籍期間・勤務日数に合わせた目標量に調整することが基本です。復職後のフルタイム前提の目標をそのまま課すことは、育児介護休業法が禁じる不利益取り扱いに該当する可能性があります。復職前面談の場で本人の勤務形態と希望を確認し、上長と人事が連携して目標を設定するプロセスをガイドラインに盛り込んでおくことをおすすめします。

Q. 専任人事がいない状態で評価制度を一から整備するには何から始めればよいですか?

A. まず「年間でいつ・何をするか」のカレンダーを作ることから始めてください。評価シートの配布・回収、評価フィードバック面談、目標設定面談、給与改定の通知——この4つのイベントに日程を設定し、マネージャーと経営陣に共有するだけで、評価と目標設定のサイクルは動き始めます。制度の細部(評価項目や配点)は1サイクル回した後に改善していくほうが、実態に合った制度になります。最初から完璧を目指さず、まず動かすことを優先してください。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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