人事評価書類の保管年数と情報管理の実務ポイント

人事評価書類の保管年数と情報管理の実務ポイント 人事制度
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「評価シートって何年保存すればいいんだろう?」「退職した社員の面談記録、もう捨てていいよね?」——専任の人事担当者がいない会社では、こうした疑問が曖昧なまま放置されがちです。しかし、保管ルールが整っていないと、労使トラブル発生時に会社側が著しく不利になるリスクがあります。この記事では、人事評価書類の保管年数と情報管理の実務ポイントを、法的根拠を交えながらわかりやすく解説します。

人事評価書類は「法定書類」なのか?まず押さえるべき基本

評価シートは直接の法定書類ではない

労働基準法では、労働者名簿・賃金台帳・雇入れや解雇に関する書類など、保存義務のある書類が明示されています。しかし、人事評価シートや面談記録はこの一覧に直接記載されていません。そのため「どう扱えばいいかわからない」と感じるのは無理もありません。

ただし、「直接の法定書類ではない=保管しなくてよい」とはなりません。評価シートは降格・解雇・賃金変更の判断根拠となる場合があり、その場合は労基法第109条が定める「解雇・退職に関する書類」に準じると解釈されます。法律の文言だけを見て「対象外」と判断するのは危険です。

実務上の推奨保管年数は「在職中+退職後5年」

2020年に施行された労働基準法の改正により、賃金請求権の時効が3年から5年に延長されました(当面は3年の経過措置)。これに伴い、法定保存書類の保管年数も5年(当面3年)に変更されています。人事評価書類についても、この5年基準に合わせて管理しておくことがリスク管理上の整合性を保ちやすくなります。

具体的には、退職日を起算点として最低でも3〜5年間は保管することが実務上の推奨値です。「退職したらすぐに廃棄」「なんとなく3年置いている」という根拠のない運用は、今すぐ見直すべきです。

書類の種類ごとに確認する保管年数の目安

法定保存義務のある書類の一覧

まず、法律で明確に保管義務が定められている書類を確認しておきましょう。これらは人事評価書類と一緒に管理されることが多いため、保管年数の基準として参考になります。

労働者名簿・賃金台帳は労働基準法第107条・第108条に基づき5年(当面3年)の保管が必要です。雇入れ・解雇・退職に関する書類は同法第109条に基づき同様に5年(当面3年)です。健康診断個人票・ストレスチェック結果・産業医の面接指導結果記録は、労働安全衛生法および同規則に基づきいずれも5年間の保管義務があります。

人事評価書類の種類別・推奨保管期間

法定書類ではない人事評価書類については、その内容と用途に応じて保管期間の目安を設定することが重要です。以下を参考にしてください。

人事評価シート(定期評価)は、昇給・昇格・賞与算定の根拠となるため、在職中は全期間、退職後は5年間の保管を推奨します。目標管理シート(MBO)も評価根拠の一部となるため同様の扱いが適切です。定期面談記録は、特に降格・改善指導の経緯が含まれる場合は5年、通常のキャリア面談であれば3年が目安です。一方、採用選考書類(応募者のもの)については、不採用者分は1〜3年、採用者分は在職中は保管し退職後5年とするのが一般的です。

個人情報保護法の観点から見る評価書類の取り扱い

評価シートは「個人情報」に該当する

人事評価シートには、氏名・所属・業績・能力・勤怠状況など、特定の個人を識別できる情報が含まれています。これは個人情報保護法上の「個人情報」に該当します。したがって、利用目的の特定・通知、不正アクセスの防止、第三者提供の制限といった義務が生じます。

特に注意が必要なのは、「いつか使うかもしれないから」という理由で際限なく保管し続けることです。個人情報は利用目的の達成に必要な範囲を超えて保管してはならないと定められており(個人情報保護法第19条)、保管期間の上限も組織として明確に設定しておく必要があります。

健康状態が含まれる面談記録は「要配慮個人情報」

メンタル不調者との面談記録や、復職判定の際に記録した本人の心身状態の情報は、個人情報保護法第2条第3項が定める「要配慮個人情報」に該当しうる重要な情報です。要配慮個人情報とは、本人の病歴・心身の状態・健康診断結果など、取り扱いに特別な配慮が必要な情報のことです。

要配慮個人情報の取得・利用・第三者提供には、原則として本人の明示的な同意が必要です。また、開示請求・訂正請求・利用停止請求への対応義務もあります。「上司が自由に部下の面談記録を見られる状態」は、この観点から見ると法的リスクを抱えています。閲覧権限は「業務上、知る必要のある者」に限定するアクセス制御の仕組みを整えることが不可欠です。

紙とデジタルが混在する現場での管理体制の整え方

まず現状の棚卸しから始める

多くの中小企業では、評価シートは紙で押印・面談記録はExcelで保存・フィードバックメモは担当者の個人PCに保存……という状態が続いています。この「サイロ化」した状態では、担当者が交代するたびに「どこに何があるかわからない」問題が繰り返されます。

まず取り組むべきは、現状の棚卸しです。どの書類が、どこに、どの形式で、誰の管理下に存在するかをリスト化します。その際、書類の種類・保管場所・保管形式・最終更新日・保管期限の目安を一覧表に整理すると、次のアクションが明確になります。

電子保存するときに最低限整えるべき体制

電子データで人事評価書類を管理する場合、電子帳簿保存法は人事書類には直接適用されませんが、実務上は以下の3点を整えることが推奨されます。まず「アクセス権限の設定」です。誰でも閲覧・編集・削除できる状態は避け、人事担当者・直属上長・経営者など役割ごとにアクセスレベルを設定します。次に「改ざん防止と変更履歴の記録」です。クラウドストレージであれば変更履歴が自動で残るサービスを選ぶと安心です。最後に「定期的なバックアップ」です。データが消えたときに復元できる体制がなければ、書類として機能しません。

既存の紙書類については、スキャンしてPDF化したうえでクラウド管理に移行していく流れが現実的です。ただし、法的根拠が必要な書類(署名・押印のある原本)については紙での保管も並行して検討してください。

労使トラブル時に書類がないと何が起きるか

「証拠がない」と会社側が著しく不利になる

労働審判や裁判において、会社側は「正当な理由があった」ことを書証(書面による証拠)で示す必要があります。例えば、業績不振を理由に降格した場合、その判断根拠となる評価シートや面談記録がなければ「恣意的な降格だった」と判断されるリスクがあります。

実際に問題となりやすいケースとして、解雇・降格の根拠書類の廃棄、改善指導を行った事実の記録不在、ハラスメント事案における「言った言わない」の水掛け論、などがあります。いずれも、記録さえあれば会社側の主張を裏付けられたケースです。「問題が起きてから記録を作ろう」では手遅れです。

面談記録は「その日のうちに」残す習慣を

面談記録の作成で多くの企業が陥るのが、「後で書こうと思っていたら忘れた」問題です。記憶は時間とともに曖昧になり、特に感情的なやりとりが含まれる面談ほど後から客観的に記録することが難しくなります。

面談当日中に、日時・参加者・主な発言内容・合意事項・次回対応の記録を残すルールを設けましょう。フォーマットはシンプルでかまいません。重要なのは「記録した」という事実と、その内容が客観的であることです。特に改善指導・注意・業務変更を伴う面談では、本人の署名や確認を得た記録を残しておくと、後のトラブルリスクを大幅に下げられます。

メンタル不調者・休職者の面談記録管理で特に注意すべきこと

誰が保管すべきか:役割の整理が最初のステップ

産業医面談・上司との復職面談・人事担当者によるケア面談など、休職者に関わる面談は複数の関係者によって行われます。そのため「誰が記録を持っているか」が曖昧になりやすい構造があります。

基本的な考え方として、産業医が行った面接指導の記録は産業医(または事業者)が5年間保管する法的義務があります(労働安全衛生規則第52条の18)。人事担当者が行ったケア面談の記録は、人事部門が一元管理するのが原則です。直属上司が行った業務調整面談の記録は、人事部門に提出・共有したうえで上司個人の手元に残さないルールを設けることが望ましいです。健康情報が含まれる記録は、一般の評価書類と区別して保管場所・アクセス権限を分けて管理しましょう。

本人から開示請求があった場合の対応

従業員が自分の面談記録や評価シートの開示を求めてきた場合、個人情報保護法に基づき原則として開示に応じる必要があります。「社内の機密だから見せられない」という対応は、法的に通用しません。

事前に「開示請求があった場合の対応フロー」を整備しておきましょう。具体的には、請求窓口の設定・対応期限(法律上は原則として遅滞なく)・開示する範囲の判断基準(第三者情報が含まれる部分は除外できる場合がある)を明文化しておくことが重要です。対応フローが整っていないと、請求が来るたびに慌てることになります。

まとめ

人事評価書類には直接の法定保存義務がないものの、労使トラブル時の証拠書類として機能するため、退職後5年(当面3年)を目安とした保管が実務上の推奨値です。また、健康情報を含む面談記録は「要配慮個人情報」として厳格な管理が必要であり、アクセス権限の設定・保管場所の分離・開示請求への対応フローを事前に整備することが求められます。紙とデジタルが混在している場合は、まず現状の棚卸しから着手し、役割ごとの保管ルールを明文化しましょう。

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よくある質問

Q. 人事評価シートには法律で定められた保管義務がありますか?

A. 人事評価シートは労働基準法が直接指定する法定書類ではありません。ただし、降格・解雇・賃金変更の根拠書類として「解雇・退職に関する書類」に準じると解釈される場合があります。法的トラブルへの備えとして、退職後5年間(当面3年)の保管が実務上の推奨値です。

Q. 退職した社員の評価書類はすぐに廃棄してもよいですか?

A. 退職直後の廃棄はリスクがあります。退職後に未払い残業代請求や不当解雇の主張が行われるケースがあり、その場合に評価書類が重要な証拠となります。退職日を起算点として少なくとも3年、できれば5年は保管することを推奨します。

Q. 休職者との面談記録は誰が管理すべきですか?

A. 産業医が行った面接指導の記録は産業医(または事業者)が5年間保管する法的義務があります。人事担当者・上司が行った面談記録は人事部門が一元管理するのが原則です。健康情報を含む記録は一般の評価書類と区別し、アクセス権限を限定した専用の保管場所を設けることが重要です。

Q. 従業員から「自分の評価シートを見せてほしい」と言われたらどう対応すればよいですか?

A. 個人情報保護法に基づき、本人からの開示請求には原則として応じる必要があります。「社内機密だから見せられない」という対応は法的に通用しません。事前に開示請求の対応窓口・期限・開示範囲の判断基準を社内ルールとして整備しておくことで、請求があった際にスムーズに対応できます。

Q. 評価書類をクラウドで管理する場合、特別な要件はありますか?

A. 電子帳簿保存法は人事書類には直接適用されませんが、実務上はアクセス権限の設定・改ざん防止と変更履歴の記録・定期的なバックアップの3点を整えることが推奨されます。特に健康情報を含む書類は、一般の評価書類とは別フォルダ・別権限で管理することが個人情報保護の観点からも重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
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