復職時短勤務の規定整備に迷ったら読む就業規則の作り方

復職時短勤務の規定整備に迷ったら読む就業規則の作り方 人事制度
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「とりあえず様子を見ながら」と口頭で時短勤務を認めてきたら、気づけば1年以上が経過していた——そんな経験はないでしょうか。あるいは、今まさに復職者の時短勤務をどう規定に落とせばいいか手が止まっている方もいるかもしれません。復職時の時短勤務は、期間・給与・見直しタイミングの3点が就業規則に明記されていないと、後から「話が違う」「あの人と扱いが違う」というトラブルの火種になります。この記事では、20〜50名規模の企業で実際に使える条文の考え方と整備の手順を、専門知識がなくても理解できるよう解説します。

復職時短勤務の規程整備がなぜ急務なのか

復職時の時短勤務を就業規則に規定していない場合、会社が時短勤務を終了しようとするだけで「一方的な労働条件の変更」と主張されるリスクがあります。口約束や個別対応での運用は、最初の1人は乗り越えられても、2人目・3人目で必ず綻びが出ます。

「口約束運用」が引き起こす3つのリスク

復職者への個別対応を繰り返してきた企業ではよく見られるパターンですが、規程がない状態での運用には大きく3つのリスクがあります。まず、対応内容が担当者によってブレるため、従業員間で不公平感が生まれやすくなります。次に、「もう少し様子を見て」を繰り返すうちに、時短勤務が事実上の恒久制度になり、通常勤務への移行タイミングを逸します。そして、後から「それは会社が約束した労働条件だ」と主張された場合、規程がなければ反論が難しくなります。

育児・介護の時短制度と混同しないことが前提

就業規則の整備に入る前に、一点だけ確認しておきたいのが「制度の区別」です。育児・介護休業法第23条に基づく時短勤務制度(育児目的の場合、子が3歳になるまでが義務)とは、対象・期間・給与の考え方がまったく異なります。復職支援のための時短勤務は「メンタルヘルス不調等からの職場復帰を支援する措置」として、別制度であることを規程上も明確に区別して定義しましょう。同じ規程内に混在させると、適用範囲をめぐるトラブルの原因になります。

時短勤務の期間上限をどう設定するか

法律が期間の上限を定めているわけではありませんが、実務的には「最長3〜6ヶ月を基本とし、最大でも1年以内」に設計している企業が多く、これが一つの現実的な目安です。上限を決めないことのリスクのほうが、設けることのリスクより大きいと考えてください。

「基本期間」と「延長規定」を分けて考える

期間の設計は、最初から長期を認める方式ではなく、「基本期間+延長申請」の構造にすることを推奨します。たとえば「復職日から3ヶ月を基本期間とし、産業医または主治医の意見を踏まえ、会社が認める場合に限り最大6ヶ月を上限に延長できる」という組み立てです。この設計のメリットは、延長が会社の裁量判断であることが明確になり、「延長して当然」という認識が生まれにくくなる点です。なお、延長する場合は都度、本人の同意書と医師の意見書を取得することを運用ルールに組み込みましょう。

産業医がいない場合の判断フロー

産業医の選任義務が生じるのは従業員50名以上の事業場です(労働安全衛生法第13条)。50名未満の企業では産業医がいないケースも多く、その場合は「主治医の意見書をもとに会社が判断する」という形になります。この場合でも、「主治医の意見書の提出を復職・時短継続の条件とする」ことを規程に明記することで、医学的根拠に基づく判断であることを担保できます。産業医との契約がある場合は、「産業医の意見を優先する」旨も規程に加えておくと、復職可否の決定権が会社にあることをより明確に示せます。

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時短勤務中の給与はどう決めて規程に書くか

時短勤務中の給与は「実労働時間に比例して減額する」方式が最もシンプルで、後のトラブルも起きにくい設計です。満額支給を選択する場合は、その根拠と終了条件を規程に必ず明記しなければなりません。

時間比例減額方式の考え方と条文への落とし方

たとえば所定労働時間が1日8時間の従業員が6時間勤務で復職する場合、給与を8分の6(75%)とする計算が時間比例減額方式です。これを規程に落とす際は「時短勤務期間中の賃金は、所定労働時間に対する実労働時間の割合により算定する」という一文が基本形になります。なお、労働基準法第89条により、「賃金の決定・計算・支払の方法」は就業規則の絶対的記載事項です。給与を通常と変える場合は必ず規程に根拠を置かなければ、一方的な賃金の引き下げ(労働契約法第10条が定める不利益変更)と判断されるリスクがあります。

傷病手当金との関係を整理しておく

メンタルヘルス不調での休職後の復職では、復職後も一定期間、健康保険の傷病手当金を受給しているケースがあります。傷病手当金は「労務に就いていない日」に対して支給されるもので、復職して給与が発生すると支給が止まるか、給与が傷病手当金の日額を下回る日は差額が補填される仕組みです。復職後に給与と傷病手当金が重複しないよう、「時短勤務期間中の賃金算定にあたっては、健康保険からの給付内容と整合を確認する」という運用方針を社内ルールとして整備しておきましょう。規程本文には詳細を書かず、運用マニュアルに記載する形でも構いません。

就業規則への条文例と規程の構造

条文は「シンプルで・網羅的で・解釈の揺れがない」ことが原則です。以下に20〜50名規模の企業で実際に使いやすい条文の骨格例を示します。

条文骨格の例

以下は「休職・復職規程」に盛り込む場合の条文骨格例です。あくまで参考例であり、実際の整備は社労士等への確認を推奨します。

条文項目 記載内容のポイント
対象者の定義 傷病(メンタルヘルス不調を含む)による休職から復職した者であり、会社が復職支援を必要と認めた場合に適用
時短勤務の内容 1日の所定労働時間を○時間に短縮する。始業・終業時刻は会社と本人が協議して定める
適用期間 復職日から3ヶ月を基本とし、産業医(または主治医)の意見を踏まえ会社が認める場合に延長できる。延長は最大○ヶ月を上限とする
賃金の取扱い 時短勤務期間中の賃金は、所定労働時間に対する実労働時間の割合に基づき算定する
見直し・終了 ○ヶ月ごとに上長・人事が面談を実施し、通常勤務への移行・延長・再休職のいずれかを判断する
規程の適用除外 育児・介護休業法に基づく短時間勤務制度とは別に定めるものとし、同制度は本規程の対象外とする

就業規則本則に書くか、別規程にするか

20〜50名規模では、「休職規程」と「復職支援規程」を一体化させた「休職・復職規程」として整備するのが現実的です。就業規則の本則(労働基準法第89条に基づく本体)には「休職・復職については別途定める休職・復職規程による」と一行入れるだけで足り、詳細は別規程に委ねる形が、改訂のしやすさの観点からも合理的です。別規程は就業規則の附属規程として位置づけ、労働基準監督署への届出時に一緒に提出します(常時10名以上の事業場の場合、就業規則は届出義務あり)。

「規程を作ったはいいが、うちの場合はどう書き分ける?」という個別の疑問は、スポット相談で実例をもとに整理することもできます。

見直し面談と通常勤務への移行ルールの作り方

復職後の支援で最も属人化しやすいのが「いつ・誰が・何を判断して通常勤務に戻すか」というプロセスです。この手続きを規程または運用マニュアルに落とすことで、上司や人事担当者が変わっても同じ対応ができるようになります。

見直し面談の実施主体・頻度・確認事項

実務的には「復職後1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月」のタイミングで面談を設定し、記録を残す運用が定着しやすいです。面談の実施主体は「直属の上長と人事(または経営者)の両者」とし、一方だけで判断しない仕組みにします。面談で確認する項目としては、出勤状況・体調・業務遂行度・本人の意向・主治医の方針が基本セットです。これらをチェックシート化しておくと、担当者が変わっても均質な対応が可能になります。

「通常勤務への移行」を誰がどう決めるか

通常勤務への移行判断は、あくまで会社の決定であることを規程に明記することが重要です。「本人の希望のみで移行を決定する」でも「会社が一方的に決定する」でもなく、「医師の意見・面談の確認結果をもとに、会社が総合的に判断する」という枠組みを作ります。移行の際は、「通常勤務移行通知書」を書面で交付し、本人の署名(確認欄)を取得しておくと、後から「聞いていない」というトラブルを防げます。

まとめ

復職時短勤務の規程整備は、「期間の上限」「給与の算定根拠」「見直し面談の手続き」の3点を就業規則または別規程に明文化することが出発点です。口約束での運用は最初の対応は乗り越えられても、2人目・3人目で必ず課題が表面化します。育児・介護の時短制度との区別、傷病手当金との整合、産業医がいない場合の判断フローまで整理しておくと、いざというときに慌てずに対応できます。

ただし、人事1人で抱え込むと、細部の判断で揺らぎやすいのが実情です。「この場面では規程のどの条文を適用するのか」という実装段階の相談も含め、ウェルセンス株式会社ではサポートしています。

「自社の規程に当てはめるとどう書けばいいか」「今ある就業規則のどこに追記すればいいか」という具体的な疑問は、社労士や専門家への相談が近道です。まずはお気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 復職時短勤務の期間は何ヶ月が一般的ですか?

A. 法律上の上限規定はありませんが、実務では「基本3ヶ月、最長6ヶ月〜1年以内」を目安に設計する企業が多い傾向です。重要なのは、期間の数字そのものよりも「上限と延長条件を規程に明記すること」です。期間の定めがない場合、会社が時短勤務を終了しようとした際に「一方的な労働条件の変更」と主張されるリスクがあります。

Q. 時短勤務中の給与を満額支給したいのですが、問題はありますか?

A. 満額支給自体は違法ではありません。ただし、規程に「満額支給とする」と明記しておかないと、「会社が個別に約束した契約条件」として固定化されるリスクがあります。また、次の復職者に同じ対応をしない場合、不公平感からトラブルになる可能性があります。満額支給を選択する場合も、適用条件・期間・終了条件を規程に明記したうえで運用することを推奨します。

Q. 産業医がいない小規模企業でも復職支援の規程は作れますか?

A. 作れます。産業医の選任義務は従業員50名以上の事業場に生じますが、それ未満の企業でも「主治医の意見書の提出を条件として会社が判断する」という枠組みで規程を整備できます。「産業医の意見を踏まえる」という条文が書けない場合は、「医師の診断書または意見書をもとに会社が総合的に判断する」という表現に置き換えると、実態に合った規程になります。

Q. 復職支援の時短勤務規程は、就業規則本則に入れるべきですか、別規程にすべきですか?

A. 20〜50名規模であれば、「休職・復職規程」として別規程を作成し、就業規則本則には「詳細は別規程による」と一行入れる方法が実務的です。別規程にすることで、運用の変更が生じたときに就業規則本則ごと改訂する手間を省けます。別規程も就業規則の一部として労働基準監督署に届出が必要な点(常時10名以上の場合)は忘れずに対応してください。

Q. すでに時短勤務で長期運用している社員がいます。今から規程を作って適用できますか?

A. 既存の運用中社員への規程の遡及適用は、慎重な対応が必要です。特に、これまでの条件より不利になる変更(たとえば満額支給から時間比例減額への変更)は、労働契約法第10条の「不利益変更」に該当するリスクがあります。既存の社員には個別説明と同意取得を行いつつ、新規程は「規程制定日以降に復職する者から適用」と明記する方法が現実的です。具体的な対応は社労士や専門家に相談することをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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