50人未満でもやるべき理由と低コスト運用3ステップ

50人未満でもやるべき理由と低コスト運用3ステップ 採用・定着
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「うちは50人未満だから、ストレスチェックはやらなくていい」——その判断、本当に正しいでしょうか。法律上、義務がないのは事実です。でも、義務がないことと、リスクがないことは別の話です。実際、専任人事を置けない規模の会社ほど、社員のメンタル不調が表面化したときに対処が遅れ、結果として会社全体へのダメージが大きくなるケースがあります。この記事では、50人未満の企業がストレスチェックをあえて任意実施すべき理由と、コストをかけずに運用する現実的な3ステップをわかりやすくお伝えします。

「義務がない」と「やらなくていい」は違う

50人未満の事業場は、労働安全衛生法上ストレスチェックの実施義務を免除されています。しかし、それは「やらなくても何も起きない」を意味しません。義務の有無と、経営上・法的なリスクの有無はまったく別の問題です。

法律上の位置づけを正確に理解する

ストレスチェックの根拠は労働安全衛生法第66条の10です。常時使用する労働者が50人以上の事業場に年1回の実施を義務づけており、50人未満は附則により「当分の間、努力義務」とされています。つまり「免除」ではなく「努力義務」であり、できる範囲での取り組みが期待されている、というのが法律の立場です。

安全配慮義務は規模に関係なく課せられる

見落とされがちなのが労働契約法第5条に定める安全配慮義務です。使用者は従業員の生命・身体・健康を守るために必要な配慮をしなければならない——この義務は、会社の規模や従業員数にかかわらず全事業者に適用されます。ストレスチェックを実施しなかったこと自体は義務違反になりませんが、「社員の不調サインを把握できる仕組みがなかった」「何も対処していなかった」という事実は、万が一訴訟になった際に安全配慮義務違反の文脈で問われる可能性があります。

「知らなかった」が通用しない時代になっている

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」は、事業場の規模を問わずメンタルヘルスケアの推進を求めています。情報が広く公開されている現在、「50人未満だから対策を知らなかった」という言い訳は、会社としての信頼性を損なうリスクがあります。社員を守る姿勢を示すことが、採用・定着・リスク管理のすべてに効いてくる時代です。

やらないことのリスクを具体的に考える

ストレスチェックを任意実施しない場合、「何も変わらない」のではなく「見えないリスクが蓄積し続ける」状態になります。問題が顕在化したときのコストは、実施コストをはるかに上回ることがほとんどです。

メンタル不調の顕在化は突然ではない

社員のメンタル不調は、ある日突然起きるわけではありません。多くの場合、長期間にわたってストレスが蓄積し、ある時点で休職や離職という形で表面化します。ストレスチェックは、この蓄積の段階で「気になるサイン」を数値として把握する手段です。定期的に実施することで、個人の変化だけでなく、部署単位・組織全体の傾向も把握できます。

休職・離職が発生した後のコストは大きい

20〜50名規模の会社で1名が長期休職になると、業務の再分配、採用・育成コスト、場合によっては損害賠償リスクと、組織へのダメージは深刻です。特に少人数の会社では、1人の不在が業務全体に直結します。ストレスチェックは「問題が起きてから対処する」ではなく、「問題になる前に察知する」ための投資です。

将来の義務化への備えにもなる

現在50人未満でも、採用が進めば近い将来50人を超える可能性があります。義務化のタイミングで急に仕組みを作ろうとすると、担当者の学習コスト、体制構築、社員への説明と、一度に負荷が集中します。今から小さく始めて運用に慣れておくことが、将来の義務化対応を最小限のコストで乗り越える現実的な戦略です。

低コストで運用できる現実的な3ステップ

50人未満の任意実施は、外部委託しなくても始められます。まず全体像を把握し、次に社内役割を決め、最後に対応フローを整備する——この順番で進めれば、専任人事がいなくても運用できます。

調査票の選択と実施者の確保

調査票は、厚生労働省が無償公開している「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」または短縮版(23項目)を活用するのが現実的です。費用はかかりません。実施者(調査票の配布・集計・結果の評価を行う者)は、医師・保健師・厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師や精神保健福祉士などが対象です。社内に該当者がいない場合は、外部の産業保健総合支援センター(各都道府県に設置・無料相談可)や、低コストのクラウド型ストレスチェックサービスを活用する選択肢があります。

実施事務担当者と個人情報ルールを決める

「実施事務従事者」は社内の人事担当者が兼務で担うことができます。ただし、人事権を持つ者(人事評価に関与する上司など)は実施事務に関与させないことが強く推奨されています。結果の取り扱いに関して社員が安心できる体制を作ることが、回答率と信頼性を高めます。また、結果を会社(事業者)に提供するには本人の同意が必須です。同意なく開示することは禁止されており、事前に同意取得のフローを文書化しておきましょう。

実施前の段階で「高ストレス者への対応方法」を決めておくことも重要です。産業医がいない50人未満の会社では、地域の産業保健総合支援センターへの相談やスポット産業医サービスの活用を検討し、実際に高ストレス者が出た場合にスムーズに対応できる環境を事前に整えておくことが、制度を機能させるポイントになります。

高ストレス者への対応フローを事前に整備する

最もよくある落とし穴が、「アンケートを取っただけで終わった」という状態です。ストレスチェックは「測定→フィードバック→対応」がセットで機能します。高ストレス者が出た場合の対応フローを、実施前に決めておくことが必須です。産業医が選任されていない50人未満の会社では、地域の産業保健総合支援センターや外部の産業医紹介サービスを活用して、面接指導の体制を事前に整えておくことを検討してください。「測定したが対処できなかった」という状況は、むしろリスクを高めます。

社内体制と役割分担の整理

小規模企業でストレスチェックを実施するうえで最大の障壁は「誰がやるか」の問題です。役割を明確にすることで、兼務でも無理なく回る体制が作れます。

最低限必要な役割と担い手

役割 内容 担い手の例
実施者 調査票の評価・高ストレス者の判定 外部産業医・保健師・クラウドサービス
実施事務従事者 調査票の配布・回収・集計の管理 社内の人事兼務担当者(人事権を持たない者)
面接指導担当 高ストレス者への医師面接 外部産業医・産業保健総合支援センター
統括管理 制度全体の管理・従業員への周知 経営者または総務責任者

従業員数・体制ごとの選択肢

社内に保健師や看護師の有資格者がいる場合は、その方が実施者を担うことで外部委託費用を大幅に削減できます。有資格者がいない場合は、クラウド型のストレスチェックサービスを活用するのが現実的です。月額数千円〜数万円程度で「調査票配布・集計・高ストレス者抽出・結果の個人へのフィードバック」までをカバーするサービスが増えています。産業医の選任義務がない50人未満の会社でも、スポット契約で産業医に相談できる仕組みが整ってきているため、面接指導体制の確保もかつてより容易になっています。

社員への説明と心理的安全性の確保

ストレスチェックを任意実施する際に忘れがちなのが、社員側の「なぜやるのか」という疑問への対応です。「会社が監視するためではなく、自分のストレス状態を知るための機会であること」「結果は本人の同意なく会社に渡ることはないこと」を事前に丁寧に説明することが、回答率と結果の信頼性を高めます。説明不足のまま実施すると、社員の不信感を生み、制度自体が形骸化します。

実施後の対応で制度を「機能させる」

ストレスチェックの価値は実施後の対応にあります。測定して終わりではなく、結果をどう活かすかが組織の健康経営の質を決めます。

個人へのフィードバックと相談窓口の用意

結果は原則として本人に直接フィードバックします。高ストレスと判定された社員が、「面接指導を受けたい」と申し出やすい環境を作ることが重要です。申し出た社員に対して会社が不利益な扱いをすることは禁止されており(労働安全衛生法の趣旨)、この点を社員に明確に伝えておくことで、申し出のハードルを下げることができます。外部の相談窓口(EAP:従業員支援プログラム)を併用することも選択肢の一つです。

集団分析で組織の課題を把握する

個人の結果だけでなく、部署や職種ごとの集計データ(集団分析)を活用することで、「どの部署に負荷が集中しているか」「どのタイプのストレス要因が強いか」という組織単位の傾向が見えてきます。集団分析は個人を特定しない形での活用が可能です。業務フローの見直しや人員配置の検討など、組織改善の根拠として使えます。

次回実施に向けたPDCAを回す

年1回の実施を「やりっぱなし」にしないために、実施後に「何が課題だったか」「対応した件数・内容」「翌年の改善点」を簡単に記録に残しましょう。これが継続的な改善と、将来の義務化対応の記録にもなります。小規模であっても、記録を残すことで「会社として取り組んでいた事実」を証明できます。

こうした実施後の対応や記録を「社内だけで判断するのが不安」という場合は、産業保健の専門家に相談することで、より適切で実効性のある対応が可能になります。

まとめ

50人未満の企業にとって、ストレスチェックは「義務がないからやらなくていい」ものではなく、「義務がなくても、やっておくべき理由がある」取り組みです。安全配慮義務はすべての事業者に課されており、将来の義務化への備えとしても、早めに仕組みを作ることが合理的な選択です。厚生労働省の無償ツールや産業保健総合支援センターを活用すれば、大きなコストをかけずに始めることができます。

一方で、実装の段階では「本当に対応できるのか」「高ストレス者が出たときにどう判断したらいいのか」といった実務的な疑問が生まれることがほとんどです。人事対応を一社だけで抱えず、必要に応じて外部の専門家に相談することが、実効性のあるメンタルヘルス対応につながります。「何から手をつければいいか分からない」「体制の作り方や運用方法を相談したい」という場合は、ウェルセンス株式会社にお気軽にご相談ください。50人未満の中小企業のメンタルヘルス対応・休職復職支援を専門としており、貴社の規模・体制に合わせた現実的な進め方をご提案します。

よくある質問

Q. 50人未満でストレスチェックを実施しなかった場合、法律違反になりますか?

A. 労働安全衛生法上の義務違反にはなりません。50人未満の事業場は附則により「当分の間、努力義務」とされており、未実施が直接的な罰則の対象になることはありません。ただし、労働契約法第5条に基づく安全配慮義務は規模に関係なく課せられており、社員のメンタル不調が発生した際に「何も対策をしていなかった」という事実が問われる可能性があります。

Q. 産業医がいなくてもストレスチェックを実施できますか?

A. はい、実施できます。実施者(結果を評価する者)は医師以外にも保健師や所定の研修を修了した看護師・精神保健福祉士などが対象です。また、クラウド型のストレスチェックサービスを利用すれば、外部の専門家が実施者を担うため、社内に有資格者がいなくても対応できます。高ストレス者への面接指導は医師が担う必要がありますが、産業保健総合支援センター(無料相談可)やスポット契約の産業医サービスを活用することで対応可能です。

Q. ストレスチェックの結果を会社が見ることはできますか?

A. 個人の結果を事業者(会社)に提供するには、本人の同意が必須です。同意なく会社が個人の結果を閲覧することは禁止されています。一方、部署単位の集計データ(集団分析)は個人を特定しない形での活用が可能です。社員への説明時に「結果は本人の同意なく会社に渡らない」と明確に伝えることが、回答率と信頼性を高めるうえで重要です。

Q. ストレスチェックの実施にどれくらいのコストがかかりますか?

A. 調査票は厚生労働省が「職業性ストレス簡易調査票(57項目・23項目)」を無償公開しており、紙での実施であれば印刷費程度で始めることができます。クラウド型サービスを利用する場合は、月額数千円〜数万円程度のものが増えており、集計・フィードバック・高ストレス者の抽出まで自動化されるため、担当者の工数を大幅に削減できます。産業保健総合支援センターへの相談は無料で利用できます。

Q. 高ストレス者が出た場合、会社はどう対応すればいいですか?

A. 高ストレス者本人に対して、面接指導(医師による相談)を受けられることを通知します。面接指導の申し出は本人の意思によるものであり、会社は申し出をした社員に対して不利益な扱いをすることは許されません。面接指導の結果に基づき、業務量の調整・配置転換などの就業上の措置を検討します。事前に「高ストレス者が出たときの対応フロー」を文書化しておくことが、スムーズな対応と後日のリスク管理の両方に有効です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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