派遣契約終了と復職が重なる時の5つの対処法

派遣契約終了と復職が重なる時の5つの対処法 休職・復職対応
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「休職していたスタッフが来月から復職できそうなのに、派遣の方との契約をどうすれば…」——人事専任者がいない職場では、こうした判断が重なると本当に手が止まります。復職対応だけでも慣れない手続きが多いのに、派遣契約の終了タイミングまで同時に考えなければならない。しかも判断を誤れば、派遣会社や復職者の双方との関係に影響しかねません。この記事では、そんな状況に直面した経営者・兼務人事担当者が「何をどの順番で判断すればよいか」を具体的に整理します。

派遣契約の「更新しない」と「中途解除」は全く別の問題

派遣契約を終了させる方法には大きく2種類あります。契約期間の満了時に更新しないケースと、契約期間中に途中で打ち切る中途解除のケースです。この区別を正しく理解しておかないと、思わぬコストや法的リスクを招くことになります。

期間満了での終了が原則的に安全な理由

派遣契約は通常、1〜3ヶ月の契約期間を定めて締結します。この期間が満了した時点で「更新しない」という判断をすることは、原則として派遣元(派遣会社)との合意による期間満了であり、法的には問題になりにくいケースです。ただし、更新しない意向は更新期限の1ヶ月前までに派遣元へ伝えることを習慣にしましょう。連絡が遅れると、そのまま自動更新になってしまうケースがあります。

中途解除が招く損害賠償リスク

一方、契約期間の途中で派遣契約を解除する「中途解除」は話が別です。労働者派遣法第29条の2に基づき、派遣先企業は中途解除の場合、派遣元に対して少なくとも30日前に予告するか、それが困難な場合は30日分以上の賃金相当額を損害として支払わなければならないケースがあります。復職日が急に確定して「今すぐ派遣を終わらせたい」と動くと、この中途解除に該当してしまいます。だからこそ、「次の更新期限を使う」という発想が実務上は重要なのです。

「派遣社員に直接説明すれば丁寧」という落とし穴

もう一つ見落とされがちなのが、派遣社員への連絡経路です。契約終了を派遣社員本人に直接説明しようとする担当者もいますが、これは派遣の仕組みとして適切ではありません。派遣社員の雇用主はあくまで派遣元(派遣会社)であり、契約終了に関するコミュニケーションは派遣元を通じて行うことが原則です。派遣先が直接伝えると、指揮命令の範囲を超えた対応として派遣元との関係が複雑になる場合があります。

復職時期が確定しない中で派遣契約をどう管理するか

メンタルヘルス不調による休職の場合、復職可能な時期は直前まで確定しないことが多く、これが派遣契約の管理を難しくします。しかし「確定してから動く」では必ず後手に回ります。確定前から段階的に情報を共有し、仮の判断基準を設けておくことが重要です。

復職見込みを「幅」で把握して早めに派遣元へ共有する

主治医や産業医(配置している場合)から「おおよそ〇月頃には復職可能な状態になる見込み」という幅感だけでも把握できれば、それを派遣元に早めに伝えることができます。「来月に確実に終了します」と断言できなくても、「〇月〜〇月の間に契約終了の可能性があります」という情報共有は法的に問題なく行えますし、派遣会社もそれに合わせて派遣社員の次の配置を準備できるため、関係が損なわれにくくなります。

更新期限ごとに「仮の判断ルール」を決めておく

たとえば「復職見込みがない段階では1ヶ月更新を継続する」「復職見込みが出た段階で次の更新を最後にする」というように、あらかじめ自社内で判断の基準を決めておくと、更新期限ごとに一から悩まずに済みます。この仮ルールは、派遣元との認識合わせにも使えます。「現時点では◯月が最終更新になる可能性が高い」という形でコミュニケーションを重ねることで、「突然の打ち切り」という印象を防ぐことができます。

産業医や就業規則がない場合の対処

50人未満の職場では産業医の選任義務がなく、就業規則が整備されていないケースもあります。その場合、主治医の診断書が復職判断の主な根拠となります。主治医から「復職可」の診断書が出た段階を「復職見込みが確定した」とみなし、その翌月末の更新期限を派遣契約の終了タイミングとして設定するというルールが実務的には機能しやすいでしょう。

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復職者と派遣社員が「並存」する期間の現実的な管理

復職直後は業務量を段階的に増やすリハビリ出社が推奨されるため、派遣社員と復職者が一時的に同じ職場に共存する期間が生まれます。この期間のコストと業務設計をあらかじめ考えておかないと、双方が混乱します。

「重複期間」の業務を意図的に設計する

復職者がリハビリ出社中に担当できる業務の範囲は、最初は限定的です。たとえば、復職初月は午前中のみ・特定の定型業務のみというケースがよくあります。この時期に派遣社員が引き続き担っている業務があれば、復職者の状態を見ながら少しずつ業務を移行していくという設計が現実的です。「派遣を先に終わらせて業務が止まった」または「復職者に無理をさせて再休職になった」という失敗を避けるためにも、2〜4週間程度の重複期間を前提に計画を立てることが有効です。

派遣社員の業務を文書化しておく重要性

休職前に社員が担っていた業務を派遣社員が代替していた場合、その業務内容が口頭の申し送りだけで運用されていると、引き継ぎ段階で「誰が何をやっていたかわからない」という状況が生まれます。契約終了の2〜4週間前までに、業務内容・ファイルの保存場所・取引先との連絡状況などを簡単な文書にまとめてもらうよう依頼しておきましょう。これは派遣社員にとっても「自分の仕事がきちんと引き継がれる」という安心感につながります。

二重コストをどう捉えるか

派遣社員の継続と復職者のリハビリ出社が重なる期間、人件費が二重にかかることを懸念する経営者は少なくありません。しかし、派遣を早急に打ち切って業務が滞った場合のコスト(顧客対応の遅れ、他のスタッフへの負荷増大など)や、復職者が早期に再休職してしまった場合のコストと比較すると、2〜4週間の重複コストは合理的な「つなぎコスト」として捉えられます。短期的なコスト削減より、両者の安定的な移行を優先する視点が中長期的には得策です。

派遣社員から苦情が来たときの対応フロー

苦情の多くは「内容」への不満ではなく、「伝え方やタイミング」への不満です。苦情が来た場合でも、対応の順序を守れば関係の修復は十分可能です。

まず派遣元に連絡し、状況を確認する

派遣社員から直接苦情の声が上がった場合でも、派遣先企業が直接交渉・謝罪の窓口になることは避けましょう。まず派遣元に「このような声が届いているが、どのような経緯で伝わったのか」「派遣元としてどう対応するか」を確認します。派遣元が雇用主である以上、労働条件や雇用継続に関する責任の一義的な窓口は派遣元になります。

事実確認と誠実な説明で関係を修復する

派遣元を通じた対応の中で、「なぜこのタイミングで契約終了になったのか」「休職者の復職という業務上の理由であること」を誠実に伝えてもらうよう依頼します。派遣社員が「理由もわからずに打ち切られた」と感じているのであれば、理由を明確に伝えることだけで苦情の多くは収まります。ただし、会社が法的に定められた手続きを踏んでいた(期間満了・30日前予告等)かどうかを先に確認しておきましょう。

次回に向けた再発防止の記録を残す

苦情対応後は、何がコミュニケーション不足だったかを社内で簡単に振り返り、次の派遣契約に向けた申し送り事項として記録しておきます。「いつ・誰に・何を伝えたか」のログが残っていると、次回の対応が格段にスムーズになります。

実務で使える判断ステップ一覧

派遣契約終了と復職が重なる場面では、複数の判断が同時に求められます。以下の表を参考に、現在自社がどのステップにいるかを確認してください。

タイミング やるべきこと 注意点
休職開始時〜随時 主治医(・産業医)から復職見込みの「幅」を把握する 確定を待たず「〇月〜〇月頃」の幅で把握する
復職見込みが出た時点 派遣元に「〇月頃に契約終了の可能性がある」と早めに打診する 断言できなくても早期共有が信頼関係を守る
更新期限の1ヶ月前まで 更新する・しないの仮判断を社内で決めて派遣元に伝える 自動更新になる前に意思表示を済ませる
契約終了の1〜2ヶ月前 派遣元を通じて派遣社員に終了を伝えてもらう 派遣先が直接伝えることは避ける
契約終了の2〜4週間前 業務内容・引き継ぎ事項を文書化する 口頭のみの引き継ぎはトラブルのもと
復職後1〜2ヶ月 復職者の業務負荷を段階的に増やしながら安定稼働を確認する 早期再休職を防ぐための観察期間として設ける

まとめ

派遣契約の終了と休職者の復職が重なる場面は、判断の数が多い割に時間的な余裕がなく、兼務担当者にとって最も対応が難しい状況の一つです。重要なのは「期間満了を使う」「派遣元に早めに情報を共有する」「業務の重複期間を意図的に設計する」という三つの視点をセットで持つことです。苦情が起きる多くのケースでは、情報共有が遅れていたか、伝える経路を誤っていたかのどちらかです。今回の記事でご紹介した判断ステップを参考に、まず自社の現在地を確認してみてください。

「うちのケースがこれに当てはまるのかよくわからない」「就業規則がなくて、何を基準に判断すればいいかわからない」という場合は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。休職・復職支援から派遣管理の段取りまで、御社の状況に合わせて一緒に整理します。

よくある質問

Q. 派遣契約を中途解除する場合、必ず損害賠償が発生しますか?

A. 必ずしも全額の損害賠償が発生するわけではありませんが、労働者派遣法第29条の2に基づき、30日以上前に予告できない場合は30日分以上の賃金相当額の負担が生じる可能性があります。また厚生労働省の「派遣先が講ずべき措置に関する指針」では、新たな就業機会の確保など派遣労働者の雇用安定への協力も求めています。中途解除は可能な限り避け、契約期間の満了を使うことを優先してください。

Q. 復職者のポストが派遣社員で埋まっているという理由で、復職を断ることはできますか?

A. できません。休職期間満了前に復職可能な状態になった場合、就業規則の定めに従い原則として元の労働条件での復職を受け入れる必要があります。「派遣社員がいるから戻す場所がない」は法的に有効な復職拒否の理由にはならず、復職を認めないと不当解雇に問われるリスクがあります。派遣契約の終了計画を先行して進め、復職者のポストを確保することが必要です。

Q. 契約終了の意向を、派遣社員に直接伝えてしまいました。問題になりますか?

A. 直ちに法的な問題になるわけではありませんが、派遣社員の雇用主は派遣元(派遣会社)であるため、雇用継続や契約に関わる話は派遣元を通じて行うことが正規のルートです。派遣先が直接伝えると、派遣元との間で「事前相談なく話を進めた」として関係が悪化する場合があります。今後は派遣元に先に連絡し、派遣元から派遣社員への説明を依頼する流れに切り替えてください。

Q. 復職時期が全く読めない場合、派遣契約はとりあえず更新し続けるしかありませんか?

A. 業務上の必要性があるうちは更新を続けることが現実的ではありますが、「復職見込みが出た段階で次の更新を最後にする」というルールをあらかじめ社内で決めておき、派遣元にも伝えておくことが重要です。「まだ復職時期が不明だが、確定した段階で速やかに連絡する」という意向を早期から共有しておくことで、突然の打ち切りという印象を避けられます。更新のたびに派遣元と短い確認連絡を入れるだけでも関係は大きく変わります。

Q. 就業規則がない場合、復職・派遣終了の判断基準はどこに置けばよいですか?

A. 就業規則がない場合(常時10人未満の職場では作成義務がありません)、主治医の診断書が復職判断の主な根拠となります。主治医から「復職可」の診断書が発行された時点を復職見込み確定とみなし、その翌月末の派遣更新期限を終了タイミングに設定するというルールが実務的には機能しやすいです。なお、常時10人以上の職場で就業規則が未整備の場合は、労働基準法違反となるため整備が必要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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