試用期間に本採用しない場合の手続き5つと伝え方

試用期間に本採用しない場合の手続き5つと伝え方 採用・定着
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「試用期間が終わるけど、このまま本採用していいのか…」と迷いながら、決断を先送りにしていませんか。本採用を見送る判断は、やり方を誤ると労務トラブルに発展するリスクがあります。しかし正しい手続きと伝え方を押さえれば、会社も本人も傷つけずに対応できます。この記事では、試用期間に本採用しない場合の手続きと、現場で使える伝え方を具体的に解説します。

試用期間中でも「解雇」になる?法的な位置づけを理解する

雇用契約はすでに始まっている

「試用期間中だからまだ正式な雇用ではない」と思っている経営者は少なくありません。しかし法律上、試用期間中であっても雇用契約はすでに成立しています。1973年の最高裁判決(三菱樹脂事件)でも、この点は明確に示されています。つまり、試用期間を終了させることは「採用しなかった」のではなく、「いったん結んだ雇用契約を解消する」行為です。

通常の解雇とどう違うのか

試用期間中の本採用拒否は、法律上「解約権留保付き労働契約の解約」と呼ばれます。難しい言葉ですが、要するに「採用時点では判断しきれなかった問題が判明した場合に限り、通常より広い裁量で契約を解消できる」という意味です。ただし「より広い裁量」とは言っても、客観的・合理的な理由は必須です。「なんとなく合わない気がする」「雰囲気が違う」といった主観的な理由では、裁判になった場合に無効と判断されるリスクがあります。

「採用時に知りえなかった事実」がポイント

本採用拒否が法的に認められるのは、採用の意思決定時には知ることができなかった問題が、試用期間中に明らかになったケースに限られます。たとえば、経歴の詐称が発覚した、業務上必要なスキルが著しく不足していることが判明した、無断遅刻・欠勤が繰り返されたといった具体的な事実が必要です。採用面接では好印象だったが実際の業務能力に問題があった、というケースはこれに該当しやすいです。

解雇予告は必要か?勤務日数で変わるルールを確認する

14日以内なら予告不要、15日以上なら注意が必要

試用期間中の本採用拒否に解雇予告が必要かどうかは、実際に働いた日数によって変わります。労働基準法第20条・第21条により、就労期間が14日以内であれば解雇予告も解雇予告手当の支払いも不要です。一方、15日以上勤務した場合は、原則として30日前の予告、または平均賃金30日分の解雇予告手当の支払いが必要になります。

多くの会社では試用期間を3か月や6か月に設定しているため、実務上はほぼ全員が15日以上勤務しています。「試用期間中だから予告しなくていい」という思い込みで、試用期間満了日に突然通告するケースは特にリスクが高いため、注意が必要です。

試用期間満了の当日に告げるのはNG

よくある失敗として、試用期間最終日に「今日で終わりです」と告げるケースがあります。15日以上勤務している場合は、この対応だけで手続き上の違法性が生じます。試用期間終了の少なくとも30日前には本人に通知するか、即時終了にする場合は平均賃金30日分の予告手当を支払う必要があります。たとえば試用期間が3月31日に終わる場合、遅くとも3月1日までに通知することが求められます。

書面で通知することが原則

口頭だけの通知は、後から「そんな話は聞いていない」「理由の説明がなかった」といったトラブルに発展しやすいです。本採用しない旨の通知は、書面(本採用拒否通知書)で行うことを原則としてください。通知書には、雇用終了日・本採用しない理由・解雇予告手当を支払う場合はその金額・振込日などを明記します。書面を残すことは、会社側にとっても手続きの証拠となります。

本採用拒否が認められる理由・認められない理由

有効とされやすい理由の具体例

本採用拒否が有効とされるためには、理由が客観的かつ合理的である必要があります。実務上、有効と判断されやすい理由の例としては以下のようなものがあります。

  • 業務上必要なスキルや知識が採用基準を大きく下回ることが試用期間中に明確になった場合
  • 無断欠勤や度重なる遅刻など勤怠に関する問題が繰り返された場合
  • 履歴書や面接での経歴・資格に虚偽があったことが判明した場合
  • 会社の規律に繰り返し違反し、指導を行っても改善が見られない場合

いずれも「事実として何が起きたか」を記録で示せることが重要です。

無効とされやすい理由のパターン

一方で、本採用拒否が裁判で無効と判断されやすいケースもあります。指導や注意を一切行わずに突然本採用を拒否した場合、理由が「態度が気に入らない」「チームの雰囲気に合わない」などの主観的なものにとどまる場合は危険です。また、就業規則に試用期間や本採用拒否に関する規定がそもそも存在しない場合、妊娠・国籍・宗教・信条などを理由にした場合は、差別的取り扱いとして違法になります。「なんとなく違う気がする」という感覚的な判断を理由にすることは絶対に避けてください。

試用期間中に記録を残すことが最大の備え

本採用拒否の正当性は、試用期間中にどれだけ丁寧に観察・指導・記録を行ったかにかかっています。指導を行ったら日付・内容・本人の反応を記録し、改善が見られないならその事実も記録します。口頭指導だけでなく、メールや面談記録として形に残すことが重要です。「記録がなければ指導していないのと同じ」という意識で試用期間を運用してください。

本採用しない場合の手続き

就業規則の確認からはじめる

まず最初に確認すべきことは、就業規則に試用期間と本採用拒否に関する規定があるかどうかです。この規定がなければ、そもそも本採用拒否の根拠が曖昧になります。「試用期間○か月」「本採用しない場合がある」「本採用しない場合は○日前に通知する」といった条文が必要です。規定がない場合は、今回の対応と並行して就業規則の整備を進めることを強くお勧めします。

面談→書面通知の順で進める

次に、実際の手続きの流れです。まず本人と面談を行い、本採用しない旨とその理由を直接伝えます。その後、書面(本採用拒否通知書)を交付します。面談を先に行うことで、本人が突然書面だけを受け取ることによる精神的ショックを和らげる効果もあります。また面談では一方的に告げるだけでなく、本人の話を一度聞く姿勢を持つことが、その後のトラブル防止にもつながります。

解雇予告手当の支払いと退職手続きを完了させる

30日前の予告期間が確保できない場合は、解雇予告手当(平均賃金×不足日数分)を支払います。あわせて、健康保険・厚生年金の資格喪失手続き、雇用保険の離職票の発行、源泉徴収票の交付なども期限内に対応します。離職票は退職から10日以内にハローワークへ届け出る必要があります。これらの手続きを漏れなく完了させることが、会社としての誠実な対応につながります。

本採用しないことを伝える際の実践的な伝え方

事実ベースで話す・感情的な表現を避ける

本人への伝え方で最も重要なのは、「事実を中心に話す」ことです。「雰囲気が合わない」「なんか違う」といった主観的な言い方は、本人を傷つけるだけでなく法的リスクも高めます。代わりに、「〇月〇日に△△についてお伝えしたにもかかわらず、その後も同様の状況が続いたこと」「業務遂行に必要な〇〇のスキルについて、試用期間内での習得が難しいと判断した」など、具体的な事実と判断の根拠を示して話します。

伝える場所・タイミングを選ぶ

面談は、他のスタッフに見えない個室で行います。就業時間の終わり頃や、本人が落ち着ける時間帯を選ぶことも配慮の一つです。複数人で囲む形にならないよう、面談者は経営者または直属の上司の1〜2名にとどめます。面談後は本人が帰宅できる状態かどうかを確認し、必要であれば「今日は早退してもいい」と伝えるなど、人としての配慮を忘れないことが大切です。

試用期間延長を安易に使わない

「もう少し様子を見よう」と試用期間を延長することは、問題の先送りになりがちです。就業規則に延長規定がない場合、延長には本人の同意が必要です。また延長を繰り返すと、「事実上の本採用」とみなされるリスクが生じます。試用期間の延長は、具体的な改善目標と評価期間を明示した上で1回に限るのが実務上の目安です。それでも改善が見られない場合は、延長を重ねるのではなく、本採用拒否の判断を下すことが会社・本人双方にとって誠実な対応です。

まとめ

試用期間中の本採用拒否は、正しい手続きを踏めば合法的に行えます。大切なのは、就業規則に根拠規定を整備しておくこと、試用期間中に指導と記録を丁寧に行うこと、15日以上勤務している場合は30日前の解雇予告または予告手当を準備すること、そして書面と面談を組み合わせて誠実に伝えることです。

専任人事のいない環境では、これらの判断を一人で抱え込むのは難しいのが実情です。ウェルセンス株式会社では、試用期間の設計・評価記録の整備・本採用拒否の手続きや面談対応まで、中小企業の経営者・兼務人事担当者に寄り添った支援を行っています。「この判断、正しいのか確かめてから進めたい」と思ったときは、ぜひお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 試用期間中であれば、理由なく本採用を断ることはできますか?

A. できません。試用期間中であっても雇用契約は成立しており、本採用拒否には客観的・合理的な理由が必要です。「なんとなく合わない」「雰囲気が違う」などの主観的理由では、裁判で無効と判断されるリスクがあります。能力不足・勤怠問題・経歴詐称など、具体的な事実に基づいた判断と記録が不可欠です。

Q. 試用期間満了の当日に本採用しないと伝えても問題ないですか?

A. 15日以上勤務している場合は問題があります。労働基準法上、30日前の解雇予告または平均賃金30日分の解雇予告手当の支払いが必要です。試用期間満了日の当日や直前に告げることは手続き違反になる可能性が高いため、少なくとも1か月前には通知の準備を進めてください。

Q. 試用期間を延長して様子を見ることはできますか?

A. 就業規則に延長規定があれば可能ですが、本人の同意も必要です。また延長を繰り返すと「事実上の本採用」とみなされるリスクがあります。延長する場合は改善目標と評価期間を明示した上で1回にとどめるのが実務上の目安です。延長後も問題が続く場合は、さらなる延長ではなく本採用拒否の判断を検討してください。

Q. 本採用しない旨は口頭だけで伝えてもいいですか?

A. 口頭だけでの通知はトラブルの原因になります。「言った・言わない」の水掛け論を防ぐためにも、書面(本採用拒否通知書)を交付することが原則です。通知書には雇用終了日・本採用しない理由・解雇予告手当に関する事項を明記してください。面談で直接説明した後に書面を渡す流れが、実務上最もリスクの少ない手順です。

Q. 就業規則に試用期間の規定がない場合はどうすればいいですか?

A. 規定がない場合、本採用拒否の根拠が曖昧になり、法的リスクが高まります。今後のためにも、試用期間の期間・延長条件・本採用拒否の要件・通知方法などを就業規則に明記することが必要です。現在進行中のケースについては、専門家に相談した上で慎重に対応することをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
社会保険労務士・産業カウンセラーと連携し、中小・成長企業の人事課題に向き合う実務ノウハウをお届けします。
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