休職中なのに復職意欲ゼロ…会社が今できる合法的な対応とは

休職中なのに復職意欲ゼロ…会社が今できる合法的な対応とは 休職・復職対応
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「診断書は出ている。でも、どう見ても元気そうだ。連絡すれば普通に話せるし、SNSを見ると旅行にも行っている。それなのに復職の話になると急に返答が止まる——」

こうした状況に直面している経営者・人事担当者は少なくありません。「傷病手当金の受給期間が終わるまで戻ってくるつもりがないのでは」という疑念は自然な感情ですが、だからといって強硬な対応に出れば不当解雇のリスクもある。かといって放置すれば在籍が際限なく続く——その板挟みで手詰まりになっているケースがほとんどです。

この記事では、「疑いを持つこと」の法的な意味から、会社が合法的に取れる具体的な対応ステップまでを実務レベルで整理します。休職規程の有無や従業員規模によって取れる手段が異なる部分も明示しますので、自社の状況に当てはめながら読んでください。

「詐病ではないか」という疑念、会社が持つこと自体は問題ない

診断書があっても、会社が「本当に就労不能なのか」と疑問を持つこと自体は違法でも非常識でもありません。重要なのは、疑念を感情ベースの断定ではなく手続きベースの確認に変えることです。

診断書があっても「確認する権利」は会社にある

医師の診断書は「就労不能状態である」という医学的意見です。しかし、主治医は患者(従業員)の話だけをもとに診断書を書くケースが多く、実際の職場環境や業務内容を把握しているわけではありません。会社が「本人から聞いた業務状況と、実際の業務内容が乖離していないか」を確認することは、正当な手続きの範囲内です。

精神疾患の回復には「日常生活はできても就労はできない」段階がある

うつ病・適応障害の回復過程では、「外出できる・旅行できる」状態になっても「フルタイムで継続的に就労する」状態にはまだ至っていないという段階が医学的に存在します。「元気そうに見える=仮病」という判断は必ずしも正確ではなく、この点を理解した上で対応を組み立てることが、のちのトラブル防止につながります。

詐病を「断定して解雇」するのは現実的に不可能に近い

診断書が存在する状態で「詐病だ」と断定して解雇・懲戒処分を行うと、不当解雇(労働契約法第16条)として争われるリスクが極めて高くなります。詐病を立証するには、医師の診断が誤りであることを会社側が証明しなければなりません。これは現実的にほぼ不可能です。会社がすべきことは「詐病かどうかを判断すること」ではなく、「就業できる状態かどうかを医学的に正式確認する手続きを経ること」です。

傷病手当金と会社の関係——会社が関与できる範囲を正確に知る

傷病手当金は健康保険の制度であり、会社が支給を止める手段は原則としてありません。ただし、会社が書面上で意見を示す余地はあります。

傷病手当金の支給主体は保険者であり会社ではない

傷病手当金は、全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合が支給の判断をします。会社は「労務不能の確認欄」への記載を求められますが、支給停止を会社から申し立てる制度は存在しません。「会社が認めなければ手当が止まる」という誤解がありますが、正確ではありません。

会社の意見書に「就業可能と判断している」と書くことはできる

申請書の事業主記載欄に「会社としては就業可能な状態と判断している」旨を記載することは可能です。これを受けて保険者側が追加調査を行うかどうかはケースバイケースですが、会社としての見解を公式に記録に残す意味はあります。ただし、根拠のない記載は後のトラブルを招くため、主治医・産業医の意見や本人の状況に関する客観的な事実の蓄積が前提になります。

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会社が合法的に取れる対応——段階的な手続き

復職意欲が見えない休職者への対応は、段階を踏んで行うことが法的リスクを下げる上で重要です。以下の流れで整理してください。

定期的な状況確認を「義務化」する

休職中であっても、会社は従業員の状況を定期的に確認する権利があります。月1回程度、書面またはメールで「現在の体調・復職見込みの有無」を報告させることは合理的な範囲として認められています。「強制面談はハラスメントになる」と心配される方もいますが、合理的な範囲の確認は適法です。

この仕組みを機能させるには、就業規則または内規に根拠があることが望ましい。規程がない場合でも、「会社として定期確認を行う旨を書面で通知する」ところから始めることができます。なお、従業員が「メールのみ対応」と申し出ている場合は、メール対応を基本としつつも、一定の回答期限(例:1週間以内)を設けて記録を残すことが重要です。

主治医への情報提供と産業医・専門機関の活用

主治医は患者側の話を聞いて診断書を書きますが、職場の実態を知らないことがほとんどです。就業規則に根拠がある場合、会社から業務内容・労働時間・職場環境の情報を主治医に提供した上で、改めて就労可否の意見書を求めることが有効な手段です。

産業医の選任が義務付けられていない50名未満の事業場でも、外部の産業医・産業保健師と個別契約する方法や、都道府県の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)の無料相談を活用する方法があります。専門家の第三者意見を得ておくことは、のちに法的争点になった際の根拠にもなります。

主治医の意見が会社の主張と食い違う場合、産業医などの専門家を交えた正式な確認手続きを経ることが、後のトラブル防止と信頼性確保につながります。

休職期間満了による自然退職の手続き

就業規則に休職期間の上限が明記されており、期間満了前に本人へ書面で通知している場合、休職期間満了による自然退職は複数の裁判例で有効と認められています。ただし、以下の条件が整っていることが重要です。

確認項目 状態のチェックポイント
就業規則に休職期間の上限が明記されているか 「〇ヶ月」と具体的な期間が規定されているか
期間満了の事前通知を書面で行ったか 満了日の1〜2ヶ月前に書面通知を送付しているか
復職の機会を実質的に与えたか 復職可否の確認を本人に求めた記録があるか
過去に例外的な期間延長を行っていないか 延長の前例がある場合は書面で「今回限り」と明示したか

休職規程がない・曖昧であるという場合は、まず就業規則の整備が先決です。規程がない状態で「期間満了だから退職」と通告すれば、不当解雇として争われる可能性が高くなります。

休職規程がない・曖昧な場合——今すぐ取れる現実的な動き方

就業規則に休職規程がない、または内容が曖昧な場合でも、「何もできない」わけではありません。まず現状を整理し、整備を進めながら対応することが現実的です。

現時点での就業規則の状態を確認する

常時10名以上を雇用する事業場は就業規則の作成・届出が法律上の義務です(労働基準法第89条)。10名未満でも多くの会社が就業規則を持っていますが、休職規程が抜けていることは珍しくありません。まず「休職期間の上限」「満了時の扱い(自然退職か解雇か)」「定期報告の義務」が明記されているかを確認してください。

規程がない状態での「強制退職」は高リスク

規程の根拠なく「期間満了だから退職してください」と通告した場合、労働者側は「解雇された」として争う可能性があります。会社側に規程の根拠がなければ、裁判所は労働者側に有利な判断をする傾向があります。規程の整備と並行して、社会保険労務士または弁護士に相談することを強く推奨します。

対話が途絶えているときの記録の残し方

連絡を無視される・返信が来ないという状況でも、会社側が接触を試みた記録を残すことは非常に重要です。メールは送信記録を保存し、郵送の場合は配達記録付き・内容証明を活用する。口頭でのやり取りは日時・内容をメモして保存する。こうした記録が、のちに「会社は誠実に対応した」という証拠になります。

「放置」と「強硬対応」の間にある現実的なリスクバランス

何もしないことにも、焦って強く出ることにも、それぞれリスクがあります。自社の状況に合わせてリスクを比較した上で行動を選択することが重要です。

放置し続けた場合に生じるリスク

傷病手当金の受給期間(原則として同一の疾病について通算1年6ヶ月)が終了するまで在籍が続く可能性があります。また、休職期間の上限が曖昧なまま時間が経過すると、「会社が黙認していた」とみなされ、のちに期間満了を主張しにくくなるケースもあります。さらに、長期間対応をしないことで他の従業員への士気・公平感の面でも悪影響が生じます。

準備なく強硬対応に出た場合のリスク

就業規則の根拠がない状態での退職通告、または詐病を断定した発言・文書は、不当解雇訴訟・パワーハラスメントの申告につながるリスクがあります。労働審判・民事訴訟になれば、弁護士費用・解決金・対応工数のコストは相当なものになります。中小企業にとって、こうした労務トラブルは経営に直接影響する問題です。

「安全な動き方」のポイント

根拠(就業規則)・記録(書面でのやりとり)・専門家の意見(産業医・社労士・弁護士)の三点を整えた上で、段階的に手続きを進めること——これが、会社を守りながら合法的に対応を進める基本原則です。感情で動かず、手続きで動く。この姿勢が最も重要です。

規程の整備や医学的な確認が必要と感じても、人事だけで対応を決めるべきではありません。就業規則の整備から復職対応まで、専門家の支援を受けながら進めることが現実的です。

まとめ

休職中の社員に復職意欲が見えない場合、会社が取るべき対応は「疑って放置する」でも「感情的に強硬手段に出る」でもありません。まず就業規則の整備状況を確認し、定期的な状況確認を書面で実施する。次に主治医への情報提供や産業保健の専門家を活用して、医学的な就労可否を客観的に確認する。そして休職規程に基づき、適切な通知手続きを経た上で期間満了の対応を進める——この順序で手続きを積み上げることが、法的リスクを最小化しながら会社を守る道です。

「自社の休職規程がどうなっているかわからない」「今の状況で何から手をつければいいかわからない」という場合、一人で判断せず専門家に相談することをお勧めします。ウェルセンス株式会社では、専任人事がいない中小企業の経営者・兼務人事担当者からの相談を多く受けています。休職・復職対応で手詰まりを感じている場合は、まずお気軽にお声がけください。

よくある質問

Q. 休職中の社員がSNSで旅行写真を投稿しています。これを理由に傷病手当金の停止や解雇はできますか?

A. SNSの投稿だけを根拠にした解雇や傷病手当金の停止申し立ては、現実的に困難です。精神疾患の回復過程では「外出・旅行はできても継続就労はできない」という段階が医学的に存在します。SNSの投稿は状況確認の参考材料にはなりますが、それだけで「詐病」と断定することはできません。会社として取れる手段は、主治医への情報提供依頼や産業医の意見取得など、医学的な確認手続きを正式に踏むことです。

Q. 休職規程がない状態で、休職中の社員に「もう戻ってこなくていい」と伝えることはできますか?

A. 就業規則に休職規程がない状態でのこうした発言は、解雇の意思表示とみなされるリスクがあります。合理的な理由のない解雇は労働契約法第16条により無効とされる可能性が高く、不当解雇として争われた場合、会社側に大きなコストが発生します。まず就業規則に休職期間の上限を明記し、それに基づいた手続きを踏むことが先決です。

Q. 産業医の選任義務がない従業員50名未満の会社でも、医療的な意見を得る方法はありますか?

A. あります。外部の産業医・産業保健師と個別契約する方法のほか、都道府県ごとに設置されている産業保健総合支援センター(さんぽセンター)では、事業主・人事担当者からの相談を無料で受け付けています。費用をかけずに専門的なアドバイスを得られる窓口ですので、まず活用を検討してください。

Q. 休職中の社員が面談を拒否しています。それでも連絡を続けてよいですか?

A. 合理的な範囲での定期的な状況確認は、ハラスメントにはあたりません。ただし、社員が「メールのみ対応」と申し出ている場合はその意向を尊重しつつ、回答期限を設けた書面での対応を継続することが現実的です。連絡を試みた日時・内容・相手の反応をすべて記録として残しておくことが重要です。一方的に連絡を打ち切ると「会社が放棄した」と解釈されるリスクもあるため、記録を残しながら継続的に接触を試みてください。

Q. 休職期間を延長してしまった前例があります。今後、期間満了での自然退職を主張できますか?

A. 過去に延長の前例がある場合、「延長されるのが当然」という期待権が発生しているとみなされる可能性があります。ただし、延長時に「今回限りの特例措置である」旨を書面で明示していた場合は、その限りではありません。今後の対応としては、就業規則の休職期間規定を整備し直すとともに、延長を行う場合は必ず書面で「例外的措置である」と明記することが重要です。現状の整理については、社会保険労務士や弁護士への相談をお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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