復職面談で消耗しきったら、担当者を守る体制の整え方

復職面談で消耗しきったら、担当者を守る体制の整え方 休職・復職対応
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面談が終わったあと、椅子に座ったまま動けなくなったことはありませんか。休職者の言葉が頭から離れず、夜中に目が覚める。次の面談が近づくと、なぜか気持ちが重くなる。それは、あなたが弱いからでも、仕事が嫌いだからでもありません。専門的なトレーニングなしに、メンタル不調の方と向き合い続けているのですから、消耗するのは当然の反応です。この記事では、復職面談を担う経営者・兼務人事担当者が自分を守りながら対応を続けるための、具体的な体制の整え方をお伝えします。

消耗するのは「あなたの問題」ではない

復職面談の担当者が感情的に消耗するのは、珍しいことでも弱さの証でもなく、構造的に起きやすいことです。まずその前提を確認しておきましょう。

「共感疲労」という専門家でも起きる現象

支援職や医療従事者の世界では、他者の苦しみを繰り返し受け取ることで支援する側が消耗していく「共感疲労(Compassion Fatigue)」という現象が知られています。これはカウンセラーや看護師など、専門的な訓練を受けた人にも起きます。専門知識もサポート体制もないまま、「死にたい」「もう限界です」という言葉を何度も受け取り続けている経営者・兼務担当者が消耗するのは、むしろ当然の帰結です。「自分がおかしいのではないか」と感じていた方は、その感覚自体を一度手放してください。

制度設計として「一人でやること」が無理な理由

厚生労働省が公表している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、復職支援のプロセスを5つのステップに分け、主治医・産業医・管理監督者・人事労務担当者がそれぞれ異なる役割を担う前提で設計されています。大企業であれば複数の専門家が分担するこのプロセスを、中小企業では経営者や兼務担当者が一人でカバーしようとしています。「消耗するのは自分の力量不足だ」と思う前に、「そもそも一人でやれるように設計されていない」という事実を認識してください。これが体制を整えるための出発点です。

「自分の役割の範囲」を正しく理解する

担当者の消耗の多くは、やらなくていいことまで抱えてしまうことから生まれます。役割の境界線を引き直すことが、最も即効性のある負荷軽減策です。

復職面談担当者の本来の役割

復職面談における担当者(経営者・人事)の役割は、「状況の確認と意思疎通」です。具体的には、休職者の生活リズムや業務への準備状況の確認、復職後の勤務条件の説明、本人の意向の聴取などです。一方で「カウンセリング」「医学的判断」「心理的ケアの提供」は担当者の役割ではありません。「とにかく全部聞かなければいけない」という使命感は、担当者を傷つける過剰な負担になります。

医学的判断は担当者の仕事ではない

「この人を復職させていいのか」という医学的な判断は、主治医・産業医の領域です。担当者が担うべきは「主治医の意見書を受け取り、会社として対応方針を決めること」であり、「復職できる状態かどうかを医学的に判断すること」ではありません。ただし、常時50名未満の事業場は産業医の選任義務がないため、産業医不在のまま担当者が事実上の医学的判断を求められる状況が生まれやすくなっています。この構造自体が担当者にとって大きなリスクです。産業医がいない場合の対策は後述します。

安全配慮義務の主体は「会社」であって「担当者個人」ではない

労働契約法第5条に基づく安全配慮義務の主体は使用者(会社)です。担当者は会社の代理として対応しているに過ぎず、個人として全責任を負う構造は誤りです。「自分が判断を誤ったら自分の責任だ」という重圧を感じている方は、この点を正確に理解してください。担当者は役割を果たす責任を負いますが、法的な義務主体は会社であり、適切なプロセスを踏んでいれば担当者個人が法的責任を問われることは基本的にありません。

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就業規則と復職規程が「担当者の盾」になる

担当者を守る最も効果的な仕組みの一つが、就業規則・復職規程の整備です。「ルールがそうなっている」という言い方ができれば、担当者は個人として攻撃を受けにくくなります。

ルールがないと担当者が「人」として攻撃される

復職規程がない場合、「なぜ復職を認めてもらえないのか」「なぜこの条件を課されるのか」という問いに対して、担当者が個人として答えなければなりません。これは担当者に感情的なプレッシャーを与え続けます。一方、「就業規則の○条に定められた手順に沿って進めています」と言えれば、担当者は個人ではなく制度の運用者として立つことができます。

最低限整備しておくべき項目

復職規程に盛り込むべき基本的な項目を以下に整理します。

項目 内容のポイント
休職期間の上限 勤続年数等に応じた期間を明記する
復職申請の手順 主治医の診断書提出を必須とする
復職可否の判断基準 業務遂行能力の確認方法を明記する
試し出勤・慣らし勤務の扱い 期間・処遇・評価方法を定める
再発時の対応 再休職の条件・手順を明記する

既存の就業規則がある場合の確認ポイント

就業規則がすでに存在する場合でも、メンタルヘルスによる休職・復職に特化した規程が盛り込まれていないケースは少なくありません。「休職規定はあるが、復職の判断手順が書かれていない」「試し出勤の扱いが不明確」といった状態は、担当者が毎回判断を一から行う原因になります。顧問社労士に依頼して現状の規程を確認・補強するだけでも、担当者の負担は大きく変わります。

今すぐできるセルフケアの具体策

外部専門家を使う前に、担当者が自分自身を守るためにできることがあります。特別な費用も時間も必要としない、明日から実践できる方法です。

面談後の「切り替えルーティン」を作る

復職面談が終わったあと、その場で別の業務に移ることは感情の蓄積を招きます。面談終了後に5〜10分の「切り替え時間」を意識的に設けてください。具体的には、面談メモを書いて頭の中を整理する、短い散歩をする、別の軽作業を挟むといった方法が有効です。「面談が終わったら○○をする」という個人ルールを決めておくと、気持ちの区切りがつきやすくなります。

面談内容を「一人で抱えない」仕組みを作る

担当者が最も消耗するのは、面談の内容を誰にも話せず一人で抱え込む状況です。守秘義務の範囲内で、経営者であれば信頼できる役員や顧問、担当者であれば上長や経営者に「今日の面談は内容が重くて、少し話せますか」と伝えられる関係を作っておくことが重要です。詳細を共有する必要はなく、「大変だった」という事実を誰かに伝えるだけでも心理的な負荷は下がります。

「答えを出さなくていい場」として面談を位置づける

面談のたびに「この人を復職させていいか」「この答えで正しいか」を一人で結論づけようとすることが、担当者を追い詰めます。面談の場は「情報を確認する場」と位置づけ、判断は面談後に関係者(顧問社労士・外部専門家など)と相談して行うというプロセスを設計してください。「今日は聞くだけで、判断は後日行います」と本人にも伝えることは、誠実な対応として問題ありません。

個別のケースで「この判断は適切か」と迷ったときは、産業保健総合支援センターやスポット相談できる産業医サービスを活用することで、担当者一人の判断ではなく専門家の見方を加えることができます。

外部専門家を活用する判断基準と選択肢

外部リソースを使うことは「丸投げ」でも「負けを認めること」でもありません。適切な役割分担であり、担当者と会社の両方を守る合理的な選択です。

「外部に頼む」ことを先送りするリスク

「うちの規模では大げさだ」「費用対効果が見えない」という判断で外部リソースを使わないでいると、担当者自身がメンタル不調になるという二次的なリスクが高まります。担当者が倒れると、休職者の対応が止まるだけでなく、通常業務にまで支障が出ます。外部専門家への相談コストと、担当者が機能不全になるコストを比較すると、多くの場合前者の方が低いです。

従業員規模・状況別の外部リソースの選択肢

  • 顧問社労士がいる場合:復職規程の整備・個別ケースの法的確認を依頼する。面談同席が可能か確認する
  • 産業医がいない場合(50名未満):地域の産業保健センター(産業保健総合支援センター)に相談する。無料で産業医・保健師への相談が可能
  • 継続的な支援体制を整えたい場合:EAP(従業員支援プログラム)や外部の復職支援専門機関との契約を検討する
  • 個別ケースが複雑化している場合:精神科産業医や復職支援の実務経験がある専門家に個別相談する

外部専門家に「何を任せるか」を明確にする

外部に依頼する際、「なんとなく相談したい」では効果が薄くなります。「復職可否の医学的判断に関する意見がほしい」「就業規則の復職規程を作成してほしい」「面談に同席して客観的な記録を残してほしい」のように、依頼内容を具体化することで外部リソースが機能します。担当者の役割は「全部自分でやること」ではなく「必要なリソースを適切につなぐこと」です。

まとめ

復職面談で消耗するのは、担当者が弱いからではなく、一人で担うには無理のある構造の中に置かれているからです。まず「安全配慮義務の主体は会社であり、担当者個人ではない」という事実を理解し、自分の役割の範囲を正しく引き直すことが出発点です。次に、就業規則・復職規程の整備で「ルールに基づく対応」ができる状態を作り、面談後の切り替えルーティンや情報共有の仕組みで日々の負荷を下げてください。そして、産業医・社労士・外部専門家といったリソースを適切に活用することで、担当者一人に負荷が集中する構造を変えることができます。

人事は一人で完結しないもの。社内の信頼できる人や外部の専門家と役割を分けることで、担当者の心身を守りながら、会社として適切な復職対応が可能になります。ウェルセンス株式会社では、そうした体制づくりのご相談も承っています。

ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・兼務担当者からの復職面談・メンタルヘルス対応に関するご相談を承っています。「今の対応が正しいのか確認したい」「体制を整えたいが何から始めればいいかわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 復職面談で「死にたい」と言われたとき、担当者はどう対応すればいいですか?

A. まずその言葉を否定したり流したりせず、「つらい状態にあることはわかりました」と受け止めた上で、「私ではなく、専門家に相談してほしい」と伝えてください。具体的には主治医やかかりつけ医への連絡を促し、緊急性が高い場合は「よりそいホットライン(0120-279-338)」などの相談窓口を案内することも選択肢です。担当者がその言葉を全て引き受けようとするのは、担当者自身を傷つける行為になりえます。「専門家につなぐことが自分の役割」と位置づけてください。

Q. 産業医がいない会社でも、復職の判断を適切に行うことはできますか?

A. できます。常時50名未満の事業場は産業医の選任義務はありませんが、都道府県ごとに設置されている「産業保健総合支援センター」では、産業医・保健師・メンタルヘルス対策促進員への無料相談が受けられます。また、顧問社労士に復職規程の整備や個別ケースのアドバイスを依頼することも有効です。主治医の意見書を適切に活用し、専門家の意見を確認した上で会社として判断するというプロセスを設計することが重要です。

Q. 復職面談の内容を記録に残す必要はありますか?

A. 記録を残すことは強く推奨されます。理由は二つあります。一つは、後から「あのとき○○と言った・言わなかった」というトラブルを防ぐためです。もう一つは、担当者の引き継ぎや外部専門家への相談時に正確な情報を共有できるためです。面談後に日時・出席者・確認事項・合意内容を簡単にまとめたメモを作成し、本人にも内容を共有しておくと、後々の対応がスムーズになります。

Q. 復職を認めた後に再発した場合、担当者や会社は責任を問われますか?

A. 適切なプロセスを踏んでいれば、再発したこと自体で直ちに法的責任が生じるわけではありません。重要なのは「どのような手順で復職を判断したか」です。主治医の意見書を受け取り、復職規程に沿った手順で判断し、復職後も業務負荷の配慮を行っていたという記録が残っていれば、会社として安全配慮義務を果たしていたと主張できます。逆に、手順の記録がなく、口頭だけで進めていた場合はリスクが高まります。プロセスの記録が担当者と会社を守ります。

Q. 担当者自身が「もう限界かもしれない」と感じたとき、どこに相談すればいいですか?

A. 担当者自身が消耗しているサインを感じたら、まず経営者や上長に「対応が自分一人では難しい状況になってきている」と率直に伝えることが最初のステップです。外部への相談先としては、産業保健総合支援センター(無料)、顧問社労士、復職支援や職場のメンタルヘルス対応を専門とするコンサルタントなどが選択肢になります。担当者が倒れることは会社にとっても大きなリスクです。「自分が我慢すれば済む」という判断が、最終的に最大のコストを生みます。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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