中小企業の内部通報窓口の作り方と最低限の対応手順

中小企業の内部通報窓口の作り方と最低限の対応手順 コンプライアンス
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「うちは20人ちょっとの会社だから、内部通報窓口なんて関係ない」——本当にそうでしょうか。2022年の公益通報者保護法改正で従業員300人超の企業には窓口設置が義務化されましたが、300人以下でも「努力義務」として対応が求められています。さらに、ハラスメント相談窓口は従業員数に関わらず別途義務があります。この記事では、自社が義務対象かどうかの判断から、専任人事のいない中小企業でも実践できる最低限の整備手順まで、具体的に解説します。

自社は義務対象か——従業員数の数え方と判断基準

公益通報者保護法(2022年6月改正施行)では「常時使用する労働者数が300人を超える事業者」に内部通報窓口の設置が義務付けられています。20〜50名規模の企業であれば、多くの場合は義務対象外となりますが、「常時使用する労働者数」の数え方を正確に理解しておくことが重要です。

「常時使用する労働者数」に含まれる人

正社員だけを数えればよいと思われがちですが、そうではありません。パートタイム労働者やアルバイトであっても、常態的に(臨時ではなく継続的に)雇用している場合は「常時使用する労働者」に含まれます。一方、派遣社員は派遣元企業でカウントされるため、派遣先である自社の数に含める必要はありません。グループ企業の場合は法人単位でのカウントが基本であり、親会社と子会社は別々に判断します。

自社の立ち位置を確認するチェックポイント

従業員の種別 常時使用する労働者数への算入
正社員(フルタイム) 含む
パート・アルバイト(継続雇用) 含む(実態で判断)
派遣社員 含まない(派遣元でカウント)
業務委託・フリーランス 含まない
グループ・関連会社の社員 含まない(法人単位で判断)

300人以下でも「努力義務」は存在する

300人以下の事業者であっても、消費者庁は「体制整備に努めるべき」という努力義務を課しています。努力義務とは法的な強制力はありませんが、行政指導の対象となる可能性があるほか、取引先や求職者からの信頼性にも影響してくる話です。「義務がないから何もしなくていい」という判断は、リスク管理の観点から見直しが必要です。

「努力義務だから放置でいい」が危険な理由

公益通報者保護法の義務対象外であっても、ハラスメント相談窓口の整備は従業員数に関わらず法的に義務化されています。この2つを混同または未整備のまま放置することが、中小企業にとって最も多いコンプライアンスリスクの一つです。

ハラスメント相談窓口は別の法律で義務化済み

パワーハラスメント対策については、労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、中小企業でも2022年4月から雇用管理上の措置義務が課されています。具体的には、相談窓口の設置・担当者の指定・相談者のプライバシー保護などが求められます。これは公益通報者保護法とは別の法的根拠に基づくものであり、「内部通報窓口がなくても、ハラスメント相談窓口は必ず整備しなければならない」ということです。

採用・取引における信頼性への影響

近年、取引先の選定にあたってコンプライアンス体制を確認するケースが増えています。また、求職者——特に法務・コンプライアンス意識の高い候補者——が入社前に通報窓口や相談体制の有無を確認することも珍しくありません。窓口の整備は単なる法令対応ではなく、企業としての誠実さを示す手段でもあります。

通報者保護のルールを知らないことによるリスク

仮に通報が寄せられた際に、通報者が誰かを特定して不利益扱いをした場合、公益通報者保護法の保護規定に違反する可能性があります。また、守秘義務を課された担当者(義務対象の企業に限る)が情報を漏らした場合は30万円以下の罰金という刑事罰も定められています。窓口の有無に関わらず、「通報が来たときの対応ルール」を事前に知っておくことは必須です。

中小企業が整備すべき最低限の体制——具体的な手順

専任人事がいない中小企業であっても、まず就業規則への規定追加と窓口連絡先の明示から始めれば、最低限の体制は整えられます。難しく考えすぎず、「誰が受けて、誰に上げて、どう処理するか」の流れを文書化することがゴールです。

就業規則・社内規程への盛り込み

最初に取り組むべきは、就業規則またはコンプライアンス規程への通報窓口に関する規定の追加です。記載すべき内容は、窓口の設置目的・通報できる内容の範囲・通報者の秘密保持・不利益取扱いの禁止・対応フローの概要の5点です。すでに就業規則があれば附則や別紙として追記する形でも構いません。就業規則の変更には労働者代表への意見聴取と労働基準監督署への届出が必要な点も忘れずに対応してください。

窓口連絡先の設定と周知

次に、通報を受け付ける具体的な連絡先を決めます。専用のメールアドレス(例:compliance@〇〇.co.jp)や電話番号を設け、社内に周知します。窓口担当者は経営者の直属でない立場の人を選ぶことが望ましく、難しければ外部の社労士や弁護士に委託することも選択肢の一つです。担当者が「経営者の側近」に見えてしまうと、従業員が萎縮して制度が形骸化します。

対応フローの文書化

最後に、通報を受けた後の動き方を1枚の文書にまとめます。具体的には、受付後の事実確認の方法・関係者へのヒアリング手順・経営層への報告ラインの設定・通報者への結果通知の方法を明記します。完璧なマニュアルでなくても、「初動で何をするか」が書いてあるだけで、担当者の判断負荷が大きく下がります。

小規模企業特有の「匿名性・独立性」問題にどう対応するか

20〜50名規模の会社では、社内だけでは匿名性を保つことが構造的に難しく、外部窓口の活用や社外の第三者を担当者に含めることが実効性を高める最も現実的な手段です。自社の状況判断に迷ったら、早めに専門家に相談することで、最適な窓口設計が見えてきます。

社内窓口だけでは機能しないケース

小規模企業では「誰が通報したかすぐわかってしまう」「窓口担当者が被通報者と仲が良い」といった状況が起こりやすく、制度が形骸化するリスクがあります。特に、経営者や役員に関する問題を社内の担当者に通報するよう求める設計は、最初から機能しないと考えるべきです。

外部窓口サービスの活用

外部の弁護士事務所、社労士、または民間の内部通報受託サービスを活用することで、通報者の匿名性を担保しやすくなります。コストについては月額数万円程度から提供しているサービスも存在しますが、社労士との顧問契約内で対応してもらえるケースもあります。まずは現在の顧問先に相談してみることが現実的な第一歩です。

ハラスメント相談窓口と一本化する考え方

内部通報窓口とハラスメント相談窓口を別々に設けると、担当者も管理も二重になります。中小企業では「コンプライアンス・相談窓口」として一本化することで、運用負荷を抑えながら実効性を確保できます。ただし、窓口を一本化した場合でも、ハラスメント対応と公益通報対応では法的な対応義務が異なる点を担当者が理解していることが前提です。

通報が実際に来たときの初動対応

通報を受け取ったとき、最初の48時間の動き方が制度の信頼性を左右します。初動で最も重要なのは「通報者の情報を守ること」と「事実確認の順序を間違えないこと」の2点です。

受付直後にやること・やってはいけないこと

受付後まず行うべきは、通報内容の記録と受付確認の通知(匿名通報の場合は通知方法を事前に設計しておく)です。絶対にやってはいけないのは、被通報者に対して「こんな通報があった」と早々に伝えることです。被通報者が証拠を隠滅したり、通報者に圧力をかけたりするリスクがあります。まず通報者の保護を優先し、調査の順序を慎重に設計してください。

事実確認と経営層への報告ライン

通報内容の事実確認は、通報者・関係者・被通報者の順に進めるのが一般的です。経営者・役員が被通報者となるケースでは、外部の専門家(弁護士など)に介入を依頼することが現実的です。調査の結果は記録として残し、通報者に対して「どのような対応をとったか」を可能な範囲で通知することが、制度への信頼を維持するために重要です。

再発防止策の検討と文書化

通報案件への対応が完了したら、再発防止策を検討し、社内規程や業務フローの見直しに反映させます。対応の経緯と結果は記録として保存し、後日の参考資料とします。すべての通報対応を記録として積み重ねていくことが、制度を実質的に機能させる基盤になります。

まとめ

公益通報者保護法の改正により、従業員300人超の企業には内部通報窓口の設置が義務化されました。20〜50名規模の企業は義務対象外ですが、努力義務として対応が求められるうえ、ハラスメント相談窓口は別の法律(労働施策総合推進法)により従業員数を問わず義務化されています。整備の順序としては、まず就業規則への規定追加と窓口連絡先の設定から着手し、次に対応フローの文書化、そして匿名性を確保するための外部窓口の検討へと進むことが現実的です。

「何から手をつければいいかわからない」「自社の状況でどこまで対応すべきか判断できない」という場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談することで、整備の優先順位が明確になり、運用の負担も大きく軽減できます。ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・兼務人事担当者からのご相談を受け付けています。内部通報窓口の整備からハラスメント対応の体制づくりまで、貴社の規模と状況に合わせた現実的なアドバイスをご提供します。まずは気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 従業員が30名のパート込みで数えると35名になります。内部通報窓口の設置は義務ですか?

A. 従業員数が300人以下であれば、公益通報者保護法上の「設置義務」の対象外です。ただし、努力義務として整備が推奨されます。また、パワーハラスメント対策(相談窓口の設置)については、労働施策総合推進法により従業員数を問わず義務が課されています。この2つの窓口を一本化して整備することが、中小企業にとって現実的な対応です。

Q. 社内に適任者がおらず、窓口担当者を誰にするか決まりません。どうすればいいですか?

A. 社内に担当者を置きにくい場合は、顧問の社労士や弁護士に外部窓口として対応を委託する方法があります。外部委託は法令上も認められており、特に小規模企業では匿名性・独立性を確保するうえで有効な手段です。まずは現在の顧問先に相談することをお勧めします。

Q. 匿名で通報を受け付けた場合、どうやって通報者に結果を伝えればよいですか?

A. 匿名通報の場合、事前に「匿名での通報結果の伝え方」を仕組みとして設計しておく必要があります。たとえば、専用の問い合わせ番号や匿名メールフォームを利用し、通報者が番号・IDで状況確認できる仕組みを設けると有効です。外部窓口サービスでは、こうした匿名コミュニケーションの仕組みを提供しているものもあります。

Q. 経営者自身が被通報者になった場合、どう対処すればいいですか?

A. 経営者が被通報者となるケースは、社内で公正な調査を行うことが構造的に難しいため、外部の弁護士や専門機関に調査・対応を委託することが適切です。このようなケースへの備えとして、窓口設計の段階から「経営者が関与する案件の扱い」を規程に明記しておくことをお勧めします。

Q. 内部通報窓口を整備すると、逆に些細なことでも通報が増えてしまわないか心配です。

A. 窓口を設けることで通報件数が増えることはありますが、それは「これまで見えていなかった職場の問題が可視化される」ことを意味します。早期に把握できれば、深刻なトラブルに発展する前に対処できるため、むしろリスク管理の観点からはプラスです。通報の範囲を規程で明確にし、「相談・通報の目的は問題解決であること」を社内で丁寧に説明することで、不必要な濫用は抑制できます。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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