「連絡したほうがいいのはわかっているけれど、何をどう伝えればいいのか…」。休職者への対応で、こうした迷いを抱えている経営者・人事担当者は少なくありません。連絡が少なすぎれば安全配慮義務の問題になり、多すぎればハラスメントになりかねない。この記事では、休職中の連絡頻度の目安・適切な連絡手段の選び方・絶対に避けたいNGワードという3つの実務ポイントを、具体例を交えてわかりやすく解説します。
休職中も「連絡する義務」は続いている
安全配慮義務は休職中も消えない
「休んでいる間は会社が関与しないほうがいい」と考える経営者もいますが、これは誤解です。労働契約法第5条が定める安全配慮義務は、休職期間中も会社に課せられています。具体的には、休職者の状態が悪化しないよう適切な情報提供や休職中の連絡を行うことが義務の一部とされており、完全な音信不通が結果として「義務違反」と判断されたケースも実際に存在します。
「連絡を控えること=優しさ」ではなく、「適切な頻度と内容で連絡すること=会社の責任」という認識が、まず出発点になります。
放置リスクと過干渉リスク、どちらも避ける
一方で、連絡が多すぎることも問題です。毎週電話がかかってくる、業務の進捗を確認される、「いつ戻れそうか」と繰り返し聞かれるといった状況は、従業員にとって大きなストレスになります。労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の観点からも、復職を過度に急かす行為はパワハラに該当する可能性があります。
会社がすべきことは「放置しない」と「過干渉しない」のバランスを保つこと。そのために必要なのが、フェーズに応じた連絡頻度と内容の設計です。
休職フェーズ別の連絡頻度と内容の目安
休職初期(開始~1ヶ月)は最小限に抑える
休職直後は、心身ともに最も疲弊している時期です。この時期に頻繁な連絡を行うと、回復の妨げになります。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも、休職初期はできる限り静養に専念させることが推奨されています。
この時期の連絡頻度は、休職開始の確認・傷病手当金などの必要書類の案内・窓口担当者の通知など、事務的な内容を書面やメールで1~2回行う程度で十分です。返信は不要である旨を必ず添えましょう。
休職中期(1~3ヶ月)は月1~2回の状況確認
療養が一定程度進んだ中期は、月1~2回程度のペースで定期連絡を行います。内容は「体調はいかがですか」という安否確認と、診断書の更新期限・傷病手当金の申請手続きなどの事務連絡にとどめます。業務の話題や復職の打診はまだ必要ありません。
実務上よくある失敗は、「ちょっと元気そうだったから」という感覚で復職の話題を出してしまうことです。復職の検討は、必ず主治医からの意見(復職可の診断)が出てから始めるのが原則です。
復職準備期(主治医が復職可と判断した後)は内容を切り替える
主治医から「復職可能」の判断が出た段階で、はじめて復職に向けた連絡へと内容を切り替えます。具体的には、職場復帰支援プラン(復職後の業務量・勤務時間・フォロー体制などを定めた計画)の協議を開始します。この段階でも週1回以上の連絡は過多になりやすいため、面談形式で丁寧に進めるほうが得策です。
電話よりメール・書面が望ましい理由
連絡手段の選び方が従業員の負担を左右する
「電話したほうが気持ちが伝わる」と考える管理職・経営者は多いのですが、休職中の従業員にとって電話は精神的負担が高い連絡手段です。着信のタイミングを選べない、即座に応答しなければならないという心理的プレッシャーが、状態の悪化につながることがあります。
メールや書面であれば、従業員が自分のペースで読むことができ、返信するかどうかも自分で判断できます。「返信不要です」という一言を添えるだけで、受け取る側の心理的負担は大きく軽減されます。
記録が残ることが会社を守ることにもなる
メールや書面には「記録が残る」という実務的なメリットもあります。「いつ・何を・どのような目的で連絡したか」が明確になることで、万が一労働トラブルや訴訟に発展した際の証拠として機能します。
個人のLINEやSNSのメッセージを使った連絡は、記録の管理が難しく、プライベートな関係性との境界も曖昧になりがちです。会社のメールアドレス経由・郵便・場合によっては会社公式のチャットツールを使うことが基本です。
窓口は必ず一本化する
連絡手段と同じくらい重要なのが「誰が連絡するか」の一本化です。上司・経営者・人事担当がそれぞれ個別に連絡してしまうケースは、小規模企業で非常によく見られます。しかし、複数人から連絡が来ること自体が「多重プレッシャー」となり、NGワードを一つも使っていなくても従業員には大きな負担になります。
担当窓口を1名に決め、その人のみが連絡を行うルールを社内で明確にしましょう。担当者が変わる場合は必ず引き継ぎ記録を残します。
休職中に言ってはいけないNGワード
善意の言葉がプレッシャーになる
「みんな待ってるよ」「早く元気になってね」「あなたがいないと困る」。これらはすべて、善意から出た言葉です。しかし、休職中の従業員にとって、これらは「戻らなければならない」「自分のせいでみんなに迷惑をかけている」というプレッシャーとして受け取られることがあります。
回復には「焦らなくていい」という安心感が不可欠です。善意の応援が逆効果になるメカニズムを、連絡する側が正しく理解しておくことが重要です。
絶対に避けるべき発言の具体例
以下は特に注意が必要なNGワードの例です。
「いつ戻れそうですか?」という復職を急かす問いかけは、状態が安定していない時期に使うと、従業員に大きなストレスを与えます。復職の時期は主治医の判断に委ねるべきものであり、会社側が期限を示唆するような発言は避けなければなりません。
「このまま戻れないなら…」という言い回しは、解雇を匂わせる発言と受け取られます。労働契約法第16条の解雇権濫用に該当するリスクがあるだけでなく、従業員の精神状態をさらに悪化させる危険があります。
「気持ちの問題だよ」「頑張ればなんとかなる」といった発言は、精神疾患に対する無理解を示すものとして傷つきにつながります。うつ病や適応障害は意志や根性で乗り越えられるものではなく、医療的なサポートが必要な状態です。
代わりに使いたい言い回しの例
では、どのような言葉が適切でしょうか。「焦らず、ゆっくり療養してください。今は回復に専念していただいて大丈夫です」という言葉は、プレッシャーを与えずに会社の配慮を伝えることができます。
事務連絡を送る際は「ご体調のご確認と、書類についてのご案内でご連絡しました。お返事は不要です」のように、目的を明確にして返信プレッシャーを排除することを意識しましょう。短い一言でも、目的が明確な文章は受け取る側の安心感につながります。
社内ルールとして整備しておくべきこと
連絡記録の管理方法を決める
休職者への連絡は、日時・手段・内容・担当者名を記録するシートを作成し、必ず残しておきましょう。口頭や個人LINEでのやり取りは記録が残らないため、後日「言った・言わない」の問題が生じやすくなります。シンプルなスプレッドシートでも十分機能します。記録があることが、会社側の誠実な対応を示す証拠にもなります。
連絡フローと担当者を社内ルール化する
「誰が・いつ・何の目的で・どの手段で連絡するか」を文書化したフローを作成しておくと、担当者が変わった場合でも対応が属人化せずに済みます。特に専任人事のいない中小企業では、こうしたルールがないまま対応が続き、後になって大きなトラブルに発展するケースが少なくありません。
フローを作成する際は、休職初期・中期・復職準備期の3段階に分けて内容を設計すると実用的です。各フェーズで「連絡の目的」「頻度の目安」「使用する手段」「禁止事項」を明記しておくことをお勧めします。
個人情報の取り扱いルールも整備する
休職の原因となっている病名や診断内容は、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当します。連絡担当者以外への情報共有は最小限にとどめ、同僚への病名漏洩や、当事者の了承なしに上司に詳細を伝えることは避けなければなりません。「△△さんは精神的に問題があって…」といった情報が職場内に広がると、復職後の居場所を奪うことにもつながります。
まとめ
休職中の連絡対応には、「適切な頻度」「適切な手段」「適切な言葉」という3つの柱があります。まず連絡の目的を明確にし、フェーズに応じた連絡頻度(初期は最小限・中期は月1~2回・復職準備期は内容を切り替え)を守ること。次に電話よりメール・書面を基本とし、窓口を一本化して記録を残すこと。そして善意であっても復職を急かす言葉やプレッシャーになる表現は避け、「焦らなくていい」という安心感を伝えること。これらを社内ルールとして文書化しておくことが、トラブル防止と従業員の回復促進の両方につながります。
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よくある質問
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