副業解禁の社内ルール、何から決めればいい?

副業解禁の社内ルール、何から決めればいい? 組織運営
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「副業を認めたいけど、何をどこから決めればいいのか……」。専任の人事担当者がいない中小企業では、こうした悩みを抱えながらも、忙しい日常業務に追われて後回しになりがちです。しかし、社内ルールを曖昧にしたまま副業を解禁すると、情報漏洩・過重労働・社員トラブルなど深刻なリスクを招くこともあります。この記事では、20〜50名規模の企業が副業解禁の社内ルールを整備する際に「最初に何をすべきか」を、実務の観点から順を追って解説します。

副業解禁は「自由化」ではなく「ルール整備」

副業は原則として禁止できない

まず押さえておきたいのは、副業は原則として労働者の自由であるという点です。労働契約法や民法の信義則の観点から、会社が社員の私生活に一律に制限を加えることは認められにくくなっています。厚生労働省が2018年(2020年改定)に公表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」でも、副業・兼業を原則禁止とする就業規則は見直しを求める方向性が示されています。

つまり「副業を解禁する」というより「副業を認めつつ、会社として管理できる枠組みをつくる」という発想が正確です。

社内ルールがないまま解禁するリスク

「うちは副業OK」と口頭で伝えるだけでは、会社にとっても社員にとっても不利益が生じる場面があります。たとえば、競合他社で副業した社員が機密情報を持ち出した場合、就業規則に禁止規定がなければ懲戒処分を行うことすら難しくなります。また、副業先での長時間労働が原因でメンタル不調が起きた際に、会社の安全配慮義務(労働契約法第5条)が問われるリスクもあります。副業解禁を決めた段階で、同時にルール整備を始めることが重要です。

「許可制」か「届出制」か、まず方針を決める

副業の社内ルール整備における最初の分岐点は、副業を事前の「許可制」にするか「届出制」にするかです。届出制は社員の手続き負担が軽く、プライバシーへの配慮もしやすい一方、会社側が副業内容をコントロールしにくくなります。一方の許可制は手間がかかりますが、会社が内容を審査して不許可にする余地が残るため、リスク管理の観点からは許可制が望ましいとされています。特に20〜50名規模の企業では、一人ひとりの業務影響を把握しやすいこともあり、許可制を採用するケースが多く見られます。

就業規則に盛り込むべき最低限の条項

定義と対象範囲を明確にする

就業規則の改定にあたって、最初に「副業・兼業とは何か」を定義することが必要です。業務委託・フリーランス案件・投資活動・ボランティア・役員兼任など、どこまでを「副業」と定めるかによって、申請が必要な範囲が変わります。たとえば株式投資や不動産賃貸を副業の定義から除外する企業もあれば、すべての収入活動を申請対象にする企業もあります。自社の業種・リスク許容度に合わせて範囲を決め、規定に明記しましょう。

禁止事由を具体的に列挙する

「業務に支障をきたす場合」という曖昧な表現だけでは、社員との解釈の食い違いが起きやすくなります。実務上は、以下の4つを不許可事由として就業規則に明示することが定番です。

  • 競合他社・取引先での副業
  • 本業の労務提供に支障が生じる場合
  • 会社の信用・名誉を損なう行為
  • 法令違反・公序良俗に反する行為

これらを列挙することで、許可・不許可の判断基準が社内で統一され、後のトラブル防止につながります。

申請書類と定期報告のフローを整える

許可制を採用する場合は、申請書類の様式も合わせて整備します。記載すべき項目は「副業先の名称・業種」「業務内容」「1週間あたりの就業時間の見込み」「開始・終了予定時期」が最低限です。就業時間の申告は、後述する労働時間の通算管理においても必要な情報になります。また、申請時の許可で終わりにせず、年に1回程度の更新・報告義務を設けることで、実態把握と形骸化防止につながります。

見落としがちな「労働時間の通算管理」

労働基準法が求める通算管理とは

多くの中小企業の経営者が見落としているのが、労働時間の「通算管理」義務です。労働基準法第38条では、「労働時間は事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められています。つまり、本業の会社と副業先の労働時間を合算して、法定労働時間(週40時間・1日8時間)を超えた場合は割増賃金の問題が生じる可能性があります。

「副業先のことは副業先の会社の話」と考えているケースが多いですが、法律上は本業の会社にも管理義務が及ぶ場面があります。

中小企業に使える「簡便な管理モデル」

とはいえ、副業先の細かい労働時間まで毎日把握するのは現実的ではありません。そこで厚生労働省のガイドラインでは「管理モデル」と呼ばれる簡便な方法が示されています。これは、本業・副業それぞれで「所定労働時間の枠内で働く」ことを前提に合意した上で、法定外の時間外労働を各社で管理するという仕組みです。完全な把握は難しくても、申請書類で副業の就業時間を事前に確認し、合算が週40時間を大幅に超えないよう確認するだけでも、会社としての対応姿勢を示すことができます。

メンタルヘルスと健康管理条項の重要性

副業解禁による過重労働は、メンタル不調や休職につながるリスクをはらんでいます。本業・副業を合わせた月間労働時間が80時間を超えるようなケースでは、健康障害のリスクが高まることが産業医学的にも指摘されています。社内ルールとして「副業先と合わせた月間就業時間の上限(例:月20時間以内)」を設ける企業も増えています。また、体調不良を申し出た社員に対して副業の見直しを求める条項を盛り込んでおくことで、万が一の際の対応根拠にもなります。

情報漏洩・競業リスクへの備え方

競業避止条項と秘密保持義務を整備する

副業解禁において会社が最も懸念するリスクの一つが、社員による情報漏洩・競業行為です。就業規則または個別の誓約書で、競合他社・取引先での副業禁止、在職中・退職後の秘密保持義務、違反した場合の懲戒処分の根拠を明示しておくことが必要です。

ただし、競業避止条項は「期間・地域・業務範囲が不合理に広すぎると無効」とする裁判例があります。退職後2年間・全国・同業種一切禁止のような包括的な条項は無効とされるリスクがあるため、自社の実情に合わせた合理的な範囲で定めることが重要です。

副業内容の審査フローを作る

許可申請を受けた際に、競業リスクを判断するための審査フローを事前に設計しておきましょう。たとえば、「申請内容が取引先や同業他社に関係するか確認する→関係する場合は経営者・法務担当が判断→不許可の場合は理由を書面で通知する」という流れを作っておくだけで、現場の対応が格段にスムーズになります。判断基準を社内で共有しておくことが、恣意的な運用を防ぐためにも大切です。

情報セキュリティのルールも同時に見直す

副業解禁に伴い、社内の情報管理ルールも合わせて整備することをお勧めします。副業先の仕事に自社のパソコンを使用しない、社内システムへのアクセス権限を業務必要範囲に限定する、機密情報の持ち出しに関するルールを明確化するなど、情報セキュリティポリシーと就業規則が連動していることが重要です。副業解禁をきっかけに情報管理体制を見直した企業では、副業以外のリスクにも気づくケースがよくあります。

就業規則変更の手続きと注意点

労働者代表の意見聴取と労基署への届出

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働基準法第89条・第90条により就業規則の作成・届出義務があります。就業規則を変更する際は、労働者の過半数を代表する者の意見を聴取し、意見書を添えて所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。「変更したことを社員に説明したからOK」ではなく、手続きの完了まで管理することが大切です。

不利益変更にあたるかを確認する

副業解禁は多くの場合、社員にとって有利な変更のため不利益変更には該当しません。ただし、「副業に関して月間労働時間の上限を設ける」「違反した場合の懲戒規定を新設する」といった条項は、場合によっては労働契約法第10条に基づく合理性の説明が必要になることがあります。変更内容によって社員に不利益が生じうる場合は、社員への丁寧な説明と同意取得を検討しましょう。

社員への周知と運用スタートのタイミング

就業規則の変更は、届出後に社員へ周知することで効力が生じます(労働基準法第106条)。周知の方法は、社内掲示・イントラネットへの掲載・全社メールなど自社の実情に合わせて選択できます。また、副業ルールの運用開始にあたっては、申請書類の様式・審査フロー・担当者を事前に明確にしておくことで、運用開始直後の混乱を防ぐことができます。30名規模の企業であれば、全社説明会や質疑応答の場を設けると社員の理解と安心感につながります。

まとめ

副業解禁の社内ルール整備は、「副業OK」と宣言するだけでなく、就業規則の改定・労働時間の通算管理・競業リスクへの対応・申請運用フローの設計まで、複数の論点をセットで考える必要があります。特に専任人事のいない中小企業では、「何から着手すればいいか」の整理だけで時間がかかることも少なくありません。まず許可制か届出制かの方針を決め、次に就業規則に盛り込む条項を洗い出し、そして労基署への届出手続きまで完了させる、という流れを意識することが大切です。

副業解禁に伴うメンタルヘルスリスクの管理や、過重労働・休職予防の仕組みづくりについても重要なテーマです。「社内ルールの方向性は決まったが、社員の健康管理や休職対応が不安」「副業解禁後のフォロー体制を整えたい」という経営者・人事担当の方は、ウェルセンス株式会社にお気軽にご相談ください。メンタルヘルス対応・休職復職支援の実績をもとに、貴社に合わせた対応方法をご提案します。

よくある質問

Q. 従業員が10人未満の場合、副業の社内ルールを整備する必要はありますか?

A. 労働基準法上は常時10人未満の事業場には就業規則の作成・届出義務はありません。しかし副業に関するルールを口頭のみで運用するとトラブルの原因になります。法的義務がなくても、社内ルールを文書化して社員に共有しておくことを強くお勧めします。

Q. 副業の収入額まで会社が把握してよいのでしょうか?

A. 副業収入の金額は、原則として会社が把握する必要はありません。ただし、社会保険の二重加入の可能性や住民税の特別徴収額の変動から、結果的に副業収入の存在が会社側に伝わるケースはあります。申請書類では「業務内容」「就業時間」を確認する範囲にとどめ、収入額の申告は求めない設計が一般的です。

Q. 副業を理由にメンタル不調が起きた場合、会社に責任はありますか?

A. 副業を許可した会社には、安全配慮義務の観点から一定の責任が生じる可能性があります。特に副業先を含む通算労働時間が月80時間を超えるような過重労働状態を会社が把握していながら放置していた場合はリスクが高まります。就業規則に健康管理条項を設け、体調不良時の副業停止を求めることができる規定を整備しておくことが重要です。

Q. 副業申請を不許可にした場合、社員から訴えられる可能性はありますか?

A. 合理的な理由のある不許可は認められています。ただし「なんとなく認めたくないから」という主観的・恣意的な理由では、不当な拒否として争われるリスクがあります。就業規則に不許可事由を明記した上で、判断根拠を文書で残しておくことが重要です。競合他社での副業、機密情報漏洩リスク、本業への著しい支障といった具体的な理由を示せることが、紛争防止のポイントになります。

Q. 副業解禁のルール整備を外部に相談するとしたら、どこに頼めばよいですか?

A. 就業規則の改定そのものは社会保険労務士(社労士)が専門です。ただし、副業解禁に伴う過重労働のリスク管理・メンタルヘルスへの影響・休職予防の仕組みづくりなど、人事労務の実務全般を総合的に相談したい場合は、中小企業の人事課題に特化した支援会社に相談する選択肢もあります。ウェルセンス株式会社では、就業規則整備の方針検討から社員の健康管理体制の構築まで、専任人事のいない企業に寄り添った支援を行っています。お気軽にお問い合わせください。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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