休職期間満了で解雇に悩んだら読む退職手続きの進め方

休職期間満了で解雇に悩んだら読む退職手続きの進め方 休職・復職対応
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「休職期間が終わりそうなのに、何をすればいいかわからない」「本人に伝えるのが怖くて、ずるずると期間を延ばしてしまっている」——そんな状況に追い込まれている経営者・人事担当者は少なくありません。専任の人事担当者がいない中小企業では、メンタルヘルス不調による休職対応は特に難しい問題です。この記事では、休職期間満了時の対応手続きを、法的なポイントを押さえながら順を追って解説します。

「休職期間満了=解雇」は間違い——まず仕組みを正しく理解する

「自動退職」と「解雇」はどこが違うのか

「休職期間が満了したら解雇しなければならない」と思い込んでいる経営者は多いのですが、これは正確ではありません。就業規則に「休職期間が満了し、なお復職できないときは退職とする」という規定があれば、その社員は解雇ではなく「自動退職」として会社を離れることになります。

解雇は会社が一方的に労働契約を終わらせる行為であり、労働契約法第16条の「解雇権濫用法理」が適用されます。一方、就業規則に基づく自動退職は、あらかじめ定められた条件が満たされたことによる契約の終了です。この違いは、後のトラブルリスクに直結します。

就業規則の確認が絶対的な前提条件

自動退職として扱えるかどうかは、就業規則に明確な休職・復職条項があるかどうかにかかっています。「休職できる」とだけ書いてあり、満了後の扱いが書かれていない場合は、一方的な退職扱いが無効とみなされるリスクがあります。

まず手元の就業規則を開いて、以下の点を確認してください。

  • 休職期間の上限が明記されているか
  • 満了後に復職できない場合の取り扱いが書かれているか
  • 延長の可否と条件が規定されているか

これらが欠けている場合は、手続きを進める前に就業規則の整備が必要です。

就業規則の規定がない場合に起こりうるリスク

実際に、就業規則に退職規定がないまま「期間満了だから退職です」と伝えてしまい、労働審判を申し立てられるケースがあります。労働審判は申立から約3か月で結論が出る制度で、会社側が対応を誤ると和解金の支払いや雇用継続を命じられることもあります。まず規定を確認し、不備があれば専門家に相談してから手続きを進めるのが原則です。

復職できるかどうかの判断は会社が行える——正しいプロセスとは

主治医の診断書は「参考情報」にすぎない

「主治医が復職可能と言っているのだから、復職させなければならないのでは?」という誤解はよく見られます。しかし法的には、主治医の診断書はあくまで参考情報のひとつであり、最終的な復職可否の判断は会社が行えます。

主治医は患者の療養状態を日常的に観察していますが、職場環境・業務の負荷・チームへの影響などを総合的に判断できる立場にはありません。例えば「軽作業であれば可能」という診断書が出ていても、その社員が担う業務がそれに該当しない場合、会社は復職を認めない合理的な理由を持ちます。

復職判断に必要な「合理的なプロセス」

会社が復職を拒否するためには、「適切なプロセスを踏んだうえでの判断」であることを示す必要があります。具体的には、まず本人との復職面談を実施し、業務遂行能力を確認します。次に、可能であれば試し出勤(リハビリ出勤)の機会を設けます。産業医がいない中小企業では、外部の産業医サービスや精神科・心療内科の専門医に意見を求めることも有効です。

こうしたプロセスを踏まずに「やっぱり無理そう」という感覚だけで復職拒否をすると、後で「合理的理由がない」と判断されるリスクが高まります。面談の日時・内容・判断根拠は必ず書面で記録しておきましょう。

精神疾患・障害がある場合の「合理的配慮」

うつ病や適応障害、発達障害など精神・発達系の疾患がある社員については、障害者雇用促進法第36条の3に基づく合理的配慮の提供義務が生じる場合があります。たとえば:

  • 業務量を一時的に減らす
  • フレックスタイムで対応する
  • 在宅勤務を一定期間認める

こうした配慮をまったく検討せずに退職扱いにすると、「配慮をしなかったこと自体が違法」と判断されるリスクがあります。どこまでが合理的配慮の範囲かは個別性が高いため、判断が難しい場合は社会保険労務士や弁護士に相談することをおすすめします。

退職通知文書の作り方——何を書き、どう届けるか

通知文書に必ず入れるべき5つの項目

退職通知文書は、感情的なやり取りを避けるための重要な書類です。口頭で伝えるだけでは「言った・言わない」のトラブルが起きやすく、メンタルヘルス不調者への対応では特にリスクが高まります。以下の5項目は必ず盛り込んでください。

  1. 就業規則の根拠:退職の根拠となる就業規則の条番号を明記(「就業規則第〇条の規定に基づき」という書き方)
  2. 休職期間の日付:開始日と満了日を正確に記載
  3. 復職判断の経緯:面談日・診断書の内容・判断理由など、簡潔に記述
  4. 退職日:明確に示す
  5. 退職後の手続き:最終給与の支払い・退職金の有無・離職票の発行についての案内

送付方法は「内容証明郵便+配達証明」が基本

通知文書の送付方法は、内容証明郵便と配達証明の組み合わせが推奨されます。内容証明郵便は「いつ・どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が証明し、配達証明は「いつ相手に届いたか」を証明します。この2つを組み合わせることで、「受け取っていない」「そんな内容は知らない」というトラブルを防げます。

社員が連絡不通・行方不明の場合は、自宅住所への送付を試みたうえで、必要に応じて法的手続き(公示送達など)の検討が必要になります。こうしたケースは特に専門家への相談が不可欠です。

書いてはいけない表現・注意すべき言い回し

通知文書には感情的な表現や、事実と異なる内容を書かないことが重要です。以下のような表現は絶対に避けてください:

  • 「あなたの病気が迷惑を」
  • 「何度も連絡したのに無視した」
  • 「もう戻ってこなくていい」

こうした文言が入ると、ハラスメント・不当退職扱いとして問題になるリスクがあります。文書は事実と根拠のみを淡々と記載するのが原則です。

休職期間の延長をどう判断するか——「何度もずるずる延ばす」を防ぐ

延長は義務ではないが、配慮との兼ね合いがある

「もう少し待ってほしい」「来月には必ず復職できます」と言われると、つい期間を延ばしてしまいたくなるのは人情です。しかし、休職期間の延長は法律上の義務ではありません。就業規則に延長規定がなければ、原則として延長に応じる必要はないのです。

一方で、精神疾患や障害を抱える社員については、合理的配慮の観点から「短期間の延長」を検討することが望ましいケースもあります。重要なのは、延長するかどうかを「なんとなく」ではなく、明確な基準と記録に基づいて判断することです。

延長するなら条件・期限・復職基準を書面で合意する

延長を認める場合は、必ず書面で条件を合意してください。以下の内容を明文化し、本人のサインをもらっておきます:

  • 延長期間は〇か月間(〇年〇月〇日まで)
  • その時点で復職できない場合は退職となる
  • 復職可能の判断には産業医(または主治医)の意見書が必要

口約束だけで延長を繰り返すと、「うちの会社では何度でも延長してもらえる」という慣行が成立したとみなされるリスクがあります。実際に、延長を4回繰り返した後で退職扱いにしようとして「慣行を覆す正当な理由がない」と判断された事例もあります。

「決断できない」を防ぐための社内ルールの整備

延長の判断を毎回ゼロから考えていると、担当者が疲弊して先延ばしが常態化します。就業規則に以下のようなルールをあらかじめ盛り込んでおくことが、長期的なリスク管理の観点から非常に重要です:

  • 休職期間の上限は原則〇か月
  • 延長は最大1回・〇か月まで
  • 復職判定は産業医面談を経て行う

手続き全体の流れ——何をいつやればいいか

期間満了の3か月前から動き始める

休職期間満了が近づいてから慌てて動くのでは遅すぎます。期間満了の3か月前には行動を開始するのが理想的です。具体的には以下の順で進めます:

  1. 就業規則の規定を確認する
  2. 本人の状態と復職の見込みを主治医に照会する
  3. 必要であれば産業医や外部専門家に意見を求める

期間満了1か月前に通知・面談を行う

期間満了の1か月前には、本人に対して「このままでは期間満了により退職となる」ことを書面で通知します。この時点で復職を希望する場合は、復職面談と復職可否の判断プロセスを開始します。復職が認められない場合は、退職通知文書の準備に入ります。

この1か月の余裕が、後のトラブル防止に直結します。「突然通知された」と本人が感じると、感情的な反発が起きやすく、労働審判申立のきっかけになることもあります。丁寧なプロセスが、会社を守ることにもつながります。

退職日以降の労務手続きを漏れなく行う

退職が確定したら、以下の手続きを速やかに処理します:

  • 健康保険・厚生年金の喪失届の提出
  • 雇用保険の離職票発行
  • 最終給与の精算
  • 退職金の支払い(規定がある場合)

特に注意が必要なのは、離職票の離職事由の記載です。「労働者の個人的な事情による退職」など、正確な区分を選ぶ必要があります。誤った記載は後から問題になることがあるため、区分の判断に迷う場合はハローワークか社会保険労務士に確認しましょう。

まとめ

休職期間満了による退職対応は、就業規則の確認・復職判断のプロセス・通知文書の作成・労務手続きと、やるべきことが多岐にわたります。どれかひとつが抜けるだけで、後から「不当解雇」「手続きの瑕疵」として問題になるリスクが生じます。特に専任の人事担当者がいない中小企業では、手探りで進めること自体がリスクです。

ウェルセンス株式会社では、休職期間満了に向けた対応フローの整備から、復職判断のサポート、通知文書の確認、社内ルールの構築まで、中小企業の実情に合わせてサポートしています。「このやり方で大丈夫か確認したい」「何から手をつければいいかわからない」という段階からでも気軽にご相談ください。一人で抱え込まず、専門家と一緒に整理していきましょう。

よくある質問

Q. 就業規則に休職・復職の規定がない場合、どうすればいいですか?

A. 就業規則に規定がない状態で退職扱いにすることは法的リスクが非常に高く、一方的な退職扱いが無効とみなされる可能性があります。まず社会保険労務士や弁護士に相談のうえ、就業規則を整備してから手続きを進めることをおすすめします。現在進行中の案件がある場合でも、整備と並行して個別対応の方針を決めることが可能です。

Q. 主治医が「復職可能」と言っているのに、会社が復職を拒否できますか?

A. はい、できます。主治医の診断書は参考情報であり、会社は職場環境・業務内容・周囲への影響などを総合的に判断したうえで復職可否を決定できます。ただし、「なんとなく不安だから」という理由だけでは不十分です。復職面談の実施・産業医等の意見取得・復職拒否の理由を書面で残すというプロセスを踏むことが、後のトラブル防止に欠かせません。

Q. 退職通知を送ったら本人が「不当解雇だ」と言い始めました。どう対応すればいいですか?

A. まず感情的に反応せず、記録を整理することが重要です。就業規則の規定・休職期間の経緯・復職判断のプロセス・通知文書の送付記録など、これまでの対応を時系列でまとめます。労働審判や訴訟に発展する可能性がある場合は、早めに弁護士に相談してください。適切なプロセスを踏んでいれば、会社側が不利になることは少ないため、記録の有無が勝負を分けます。

Q. 休職期間を延長すると、後から「権利が発生する」と言われることはありますか?

A. 延長を繰り返すことで「延長が会社の慣行になっている」とみなされるリスクがあります。特に明文規定なく複数回の延長を認めた場合、次に延長を拒否した際に「これまでと扱いが違う」として問題になることがあります。延長を認める場合は必ず書面で条件・期限・復職基準を合意し、「今回限りの特別な対応」であることを明示することが重要です。

Q. 産業医がいない中小企業は、復職判断をどうすればいいですか?

A. 産業医が選任義務のある規模(常時50人以上)でなければ、外部の産業医サービスや精神科・心療内科の専門医への相談という形で対応できます。近年は中小企業向けの産業医スポット利用サービスも増えています。専門家の意見を記録に残すことが、復職拒否の合理性を示すうえで非常に有効です。ウェルセンス株式会社でも、こうした外部連携フローの構築をサポートしています。

【監修】ウェルセンス株式会社
社会保険労務士・産業カウンセラーと連携し、中小・成長企業の人事課題に向き合う実務ノウハウをお届けします。
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