従業員が体調を崩して休職することになり、傷病手当金の申請書類を手にしたものの、「会社が記入する欄に何を書けばいいのかわからない」と途方に暮れた経験はないでしょうか。専任の人事担当者がいない中小企業では、こうした書類対応が突然降りかかってくることがほとんどです。この記事では、傷病手当金の会社証明欄の書き方を実務ベースで丁寧に解説します。
傷病手当金の申請書、会社が記入する欄はどこか
申請書の3部構成を把握する
2022年1月の様式改定以降、傷病手当金の申請書は「被保険者記載欄」「療養担当者記載欄(医師が記入)」「事業主記載欄」の3つのパートに整理されました。会社が担当するのは「事業主記載欄」です。旧様式を参考にしていると項目の並びが異なるため、必ず最新の様式を使用してください。協会けんぽであれば各都道府県支部のWebサイトから、健保組合に加入している場合は当該組合から最新版を入手しましょう。
事業主記載欄に書く3つの核心項目
傷病手当金の会社証明欄で記入が必要な内容は、大きく分けると次の3点です。まず「労務に服することができなかった期間(年月日〜年月日)」を記載します。次に「その期間中に賃金を支払ったかどうか、支払った場合はその金額」を記入します。最後に「事業主の氏名・住所・押印」を記載します。法人の場合は代表者名でも、人事権限を委任された担当者名でも構いませんが、社印または担当者の認印が必要です。この3点が正確に記載されていれば、健保側の審査はスムーズに進みます。
「休職開始日」と「労務不能開始日」を混同しない
よくある記載ミスとして、「休職の辞令を出した日」と「実際に労務不能になった日」を混同するケースがあります。たとえば月曜日に体調不良で欠勤し、医師の診断を受けたのが水曜日、会社として休職扱いにしたのが翌週という場合、労務不能の起算日は最初に欠勤した月曜日です。事業主記載欄に書くべきは会社の手続き上の休職開始日ではなく、実態として「業務ができなかった最初の日」であることを押さえておきましょう。
待期期間と有給休暇の扱い方
待期3日間のカウントルール
傷病手当金が支給されるのは、連続して3暦日の「待期期間」が完成した後の4日目からです。この3日間は、公休日・有給休暇・欠勤日のいずれも含まれます。たとえば土曜・日曜・月曜と連続して休んだ場合、土日が公休であっても待期は完成します。事業主記載欄には待期期間も含めて記録しておく必要がありますが、待期期間中は傷病手当金は支給されません。申請書上の「労務不能期間」と「支給対象期間」が異なる点を理解しておくと、書類作成時の混乱を防げます。
有給休暇を消化した日の記載方法
有給休暇を取得した日は、会社から賃金が支払われています。そのため、事業主記載欄の「賃金支払いの有無」欄には「支払あり」と記載し、支払額も正確に記入してください。有給休暇日は傷病手当金の支給対象外となりますが(健康保険法第108条)、待期期間のカウントには含まれます。「有給を使ったから申請できない日」と「有給でも待期に含まれる日」は別の概念です。混同すると記載ミスにつながりますので注意しましょう。
給与の一部支払いがある場合の調整
休職中でも会社が給与の一部を支払っているケース(例:給与の6割を傷病見舞金として支給)では、傷病手当金は減額調整されます。具体的には、傷病手当金の日額が会社からの支払い日額を上回る部分のみが支給されます。事業主記載欄には支払った金額を正確に書くことが法的義務となっており、過少記載は後日健保との調整が必要になることもあります。給与台帳や賃金計算書と照合しながら記入することをお勧めします。
医師意見欄との整合性をどう確保するか
医師記載と会社記載がズレやすい理由
申請書の「療養担当者記載欄」には、医師が「労務不能と認めた期間」を記載します。一方、「事業主記載欄」には実際に就労できなかった期間を会社が記載します。この2つがズレていると、健保から問い合わせが入ることがあります。ズレが生じやすいのは、「医師の診断書では〇月〇日から労務不能」とされているのに、会社側では「実際の欠勤開始日」を書いてしまうケースです。原則として、医師が認めた労務不能期間の範囲内で会社が実態を記載する形になります。
整合性を確認するための実務的な手順
会社記載欄を記入する前に、従業員から受け取った医師記載欄(または診断書)を確認しましょう。医師が記載した労務不能期間の開始日・終了日と、会社が把握している欠勤日程を照合します。期間が一致していれば問題ありません。もし医師の記載と会社の記録に差異がある場合は、従業員を通じて主治医に確認を依頼するか、健保窓口に事前相談することで、後から差し戻しになるリスクを避けられます。書類を提出した後に問い合わせが来るより、事前確認の方が双方の負担は格段に少なくなります。
期間が月をまたぐ場合の分割申請
休職が長期化する場合は、月ごとに分割して申請するのが実務の標準です。たとえば4月15日から休職した場合、4月15日〜4月30日分、5月1日〜5月31日分、と月単位で申請書を作成します。月次申請にすることで、従業員は毎月傷病手当金を受け取ることができ、収入が途絶えるリスクを軽減できます。申請書には請求期間を明記し、事業主記載欄もその期間に対応する内容で記入してください。
書き間違えたときの訂正方法と提出後の修正対応
提出前の訂正ルール
申請書の記入ミスに気づいた場合、修正液(修正テープを含む)の使用は原則として認められていません。正しい訂正方法は、誤記箇所に二重線を引き、その横または上に正しい内容を記入し、訂正箇所に訂正印を押すことです。訂正印は、申請書に押印した印鑑と同一のものを使用してください。複数箇所の訂正が多い場合は、新しい用紙に書き直した方がトラブルを避けられます。
提出後に誤りが発覚した場合
健保に提出した後に記載ミスが発覚した場合は、すぐに提出先(協会けんぽの場合は各都道府県支部、健保組合の場合は当該組合)に連絡しましょう。多くの場合、「訂正申出書」や「内容変更の申告」に対応しています。「もう提出してしまったから取り返しがつかない」と放置すると、支給額の誤りや不正受給と見なされるリスクが生じます。気づいた時点で速やかに連絡することが、従業員と会社の双方を守ることになります。
申請書の時効と保管期間
傷病手当金の請求権の時効は2年です(健康保険法第193条)。申請が遅れても2年以内であれば請求できますが、月次で申請しておく方が従業員の生活を守る上で現実的です。また、会社側は申請書の控えや賃金台帳などの関連書類を適切に保管しておくことをお勧めします。労務関連書類の保存期間は原則3〜5年とされており、後日確認が必要になった際に速やかに対応できる体制を整えておきましょう。
🔗 社員のメンタル不調に、精神科・心療内科医によるスポット産業医サービス →
シフト制・フレックス勤務など特殊なケースへの対応
シフト制勤務の場合の「労務不能日」の数え方
シフト制の従業員が休職した場合、「本来出勤予定だったシフトの日」が労務不能日となります。休職中にシフトが組まれていなかった日(もともとの非番日)は、労務不能日としてはカウントされません。たとえば週4日シフトの従業員が1ヵ月休職した場合、事業主記載欄には「出勤予定だったシフト日」に対して記載します。シフト表を保管しておくと、後から確認が必要になったときに証拠として役立ちます。
フレックスタイム制・在宅勤務の場合
フレックスタイム制や在宅勤務の従業員が体調不良で「業務ができなかった日」は、出退勤記録や業務ログを確認して判断します。「在宅だったから出勤扱い」「少し作業したから労務不能ではない」という判断は慎重に行うべきです。一般的に、主治医が「労務不能」と診断している期間中は、たとえ自宅にいても業務を行わせることは健康管理上も望ましくありません。従業員が自主的にメールを見ていたような軽微な行為まで「就労」と見なす必要はありませんが、実質的な業務指示や成果物の提出があった日は「就労日」として記録することを検討してください。
申請書の提出先を確認する
協会けんぽに加入している場合は、従業員の住所地ではなく事業所の所在地を管轄する都道府県支部が提出先です。健保組合に加入している場合は、当該健保組合の窓口に直接提出または郵送します。提出先を間違えると受理が遅れ、従業員への支給が遅延するため、最初に確認しておくことが重要です。不明な場合は、給与明細に記載されている健康保険の保険者名を確認すれば判断できます。
🔗 人事だけで抱えない。メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談 →
まとめ
傷病手当金の会社証明欄で押さえるべきポイントは、「労務不能期間の正確な記載」「賃金支払いの有無・金額の正確な記入」「医師記載欄との整合性の確認」の3点です。有給休暇の扱いや待期期間のカウント、シフト制勤務の日数計算など、細かい判断が求められる場面も多く、専任人事がいない環境では「これで合っているのか」と不安になるのは当然のことです。
記載ミスは従業員への支給遅延や健保とのトラブルに直結するリスクがあります。「書類の記入内容を一度確認してほしい」「休職対応全体をサポートしてほしい」といったご相談も、ウェルセンス株式会社では承っています。傷病手当金の書類対応は、休職・復職支援の入口にすぎません。就業規則との整合確認から主治医・産業医との連携、復職プランの策定まで、一気通貫でサポートできる体制を整えていますので、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。
よくある質問
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。
不調者対応を、人事だけで抱えない。
メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。


