「従業員から診断書が届いた。でも顧問社労士はいない。税理士に聞いたら『専門外』と言われた。どこに相談すればいい?」——中小企業の経営者や兼務人事担当者からよく聞かれる場面です。休職対応は初動を誤ると、安全配慮義務違反や不当解雇のリスクに直結します。この記事では、社労士なしでも今すぐ使える相談窓口を優先順位とともに整理します。自社の状況に当てはめながら読み進めてください。
顧問社労士がいなくても休職対応は可能か
結論から言えば、社労士なしでも休職対応は可能です。ただし「可能」と「リスクゼロ」は別の話です。正しい相談先を選び、対応の記録を残すことが、後々のトラブル防止につながります。
休職は法律上の義務ではない
多くの方が見落としがちなポイントとして、休職制度は労働基準法で義務付けられたものではありません。就業規則に休職規定が定められている場合にのみ発生する制度です(労働基準法第89条)。つまり、就業規則に休職の定めがなければ、長期欠勤が続いた場合でも「休職させる義務」は会社側にはありません。ただし、その場合は欠勤扱いと解雇の問題に直接発展するため、むしろ対応の難易度が上がります。
まず自社の就業規則を確認する
相談窓口に問い合わせる前に、自社の就業規則に「休職規定」が存在するかどうかを確認してください。規定があれば「休職期間は何日か」「給与はどうなるか」「休職期間満了時はどうなるか」を把握します。規定が曖昧または存在しない場合は、窓口への相談時にその旨を伝えると、より具体的なアドバイスを受けられます。
対応の記録を残すことが法的防御になる
労働契約法第5条は、使用者に対して従業員の「生命・身体等の安全を確保しつつ労働させる義務(安全配慮義務)」を課しています。メンタルヘルス不調の従業員に対して適切な対応をしなかった場合、民事上の損害賠償リスクがあります。「いつ、誰が、何を判断し、どう対応したか」を記録しておくことが、後々の証拠として機能します。相談窓口に電話した日時と内容もメモに残しておきましょう。
社労士なしで使える相談窓口4選と優先順位
使える相談窓口は複数ありますが、すべてに同じ期待をかけると時間を無駄にします。各窓口の強みと限界を理解し、自社の状況に合った相談先から当たることが重要です。
| 相談先 | 費用 | 主な対応範囲 | 限界・注意点 |
|---|---|---|---|
| 都道府県労働局・労働基準監督署 | 無料 | 労基法・就業規則・手続き確認 | 会社側の利益代弁は行わない。個別アドバイスは限定的 |
| 都道府県社会保険労務士会(無料相談) | 無料(回数・時間制限あり) | 休職規定・傷病手当金の一般説明 | 継続サポートには顧問契約が必要 |
| 産業保健総合支援センター(さんぽセンター) | 無料 | メンタルヘルス対応・復職支援 | 労務手続きの代行は不可 |
| 地域産業保健センター | 無料(従業員50名未満対象) | 医師・保健師への相談・面接指導 | 地域によって対応内容に差がある |
緊急度が高い場合は社会保険労務士会の無料相談から
「診断書が届いた」「来週から休みたいと言われた」など、今すぐ対応が必要な場面では、都道府県ごとに設置されている社会保険労務士会の無料相談窓口が最初の選択肢になります。休職規定の有無の確認、傷病手当金の申請手続きの流れ、対応の進め方について一般的な説明を受けられます。相談は1回あたり30〜60分程度が多く、継続的なサポートには別途費用がかかる場合がありますが、まず初動の整理に使うには十分です。
手続きの正確性を確認したいなら労働局へ
「これで合っているか確認したい」「就業規則の休職規定が適法かどうか知りたい」という場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーが活用できます。無料かつ予約不要で相談でき、労基法上の解釈について説明を受けられます。ただし、労働局はあくまで中立的な立場であり、「会社としてどう対応すべきか」という経営判断の相談には向いていません。「法律上の義務かどうかを確認する」用途に絞ると効果的です。
メンタルヘルス・復職判断に困ったらさんぽセンターへ
産業保健総合支援センター(通称:さんぽセンター)は、産業医・保健師・精神保健福祉士などの専門家に無料で相談できる公的機関です。「主治医から復職可能の診断書が出たが、本当に職場に戻れるか判断できない」「メンタル不調の従業員への声のかけ方がわからない」といった産業保健上の悩みに対応しています。従業員50名未満の事業場は、さらに身近な「地域産業保健センター」も利用できます。産業医を選任する義務は従業員50名以上(労働安全衛生法第13条)のため、50名未満の企業はこちらを積極的に活用してください。
傷病手当金の手続きで会社がすべきこと
傷病手当金の申請は従業員が主体ですが、会社側にも「事業主証明」という重要な役割があります。手続きの流れを把握しておかないと、申請が遅れて従業員との信頼関係が損なわれることがあります。
傷病手当金とは何か
傷病手当金は、健康保険に加入している従業員が病気やケガで連続3日以上休業した場合、4日目から最長1年6か月間、給与の約3分の2相当が支給される制度です(健康保険法第99条)。会社が給与を支払っている場合は支給されませんが、無給の休職期間中は従業員の生活を支える重要な制度です。
会社がやるべき事業主証明
傷病手当金の申請書には「事業主記載欄」があり、欠勤期間や給与の支払い状況を会社側が証明する必要があります。顧問社労士がいなくても、協会けんぽ(全国健康保険協会)の各都道府県支部に直接問い合わせることで、記載方法の説明を受けられます。申請書の書式も協会けんぽのウェブサイトからダウンロードできます。従業員が加入しているのが協会けんぽではなく組合健保の場合は、その健康保険組合に問い合わせてください。
申請を滞らせないためのポイント
傷病手当金は「休んだ月ごとに申請する」ケースが一般的です。会社側の証明が遅れると従業員の生活資金が滞るため、休職開始直後に「申請の流れ」を従業員と共有しておくことが大切です。また、病名は要配慮個人情報(個人情報保護法第2条第3項)にあたるため、申請書を社内で取り扱う際は閲覧者を必要最低限に絞るよう注意してください。
主治医の診断書だけで復職を認めてはいけない理由
「復職可能」と書かれた診断書が届いたからといって、すぐに復職を認めると後々問題が生じるケースがあります。主治医の判断と会社が必要な判断は、視点が異なるからです。
主治医と産業医では判断の基準が違う
主治医は「日常生活に支障なく過ごせるか」を主な基準に判断します。一方、産業医は「その職場の業務・人間関係・労働時間に適応できるか」を基準に判断します。従業員50名以上では産業医の選任が義務付けられていますが、50名未満では産業医が不在のケースがほとんどです。産業医なしで主治医の診断書のみに頼ると、復職後に再休職するリスクが高まります。
50名未満の企業が産業医意見を得る方法
産業医が選任されていない場合、前述の地域産業保健センターを活用することで、嘱託産業医への面接指導の相談や意見聴取を無料で受けられる場合があります。また、さんぽセンターの専門スタッフに「復職判断の進め方」を相談するだけでも、判断の枠組みを整理する助けになります。復職の可否は、主治医の意見を参考にしながらも「会社として独自に就労可否を判断する」プロセスを踏むことが重要です。
復職面談と記録の残し方
復職を認める前に、経営者または総務担当者が本人と面談を行い、業務内容・勤務時間・職場環境の調整について確認することをお勧めします。面談の日時・出席者・話し合った内容・決定事項をA4一枚でも構わないので文書化し、本人にも確認してもらいましょう。この記録が、後に復職後の不調や再休職が発生した場合の証跡となります。
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社労士スポット相談を使うべき場面と費用の目安
無料の公的窓口では解決しきれないケースでは、社労士へのスポット(単発)相談が有効な選択肢です。費用はかかりますが、会社側の利益を考慮した具体的なアドバイスを得られる点が公的窓口との大きな違いです。
スポット相談が向いているケース
次のような場面では、無料窓口ではなく社労士スポット相談の活用を検討してください。
- 休職規定がなく、就業規則を至急整備する必要がある
- 休職期間満了後の対応(退職・解雇)を検討している
- 従業員から「不当解雇だ」と主張される可能性がある
- 複数の従業員が同時期に休職し、対応が複雑化している
- 休職中の従業員から連絡が途絶えており、対応に困っている
費用感と相談前の準備
社労士のスポット相談は、1時間あたり1万円前後が目安ですが、事務所によって異なります。都道府県社会保険労務士会のウェブサイトから相談先を探せます。相談前に「就業規則の写し」「診断書の写し(氏名は隠してOK)」「これまでの経緯のメモ」を用意しておくと、限られた相談時間を有効に使えます。
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まとめ
社労士なしでも、休職対応に使える相談窓口は複数あります。まず自社の就業規則に休職規定があるかを確認し、緊急度が高ければ都道府県社会保険労務士会の無料相談窓口へ、メンタルヘルスや復職判断に困っていればさんぽセンター・地域産業保健センターへ、法令上の解釈確認は労働局へ、というように窓口を使い分けることがポイントです。ただし、就業規則の整備・休職期間満了後の対応・複雑なトラブル案件は、無料窓口の対応範囲を超えます。
ウェルセンス株式会社では、顧問社労士のいない中小企業の経営者・兼務人事担当者を対象に、メンタルヘルス対応・休職復職支援・人事労務の課題についての相談をお受けしています。「何から手をつければいいかわからない」という段階からでも、状況を整理するお手伝いができます。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。
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