休職・復職ルール、小規模企業でも必要?

休職・復職ルール、小規模企業でも必要? 休職・復職対応
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「うちは小さい会社だから、そこまで整備しなくていいだろう」——休職者が出るまでは、そう思っていた経営者や担当者は少なくありません。ところが実際に休職者が出た瞬間、「どこまで給与を払うのか」「いつ復職させるのか」「誰が判断するのか」という問いに、答えが何一つ用意できていないことに気づきます。この記事では、専任人事がいない20〜50名規模の企業が、最低限何を・どの順番で整備すればよいかを、法的根拠とともに実務的に解説します。

休職・復職ルールは小規模企業でも必要か

結論から言えば、規模に関わらず必要です。ただし大企業と同じ水準が求められるわけではなく、「最低限機能するセット」を優先して整えれば十分です。

休職制度は法律上の義務ではない——でもリスクはある

日本の労働法では、休職制度の設置そのものは義務付けられていません。しかし、精神疾患や身体疾患で就労できなくなった社員を即座に解雇すると、労働契約法第16条が定める「解雇権濫用」に該当するリスクが生じます。裁判所は「解雇の前に休職期間を与えるべきだった」と判断することがあり、休職制度は実質的に「解雇の前置き」として機能しています。ルールがないことが、むしろ会社を法的リスクにさらすのです。

就業規則への記載は法的義務

休職制度を設ける場合、就業規則への記載は労働基準法第89条により義務となります。記載が必要な最低限の項目は、以下の4点です。

  • 休職事由
  • 休職期間
  • 復職要件
  • 休職期間満了時の取り扱い(自然退職または解雇)

すでに就業規則に休職条文があっても、これらが曖昧な表現にとどまっている場合は補完が必要です。まず手元の就業規則を確認することが、整備の出発点になります。

「前例がルールになる」危険を防ぐ

ルールがない状態で個別対応を続けると、最初の休職者に対して取った対応——たとえば「連絡は月1回だった」「給与を3か月間支払った」——が次第に暗黙の基準として社内に定着します。次の休職者が「前の人と同じ条件にしてほしい」と主張した場合、会社側に反論の根拠がなくなります。文書化されたルールは、社員を守るだけでなく、会社が公平に対応するための盾にもなります

休職・復職ルール整備の優先順位

整備すべき内容は多く見えますが、「今すぐ機能させる最小セット」と「次のフェーズで整える推奨事項」に分けて考えると手が動きやすくなります。

今すぐ整えるべき最小セット

以下の表を、整備の優先順位の目安としてください。

優先度 内容 備考
最優先 就業規則の休職条文の確認・補完 記載義務あり(労働基準法第89条)
休職開始フロー(申請書・診断書提出・手続き案内書) 休職者が出た時点で即必要
休職中の連絡ルール(窓口・頻度・報告事項の明文化) トラブル防止に直結
復職判定フロー(申請書・主治医意見・会社判断の手順) 休職期間が長引く前に整備
復職後フォロープラン(試し出勤・業務制限期間の設定) 再休職防止に有効
参考 傷病手当金・社会保険料処理の担当者マニュアル 経理・総務との連携用

従業員規模・産業医の有無による使い分け

産業医の選任義務は従業員50人以上の事業場に発生します(労働安全衛生法第13条)。50人未満の企業では産業医が選任されていないケースが多く、その場合は復職判断において「主治医の診断書」と「会社側の判断」の二者構造になります。この場合、会社側の判断をどの役職者が・どのような基準で下すかを文書化しておくことが重要です。文書化されていないと、判断が属人化し、担当者が変わるたびに対応がぶれます。産業医がいない企業ほど、社内の判断プロセスの明確化が不可欠になります。

休職開始から復職までの手順を整える

手順を整えるときは、「休職開始」「休職中」「復職判定」「復職後」の4段階に分けて考えると、抜け漏れが防ぎやすくなります。

休職開始時にやること

社員から休職の申し出があったら、まず主治医の診断書を受け取り、休職申請書を提出してもらいます。同時に、会社として本人に渡す「休職中の案内書」を用意しておくと、その後の連絡頻度・傷病手当金の手続き・復職の流れ・社会保険料の扱いについて口頭で何度も説明する手間が省けます。

案内書は1〜2ページのシンプルなもので十分です。最初に情報をまとめて渡すことで、休職者側の不安も軽減されます。

休職中の連絡はルールを先に決める

休職中の連絡については、「月1回、メールで体調の状況を報告してもらう」程度のシンプルなルールを最初に書面で合意しておくことが望ましいです。連絡を控えすぎると状況が把握できなくなり、逆に頻繁すぎると「休職中に業務的なプレッシャーをかけられた」とトラブルになるリスクがあります。

連絡の内容は仕事の話ではなく、体調・通院状況・復職の見通しに限定することを明文化してください。窓口担当者を直属の上司ではなく人事担当や経営者に設定することも、心理的な安全性の観点から有効です。

復職判定は会社が主体的に関与する

「主治医が復職可と言っているから復職させる」だけでは不十分です。主治医は日常生活への復帰を判断する立場であり、その職場の業務内容や職場環境を十分に把握しているわけではありません。

会社側は、復職申請を受けた後に本人と面談を行い、業務遂行が可能かどうかを独自に確認する権限と責任があります。面談の際は、以下の項目を確認したうえで、「復職可」「試し出勤から開始」「復職不可(休職継続)」のいずれかを判断します。

  • 業務内容の理解と対応可能性
  • 勤務時間への耐性
  • 人間関係のストレス要因
  • 職場環境への適応度

この判断プロセスを文書に残しておくことが、後のトラブル防止につながります。

復職後のフォローと試し出勤の活用

復職後に再休職を繰り返すケースを防ぐには、復職直後の一定期間を「段階的な復帰期間」として設計することが有効です。

試し出勤制度の基本的な考え方

厚生労働省が公表している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、通勤訓練・模擬出勤・試し出勤(リハビリ出勤)といったステップを経た段階的な復帰を推奨しています。

試し出勤とは、正式な復職前に一定期間・短時間・軽易な業務から職場に慣れてもらう取り組みです。ただし、試し出勤中の法的地位(労働契約上の扱い)と賃金の取り扱いは事前に就業規則または個別合意書で明確にしておく必要があります。曖昧なまま実施すると「労働をさせたのに賃金が発生しないのはおかしい」というトラブルになりえます。

小規模企業特有の課題——配置転換の選択肢が少ない

部署が2〜3しかない会社では、「元の部署に戻れないなら復職の場所がない」という状況に陥りやすいです。しかし、1997年の最高裁判決(片山組事件)では、「元の業務に就けなくても、軽易な業務があれば復職を認めるべき」という考え方が示されています。

「復職できる部署がない」を理由に退職処理を進めることは、法的リスクを伴います。業務の切り出し(雑務・データ整理・電話対応など)や勤務時間の短縮といった形で、復職の受け皿を柔軟に設計することを検討してください。

復職後フォローの期間と内容を決めておく

復職後は少なくとも3か月程度、定期的な上長または人事担当との面談を設定し、以下の項目について確認する機会を設けることが再休職予防に効果的です。

  • 業務負荷の適切性
  • 体調の推移
  • 職場環境のストレス要因

面談は30分程度の短いもので構いません。面談の実施記録を残しておくことで、仮に再休職が発生した場合でも「会社として適切なフォローを行っていた」という証跡になります。

傷病手当金と社会保険料の実務を整理する

給与・社会保険周りの手続きは、休職開始前に担当者レベルで動けるよう整理しておくことで、毎回の調べ直しをなくせます

傷病手当金の基本知識

健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やけがで仕事を休んだ場合、以下の流れで支給されます。

  • 連続した3日間の待期期間を経過
  • 4日目から最長1年6か月(2022年1月以降は通算化)支給
  • 給付額はおおむね給与の3分の2程度

会社は申請書の事業主証明欄への記載をサポートする必要があり、書式・提出先・担当者をあらかじめ社内でまとめておくと対応がスムーズになります。休職者本人が手続きの全体像を把握できていないことも多いため、休職開始時の案内書にフローを記載しておくと本人の不安軽減にもつながります。

社会保険料の扱いを確認する

休職中も社会保険(健康保険・厚生年金)の加入は継続されます。給与が支払われない期間は、社員負担分の保険料を会社が立て替えて納付し、後日本人から回収するか、毎月振込で徴収するかを事前に取り決めておく必要があります。

この取り決めが曖昧なままだと、休職期間が長引いたときに多額の未回収が発生するケースがあります。有給休暇との兼ね合い(休職前に有給を消化するかどうか)も、本人と会社が事前に合意しておく項目です。

まとめ

休職・復職ルールは、規模が小さくても整備が必要です。休職制度の設置は法律上の義務ではありませんが、ルールがないまま対応することは法的リスクと社内の不公平感につながります。

まず就業規則の休職条文を確認・補完し、次に休職開始フローと休職中の連絡ルールを文書化することが、最小限の出発点です。復職判定・試し出勤・復職後フォローは段階的に整えていけば十分です。

「今まさに休職者がいる」「これから整備したいが何から手をつければいいかわからない」という状況であれば、ウェルセンス株式会社に気軽にご相談ください。御社の規模・現状に合わせて、優先順位を整理するところからご支援します。

よくある質問

Q. 従業員が10人未満でも就業規則に休職のルールを書く必要がありますか?

A. 就業規則の作成・届け出義務は従業員10人以上の事業場に発生します(労働基準法第89条)。ただし、10人未満の企業でも休職制度を運用している場合は、書面でルールを明文化しておくことを強く推奨します。口頭の取り決めだけでは、退職処理の場面などでトラブルが起きやすくなります。

Q. 主治医が「復職可」と言っているのに、会社が復職を断ることはできますか?

A. できます。主治医の診断書は参考資料であり、会社が業務遂行の可否を独自に判断する権限があります。ただし、一方的に復職を拒否し続けることは法的リスクにつながる場合があります。会社側で面談・業務アセスメントを行い、「試し出勤から開始する」「業務を軽減した形で復職する」といった代替案を検討したうえで判断することが重要です。

Q. 休職中に社員に連絡を取ること自体がハラスメントになりますか?

A. 連絡の内容・頻度・目的を適切に設定すれば、ハラスメントにはなりません。月1回程度、体調や復職の見通しを確認する連絡は一般的に合理的な範囲とされています。問題になるのは、仕事の進捗を催促したり、復職を過度に急かしたりする連絡です。最初に「連絡窓口・頻度・内容の範囲」を書面で合意しておくことで、双方の不安を解消できます。

Q. 休職期間中の給与はどこまで払わなければいけませんか?

A. 法律上、休職中の給与支払いは義務付けられていません。就業規則に「休職中は無給」と明記すれば、給与を支払わない対応は合法です。その場合、社員は健康保険の傷病手当金を利用することになります。一方で、休職期間の一部を有給扱いにするかどうかは、就業規則または本人との合意で決まります。いずれにせよ、給与の取り扱いは就業規則に明文化しておくことが不可欠です。

Q. 休職ルール整備を始めたいですが、今まさに休職者がいて対応に追われています。どこから手をつければいいですか?

A. まず「今いる休職者への対応」と「ルール整備」を切り分けて考えてください。現在進行中の対応については、連絡窓口と頻度だけでも書面で合意することを優先してください。並行して、就業規則の休職条文の確認と、次回の休職者が出たときに渡せる案内書の作成を進めると効率的です。一人で抱え込まず、外部の専門家に相談しながら進めることも有効な選択肢です。ウェルセンス株式会社では、現在進行中の対応と並行したルール整備についても、柔軟にサポートしています。

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【監修】ウェルセンス株式会社
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