時短勤務の給与計算、正しくできていますか?

時短勤務の給与計算、正しくできていますか? 労務管理
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「時短勤務に変わったけど、給与をどう計算すればいいんだろう?」「育休から復帰した社員の社会保険料、いつから引き直せばいいの?」――そんな疑問を抱えながら、なんとなく対応してしまっていませんか。専任の人事がいない会社では、時短勤務の給与計算は特に判断に迷いやすい領域です。この記事では、実務でつまずきやすいポイントを順序立てて整理します。

時短勤務中の給与、どう計算するのが正解か

法律が定めていること・定めていないこと

育児・介護休業法第23条は、3歳未満の子を養育する労働者が申し出た場合、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する措置を義務付けています。ただし、「短縮した場合の給与をいくらにするか」については法律の規定がありません。つまり、給与計算の方法は会社が就業規則で定めるものとされています。

なお、2025年4月施行の改正育児・介護休業法では、子が3歳から小学校就学前の期間についても、時短勤務などの柔軟な働き方を提供する努力義務が強化されています。今後さらに時短勤務のケースが増えることを見越して、早めに社内ルールを整えておくことが重要です。

時短勤務の給与計算で実務でよく使われる「時間比例方式」

現場でよく使われているのが「時間比例方式」です。計算式はシンプルで、次のとおりです。

時短後の月給 = 通常月給 × (時短後の所定労働時間 ÷ 通常の所定労働時間)

例えば、月給25万円、通常の所定労働時間が1日8時間の社員が6時間に短縮した場合、25万円 × 6/8 = 187,500円となります。この方式は透明性が高く、本人への説明もしやすいため、多くの企業で採用されています。

手当・賞与の扱いも明確にしておく

時短勤務中の給与計算で見落とされがちなのが、固定手当(家族手当・住宅手当など)の扱いです。時間比例で減額するのか、据え置くのかによって毎月の支給額が変わります。また、賞与の算定においても、時短勤務期間をどのように評価するかが就業規則に書かれていないと、社員とのトラブルに発展するリスクがあります。「前例がないからそのとき考える」では対応が属人化してしまうため、ルールを文書化しておくことが不可欠です。

社会保険料の随時改定(月額変更届)が必要なケースとは

随時改定の3つの要件を確認する

時短勤務で給与が下がった場合、社会保険の「随時改定(月額変更届)」が必要になる場合があります。随時改定とは、給与の変動によって標準報酬月額を定時決定(毎年7月)を待たずに見直す手続きです。正式名称は「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」といいます。

この手続きが必要になるのは、以下の3要件すべてを満たす場合です。

  • 固定的賃金(基本給・手当など、毎月固定で支払われる賃金)に変動があった
  • 変動のあった月以降3か月間の報酬平均が、現在の標準報酬月額と2等級以上の差がある
  • その3か月間、支払い基礎日数が17日以上(特定適用事業所は11日以上)ある

時短勤務への切り替えは「固定的賃金の変動」に当たります。給与額の変化が大きい場合は2等級以上の差が生じることも多いため、変更後3か月間の給与をきちんと確認し、要件を満たす場合は速やかに届け出る必要があります。

手続きを怠るとどうなるか

月額変更届の提出を怠ると、実際の給与と社会保険料の計算基礎がかけ離れた状態が続き、年金事務所の調査時に指摘を受けるリスクがあります。また、社員側にとっても保険料の過不足が生じるため、後から精算が発生してトラブルになることもあります。「よくわからないから後回し」にしがちな手続きですが、変更月から3か月後の給与が確定した段階で速やかに判断することが原則です。

育休終了後の保険料免除、いつ終わるのかを正確に把握する

免除終了のタイミングと控除開始のズレ

育児休業中は、健康保険料・厚生年金保険料がともに免除されます。ただし、復帰後のどのタイミングから保険料が発生するのかを正確に把握していない担当者が多く、給与明細のトラブルにつながることがあります。

保険料が発生するのは、育児休業終了日の翌日が属する月からです。そして、社会保険料は「翌月控除」のルールが一般的なため、実際に給与から天引きされるのはさらに翌月の給与支払い時になります。

例えば、10月31日に育休が終了した場合、11月分から保険料が発生し、12月に支払われる給与から控除が始まります。復帰後の最初の給与では天引きがゼロで、翌月から突然控除が始まると「なぜ手取りが減ったのか」と本人が混乱することがあります。

復帰前に本人へ説明しておくことが大切

こうした混乱を防ぐために、会社としてできる最も重要なことは「復帰前の丁寧な事前説明」です。復帰の面談や書面で、「いつから保険料の控除が再開するか」「時短後の給与額はいくらになるか」「手取りの目安はどの程度か」を具体的に示しておくことで、社員の不安や不満を大幅に軽減できます。

育休復帰時に使える社会保険の特例制度

育児休業等終了時報酬月額変更届の活用

通常の随時改定では、標準報酬月額の変更には2等級以上の差という条件がありますが、育休復帰後には特例があります。「育児休業等終了時報酬月額変更届」(任意申請)を提出することで、2等級未満の差であっても時短給与を基準に標準報酬月額を改定できます。これにより、毎月の社会保険料の負担を実態に合わせて引き下げることができるため、社員本人にとって経済的なメリットになります。

ただし、標準報酬月額が下がることで将来受け取る厚生年金額が減少する可能性があります。この点についても、申請前に本人へきちんと説明することが重要です。「会社が勝手に手続きした」と後からトラブルになるケースもあるため、書面で内容を確認してもらうことをお勧めします。

養育期間の標準報酬月額みなし措置も忘れずに

時短勤務で標準報酬月額が下がった場合でも、3歳未満の子を養育している期間については、下がる前の標準報酬月額で将来の年金額を計算してもらえる制度があります。これを「養育期間標準報酬月額特例」といい、「養育期間標準報酬月額特例申出書」を年金事務所に提出することで適用されます。

会社にこの制度を案内する法的義務はありませんが、社員が後から「知らなかった」と言い、将来の年金額の不足を会社の責任にするトラブルが起きることもあります。復帰面談のチェックリストに加えておくだけで、こうしたリスクを大幅に減らせます。

「復帰したのに手取りが減った」問題にどう向き合うか

育児休業給付金との比較で生まれる不満

育児休業中に受け取っていた「育児休業給付金」は、休業開始時賃金日額の67%(180日経過後は50%)が支給されます。さらに、育休中は社会保険料が免除されるため、実質的な手取りが思いのほか多いと感じる方は少なくありません。

時短復帰後は給与が減り、かつ社会保険料や所得税の控除が再開するため、「育休中より手取りが少ない」という状況が実際に起こり得ます。この事実を会社が事前に説明していないと、「復帰してかえって損をした」という不満が生まれ、離職リスクにもつながります。

会社としてできる給与設計と情報提供

給与水準そのものをどう設定するかは会社の判断ですが、少なくとも「現状の仕組みがどうなっているか」を社員に丁寧に伝えることは会社の重要な役割です。手取り額の試算表を作成して復帰前に渡す、社会保険料の控除スケジュールを書面で示すといった対応は、コストをかけずに社員の信頼を高める有効な手段です。また、復帰後の働き方に関する不安を早期にヒアリングすることで、職場への定着率を高めることにもつながります。

就業規則に「時短勤務規定」がない会社が今すぐやるべきこと

属人的な対応がもたらすリスク

中小企業では、時短勤務への対応が担当者の経験や記憶に依存してしまっているケースが少なくありません。しかし、担当者が変わるたびに対応がバラバラになると、社員間で「あの人の時は給与が多かった」といった不公平感が生まれ、労使トラブルのリスクが高まります。また、計算ミスが発生した場合に遡って修正する手間も大きくなります。

就業規則に最低限盛り込むべき内容

時短勤務の規定として就業規則に明記しておきたい主な項目は以下のとおりです。

  • 時短勤務の申請手続きと申請期限
  • 適用対象と適用期間(子の年齢など)
  • 給与の計算方法(時間比例方式など)
  • 固定手当の減額・据え置きの扱い
  • 賞与算定における時短期間の取り扱い
  • 社会保険関連手続きの案内ルール

「今は対象者が1人だから」と後回しにしていると、次のケースが来たときに同じ混乱が繰り返されます。一度規定を整えてしまえば、その後の対応は格段に楽になります。

まとめ

時短勤務の給与計算は、法律が計算方法を定めていないがゆえに、会社ごとの就業規則と実務対応が問われる領域です。時間比例方式による給与計算の明確化、随時改定の要件確認、育休終了後の保険料免除のタイミング把握、育児休業等終了時報酬月額変更届や養育期間特例の活用、そして手取り減少への事前説明――これらをひとつひとつ丁寧に対応することが、社員との信頼関係を守ることにつながります。

「自社の対応が正しいか自信がない」「就業規則に時短勤務の規定がない」「次に同じケースが来たときに困る」と感じている経営者・人事担当者の方は、ぜひウェルセンス株式会社にご相談ください。育休復帰・時短勤務にまつわる給与計算の整備から就業規則の見直しまで、中小企業の実情に合わせてサポートします。

よくある質問

Q. 時短勤務中の給与計算方法は法律で決まっていますか?

A. 法律では定められていません。給与の計算方法は会社が就業規則で定めるものとされています。実務では、月給に「時短後の労働時間÷通常の労働時間」を掛ける「時間比例方式」が広く使われています。就業規則に明記していない場合はトラブルのリスクがあるため、早めに整備することをお勧めします。

Q. 時短勤務への切り替えで月額変更届(随時改定)は必ず必要ですか?

A. 必ずしも必要というわけではありません。随時改定が必要になるのは、固定的賃金の変動があり、変動月以降3か月の報酬平均が現在の標準報酬月額と2等級以上の差がある場合などの要件をすべて満たしたときです。給与の変動幅が小さい場合は対象外になることもあるため、変更後3か月の給与実績をもとに判断してください。

Q. 育休終了後、最初の給与から社会保険料が天引きされますか?

A. 一般的には、復帰後最初の給与では天引きされないことが多いです。社会保険料は「育休終了日の翌日が属する月」から発生しますが、実際の給与からの控除は翌月払いのルールに従うため、その翌月の給与から天引きが始まります。例えば10月末に育休終了→11月分から保険料発生→12月支給の給与から控除、という流れになります。

Q. 「育児休業等終了時報酬月額変更届」と通常の月額変更届は何が違いますか?

A. 通常の随時改定(月額変更届)は2等級以上の差がある場合に限り手続きが必要ですが、「育児休業等終了時報酬月額変更届」は育休終了後の特例として、2等級未満の差でも申請できます。任意申請のため必須ではありませんが、時短で給与が下がった社員の社会保険料負担を実態に合わせて調整できるメリットがあります。将来の年金額への影響もあるため、本人への説明と同意が大切です。

Q. 就業規則に時短勤務の規定がなくても問題ありませんか?

A. 法的に時短勤務制度の設置は義務ですが、規定がないからといって即座に罰則があるわけではありません。ただし、規定がないまま運用すると、担当者によって対応がバラバラになり、社員間の不公平感やトラブルの原因になります。特に給与計算方法・手当の扱い・賞与の算定については、早めに就業規則に明文化しておくことを強くお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
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