復職支援プラン終了後の面談担当、誰にすべきか迷ったら

復職支援プラン終了後の面談担当、誰にすべきか迷ったら メンタルヘルス対応
Photo by Ketut Subiyanto on Pexels

「復職支援プランが終了したんですが、この後の面談って誰がやればいいんでしょう?」——支援プランの終了日が近づくにつれ、こんな疑問が頭をよぎる担当者は少なくありません。プランがある間は動き方が決まっていても、終了後のフォロー体制は「なんとなく上司に任せる」「特に決めていない」という会社がほとんどです。しかし、復職後の再発リスクが最も高いのは、実はプランが終わった直後の時期。この記事では、復職支援プラン終了後の面談担当者の決め方・頻度・記録の整備について、実務に即して解説します。

「プランが終わった=支援が終わった」は危険な誤解

復職支援プランの終了は「通常業務への完全移行」を意味しますが、「心理的フォローの終了」ではありません。プラン終了後もフォローアップフェーズを継続することが、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも明確に求められています。

プラン終了直後が最も危ない

復職支援プランには終了日が設定されているため、その日を境にフォロー体制が突然ゼロになるケースがあります。ところが、メンタルヘルス不調からの復職者が再び体調を崩すリスクは、復職後しばらくの間がとくに高い時期です。プランが終わった直後に「もう普通に接していい」と判断して観察をやめると、再発のサインを見逃す原因になります。

「無風地帯」を意図的につくらない

プラン終了後に面談担当者も頻度も決まっていない状態を、実務では「無風地帯」と呼ぶことがあります。会社側に悪意はなくても、社員からすると「もうフォローしてもらえない」と感じ、不安や孤立感が再発の引き金になることがあります。プラン終了前に、次のフォローアップ体制を明文化しておくことが重要です。

厚生労働省の手引きが示すフォローアップの位置づけ

厚生労働省の復職支援の手引きは、職場復帰のプロセスを複数のステップに分けており、最終段階として「職場復帰後のフォローアップ」を設けています。ここでは、段階的に面談頻度を減らしながらも継続的に状態を確認することが推奨されています。つまり、プラン終了はゴールではなく、フォローアップフェーズへの移行タイミングなのです。

面談担当者は「役割分担」で決める

復職支援プラン終了後の面談担当者は、「誰か一人に任せる」ではなく、役割ごとに複数の担当者が分担する体制が基本です。直属上司・人事・産業医または外部専門家それぞれに異なる役割があります。

直属上司の役割:日常観察と職場環境の調整

直属上司が担うのは、日々の業務の中で社員の様子を観察し、業務量や職場環境を細かく調整することです。「今日は表情が硬い」「残業が増えてきた」といった変化に気づき、人事や産業医に報告する「アンテナ」の役割と考えてください。一方、「体調面の専門的な評価」「症状の判断」は上司の役割ではありません。この線引きを上司自身が理解していないと、善意でも的外れな対応をしてしまうことがあります。

人事担当者の役割:記録管理と連携の要

人事担当者(兼務の場合も含む)は、面談記録を整備・保管し、上司・産業医・本人の間で情報が共有される仕組みを維持する役割を担います。面談そのものを人事が実施することもありますが、専門的なメンタルヘルス評価よりも「状況把握・記録・関係者への連携」が主な仕事です。全部を人事一人で抱え込まず、「窓口と記録管理」に集中するイメージで整理すると負荷が下がります。

産業医・外部専門家の役割:専門的な状態評価

産業医がいる会社では、復職後も定期的な面接指導を続けることが望ましいです。産業医がいない場合(従業員50人未満の会社では選任義務がありません)は、外部の産業保健機関や、会社が契約するEAP(従業員支援プログラム)サービスを活用する方法があります。専門家による定期的な確認があるかどうかで、再発リスクへの対応速度が大きく変わります。

📄 【無料】休職・復職 実務書式パック(全5点)

勤務時間・出勤形態・任せる業務を第1期〜第4期で決める職場復帰支援プランを含む、休職・復職の実務書式5点です。記入例つきで、配慮の期限と見直し日も書面で残せます。

書式パックを無料ダウンロード →

直属上司に任せるリスクと防止策

直属上司が面談を担うこと自体は問題ありませんが、「上司単独・人事ノーチェック・記録なし」という構造が問題です。上司任せの体制には固有のリスクがあり、それを知った上で仕組みを整備する必要があります。

上司が陥りやすい3つのパターン

上司が単独で面談を担う場合、次の3つのパターンに陥りがちです。まず「形骸化」——「調子はどうですか?」「大丈夫です」で終わる、内容のない面談が続くケース。次に「過剰な業務期待の混入」——「もう大丈夫だよね?」「早く元通りに動いてほしい」といった発言が、本人にプレッシャーをかけ、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)に問われるリスク。そして「上司自身の疲弊」——何を聞いていいかわからず、面談のたびにストレスを感じて担当を避けるようになるケースです。

上司への事前インプットが不可欠

上司が面談を担う場合、事前に「面談で聞いていいこと・聞いてはいけないこと」「気になる変化の報告先と報告方法」を明確に伝えておく必要があります。「病気の詳細を聞こうとしない」「体調よりも業務の話を優先させない」「変化があったらすぐ人事に連絡する」という3点を伝えるだけでも、上司の動き方は大きく変わります。

人事が定期的にチェックする仕組みを入れる

上司が日常観察を担うとしても、人事担当者が月に一度でも「上司から状況を聞く面談」を設けることで、情報が一箇所に集まり、変化に早期対応できます。上司への丸投げではなく、「上司が観察し、人事が集約する」二層構造にすることが、現実的で機能しやすい体制です。外部専門家の支援を活用することで、人事の判断負担も軽減できます。

面談の頻度と記録様式の整備方法

面談頻度は「プラン終了直後は多く、時間が経つにつれて減らしていく」段階的な設計が基本です。記録は口頭のみでは不十分で、会社側の安全配慮義務の履行証明として機能する書面を残す必要があります。

面談頻度の目安

時期 面談頻度の目安 主な担当者
プラン終了直後〜1ヶ月 週1回程度 直属上司(日次観察)+人事(月次確認)
2〜3ヶ月目 隔週1回程度 直属上司+人事または産業医
4〜6ヶ月目 月1回程度 人事または産業医を中心に
6ヶ月以降 状況に応じて柔軟に 変化があれば随時対応

この頻度はあくまで目安です。本人の状態や業務負荷の変化によって、適宜前後させてください。「問題がなければ頻度を下げてよい」という判断基準を、最初から本人と共有しておくと、本人も安心しやすくなります。

記録に残すべき最低限の内容

面談記録は、「いつ・誰が・誰と・何を確認したか」が後から追える形式であれば、書式は問いません。最低限記載すべき項目は、実施日・面談者・本人の体調・睡眠・業務量の状況・気になった点・次回対応予定の6項目です。医療上の診断名や治療内容の詳細は記録する必要はなく、「本人から体調に問題はないと報告あり」程度の記載で十分です。記録は要配慮個人情報(健康情報)に該当するため、個人情報保護法の観点から、アクセスできる人間を人事・上司・産業医など最小限に絞り、保管場所と権限を明確にしておきましょう。

担当者が変わっても機能する記録体制

兼務の人事担当者が異動・退職した場合や、上司が交代した場合に情報が消えてしまう会社は非常に多いです。担当者が変わっても機能するよう、記録はクラウドや共有フォルダに保存し、後任者がすぐ経緯を把握できるようにしておくことが重要です。口頭のみの対応や個人メモは、法的なリスクが残るだけでなく、再発時の対応が毎回初期化されるという実務的な損失にもつながります。

会社の規模・体制別・面談体制の組み方

産業医の選任義務がない50人未満の会社と、産業医がいる会社では、面談体制の組み方が異なります。自社の状況に合わせた現実的な体制を選ぶことが大切です。

従業員50人未満・産業医なしの場合

産業医の選任義務がない規模の会社では、専門的な医学的評価を社内で完結させることが難しいケースがほとんどです。この場合、主治医との情報共有(本人の同意を得た上で)を積極的に活用しつつ、地域の産業保健総合支援センターへの相談(無料で利用できます)や、外部の産業保健サービス・EAPを活用することを検討してください。人事担当者が一人で抱え込まず、外部の専門家と連携する体制を意図的に作ることが、小規模事業者でできる最善の安全配慮義務の履行です。

従業員50人以上・産業医選任済みの場合

産業医がいる場合は、復職後フォローアップにおける産業医の関与を明確に位置づけてください。「何かあれば相談する」ではなく、「プラン終了後も月1回は産業医面談を継続する」など、スケジュールとして組み込むことが重要です。また、就業規則や復職支援規程に「プラン終了後のフォローアップ期間と担当者」を明記しておくと、担当者が変わっても運用が継続しやすくなります。

就業規則・復職支援規程が整備されていない場合

復職支援の流れが就業規則や規程に定められていない会社では、まず「復職支援の基本的な流れ」を簡単な内部ドキュメントとして作成することを優先してください。規程として整備するには時間がかかりますが、「誰が何をするか」を一枚の紙に書き出すだけでも、現場の混乱は大きく減ります。

まとめ

復職支援プランが終了した後も、フォローアップ面談の体制は継続して整備しておく必要があります。担当者は「直属上司が日常観察・人事が記録管理と連携・産業医または外部専門家が専門的評価」という役割分担で設計するのが基本です。面談頻度はプラン終了直後を多めにして段階的に減らし、記録は担当者が変わっても機能する仕組みで残してください。「誰に任せるか迷っている」「プラン終了後の体制が決まっていない」という状態を放置すると、安全配慮義務(労働契約法第5条)上のリスクが残るだけでなく、再発時の対応が遅れて本人にも会社にも大きな損失が生じます。

ウェルセンス株式会社では、復職支援プラン終了後のフォローアップ体制の設計・面談記録の整備・担当者への対応指導まで、中小企業の実情に合わせた支援を行っています。「うちの規模でどこまでやればいいの?」「人事だけでは判断できない」という状況でも、スポット相談からお気軽にご利用いただけます。

よくある質問

Q. 復職支援プランが終了したら、すぐに通常の人事面談(年1回等)に切り替えてもいいですか?

A. 原則として、プラン終了直後にいきなり年1回の面談へ切り替えるのは避けてください。復職後はしばらくの間、再発リスクが高い時期が続きます。終了後少なくとも3〜6ヶ月は、月1回程度の状態確認を継続することを推奨します。その後、問題がなければ段階的に通常の面談サイクルに移行してください。

Q. 産業医がいない会社では、誰が専門的な状態確認を担えばよいですか?

A. 産業医の選任義務がない50人未満の会社では、主治医との情報連携(本人の同意が必要)や、各都道府県の産業保健総合支援センターへの相談(無料)を活用することが現実的です。また、外部のEAPサービスや産業保健サービスと契約する選択肢もあります。社内だけで完結しようとせず、外部専門家と連携する体制を作ることが重要です。

Q. 面談記録はどのくらいの期間保管すればよいですか?

A. 法令上、健康診断個人票の保存期間は5年とされていますが(労働安全衛生規則第51条)、復職支援に関する面談記録については明確な法定保存期間がありません。ただし、労災や訴訟のリスクを考慮すると、在職中はもちろん、退職後も少なくとも5年程度は保管しておくことが望ましいとされています。保管期間をあらかじめ社内ルールとして決めておくと管理しやすくなります。

Q. 直属上司が「自分は面談が苦手」と言っています。無理にやらせるべきですか?

A. 無理やり担当させることは避けてください。上司が苦手意識を持ったまま面談を行うと、形骸化したり、かえって本人に不安感を与えるリスクがあります。日常観察(様子の変化を人事に報告する)と業務量調整は上司の役割として残しつつ、面談そのものは人事担当者や外部専門家が担う形に変更することも有効な選択肢です。上司への役割の再定義と、事前研修・マニュアルの提供も効果的です。

Q. フォローアップ面談で「体調を聞くこと」は、プライバシー侵害にあたりませんか?

A. 業務遂行に関連する範囲での体調確認は、安全配慮義務の履行として認められており、プライバシー侵害には当たりません。ただし、病名・治療内容・服薬状況など、業務上必要のない個人的な医療情報を掘り下げて聞くことは避けてください。「今の体調や業務負荷に問題はないか」「困っていることはないか」という形で確認する範囲にとどめることが適切です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

不調者対応を、人事だけで抱えない。

メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。

人事だけで抱えない。産業医にスポットで相談
タイトルとURLをコピーしました