退職後の源泉徴収票、いつまでに渡せばいい?

退職後の源泉徴収票、いつまでに渡せばいい? 労務管理
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「退職した社員から、源泉徴収票をすぐに送ってほしいと連絡が来た。でも、いつまでに出せばいいのか根拠がわからない——」

専任の人事担当がいない中小企業では、こうした問い合わせへの対応に迷うことがよくあります。退職後の源泉徴収票の交付期限は法律で定められており、渡すタイミングが遅れると退職者とのトラブルに発展することもあります。かといって間違った方法で送ってしまうと法令違反になるリスクもあります。

この記事では、退職後の源泉徴収票に関する法的な期限・交付方法・再発行対応まで、実務で使える形に整理してお伝えします。

退職後の源泉徴収票、交付期限は法律で決まっている

退職者への源泉徴収票の交付期限は、退職の日以後1ヶ月以内と所得税法で定められています。「そのうち送ればいい」という感覚での対応は、法令上の義務違反につながることがあります。

根拠となる法令

源泉徴収票の交付義務は、所得税法第226条に明記されています。同条では、給与等を支払う者(使用者)は、その年に支払った給与について源泉徴収票を受給者に交付しなければならないと定めており、退職者については「退職の日以後1ヶ月以内」という特別の期限が設けられています。

在職者については翌年1月31日が期限ですが、退職者はより早い対応が求められる点が重要です。

12月退職の場合は期限の解釈に注意

たとえば12月20日に退職した場合、退職日から1ヶ月後は翌年1月20日です。一方、年末調整後の源泉徴収票全体の交付期限は翌年1月31日です。この場合は「1月20日」という、より早い方の期限が適用されます。

12月末退職でも同様の考え方になるため、「年末だから1月31日まで余裕がある」と思い込むと期限を過ぎてしまうことがあります。実際に12月退職者への交付が遅れたことでクレームになるケースは少なくありません。

期限ごとの整理

退職の時期 交付期限
1月~11月に退職した場合 退職の日以後1ヶ月以内
12月に退職した場合(年末調整あり) 退職の日以後1ヶ月以内(翌年1月31日より早い方)
在職者(年末時点で在籍) 翌年1月31日まで

郵送でも電子交付でもよい?正しい渡し方の要件

退職者には手渡しができないため、郵送またはデータ送付になります。ただし、電子交付には事前の本人同意が必須であり、無断でPDFをメール送付するだけでは法令上の要件を満たしません。

紙(書面)郵送が原則的な方法

法令上の原則は書面による交付です。退職者の最新住所に郵送する形が基本となります。住所確認のため、退職手続き時に郵便物の送付先を確認しておくことが重要です

万が一のトラブルに備えるためには、簡易書留や配達記録付き郵便を使うことが推奨されます。「送った」「届いていない」という行き違いは実際に起きやすく、受け取り確認の記録があると安心です。

PDF・メール送付には同意取得が必要

所得税法施行規則第93条の規定により、電子ファイル(PDF等)での交付は、受給者が事前に書面または電磁的方法で承諾している場合に限り認められています。

退職者からメールで「PDFで送ってください」と連絡があったとしても、それだけでは法令上の「事前同意」を満たさないケースがあります。厳密には、入社時または退職手続き時に電子交付の同意書を取得しておくことが理想です。また、電子交付の際にはセキュリティ上の配慮(パスワード保護など)を求められる場合もあります。

電子交付の同意をどのタイミングで取るか

実務的には、入社時の書類手続きの中に「源泉徴収票の電子交付に関する同意書」を含めておく方法が最もスムーズです。退職後に初めて同意を求めると、本人への連絡が取りにくくなっていたり、手続きが煩雑になったりする場合があります。

現時点で同意の仕組みが整っていない場合は、退職手続き書類の中に組み込むことを検討してみてください。

発行の実務フロー——誰が・いつ・どうやって作るか

専任の給与担当がいない中小企業では、「誰が発行するのか」がそもそも不明確なことがあります。給与ソフトを使っているかどうか、税理士が関与しているかどうかによって対応が変わります。

給与ソフトを使っている場合

弥生給与・freee人事労務・マネーフォワードクラウド給与など主要な給与ソフトには、源泉徴収票の発行機能が備わっています。退職月の給与が確定・入力された後、ソフト上で源泉徴収票を出力するだけで発行できます。

重要なのは「退職月の給与が確定したらすぐに発行フローを動かす」という運用ルールを決めておくことです。給与計算が終わってからさらに数週間放置してしまうと、あっという間に1ヶ月が経過します。

税理士に給与計算を委託している場合

税理士や社会保険労務士に給与計算を委託している場合は、退職者が出たタイミングで速やかに連絡することが必要です。委託先が発行を行うスケジュールを確認し、交付期限に間に合うよう調整してください。

「税理士が発行してくれるだろう」と待っているだけでは、連絡が遅れて期限を超えてしまうことがあります。退職者が出た際の報告ルールを委託先と事前に取り決めておくことが重要です。

給与ソフトがなく手動で対応している場合

Excelや手書きで給与管理をしている場合、国税庁が公開している「源泉徴収票の様式」を使って作成することができます。作成自体は可能ですが、計算ミスのリスクや作業負担が大きいため、この機会に給与ソフトの導入や税理士への委託を検討することも選択肢の一つです。

退職者から再発行を求められたら

退職から時間が経ったあとに、元従業員から「源泉徴収票をなくした」「届いていなかった」と連絡が来ることがあります。法律上の明示的な「再発行義務」の規定はありませんが、実務上は対応することが原則です。

再発行を拒否するとどうなるか

所得税法第226条の交付義務は、発行済みであることを会社側が証明できない場合、再交付の必要が生じると解釈されます。「もう渡したから対応しない」という姿勢は、元従業員との関係悪化やトラブルに発展しやすく、また労働基準監督署や税務署への相談につながるケースもあります。

対応を断れるのは、発行・交付の記録が明確に残っていて、受領確認もある場合に限られます。

再発行の手順と記録の残し方

再発行の手順としては、まず給与ソフトや帳票の記録をもとに元の源泉徴収票の内容を確認し、同内容で再出力します。再発行した事実・日付・送付方法・宛先を記録として残しておくことが重要です。

送付は簡易書留が推奨されます。退職から数年が経過している場合は住所が変わっている可能性があるため、連絡可能な手段で住所を確認してから送付してください。

保管期間と問い合わせへの備え

給与台帳や源泉徴収簿は、法定保存期間(原則として7年)の間は保管が義務づけられています。この期間内であれば再発行の対応は比較的スムーズにできます。退職から長期間が経過した問い合わせへの備えとして、給与関連書類の整理・保管ルールを社内で定めておくことが安心につながります。

よくある落とし穴と、事前に防ぐ対策

源泉徴収票の交付に関するトラブルの多くは、「知らなかった」ではなく「後回しにしていた」「思い込みで進めていた」ことが原因です。以下の落とし穴を事前に把握しておくことで、トラブルを防げます。

給与確定を待っているうちに1ヶ月が過ぎる

月末退職や月をまたぐ給与計算がある場合、退職月の給与が確定するまでに時間がかかることがあります。確定を待っているうちに気づいたら1ヶ月を過ぎていた、というケースは実際に起こりやすいトラブルです。

対策としては、給与確定後すぐに源泉徴収票の発行・送付を行うという社内ルールを明文化しておくことです。退職者が出たら発行手続きを開始するタイミングをあらかじめ決めておきましょう。

退職後に住所が変わっていて届かない

退職時に住所確認をしていなかった、または退職後に転居した元従業員に届かないケースがあります。退職手続きの書類(退職届・離職票関連書類など)の中に、郵送物の送付先確認を組み込んでおくことで、この問題を防ぐことができます。

電子交付の同意なしにPDFを送ってしまう

退職者がメールで連絡してきたからといって、そのままPDFを返信で添付することは法令上の要件を満たしていない可能性があります。電子交付の同意を退職手続き時に取得する仕組みを、入社書類または退職手続き書類に組み込んでおくことが最もシンプルな解決策です。

まとめ

退職後の源泉徴収票は、退職の日以後1ヶ月以内に交付することが所得税法第226条で義務づけられています。郵送(書面)が原則ですが、事前に本人の同意を得ている場合に限り電子交付も可能です。再発行依頼も実務上は対応が必要であり、拒否するとトラブルに発展しやすいため、発行記録を保管しておくことが重要です。

「誰が・いつ・どうやって発行するか」のフローが社内に整っていない場合、退職者が出るたびに対応が後手に回ってしまいます。特に専任の人事担当がいない中小企業ほど、こうした手続きの属人化や抜け漏れが起きやすい傾向があります。

ウェルセンス株式会社では、メンタルヘルスや休職・復職支援だけでなく、こうした人事労務の手続き整備に関するご相談も承っています。「うちのやり方が正しいか確認したい」「退職手続きのフローを整えたい」「源泉徴収票の交付ルールを見直したい」といったお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 退職者から「すぐに送ってほしい」と言われた場合、翌日に発行しなければなりませんか?

A. 法律上の期限は「退職の日以後1ヶ月以内」ですので、翌日発行が義務というわけではありません。ただし、退職者が転職先への提出を急いでいる場合は、可能な範囲で速やかに対応することがトラブル防止につながります。退職月の給与が確定次第、速やかに発行・送付するよう社内ルールを整えておくことをおすすめします。

Q. 退職者がメールでPDF送付を希望してきました。応じてもよいですか?

A. 電子交付(PDF送付等)は、所得税法施行規則第93条に基づき、受給者が事前に承諾している場合に限り認められます。退職後に初めて依頼があった場合、その時点で同意を取得する形になりますが、手続きが複雑になりやすいです。法令上の確実な対応としては書面(紙)の郵送が原則です。電子交付を行う場合は、同意取得の方法やセキュリティ対策(パスワード設定等)にも注意が必要です。

Q. 退職から3年経った元従業員から再発行を求められました。対応しなければなりませんか?

A. 法律上、明示的な「再発行義務」の規定はありませんが、最初の交付が確認できない場合や記録がない場合は、実務上対応することが原則です。給与関連書類の法定保存期間は原則7年ですので、3年前の退職であれば記録が残っているはずです。正当な理由なく拒否するとトラブルになりやすいため、記録を確認の上、対応することをおすすめします。

Q. 源泉徴収票の発行は税理士に任せていますが、交付が遅れた場合の責任はどちらにありますか?

A. 所得税法上の交付義務は、給与を支払う使用者(会社)にあります。税理士や社会保険労務士に委託していても、最終的な法的責任は会社側が負います。退職者が出た際に速やかに委託先へ連絡し、発行スケジュールを確認する運用ルールを設けることが重要です。委託先との間で対応フローを事前に取り決めておきましょう。

Q. 退職者の住所が変わっていて郵便が届きませんでした。どうすればよいですか?

A. まずは連絡可能な手段(メール・電話など)で元従業員に現住所を確認し、再送付します。郵便の不着自体は会社の交付義務を免除するものではないため、確認が取れ次第、速やかに再送してください。今後のトラブルを防ぐために、退職手続きの中で郵送物の送付先(退職後の住所)を書面で確認するステップを設けることをおすすめします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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