中小企業の復職支援、外部機関はどう選ぶ?

中小企業の復職支援、外部機関はどう選ぶ? 休職・復職対応
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「休職している社員を復職させたいが、何をどう進めればいいかわからない」——人事専任者がいない会社では、この問いに一人で向き合うことになります。メンタルヘルス不調による休職が発生したとき、外部機関を使いたくても「EAPとリワークって何が違うの?」「うちの規模でも頼めるの?」という疑問が先に立ってしまい、なかなか動き出せません。この記事では、中小企業の復職支援において外部機関をどう選ぶべきか、費用の目安から連携の手順まで実務視点で整理します。

EAPとリワーク、何が違うのか

EAPは社員と会社双方に対するカウンセリング・相談支援サービスであり、リワークは休職者が職場復帰に向けて通所するリハビリプログラムです。この二つは「復職支援」という文脈でよく並んで語られますが、役割がまったく異なります。

EAPが担う役割

EAP(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)は、もともとアメリカで発展した制度で、メンタルヘルス上の問題を抱える社員がカウンセラーに相談できる仕組みです。日本では企業と契約した外部のカウンセリング会社が電話・オンライン・対面などで相談を受けます。休職者本人が「復職への不安を話したい」「職場の人間関係が心配」といった気持ちを整理する場として機能し、企業側も「どう対応すればよいか」を相談できます。ただし重要なのは、EAPはあくまで相談・カウンセリングの場であり、「この社員は復職できる状態か」という判断は行わないという点です。

リワークが担う役割

リワーク(Return to Work)プログラムは、休職者が職場に戻る前に生活リズムの安定・集中力の回復・対人ストレスへの耐性を取り戻すためのプログラムです。大きく分けると「医療リワーク(精神科・心療内科が提供)」「職リハリワーク(障害者職業センターが提供・無料)」「民間リワーク施設(企業と提携した民間事業者)」の三種類があります。会社としては、リワーク施設への通所状況・修了報告を復職判断の材料の一つとして活用できます。ただし「リワーク修了=復職可」ではありません。復職を認める条件(復職判定基準)は会社が別途設けておく必要があります。

どちらを選ぶべきか、判断の目安

状況 向いている外部機関
休職に入ったばかりで本人が不安定。相談窓口が欲しい EAP
休職から2〜3ヶ月が経ち、回復の経過を見たい リワーク
会社側が復職判断の手順を整理したい EAP(企業向け相談機能)または社労士・産業保健スタッフ
両方同時に使いたい EAP+リワーク(役割を明確に分けて併用可)

中小企業でも使える?費用の実態

EAPもリワークも、20〜50名規模の中小企業で利用できます。費用体系はサービスによって異なりますが、事前に「何が含まれるか」を確認することで予算の見通しが立てやすくなります。

EAPの費用感

EAPの料金体系は主に「従業員数に応じた月額固定制」か「利用件数に応じた従量制」のいずれかです。月額固定制の場合、30名規模であれば月数万円台から契約できるサービスも存在します。ただし含まれる相談回数・対応チャネル(電話のみか、オンライン対面も含むか)・企業向けコンサルティングが付くかどうかで価格が大きく変わります。稟議を通すためには、「年間でかかるコスト」「1件の休職が発生した場合の損失(採用コスト・生産性低下)との比較」を整理して提示するのが有効です。

リワークの費用感

医療リワークは健康保険が適用されるため、本人の自己負担は医療費として処理されます。企業側が費用を直接負担するケースは少なく、会社としての費用負担は比較的軽いといえます。職リハリワーク(障害者職業センター)は企業・本人ともに原則無料です。民間リワーク施設は月額数万〜十数万円程度かかるケースがあり、企業が費用補助をするかどうかを事前に就業規則や社内ルールで決めておくと判断がスムーズです。

産業医不在の会社特有の注意点

常時50名未満の事業場は、労働安全衛生法上、産業医の選任義務がありません。そのため、「産業医に復職の意見書をもらう」という手順が最初から使えない会社が多くあります。この場合、外部の産業保健スタッフ(産業保健総合支援センターの地域窓口)やEAP事業者の産業保健機能を活用するか、社労士と連携して就業規則上の復職手続きを明文化することが現実的な対応です。

復職支援の連携、社内でやることの手順

外部機関を契約した後、社内では「厚生労働省の職場復帰支援5ステップ」の枠組みに沿って動くことが実務上の基準になります。外部機関はこのどのステップを補うのかを明確にしてから契約・連携してください。

復職支援5ステップと外部機関の位置づけ

厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(2012年改訂版)」では、職場復帰を「病気休業開始および休業中のケア」「主治医による職場復帰可能の判断」「職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成」「最終的な職場復帰の決定」「職場復帰後のフォローアップ」の5段階で整理しています。EAPは主に最初と最後のフォローアップを、リワークは中間の回復確認を、それぞれ補う役割を担います。会社がどのステップに課題を感じているかを特定することが、外部機関選定の出発点です。

本人同意と情報共有のルール

外部機関(EAPカウンセラー・リワーク施設)と会社の間で情報を共有する際、必ず本人の同意が必要です。「相談内容を会社に報告してもよいか」「どの範囲の情報を共有するか」を本人と書面で確認しておかないと、後から「聞いていない」というトラブルになります。契約前に「会社に共有されるのはどこまでか」をサービス提供者に明確に確認し、同意書のひな形を準備しておくことが実務上の必須対応です。

就業規則の整備が前提になる

どれだけ優れた外部機関を使っても、就業規則に休職・復職の手続きが定められていないと、社内での意思決定の根拠がなくなります。「休職期間は何ヶ月か」「復職の申請はどの書類で行うか」「復職を認める条件は何か」が規定にない状態では、外部機関から「回復しました」という報告を受けても判断できません。外部支援の活用と並行して、就業規則の確認・整備を進めることを強くすすめます。

外部機関を選ぶときの確認ポイント

中小企業が外部機関を選ぶ際に最低限確認すべき項目は、「規模対応の有無」「役割の範囲の明確さ」「費用の透明性」の三点です。

規模対応と実績の確認

EAPやリワーク施設の中には、大企業向けに設計されているサービスが多く存在します。「最低契約人数が100名から」「費用が月額20万円以上」といったサービスは中小企業には現実的ではありません。問い合わせ時に「従業員30名規模でも対応可能か」「同規模の導入実績があるか」を具体的に確認してください。実績があるサービスは、中小企業特有の「部署が少なく試し出勤の設計が難しい」「担当者が一人しかいない」といった制約に対して現実的な助言ができます。

何をやってくれて、何をやってくれないかの確認

「契約すれば全部お任せ」というサービスは存在しません。EAPは復職判断をしない、リワーク施設は就業規則の解釈には関与しない、といった役割の限界をあらかじめ理解した上で契約することが必要です。複数のサービスを比較する際は、「復職判断のプロセスにどう関与するか」「会社担当者への報告・相談窓口はあるか」「緊急時(本人が自傷リスクを示した場合など)の対応フローはどうなっているか」を必ず確認してください。

比較検討時のチェックリスト

  • 従業員規模に対応した料金プランがあるか
  • 対応チャネルは電話・オンライン・対面のどれか
  • 企業担当者向けの相談窓口が含まれているか
  • 情報共有の範囲・同意取得の方法が明確に説明されているか
  • 復職判断プロセスへの関与範囲が契約書に記載されているか
  • 導入後のサポート体制(定期レポート・担当者対応など)はあるか

復職後の再発を防ぐために外部機関をどう使うか

復職後のフォローアップが手薄になると、再休職のリスクが高まります。外部機関の活用は復職前だけでなく、復職後の定着支援まで設計に含めることが再発防止の鍵です。

復職後のEAP活用

復職後3〜6ヶ月は、本人・上司・会社の三者にとって緊張が続く時期です。EAPを契約している場合、この時期に本人が継続してカウンセラーに相談できる環境があることは、再発の早期サインをキャッチするうえで有効です。また、上司が「どう接すればいいかわからない」「また同じことが起きそうで怖い」と感じたときにも、EAPの企業向け相談機能を使って外部の専門家にアドバイスをもらえます。

職場復帰支援プランの作成と見直し

厚生労働省の手引きでは、復職時に「職場復帰支援プラン」を作成することが推奨されています。業務内容・勤務時間・残業制限・上司との面談頻度などを文書化しておくことで、復職後の変化を客観的に確認できます。リワーク施設や外部の産業保健スタッフと連携している場合は、このプランの内容について助言をもらうことも可能です。プランは作成して終わりではなく、1ヶ月・3ヶ月のタイミングで見直すことを前提に組み立ててください。

まとめ

中小企業が復職支援で外部機関を活用するには、まずEAPとリワークの役割の違いを理解することが出発点です。EAPは相談・カウンセリングの場であり、リワークは回復を確認するリハビリの場。どちらも「復職の可否を会社に代わって判断する」機能は持っていません。外部機関を選ぶ際は、自社の従業員規模に対応しているか、役割の範囲が明確か、情報共有のルールが透明かを確認してください。また、外部支援を動かす土台として就業規則の整備と本人同意の取得は欠かせません。復職後のフォローアップまで含めて設計することが、再休職を防ぐ実務上の鍵です。

ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・兼務担当者を対象に、復職支援の手順整理から外部機関との連携設計まで、実務に即した形でご支援しています。「何から始めればいいかわからない」という段階からでも、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 従業員が30名未満でもEAPを契約できますか?

A. 契約できるサービスは存在します。ただし、最低契約人数や料金プランはサービスによって異なるため、問い合わせ時に「何名規模から契約可能か」「同規模の導入実績があるか」を具体的に確認することをおすすめします。中小企業向けに特化した料金体系を持つ事業者も増えています。

Q. 主治医が「復職可」と言っているのに会社が復職を拒否してもよいですか?

A. 主治医の診断書は「治療の観点からの意見」であり、就業可否の最終判断は会社(使用者)が行います。主治医の「復職可」だけを根拠に即復職させる必要はありませんが、拒否する場合は合理的な理由と手続きが必要です。就業規則に復職手続きの規定がない場合はトラブルになりやすいため、事前の整備が重要です。

Q. リワークに通っていれば復職を認めなければなりませんか?

A. リワークへの通所・修了は復職判断の材料の一つに過ぎず、それ自体が復職可の根拠にはなりません。会社として「どのような状態になったら復職を認めるか」の判定基準を事前に定めておき、その基準に照らして判断することが必要です。判定基準が未整備の場合は、外部の専門家と一緒に設計することをおすすめします。

Q. EAPカウンセラーが聞いた内容は会社に筒抜けになりますか?

A. 原則として、EAPカウンセラーと本人の相談内容は守秘義務の対象です。会社に情報が共有されるのは、本人が同意した範囲に限られます。契約前にサービス提供者に「何が・誰に・どこまで共有されるか」を確認し、本人への説明と同意取得の手順を明確にしておくことが重要です。

Q. 産業医がいない会社でも復職支援の仕組みは作れますか?

A. 作れます。常時50名未満の事業場は産業医の選任義務がありませんが、産業保健総合支援センター(各都道府県に設置)が無料で相談に応じており、産業保健スタッフの紹介や復職手続きのアドバイスを受けることができます。また、社労士や外部の産業保健サービスと連携することで、産業医がいない状態でも復職支援の手順を整備することは十分に可能です。

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【監修】ウェルセンス株式会社
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