休職中の連絡ルール整備|就業規則に定める3つのポイント

休職中の連絡ルール整備|就業規則に定める3つのポイント 組織運営
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「先月から休職している社員がいるのですが、どのくらいの頻度で連絡を取ればいいんでしょうか……」。先日、ある企業の経営者からこんな相談がありました。連絡が多すぎてプレッシャーを与えるのも心配、かといって連絡しないと「放置した」と言われるのも怖い。専任の人事担当者がいない環境では、こうした判断を経営者や現場の管理職が感覚だけで乗り越えようとしているケースが少なくありません。この記事では、休職中の連絡ルールを就業規則に整備するうえで押さえておくべき3つのポイントを、法的根拠と実務の両面から解説します。

休職中も安全配慮義務は続いている

休職期間中であっても、会社と社員の労働契約は継続しています。そのため、安全配慮義務(労働契約法第5条)は休職中も消滅しません。「休んでいるのだから会社には関係ない」という認識は、法的には誤りです。

安全配慮義務とは何か

安全配慮義務とは、使用者が労働者の生命・身体・健康を危険から保護するよう配慮しなければならない義務のことです。休職者がメンタルヘルス不調で自傷行為に至ったり、状態が著しく悪化したりした場合に、会社が「適切な見守りを怠っていた」として損害賠償責任を問われた事例も存在します。連絡をまったく取らない「放置」状態は、義務違反のリスクを生じさせる可能性があります。

「連絡しすぎ」も義務違反になり得る

一方で、頻繁な連絡や復職の催促を含む連絡は、休職者の健康状態をさらに悪化させる行為として、同じく安全配慮義務違反に問われ得ます。「善意で毎週電話していた」という対応が、結果として休職者に強いプレッシャーを与え、病状悪化につながったと判断されれば、会社側の責任が問われます。つまり、「連絡しすぎ」と「連絡しなさすぎ」の両方にリスクがあるという前提で、連絡ルールを設計する必要があります。

中小企業でもパワハラ防止措置義務が適用される

2022年4月1日以降、企業規模を問わずすべての事業者に対して、労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)に基づくパワハラ防止措置義務が適用されています。休職中の連絡が「業務復帰の催促」や「詰問的な内容」を含む場合、パワーハラスメントと認定されるリスクがあります。従業員が数十名規模の企業であっても、この点は例外ではありません。

就業規則に連絡ルールがないと何が起きるか

多くの中小企業の就業規則には、休職の要件・期間・復職手続きは記載されていますが、休職中の連絡方法や頻度については何も定められていないケースが大半です。これは「違法ではない」ものの、トラブル発生時に会社側が不利になる要因になります。

対応が属人化し、一貫性が失われる

連絡ルールが文書化されていないと、担当者が変わるたびに対応がバラバラになります。前任者は月1回のメール連絡だったのに、後任者が週1回電話するようになった——こうした対応の変化を、休職者が「会社の姿勢が変わった」「復職を急かされている」と感じるケースがあります。労働審判や訴訟に発展した場合、「会社の対応が一貫していなかった」という点が会社側の不利な事情として指摘されることがあります。

就業規則への記載は「任意」だが整備しておく意義は大きい

連絡方法・頻度の定めは、就業規則の「絶対的必要記載事項」ではなく、任意記載事項に分類されます。定めていないこと自体が無効になるわけではありませんが、定めていない場合は「会社の裁量の合理性」が問われる場面で根拠を示すことができません。就業規則に明記しておくことで、社員・会社双方が「どんな連絡を、どのくらいの頻度で、誰から受けるか」を事前に了解したうえで休職に入れるため、トラブルの予防効果があります。

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就業規則に定める3つのポイント

実務的な観点から、休職中の連絡ルール を就業規則に整備する際は、「連絡の頻度」「連絡の方法と窓口」「連絡の内容の範囲」の3点を明確にすることが核心です。以下でそれぞれを詳しく説明します。

連絡の頻度を目安として定める

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、休業開始直後・休業中・復職判断の各フェーズごとに会社が取るべき対応が整理されており、定期的な状況確認を行うことが推奨されています。実務上は、月1回程度の定期連絡を基本とする企業が多く見られます。休職初期(特に最初の1〜2か月)は社員が療養に集中できるよう連絡頻度を抑え、復職準備フェーズに入ったら頻度を上げていくという段階的な設計が合理的です。就業規則には「原則として月1回を目安に、会社指定の担当者が状況確認の連絡を行う」といった形で記載し、頻度を固定しすぎず「状況に応じて変更できる」余地も残しておくとよいでしょう。

連絡の方法と窓口を一本化する

連絡手段は、電話・メール・郵送など複数の選択肢がありますが、窓口を一本化することが重要です。上司・人事・経営者それぞれが個別に連絡すると、休職者は複数のやり取りを管理しなければならず、負担が増します。厚生労働省の指針も連絡窓口の一本化を推奨しています。連絡手段については、社員の希望を尊重する旨を就業規則や休職開始時の面談で確認しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。LINEや個人のSNSを使った連絡は、プライベートとの境界があいまいになるため避けることが無難です。

連絡で扱ってよい内容の範囲を明確にする

連絡内容については、「体調の大まかな状態確認」「傷病手当金の書類に関する事務連絡」「復職の見通しに関する定期確認(復職準備フェーズ以降)」を許容範囲とし、「業務の進捗確認」「退職の打診」「復職を急かす発言」は含めないというルールを定めておくことが必要です。傷病手当金(健康保険法第99条に基づく給付)の申請書類には会社(事業主)の証明欄への記入が必要であり、これは法的に会社が協力すべき行政手続きです。書類の受け渡しに関する連絡は事務的な業務連絡として許容されますが、その際に復職・退職の話題を持ち込むことは別問題であり、混同しないよう注意が必要です。

判断に迷った場合は、社労士やメンタルヘルスの専門家に相談することで、より適切な対応が実現できます。

傷病手当金の書類対応と連絡の関係

傷病手当金の申請書類への対応は、会社が法的に協力義務を負う事務手続きであり、「休職中の連絡」とは性質が異なります。ただし、書類の受け渡しをきっかけに不適切なやり取りが発生するリスクがあるため、手順を明確にしておく必要があります。

事務連絡と「業務上の連絡」を区別する

傷病手当金の申請書類(健康保険の被保険者が加入する健康保険組合または協会けんぽへの申請書)には、会社記入欄があります。この書類の送付・返送依頼は行政手続きの一環であり、休職者に対して「連絡を取っている」という性質のものではありません。ただし、書類の送付に合わせて「そろそろ復帰できそうですか」「今後のことを考えて欲しい」といったメッセージを添えることは、復職の催促と受け取られる可能性があります。書類の授受は書類の授受として完結させ、状況確認は別の機会・別の連絡として行うことが原則です。

書類対応の手順を社内ルールとして整備する

傷病手当金の申請は通常1〜3か月ごとに発生するため、そのたびに連絡が生じます。就業規則または社内運用マニュアルに「書類の送付は郵送またはメールで行い、内容は書類の記入依頼のみとする」「担当者は人事(または総務)担当者に限定する」という形で手順を定めておくと、対応が属人化せず、また不必要なコミュニケーションも防ぐことができます。

読者の状況別:ルール整備の優先度と対応方法

企業の状況によって、今すぐ取り組むべきことは異なります。自社の状況を以下の表で確認し、優先して対応すべき項目を把握することが出発点です。

状況 優先対応
就業規則に休職規定自体がない 休職規定の新設(連絡ルールはその中に盛り込む)
休職規定はあるが連絡ルールの記載がない 連絡頻度・方法・窓口・内容範囲の条文追加
産業医・外部EAP(従業員支援プログラム)と契約している 連絡前に専門家へのルーティングを就業規則に明記
現在休職中の社員がいて、ルールがない状態で対応中 まず個別の対応方針を文書化し、並行して就業規則を整備
過去に連絡をめぐるトラブルが発生した 弁護士または社労士に相談のうえ、既存規定の見直し

産業医・専門家との連携体制も就業規則に盛り込む

従業員数50人以上の事業場では産業医の選任が義務付けられていますが(労働安全衛生法第13条)、50人未満の事業場では義務はありません。産業医がいない場合でも、地域の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)や外部の専門家に相談できる体制を社内ルールに明記しておくことで、担当者が一人で判断を抱え込まずに済みます。「連絡内容に迷った場合は、専門家に確認してから行う」という一文を運用マニュアルに加えるだけでも、現場の判断負担は大きく減ります。

個人情報の取り扱いにも注意が必要

休職者の病名・診断書の内容・傷病手当金の申請状況は、個人情報保護法上の「要配慮個人情報(センシティブ情報)」に該当します。社内での情報共有範囲を就業規則または社内ルールで明確にし、上司や同僚への開示を最小限にとどめることが求められます。「人事担当者と役員のみが情報を取り扱い、直属の上司であっても詳細な病名は共有しない」といったルールを文書化しておくことが望ましいです。

まとめ

休職中の連絡ルールは、「連絡しすぎ」「連絡しなさすぎ」の両方にリスクがあるという前提のもと、就業規則に明文化しておくことが会社と社員の双方を守ることにつながります。整備すべき3つのポイントは、「連絡の頻度(目安として月1回程度)」「連絡の方法と窓口の一本化」「連絡で扱う内容の範囲の明確化」です。傷病手当金の書類対応は事務手続きとして別建てに整理し、復職の催促や業務の話題と混同しないよう社内手順を定めることも重要です。また、産業医がいない中小企業では、外部の専門家に相談できる体制を整えておくことが、担当者の判断負担を下げる現実的な対策です。

人事の判断を一人で抱え込まず、専門家のサポートを活用することも重要な選択肢です。

ウェルセンス株式会社では、休職・復職対応や就業規則の整備について、中小企業の実情に合わせた伴走支援を行っています。「まず何から手をつけるべきか相談したい」という段階からお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 休職中の社員への連絡頻度として、一般的にどのくらいが適切ですか?

A. 実務上は月1回程度の定期連絡を基本とする企業が多く見られます。休職初期は療養に集中できるよう頻度を抑え、復職準備フェーズに入ってから頻度を上げる段階的な設計が合理的です。ただし「毎週電話」のような高頻度の連絡は、休職者へのプレッシャーとなり安全配慮義務違反に問われる可能性があるため、注意が必要です。

Q. 傷病手当金の書類を送る際に、復職の見通しを尋ねても問題ないですか?

A. 原則として避けることをお勧めします。傷病手当金の書類送付はあくまで行政手続きの一環であり、書類の授受は書類の授受として完結させるべきです。復職の見通しに関する確認は、別の機会に適切な担当者から行うことが望ましく、書類送付に添えることで「復職を急かされている」と受け取られるリスクがあります。

Q. 就業規則に連絡ルールを明記していなければ違法になりますか?

A. 連絡方法・頻度の定めは就業規則の任意記載事項であり、記載がないこと自体が直ちに違法となるわけではありません。ただし、トラブルが発生した際に「会社の裁量の合理性」を示す根拠がなくなるため、会社側が不利な立場に置かれるリスクがあります。整備しておくことで、社員・会社双方の認識を一致させるとともに、対応の一貫性を保つことができます。

Q. 産業医がいない場合、休職者への連絡方針はどのように決めればよいですか?

A. 産業医がいない場合は、地域の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)への相談や、外部の専門家(社労士・メンタルヘルス支援会社など)を活用する方法があります。連絡方針を決める際に、専門家の意見を踏まえてルールを作成し、就業規則または社内マニュアルに明文化することで、担当者が一人で判断を抱え込まない体制を作ることが重要です。

Q. 休職者の病名を直属の上司と共有してよいですか?

A. 病名は個人情報保護法上の「要配慮個人情報(センシティブ情報)」に該当するため、取り扱いには慎重さが求められます。情報を共有できる範囲を社内ルールで限定し(例:人事担当者と経営者のみ)、直属の上司には「療養中のため休職している」という事実のみを伝え、詳細な病名は共有しないとする運用が望ましいとされています。社員本人の同意を得ないまま病名を開示することはトラブルの原因になるため注意が必要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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