休職中に人員補充したいけど、戻ってきたらどうする?

休職中に人員補充したいけど、戻ってきたらどうする? 休職・復職対応
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「現場が限界です。誰か入れてもらえませんか」——現場リーダーからそう言われても、「でも休職中の人が戻ってきたら…」と二の足を踏んでいる経営者・人事担当者の方は少なくありません。休職中の人員補充は法的に問題ないのか、復職後はどうポストを整理するのか、雇用形態はどう選べばいいのか。判断基準がなければ、動くに動けないのは当然です。この記事では、休職中の人員補充をめぐる法的な考え方と、復職を見据えた実務の進め方を順を追って整理します。

休職中に採用・人員補充をしても法的に問題ない

結論からいえば、休職中の人員補充(採用)をすること自体は、法律上禁じられていません。現場の体制を守るために動くことは、経営上の正当な判断です。

「採用してはいけない」というルールは存在しない

労働基準法をはじめとする労働法規には、「休職者がいる期間中に採用してはならない」という規定はありません。休職制度そのものも、法律上の義務制度ではなく、各社が就業規則で独自に定める制度です。つまり「補充採用=ルール違反」という思い込みは、法的根拠のない誤解です。

人員が足りない状態を放置して業務が崩壊すれば、残った社員への過重労働という別のリスクが生まれます。現場の実態に合わせて採用を判断することは、会社として当然の対応です。

リスクが生まれるのは「採用後の対応」にある

法的な問題が生じるのは採用そのものではなく、その後の対応です。「補充のために採った人が定着し、休職者が戻ってきたときに元のポストがない」という状況をどう整理するか——ここを誤ると、復職拒否・降格・雇止めといった複数の法的リスクに同時に直面することになります。採用前に「復職後のシナリオ」を想定しておくことが、後のトラブルを防ぐ最大のポイントです。

雇用形態の選び方が後のリスクを左右する

補充人材をどの雇用形態で採るかは、復職後の処遇設計に直接影響します。正社員・派遣・有期雇用それぞれの特徴を理解した上で、自社の状況に合った選択をすることが重要です。

正社員採用は柔軟性が低い

即戦力としての定着を期待するなら正社員採用は有力な選択肢ですが、復職者の受け入れとの調整が難しくなります。正社員として入社した補充人材を、休職者の復職を理由に退職させることはできません。結果として、組織内にポストを新たにつくるか、どちらかの職務内容・役割を変更する必要が生じます。人員規模が小さい会社ほど、この調整の余地は限られます。

派遣・有期雇用は「期間設計」がカギ

現実的なのは、派遣社員または有期雇用(契約社員・パートタイム)での採用です。ただし、有効に機能させるにはいくつかの設計が必要です。

  • 契約期間に更新上限を設ける(例:最大1年など)
  • 就業条件通知書に「休職者の復職に伴い契約終了となる場合がある」旨を明示する
  • 更新を安易に繰り返さない(期待権の発生を防ぐ)

労働契約法第19条(いわゆる雇止め法理)では、有期契約であっても反復更新されると「実質的に無期契約と同視できる」として雇止めが無効と判断されるケースがあります。「派遣や契約社員なら自由に終了できる」という認識は危険です。期間設計と書面での明示が不可欠です。

雇用形態の選択基準を整理する

雇用形態 メリット 注意点
正社員 定着・即戦力化しやすい 復職後のポスト整理が難しい
派遣 期間終了がコントロールしやすい 派遣会社との連携・コストが必要
有期雇用(契約・パート) 条件を柔軟に設計できる 反復更新による雇止めリスクがある

復職者のポストをどう確保するか

補充人材が定着した状態で休職者が戻ってきた場合、「元のポストに戻す」ことが原則です。ただし、その「元のポスト」が物理的に埋まっていたり、医学的な観点から元の業務に戻すことが適切でない場合には、慎重な対応が必要になります。

「原則として元の職務に復帰」が就業規則の基本

多くの就業規則では、「休職期間満了前に回復した場合、原則として元の職務・職場に復帰させる」と定めています。この規定がある以上、会社は復職者に対して元のポストへの復帰を保障する努力義務を負います。「ポストが埋まっているから戻れない」という対応は、復職拒否・解雇権の濫用(労働契約法第16条)として違法と判断されるリスクがあります。

まず確認すべきは自社の就業規則の条文です。復職に関する記載がない・曖昧な会社では、この機会に整備することを強くお勧めします。

配置転換・職務変更は「合意」を前提にする

メンタルヘルス不調による休職の場合、元の業務や職場環境が不調の一因になっているケースは珍しくありません。そのため、復職先として別のポスト・業務を検討すること自体は合理的な判断です。ただし、一方的な配置転換・降格は労働契約法第8条(合意の原則)に反する不利益変更と判断される可能性があります。

対応として有効なのは、主治医・産業医の意見書をふまえて「医学的な観点から元の業務への復帰が難しい」という客観的根拠を確保し、本人との合意のもとで配置変更を進めることです。「会社が決めた」ではなく「本人が納得した」というプロセスの記録が、後のトラブル防止になります。

産業医・専門家の活用で判断の客観性を担保する

従業員50名未満の企業は産業医の選任義務はありませんが、嘱託産業医(スポット契約)を活用することは可能です。「どのポストに戻すか」「元の業務は医学的に適切か」といった判断を社内だけで行うと、後から「恣意的だ」と指摘されるリスクがあります。外部の専門家を関与させることで、判断の客観性と信頼性が高まります。

復職受け入れの準備を事前に整えておく

休職者から「来月戻ります」と連絡が来た時点で初めて動き始める会社が多いですが、それでは遅すぎます。受け入れの枠組みを事前に文書化しておくことで、当事者も周囲も安心して復職プロセスを進められます。

厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」を活用する

厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公開しており、復職支援の流れを5つのステップで整理しています。このフレームを社内の手順書に落とし込むだけで、担当者が変わっても一定の対応品質が保てます。専任人事がいない会社こそ、こうした公的ガイドラインを活用することが現実的です。

試し勤務(リハビリ出勤)の設計を決めておく

復職直後にフルタイム・フル業務に戻すことは、再発リスクを高めます。短時間勤務からスタートし、段階的に業務量を増やす「試し勤務(リハビリ出勤)」の仕組みを事前に設計しておくことが重要です。設計のポイントは次の3点です。

  • 試し勤務の期間・スケジュールを書面で定める
  • 試し勤務中の賃金・評価の取り扱いを事前に明示する
  • 直属上司だけでなく、人事担当者も定期的に状況を確認する

復職タイミングが読めない場合の対処

「来月戻る予定」が延長に延長を重ねるケースは実際に多く発生します。こうした状況では、補充人材の契約期間の設計が後手に回りがちです。対策として、休職期間の「上限」を就業規則に明記しておくことが有効です。例えば「傷病による休職期間は最長6ヶ月とし、期間内に復職できない場合は退職とみなす」という規定があれば、補充人材の雇用期間設計も立てやすくなります。この規定の有無と内容を、今一度確認しておきましょう。

休職期間満了で退職・解雇とするための要件

休職期間が満了しても復職できる状態にない場合、就業規則の定めに基づき退職・解雇となるケースがありますが、その判断は慎重に行う必要があります。「席がないから」は解雇理由になりません。

就業規則の規定が判断の起点になる

「休職期間の満了をもって解雇(または退職)とみなす」旨の規定が就業規則に明確に存在することが大前提です。この規定がなければ、期間満了を理由とした退職処理は法的に根拠を欠きます。まず自社の就業規則を確認し、規定がなければ速やかに整備してください。

「復職不能」の判断には医学的根拠が必要

期間満了での退職・解雇を適法に行うには、「本人が復職できる状態にない」という医学的根拠(主治医・産業医の意見書など)が不可欠です。労働契約法第16条の解雇権濫用法理に基づき、「社会通念上相当」な理由がなければ解雇は無効とされます。「ポストが埋まっている」「もう戻ってきてほしくない」という会社側の事情は、解雇の正当理由にはなりません。

まとめ

休職中の人員補充は法律上適法ですが、復職後の対応を誤ると復職拒否・不利益変更・雇止めといった複数のリスクに同時に直面します。補充採用の前に休職期間・復職見込みを確認し、雇用形態は期間上限を明示した派遣または有期雇用を基本に設計すること。そして復職受け入れの手順を事前に文書化し、配置変更が必要な場合は必ず本人の合意と医学的根拠を確保すること——この流れを押さえておくだけで、多くのトラブルは未然に防げます。

「自社の就業規則に復職規定があるか」「休職者の復職見込みはどうか」「補充人材の雇用形態をどう設計するか」という3点を、今日確認することから始めてみてください。

ウェルセンス株式会社では、休職・復職対応の整備や人事労務の相談を専任人事のいない中小企業向けに提供しています。「自社のケースではどう対応すればいいか」という個別のご相談も受け付けていますので、不安な点や判断に迷う場合は、まずは気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 休職中に採用した正社員を、復職者が戻ってきたという理由で解雇することはできますか?

A. 原則としてできません。「復職者が戻ってきたから席がない」という理由は、労働契約法第16条の解雇権濫用法理に照らして解雇の正当理由としては認められにくいです。補充採用を正社員で行う場合は、復職後のポスト整理を事前に計画しておく必要があります。

Q. 有期雇用で補充した社員を、休職者の復職と同時に雇止めすることはできますか?

A. 条件付きで可能ですが、リスクがあります。契約書・就業条件通知書に「休職者の復職に伴い終了することがある」と明示し、かつ更新を繰り返さないことが重要です。反復更新された有期契約は、労働契約法第19条(雇止め法理)により雇止めが無効と判断される場合があります。

Q. メンタルヘルス不調で休職した社員を元のポストに戻さず、別部署に異動させることはできますか?

A. 可能ですが、一方的に行うと不利益変更とみなされるリスクがあります。主治医・産業医の意見書など医学的根拠を確保した上で、本人との合意形成を丁寧に行い、そのプロセスを書面で記録しておくことが重要です。

Q. 従業員が50名未満のため産業医がいません。復職の判断を主治医の診断書だけで行っても問題ありませんか?

A. 主治医は「患者の回復」を主眼に診断しますが、職場環境や業務負荷は考慮しない場合があります。嘱託産業医(スポット契約)や外部の産業保健スタッフを活用し、「職場での復職可否」という観点からの意見も取り入れることを推奨します。

Q. 就業規則に復職・休職に関する規定がありません。まず何を整備すればいいですか?

A. 優先度の高い項目は、「休職事由と休職期間の上限」「期間満了時の取り扱い(退職・解雇)」「復職の手続きと原職復帰の原則」の3点です。これらが規定されていないと、休職・復職に関するあらゆる判断が法的根拠を欠くことになります。社会保険労務士や専門家に相談しながら整備することをお勧めします。

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【監修】ウェルセンス株式会社
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