業務委託が偽装雇用になるか判断に迷ったら

業務委託が偽装雇用になるか判断に迷ったら 組織運営
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「契約書には業務委託と書いてあるけど、毎日来てもらって、細かく指示もしている。これって大丈夫なのかな……」——気になりながらも、忙しさに追われてそのままにしている経営者・人事担当者の方は少なくありません。業務委託契約は使い方を誤ると「偽装雇用(偽装請負)」と判定され、予期せぬコストやトラブルにつながります。この記事では、判断基準・リスクの実態・契約の適正化策を実務目線でわかりやすく解説します。

業務委託と雇用、何が違うのか

業務委託と雇用の最大の違いは「指揮命令関係の有無」です。契約書の名称がどうであれ、実態として会社が指示・管理をしている場合は雇用とみなされるリスクがあります。

契約の形式より「実態」が問われる

日本の法律では、雇用か否かは契約書の名称ではなく、実際の働き方によって判断されます。厚生労働省の「労働基準法研究会報告(昭和60年)」に基づき、裁判所・行政機関は「指揮監督下で労働しているか」「報酬が労務の対価として支払われているか」という2つの軸で実態を確認します。つまり、「うちは業務委託契約を結んでいるから大丈夫」という認識自体が危険なのです。

業務委託、請負、準委任の違い

業務委託という言葉は法律用語ではなく、「請負」または「委任(準委任)」のいずれかを指すことが多い総称です。請負は成果物の完成を約束する契約(例:システム開発、デザイン制作)、委任・準委任は業務の遂行そのものを委ねる契約(例:コンサルティング、経理代行)です。いずれの形式も、実態が雇用と変わらなければ偽装請負・偽装雇用と判定されます。

フリーランスも例外ではない

近年、個人事業主やフリーランスとの業務委託契約が増えていますが、相手方が法人・個人を問わず判断基準は同じです。さらに2024年11月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護法)」により、発注者側の義務や禁止行為が明文化されました。中小企業も対象となるため、既存の業務委託契約の見直しが急務です。

アウトになる典型的なパターン

偽装雇用と判定されやすいのは、「時間・場所・方法」のすべてを会社側が管理しているケースです。以下に代表的なパターンを整理します。

時間・場所の拘束がある

「毎朝9時に出社して18時まで働いてもらっている」「自社のオフィスに常駐させている」という状況は、労働者性を強く示すサインです。業務委託者が自分の判断で勤務時間・場所を決められない場合、時間的・場所的拘束があると判断されます。テレワークであっても、会社指定のツールで勤怠を管理していれば同様です。

業務の進め方を細かく指示している

「今日はこの作業をやってください」「この手順でお願いします」といった具体的な業務指示を日常的に出している場合、それは指揮命令にあたります。業務委託では本来、「何を作るか・何を納品するか」を発注者が決め、「どうやって作るか」は受注者が自由に決めるのが原則です。進め方まで細かく指示している場合はアウト判定のリスクが高まります。

この人でなければならないという専属性がある

代わりの人を立てることを認めず、本人が来ることを求めている(代替性がない)場合も労働者性の判断要素になります。また、他社の仕事を断るよう求めたり、事実上他社との取引が困難な状況を作ったりしている(専属性が高い)ケースも同様です。業務委託者が複数の取引先と自由に仕事をできる状態かどうかを確認してください。

自社の契約をセーフ・グレー・アウトで判断するチェック項目

自社の業務委託契約がどのゾーンにあるかを判断するために、以下のチェックリストを活用してください。複数の項目に該当するほど、偽装雇用と判定されるリスクは高まります。

チェック項目 リスク度
毎日決まった時間に来るよう求めている
自社施設・設備を無償で使用させている
業務の進め方を日常的に細かく指示している
他社との仕事を制限している・事実上できない
報酬が時間・日数単位で計算されている 中〜高
欠勤すると報酬が差し引かれる 中〜高
代わりの人を立てることを認めていない 中〜高
報酬水準が自社の正社員と同等程度 補強要素
源泉徴収を行っていない(本人が確定申告) 低(単独では判断できない)

1項目だけ該当でも油断は禁物

上記のチェックは総合的に判断されますが、特に「時間・場所の拘束」「具体的な指揮命令」「代替性のなさ」の3点が重なった場合は、行政・裁判所ともに雇用と判定する傾向が強くなります。逆に、納品物が明確で、進め方は相手に任せており、複数社と取引しているなら、業務委託としての実態が認められやすくなります。

契約書の内容と実態が乖離していないか

「契約書には成果物納品と書いてあるが、実際は時間で管理している」というケースは非常に多いです。契約書と実態の乖離は、発覚した際に「意図的に隠していた」と評価されるリスクがあります。まず現状の働き方を書き出し、契約書と照合することが第一歩です。

複数の業務委託者の実態把握は、人事だけで判断するのは難しいもの。各契約の状況を整理した上で、社労士や人事の専門家に相談することで、リスクを早期に発見できます。

発覚した場合のリスク:具体的に何が起きるか

偽装雇用が発覚した場合、金銭的なコストと信頼へのダメージの両方が生じます。「なんとなく問題らしい」で済まさず、リスクの実態を正確に把握しておくことが重要です。

行政調査と是正指導

労働局(需給調整事業部・労働基準監督署)が調査に入り、是正勧告が出るケースがあります。調査のきっかけは、業務委託者本人からの申告、同業他社への調査の波及、SNSでの情報拡散などさまざまです。是正指導に従わない場合、企業名が公表されることもあります。労働者派遣法第24条の2は偽装請負を明確に禁止しており、同法第40条の6により、偽装請負と認定された場合は企業側が労働者に対して直接雇用の申し込みをしたものとみなされます。

遡及コストの発生

雇用関係が遡って認定されると、過去2〜3年分の未払い残業代・社会保険料(事業主負担分)の追加支払いが求められる可能性があります。長期間・複数名の業務委託者が対象になれば、中小企業にとって経営を揺るがすレベルの金額になりかねません。

民事トラブルと採用ブランドへのダメージ

近年は業務委託者が弁護士を立て、「実態は雇用だった」として未払い残業代や社会保険料の支払いを求める民事上の請求が増えています。さらにSNSで情報が拡散されると、採用候補者や取引先からの信頼を失うリスクもあります。特に人手不足が深刻な業種では、採用ブランドのダメージは長期的な経営課題になります。

契約を適正化するための実務的な対応策

偽装雇用のリスクを解消する方法は、「社員化」か「業務委託の実態を整える」かのどちらかです。コスト面から社員化を避けたい場合でも、実態を適正化することで継続できるケースは多くあります。

業務委託のまま続けるための整備ポイント

まず契約書を見直し、成果物・納品物を明確に定義してください。次に、指示の出し方を変えます。「この手順でやってください」ではなく「〇〇という成果物を〇月〇日までに納品してください」という発注スタイルに変更します。また、勤怠管理(タイムカード・勤怠システムへの登録)を廃止し、相手方が他社とも自由に取引できる環境を整えることも重要です。設備・ツールは可能な限り相手側が用意する形にします。

社員化を検討すべきケース

チェックリストで高リスク項目が複数該当し、かつ業務の性質上「成果物で管理する」ことが難しい場合(例:受付・常駐スタッフ・日常的なサポート業務など)は、実態の適正化よりも社員化・パート雇用への切り替えを検討したほうが現実的です。社員化のコスト増は確かに発生しますが、発覚後の遡及コストと比較すれば、早期に対応するほうがリスクは小さくなります。

専任人事がいない企業こそ外部の専門家を活用する

業務委託契約の適正化は、社労士・弁護士・人事コンサルタントが連携して対応するのが理想です。ただし、どこに相談すればよいかわからない場合は、まず「現状の契約と実態を書き出してみること」から始めてください。書き出した内容を持って専門家に相談すれば、診断と対応策の提示までスムーズに進みます。

まとめ

業務委託契約が偽装雇用にあたるかどうかは、契約書の名称ではなく「指揮命令の有無・時間や場所の拘束・専属性」といった実態で判断されます。グレーなまま運用を続けることは、行政調査・遡及コスト・民事トラブルといった複合的なリスクにつながります。一方で、実態を適正化すれば業務委託として継続できるケースも多く、早期対応が最大のコスト削減につながります。

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ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・人事担当者を対象に、人事労務まわりの課題整理から具体的な対応策の検討まで、実務に即した形でサポートしています。「自社の業務委託契約、実は問題があるかもしれない」と感じた方は、まずお気軽にご相談ください。現状をヒアリングした上で、リスクの有無と対応の優先順位を一緒に整理します。

よくある質問

Q. 業務委託者が「確定申告をしている」なら問題ないですか?

A. 確定申告の有無だけで偽装雇用かどうかを判断することはできません。厚生労働省の労働者性判断基準においても、課税・申告方法は「補強要素のひとつ」にすぎず、指揮命令の有無・時間的拘束・専属性などの実態が優先されます。「確定申告しているから大丈夫」という認識は誤りですので、実態の確認が必要です。

Q. 長年付き合いのある業務委託者をいきなり社員化するのは難しいです。どうすればよいですか?

A. まず現状の働き方が適正な業務委託の実態に近づけられるかどうかを確認するのが先決です。成果物の明確化・指示の出し方の変更・勤怠管理の廃止などで実態を整えられるなら、社員化せずに継続できる可能性があります。一方、業務の性質上どうしても時間・場所の拘束が避けられない場合は、パートタイム雇用や短時間正社員など、コストを抑えた雇用形態への移行を検討することをお勧めします。

Q. 労働局から調査が来た場合、最初にすべきことは何ですか?

A. まず慌てず、調査の目的・対象範囲・必要書類を確認することが重要です。その上で、社労士または弁護士に速やかに連絡し、対応を相談してください。自社だけで対応しようとすると、意図せず不利な説明をしてしまうリスクがあります。事前に契約書・業務指示の記録・報酬の支払い実績などを整理しておくと、調査への対応がスムーズになります。

Q. 業務委託者が複数いる場合、全員の契約を見直す必要がありますか?

A. 原則として、全員の実態を確認することを推奨します。同じ「業務委託契約」という名称でも、担当業務・指示の出し方・報酬体系が異なれば、個別に判断が必要です。一度に全員を見直すのが難しい場合は、指揮命令関係が強い人・長期常駐の人・他社取引がない人を優先してチェックするのが現実的です。

Q. 2024年施行のフリーランス保護法は、中小企業にも関係しますか?

A. はい、関係します。「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」は、従業員数や企業規模に関わらず、フリーランス(個人事業主)に業務委託を発注する事業者すべてに適用されます。書面交付義務・報酬支払期日の設定・ハラスメント対策など、新たな義務が課されています。既存の業務委託契約がこれらを満たしているかの確認が必要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
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