復職面談の記録に迷ったら|安全配慮義務の果たし方

復職面談の記録に迷ったら|安全配慮義務の果たし方 労務管理
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「診断書が届いた。でも、このまま復職を認めていいのか……」
復職対応の経験が少ない兼務人事担当者ほど、この場面で手が止まります。面談は何を聞けばいいのか、記録はどこまで残すべきなのか、産業医もいない状態で法的に問題はないのか——。答えがわからないまま、口頭でやりとりして終わらせてしまうケースは少なくありません。この記事では、産業医不在の中小企業でも実践できる「復職面談の最低限の記録」と「安全配慮義務の果たし方」を具体的に解説します。

主治医の診断書だけで復職を決めてはいけない理由

主治医の「復職可」という診断書は、職場復帰の最終判断ではありません。会社が独自に就労可否を判断するプロセスが、安全配慮義務の核心です。

主治医が評価しているのは「日常生活」であって「職場」ではない

主治医は、患者が「通院を継続しながら日常生活を安定して送れるか」という観点で復職可を判断します。8時間勤務に耐えられるか、職場の人間関係や業務負荷に適応できるか、という視点は評価対象に含まれていないことがほとんどです。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下「職場復帰支援の手引き」)でも、主治医の診断書は職場復帰の最終判断ではなく、あくまで判断材料のひとつとして位置づけられています。

会社が独自に就労可否を判断することが求められる

主治医が知らない情報——たとえば、その従業員が担う業務の難易度・プレッシャーの度合い・職場の対人関係——を踏まえて、会社側が就労可否を判断することが法的にも実務的にも求められます。この判断プロセスを省略して復職後すぐに再休職・再発が起きた場合、「会社が適切な確認をしなかった」として安全配慮義務違反を問われるリスクがあります。

記録がない面談は、後日「面談は実施されなかった」と言われてしまう危険性があります。わずかな手間で会社と従業員の双方を守ることができます。

診断書を受け取ったら、次にすべきこと

診断書が届いたら、まず面談の日程を設定してください。面談なしで復職を認めることは、記録がゼロになるだけでなく、就労可否の判断プロセス自体が存在しないことを意味します。診断書はあくまで「面談を始めるトリガー」と位置づけてください。

安全配慮義務とは何か、中小企業はどこまで求められるか

安全配慮義務は、会社規模に関係なくすべての使用者に課される義務です。ただし、その「必要な配慮」の中身は事業規模に応じて個別に判断されます。

根拠法令と義務の中身

安全配慮義務の根拠は労働契約法第5条です。「使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。「必要な配慮」の具体的な内容は個別事案・規模によって判断されますが、復職場面においては「面談の実施」と「その記録の保存」が最も基本的な履行行為として実務上広く認識されています。

産業医がいないこと自体は違反ではない

産業医の選任義務が発生するのは、労働安全衛生法第13条・同施行令第5条により、常時50名以上の事業場からです。50名未満の会社には選任義務がなく、産業医不在であること自体は法令違反ではありません。ただし、産業医に相当する専門家の意見を取り入れる「努力義務」はあり、その手段として地域産業保健センター(通称:地さんぽ)の活用が推奨されています。

従業員規模・体制別の対応イメージ

状況 対応の方向性
産業医あり・就業規則に復職手続きあり 手引きのステップに沿った正式な復職支援プログラムを実施
産業医なし・就業規則に手続きなし(50名未満) 地さんぽを活用し、面談記録を丁寧に残すことで義務を履行
産業医なし・外部EAP(従業員支援プログラム)あり EAPのカウンセラーや専門家と連携して判断を補完する

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復職面談で最低限残すべき記録項目

記録に残すべき最低限の項目は決まっています。難しい様式は不要で、A4一枚のメモ形式でも記録として機能します。

記録に含めるべき基本項目

  • 面談実施日・面談者氏名(会社側の担当者名)
  • 従業員の氏名・所属・休職開始日
  • 主治医の診断書の内容(復職可の判断日・条件など)
  • 従業員本人の健康状態・睡眠・通院状況の確認結果
  • 復職後の業務内容・勤務時間・配置に関する会社の方針
  • 本人が申告した不安・配慮希望事項
  • 会社が下した就労可否の判断とその理由
  • 復職後のフォローアップ計画(次回面談の予定など)

何を「聞いていいか」迷ったときの考え方

「どこまで聞いていいか」という不安はよく聞かれます。原則として、業務遂行能力・就労可否の判断に必要な範囲で聞くことが適切です。具体的な病名・投薬内容・家族の病歴などは業務上の必要性が低く、プライバシーへの配慮も求められます。一方、「睡眠はとれているか」「通院は継続しているか」「業務量についてどう感じているか」は、就労可否判断に直結する情報として確認が求められます。個人情報保護法上、健康情報は「要配慮個人情報」に該当するため、聞いた内容はアクセス権を限定した形で保管してください。

記録の保存期間と管理

労働安全衛生法関係書類の多くは3年保存が原則とされています。復職関連の記録も同等の扱いとし、最低3年間は保存することが望ましいです。記録へのアクセスは人事担当者と経営者に限定し、紙であれば施錠できるキャビネット、データであればアクセス制限をかけたフォルダで管理してください。

産業医がいない場合の代替手段

産業医がいなくても、専門家の意見を取り入れる手段は複数あります。その代表が地域産業保健センター(地さんぽ)の活用です。

地域産業保健センターとは何か

地域産業保健センター(地さんぽ)は、各都道府県の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)のもとに設置された地域窓口です。常時50名未満の事業場を対象に、産業医相談・面談支援を原則無料で提供しています。復職面談への同席や就労可否に関する意見提供を依頼できる場合があり、産業医不在の中小企業にとって現実的な代替手段です。厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」でも、こうした外部資源の活用が推奨されています。

地さんぽ以外の外部連携の選択肢

地さんぽの他にも、外部の産業保健師・産業カウンセラーと顧問契約を結ぶ方法や、EAP(従業員支援プログラム)サービスを導入してカウンセラーに面談の補助を依頼する方法があります。就業規則に「産業医または会社が指定する専門家の意見を踏まえて判断する」という旨を明記しておくと、外部専門家の意見を正式な復職判断プロセスに位置づけやすくなります。

主治医への情報提供・意見照会

主治医に対して、職場の業務内容・勤務時間・ストレス環境などを書面で伝えたうえで、「この業務環境での就労について意見をいただけますか」と照会することも有効です。主治医が職場環境を把握していないまま「復職可」を出しているケースでは、この一手間が復職後の再燃防止につながります。照会した書面と主治医からの返答は、必ず記録として保存してください。

記録がないと何がまずいのか

復職後にトラブルが起きたとき、記録の有無が会社の主張を成立させるかどうかを左右します。記録は従業員のためだけでなく、会社自身を守るための証拠です。

安全配慮義務違反を問われるケース

復職後に症状が再燃し、従業員または家族が「会社が適切な対応をしなかった」として損害賠償を求めるケースは実際に発生しています。こうした場面で会社が主張すべきことは「適切な面談を実施し、就労可否を慎重に判断した」という事実です。しかし記録がなければ、その面談が本当に行われたかどうか、どのような判断をしたかを証明できません。

「記録がある」だけで会社の姿勢が変わる

記録が存在すること自体が、会社が誠実に安全配慮義務を履行しようとしたことの証拠になります。記録の内容が完璧である必要はありません。「この日に面談を行い、こういう確認をして、こういう判断をした」という事実が残っていることが重要です。逆に言えば、記録がゼロの状態は「何もしなかった」と同義になるリスクがあります。

再休職・再発が起きたときの初動対応

復職後に再度休職が必要になった場合、最初の復職面談の記録があると対応がスムーズになります。「前回の復職時にどのような配慮をしたか」「本人がどのような状態で復職したか」が記録から参照でき、次の対応方針を検討しやすくなります。記録は、万一の紛争への備えであると同時に、次の復職支援をより適切に行うための実務ツールでもあります。

まとめ

復職面談の記録は、難しい様式がなくても始められます。大切なのは「面談を実施した事実」「何を確認したか」「どう判断したか」を残すことです。主治医の診断書だけで復職を決めず、会社独自の就労可否判断を記録に残すことが、労働契約法第5条が定める安全配慮義務の履行につながります。産業医がいない50名未満の事業場でも、地域産業保健センター(地さんぽ)を活用することで専門家の意見を取り入れることができます。

実際に面談の記録をどう整備すればいいか、うちの会社の状況で現在の対応で足りているのか、人事判断を一人で抱える必要はありません。ウェルセンス株式会社では、中小企業の復職支援・安全配慮義務の実務対応について、御社の状況に合わせたアドバイスと整備サポートを行っています。お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 産業医がいない状態で復職面談を実施しても、安全配慮義務を果たしたことになりますか?

A. なります。産業医の選任義務は常時50名以上の事業場に発生するものであり、産業医不在自体は法令違反ではありません。ただし、地域産業保健センター(地さんぽ)など外部の専門家を活用して専門的見地からの意見を取り入れること、そして面談の内容を記録として保存することが、安全配慮義務の履行として重要です。

Q. 復職面談の記録は、専用の様式がないとダメですか?

A. 専用様式は必須ではありません。A4一枚のメモ形式でも、面談日・確認した内容・判断の結果・フォローアップ計画が記載されていれば記録として機能します。重要なのは様式の体裁より「記録が存在すること」です。まずは項目を書き出したシンプルなチェックシートから始めることをおすすめします。

Q. 主治医から「復職可」の診断書が届きました。そのまま復職を認めても問題ないですか?

A. 診断書だけで復職を判断するのはリスクがあります。主治医は日常生活レベルで安定しているかを評価していますが、業務上のストレス・職場環境への適応可否は評価対象外のことが多いです。診断書を受け取ったら面談の場を設け、会社として独自に就労可否を判断したうえで、その記録を残すことが安全配慮義務の観点から求められます。

Q. 面談で病名や投薬内容を聞いてよいですか?

A. 原則として、業務遂行能力の判断に必要な範囲に限って確認するのが適切です。具体的な病名や投薬の詳細は業務判断に直結しないことが多く、プライバシーへの配慮も必要です。「睡眠が取れているか」「通院を継続しているか」「業務量についてどう感じているか」など、就労可否に直接関係する情報に絞って確認してください。聞いた内容は要配慮個人情報として適切に管理してください。

Q. 復職後に再休職になった場合、最初の復職面談の記録がないと何が問題になりますか?

A. 記録がない場合、「会社が適切な面談・判断を行ったかどうか」を証明できなくなります。万一、従業員や家族から安全配慮義務違反を問われた際、会社が誠実に対応した事実を示す手段がなくなります。また実務面でも、前回の復職時の状況が参照できないため、次の復職支援方針を立てることが困難になります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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