「またあの人が休むの……」——チームの誰かがそう口にした瞬間、職場の空気が変わる。休職と復職を繰り返す社員がいるチームでは、フォローする側の疲弊や不公平感が少しずつ積み重なり、気づけば「助けていた側が倒れる」という事態が起きてしまいます。専任の人事担当者もいない中で、この状況にどう向き合えばいいのか——この記事では、チームの士気を守りながら繰り返し休職に実務的に対応するための5つの対策を具体的に解説します。
繰り返し休職が「不公平感」を生む本当の理由
不公平感の根源は「休んでいる人が得をしている」という誤解ではなく、「何が起きているのかわからない」という情報の空白にあります。この前提を押さえることが、すべての対策の出発点になります。
見えない負担が「不満」に変わるまで
小規模な職場では、1人が抜けた際の業務のしわ寄せが直接的かつ深刻です。その状況が1回限りであれば多くの社員は「お互い様」と感じられますが、繰り返し発生すると話が変わります。「またか」という空気が生まれ、フォローする側の共感は徐々に疲弊へと変わっていきます。この感情的な変化は自然なものであり、社員を責めても解決しません。むしろ「なぜこうなっているのか、これからどうなるのか」という見通しが共有されていないことが、不満の本質的な原因です。
「何も言わない=本人保護」という誤解
休職している社員のプライバシーを守ろうとして、チームへの説明を一切省略してしまう管理職は少なくありません。しかし、何も説明されないまま業務負担を背負わされたチームメンバーは、「自分たちのことは後回しにされている」と感じます。個人情報保護法上、病名や診断内容(要配慮個人情報)を本人の同意なく他の社員に伝えることは原則禁止ですが、「会社としての方針」や「現在の業務体制」を伝えることは全く別の話です。病名は言わなくていい、しかし方針は伝える必要がある——この区別が、不公平感を防ぐ第一歩です。
情報開示の範囲を正しく設計する
チームへの説明は「本人が了承した内容の範囲内で、会社の方針として伝える」という形が基本です。何を言えて何を言えないのかを事前に整理しておくことで、善意の開示が本人の信頼を傷つける事態を防げます。
本人との事前合意が出発点
休職が決まった段階で、上司または人事担当者は本人と「チームに何をどう伝えるか」をすり合わせておきましょう。「体調不良により療養に入ること」「復帰の見通しが出た段階で連絡すること」程度の内容であれば、多くの場合本人も同意できます。この合意を文書または社内メールで記録しておくと、後から「そんなことは話さないでほしかった」というトラブルを防ぐことができます。
チームへの説明で使える言い回しの例
以下は、プライバシーを守りながらチームに状況を伝える際に参考になる表現です。
- 「〇〇さんは現在、医師の指示により療養中です」
- 「復帰の時期は本人と医療機関の判断を経て決めます。現時点では〇〇を目安としています」
- 「その間の業務分担については、以下のように調整します(具体的な分担案)」
- 「みなさんの負担増加についても会社として把握しており、△△の対応を取ります」
重要なのは「何が起きているか」より「これからどうなるか」と「会社はチームをどう支えるか」を明示することです。見通しと配慮が伝われば、不公平感は大きく和らぎます。
繰り返し休職の場合の追加説明
2回目・3回目の繰り返し休職では、チームの受け止め方がより複雑になります。このタイミングでは「会社として、就業規則に基づいた対応方針があります」という一言を加えることが有効です。属人的な判断ではなく、ルールに基づいた対応であることを示すことで、「特定の人だけ優遇されている」という誤解を防げます。
復職後の業務設計で周囲の公平感を守る
復職後の業務軽減は「永続的な優遇」ではなく「期間と終了条件が明確な合理的配慮」として設計することで、周囲の納得感を確保できます。
段階的復帰の期間と内容を書面で明示する
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、休業開始から職場復帰後のフォローアップまでの5つのステップが示されています。このガイドラインを参照して復職フローを書面化しておくと、本人にも周囲にも「どういう手順で通常業務に戻るか」を説明する根拠になります。たとえば「最初の4週間は午前中のみ・定型業務のみ」「8週間後に主治医・産業医の確認を経て通常業務へ移行」といった具体的なスケジュールを復職時に書面で共有することが理想的です。
業務設計で使える判断基準の整理
| 確認項目 | 設計のポイント |
|---|---|
| 業務軽減の期間 | 「〇週間」と期限を明記。延長する場合は医師意見書を根拠に |
| 軽減の内容 | 担当業務・勤務時間・出張可否など具体的に列挙する |
| 終了の条件 | 主治医・産業医の確認を経て判断することを明文化 |
| 周囲への説明 | 本人の同意を得た上で「業務体制の変更」として伝える |
| 評価への反映 | 軽減期間中の評価基準を事前に本人へ説明しておく |
会社の規模による対応の違い
産業医を選任する義務がある(常時50人以上の事業場)企業では、産業医に復職判断を組み込んだフローを整備できます。一方、50人未満で産業医が選任されていない場合は、主治医の診断書をベースに、必要に応じて地域の産業保健総合支援センターや外部の産業医サービスを活用する方法があります。「仕組みがないから難しい」と放置することが、最もリスクの高い選択肢です。
フォローしている社員への安全配慮を忘れない
労働契約法第5条の安全配慮義務は、休職者本人だけでなく、フォロー業務で過重労働になっている周囲の社員にも等しく適用されます。「カバーしている社員が倒れた」という事態は、法的リスクと職場崩壊を同時に招きます。
「助ける側」のコンディションを可視化する
管理職がまず取るべきアクションは、フォローを担っている社員の労働時間・業務量・ストレス状態を定期的に把握することです。1on1ミーティングや簡易的なコンディション確認(たとえば週次での一言ヒアリング)を実施するだけでも、「会社は自分たちのことを見ている」という実感を持ってもらえます。把握していなかったでは義務違反となりうる、と法的に明確になっている以上、記録を残すことも重要です。
業務負荷の一時的な解消策を準備する
人員補充が難しい場合でも、優先業務の絞り込み・外部委託・一時的な業務停止の判断など、会社としてできる選択肢を経営者が検討・実行することが求められます。「頑張ってくれているのはわかっている」という言葉だけでは、継続的な負荷に耐えている社員の疲弊は止まりません。具体的なアクションが、信頼の源泉になります。
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就業規則と制度の整備が「公平感の根拠」になる
繰り返し休職への対応が場当たり的にならないためには、就業規則に休職・復職のルールを明記しておくことが不可欠です。ルールが可視化されていることそのものが、チームへの公平感の説明根拠になります。
就業規則に明記すべき主要項目
特に中小企業で見落としがちなのが「休職の通算規定」です。たとえば「同一または類似の傷病による休職期間は通算する」という規定がなければ、休職→復職→再休職のたびに休職可能期間がリセットされてしまいます。また、休職期間の上限、休職中の給与・社会保険料の扱い、復職判断の手続き(誰が・どのような根拠で判断するか)を明文化しておくことで、「特別扱い」ではなく「ルールに基づく対応」として周囲に説明できます。就業規則の整備・確認は、社会保険労務士への相談が最も確実です。
傷病手当金などの制度をチームに正しく伝える
「休んでいる人が給付金をもらっている」という断片的な情報が広まると、「優遇されている」という誤解につながります。傷病手当金は健康保険の制度であり、会社が特別に支払うものではないこと、また有給休暇の消化も法律上の権利であることを、制度の背景として周知することが有効です。「休む人を守る仕組みがある会社は、働いている自分たちも守られる会社だ」という発想へと転換できれば、不満の構造が変わります。
繰り返し休職への対応方針を事前に明確化する
2回目・3回目の繰り返し休職が発生した際に「どう対応するか」を事前に検討しておくことで、現場での混乱を防げます。たとえば「3回目の休職が発生した場合は、主治医・産業医・本人・会社の4者で今後の就労継続について協議する」といった手順を就業規則または社内ガイドラインに落とし込んでおくことが理想です。「また起きてから考える」という状態が、対応のブレと不公平感の温床になります。
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まとめ
繰り返し休職がチームの不公平感を生む根本原因は「情報の空白」と「仕組みの欠如」にあります。まず、本人の同意を得た上でチームへの説明方針を設計し、病名ではなく「会社の方針と業務体制」を伝えること。次に、復職後の業務軽減は期間・内容・終了条件を書面で明示した「合理的配慮」として設計すること。そして、フォローしている社員への安全配慮義務(労働契約法第5条)を忘れず、労働時間・コンディションを定期的に把握すること。最後に、就業規則に休職通算規定や復職手順を明記し、「特別扱い」ではなく「ルールに基づく対応」として周囲が納得できる根拠を整備すること——この4つの軸が揃ったとき、チームは繰り返し休職という困難な状況を乗り越える土台を持てます。
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よくある質問
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