テレワークの労働時間管理、何をすればいい?

テレワークの労働時間管理、何をすればいい? コンプライアンス
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「在宅勤務は本人に任せればいい」――そう思っていませんか?実は、テレワーク中でも労働時間の管理は会社の法的義務です。ツールがない、申告頼みで実態が見えない、残業が把握できていない……。専任人事のいない企業ほど、気づかないうちにリスクを抱えています。この記事では、テレワークの労働時間管理で押さえるべき法律の基本から、中小企業でも無理なく続けられる実務の進め方まで、わかりやすく解説します。

テレワークでも「労働時間の管理」は会社の義務

「在宅だから自己管理」は誤解

テレワーク・在宅勤務を導入した企業の中に、「オフィスにいないんだから、時間管理は本人に任せればいい」という認識が残っていることがあります。しかし、これは大きな誤解です。労働基準法に基づく労働時間管理の義務は、勤務場所が変わっても消えません。

2019年4月に施行された労働安全衛生法第66条の8の3では、管理監督者を含むすべての労働者について、事業者が労働時間の状況を把握することを義務づけています。テレワーク・在宅勤務は、この義務の適用除外にはなりません。

「把握できないから仕方ない」では通らない

「在宅だと把握しようがない」という声もよく聞きます。確かにオフィスとは勝手が違いますが、法律は「把握が難しい」という事情を免責の理由とは認めていません。むしろ、把握できる仕組みを整えることが会社側に求められています。

具体的には、PC起動・終了のログ取得、クラウド型の勤怠管理システムの活用、Web会議ツールの接続記録の活用など、複数の手段があります。完璧なシステムでなくても、「客観的な記録を残そうとしている」という姿勢と実態が重要です。

安全配慮義務との関係も見落とせない

労働時間管理の義務は、従業員の健康保護とも直結しています。労働契約法第5条では、使用者(会社)は労働者の生命・身体等の安全を確保する義務(安全配慮義務)を負うと定められています。労働時間を把握しないまま過重労働を見落とし、従業員がメンタル不調や健康障害を発症した場合、安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われるリスクがあります。「元気そうに見えた」「報告がなかった」は、免責理由にはなりません。

「事業場外みなし労働時間制」は使えないケースがほとんど

「みなし制を使えば楽になる」という誤解

テレワークに詳しくない経営者や担当者の方から、「在宅勤務には事業場外みなし労働時間制を適用すればいいのでは?」という相談を受けることがあります。事業場外みなし労働時間制とは、労働者が事業場の外で働く場合に、実際の労働時間にかかわらず「所定労働時間を働いたとみなす」制度です。

確かに外回りの営業職などに使われる仕組みですが、テレワークへの適用には非常に厳しい要件があります。

テレワークへの適用が認められる条件

厚生労働省のテレワークガイドラインでは、事業場外みなし労働時間制をテレワークに適用するには、以下の条件をすべて満たす必要があるとしています。

まず、情報通信機器が会社の指示で常時通信可能な状態に置かれていないこと。次に、作業が随時会社の具体的な指示に基づいて行われていないこと。この2点が要件です。

実態を考えてみてください。会社支給のPCを使い、SlackやTeamsでいつでも連絡が取れる状態にある――これが多くのテレワーク環境の実情ではないでしょうか。この場合、上記の要件を満たさないため、みなし制は適用できません。要件を満たさないままみなし制を適用してしまうと、労働時間管理義務を怠ったことになり、法的なリスクを生じさせます。

中小企業でも使える「労働時間の記録方法」

客観的な記録が原則

労働安全衛生法では、労働時間の把握は「客観的な方法による把握」が原則とされています。自己申告(本人からの報告)は補完的な位置づけであり、それだけで管理を完結させることは認められていません。

客観的な記録の代表例は、PCのログイン・ログアウト時刻の取得です。WindowsやMacには標準でログ記録機能があり、特別なシステムを導入しなくても活用できます。ZoomやTeamsなどWeb会議ツールの接続記録も、補助的な証跡として役立ちます。

クラウド勤怠システムは導入ハードルが下がっている

「システム導入は費用も手間もかかる」というイメージがあるかもしれませんが、近年は月額数百円〜数千円で使えるクラウド型の勤怠管理SaaSが増えています。スマートフォンやPCから打刻でき、集計・残業時間の可視化まで自動化されるため、専任人事がいない企業でも十分に運用できます。

従業員数20〜50名規模であれば、シンプルな機能に絞ったツールで十分です。まず「始業・終業の時刻を客観的に記録する」という最低限の仕組みを作ることが、リスク管理の第一歩です。

自己申告制を使う場合の注意点

どうしても客観的な記録が難しい場合、自己申告制を補完的に使うことは認められています。ただし、厚生労働省のガイドラインでは以下の対応が必要とされています。

まず最初に、従業員に対して制度の趣旨と正確な申告の必要性をきちんと説明すること。次に、申告された時間とPCログなどの客観記録に乖離がないか確認すること。そして、過少申告を促すような圧力(「残業を少なく書け」などの指示)をかけない環境を整えること。この3点がセットで求められます。チャットやメールに「退勤します」と書いてもらうだけでは、管理として不十分です。

「隠れ残業」と36協定の運用リスク

テレワークで残業が見えにくくなる理由

テレワーク環境では、上司の目が届かないため、従業員が就業時間外にこっそり作業を続ける「隠れ残業」が起きやすくなります。深夜や早朝にメールが届いている、チャットのメッセージが夜10時以降に集中している――こうした断片的なシグナルが、長時間労働の兆候であることがあります。

一方で、「サボっているのではないか」という不信感から管理を強化しようとすると、従業員の自律性やモチベーションを損なうジレンマも生じます。大切なのは、監視ではなく「過重労働を防ぐための仕組み」として労働時間管理を位置づけることです。

36協定の形骸化を防ぐ

36協定(さぶろくきょうてい)とは、時間外労働・休日労働について会社と従業員代表が締結する労使協定です。時間外労働の上限を月45時間・年360時間と定めており、これを超えると労働基準法違反になります。

テレワーク導入後に起きやすいのが、「36協定は締結しているが運用が形骸化している」という問題です。月次で残業時間を集計して初めて上限超過に気づいたとき、すでに違法状態になっています。週次または月中間で残業時間を確認し、上限に近づいている従業員に早めに声をかける運用が必要です。

メンタル不調との連動リスク

長時間労働・過重労働は、メンタルヘルス不調や休職の主要な原因のひとつです。テレワーク中は仕事とプライベートの境界が曖昧になりやすく、本人も「少し疲れているだけ」と感じながら消耗が蓄積しているケースがあります。

労働時間の管理は、単なる法令遵守にとどまらず、従業員のメンタルヘルスを守るための早期発見の手段でもあります。残業時間が急増している、深夜の作業が目立つようになったといった変化を見逃さないことが、休職・離職を未然に防ぐことにつながります。

テレワーク規程と就業規則の整備が会社を守る

ルールの文書化がトラブル防止になる

テレワークを継続的に運用するうえで、就業規則やテレワーク規程に労働時間の記録方法・報告ルートを明文化しておくことが重要です。「口頭で周知していた」「なんとなくそういう運用になっていた」という状態では、トラブルが起きたときに会社側の対応が後手に回ります。

規程に盛り込む内容としては、始業・終業の記録方法(ツール名や操作手順)、時間外労働が発生する場合の事前申請ルール、深夜・休日労働の可否と手続き、緊急連絡時の対応方法などが挙げられます。

既存の就業規則との整合性も確認する

テレワーク規程を新たに作成する場合、既存の就業規則と内容が矛盾しないか確認することも必要です。たとえば、就業規則に「所定労働時間は9時〜18時」と定めていても、テレワーク時はフレックスタイム制を適用したいのであれば、就業規則本体の変更・労使協定の締結も必要になります。

規程の整備は「一度作れば終わり」ではなく、法改正や会社の運用変更に合わせて定期的に見直す姿勢が求められます。専任人事がいない企業では、外部の専門家や人事支援サービスを活用することで、抜け漏れのない整備が実現しやすくなります。

まとめ

テレワーク中でも労働時間の管理は会社の法的義務です。「在宅だから自己管理」「みなし制を使えばいい」という考えは、法律上通用しません。PCログの活用やクラウド勤怠システムの導入など、中小企業でも実践できる仕組みは複数あります。大切なのは、完璧なシステムよりも「客観的な記録を残す文化と仕組みを今から作ること」です。また、労働時間の管理は従業員のメンタルヘルスを守るための早期発見の手段でもあり、36協定の適正運用やテレワーク規程の整備とセットで取り組むことが、会社と従業員の両方を守ることにつながります。

「何から手をつけていいかわからない」「自社の運用が法的にOKか確認したい」「就業規則やテレワーク規程の整備を進めたい」――そうした疑問や課題をお持ちの方は、ウェルセンス株式会社にお気軽にご相談ください。専任人事のいない中小企業の実情に合わせて、無理なく続けられる労働時間管理の仕組みづくりをご一緒します。

よくある質問

Q. テレワーク中の労働時間管理は、本当に法律上の義務なのですか?

A. はい、義務です。2019年4月施行の労働安全衛生法第66条の8の3により、すべての労働者の労働時間の状況を把握することが事業者に義務づけられています。テレワーク・在宅勤務は適用除外ではなく、勤務場所にかかわらず同じ義務が生じます。

Q. チャットやメールで始業・終業を報告してもらえば十分ですか?

A. 自己申告だけでは十分とはいえません。厚生労働省のガイドラインでは、労働時間の把握は「客観的な方法」が原則とされており、自己申告は補完的な位置づけです。チャット報告を活用する場合でも、PCログなど客観的な記録との照合が必要です。また、報告が集計・確認されずに散在している状態は、管理として機能していないとみなされます。

Q. テレワーク社員に事業場外みなし労働時間制を適用することはできますか?

A. 適用できるケースは非常に限られます。会社支給のPCを使い、SlackやTeamsなどで常時連絡が取れる状態であれば、みなし制の適用要件(情報通信機器が常時通信可能な状態でないこと等)を満たさないため、適用できません。多くのテレワーク環境では適用不可と考えておくのが無難です。

Q. 小規模な会社でも使えるコストを抑えた労働時間管理ツールはありますか?

A. あります。近年はクラウド型の勤怠管理SaaSが増えており、月額数百円〜数千円程度で導入できるサービスも多くあります。スマートフォンやPCから打刻でき、残業時間の集計も自動化されます。20〜50名規模の企業であれば、シンプルな機能のツールで十分対応できます。また、特別なシステムがなくてもPCのログイン・ログアウト記録を活用する方法もあります。

Q. テレワーク規程は必ず作らないといけませんか?

A. 法律上「テレワーク規程」という名称の文書を必ず作成しなければならないという規定はありませんが、就業規則や別規程に労働時間の記録方法・時間外労働の手続き・緊急時の対応などを明文化しておくことが強く推奨されます。文書化されていないと、トラブルが起きた際に会社の対応が後手に回り、法的リスクが高まります。既存の就業規則との整合性も含めて、専門家に確認しながら整備することをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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