テレワーク中の副業発覚|懲戒処分の可否と服務規律整備3つのポイント

テレワーク中の副業発覚|懲戒処分の可否と服務規律整備3つのポイント コンプライアンス
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「在宅勤務中に別の会社の仕事をしていたようだ」——そう気づいたとき、多くの経営者・人事担当者が最初に感じるのは「処分できるのか?」という疑問と、「証拠も規定も曖昧なまま動いていいのか」という不安の両方ではないでしょうか。テレワーク環境下での副業発覚は、オフィス勤務と比べて事実確認が難しく、就業規則の整備も追いついていないケースが大半です。この記事では、懲戒処分の可否を判断するための4つの要件を整理したうえで、今後の再発防止に向けたテレワーク服務規律整備の実務ポイントを解説します。

懲戒処分は「できる場合」と「できない場合」がある

結論から言えば、テレワーク中の副業・兼業が発覚しても、それだけで自動的に懲戒処分が有効になるわけではありません。処分が有効と認められるには、就業規則の規定・周知・実害・処分の相当性という4つの要件をすべて満たす必要があります。

懲戒処分が有効になる4つの要件

判例法理が積み重ねてきた基準をまとめると、以下の4点が揃っていることが処分有効性の鍵になります。

要件 内容
規定の存在 就業規則に副業禁止・業務専念義務など禁止・制限規定が明記されていること
周知 その規定が社員に周知されていること(労働契約法第7条)
実害・業務支障 会社業務への支障・信用毀損・競業など具体的な影響があること
処分の相当性 違反の程度に対して処分が重すぎないこと(均衡の原則・相当性の原則)

特に見落とされやすいのが「実害・業務支障」の要件です。副業禁止の規定があっても、「業務時間中にやっていた」という立証と、「それによって会社に何らかの支障が生じた」という事実が揃わなければ、処分の有効性を争われたときに会社側が負けるリスクがあります。

「副業禁止と書いてある」だけでは不十分な理由

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和2年9月改定)は、副業・兼業を原則として容認する方向を示しています。完全禁止ではなく、「労務提供上の支障がある場合に制限できる」という考え方です。このため、就業規則に「副業・兼業は事前承認制」とだけ書いてある場合、「業務時間外の副業まで禁止できるのか」という争点が生まれやすくなります。業務時間中の就労を明示的に禁止する条文があるかどうかが、処分の根拠として非常に重要です。

解雇を選ぶ前に確認すべきこと

懲戒処分には、戒告・減給・出勤停止・諭旨解雇・懲戒解雇という段階があります。初回の違反で、かつ業務への実害が軽微な場合に懲戒解雇を選ぶと、「処分が重すぎる」として無効と判断されるリスクがあります。労働契約法第15条は、懲戒処分が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合」には無効と定めています。まず事実確認と記録の整理を優先し、処分の重さは社労士や弁護士に相談したうえで決定することを強く推奨します。

発覚時の初動対応——事実確認の進め方

懲戒処分を有効にするためには、処分を下す前に適切な事実確認プロセスを踏むことが不可欠です。いきなり処分を通知するのではなく、まず証拠を整理し、本人からの弁明を聞く手順を踏んでください。

証拠として使えるもの・使えないもの

業務時間中の副業を立証するために活用できる証拠には、以下のようなものがあります。

  • 業務チャット・メールの送受信記録(業務時間中に無関係な取引先とのやり取りが確認できる場合)
  • 社用PCのアクセスログ・作業ログ(IT管理ツールで取得している場合)
  • 勤怠システムの打刻記録と、副業先の業務記録の時間帯が重複している証拠
  • SNS・請求書・契約書など、副業の存在を示す客観的資料

注意が必要なのは、プライベートのスマートフォンや個人メールを無断で確認する行為です。これはプライバシー侵害として問題になる可能性があり、証拠として採用されないどころか、会社側の行為が問題視されるケースもあります。収集できる範囲の証拠に絞って整理することが原則です。

本人への確認面談の進め方

証拠の整理ができたら、本人に事実確認の機会を設けます。このとき、「問い詰める」形ではなく、「確認したいことがある」という姿勢で臨むことが重要です。面談では、以下の点を確認してください。

  • 副業・兼業の有無と、その内容・取引先・時間帯
  • 業務時間中に行っていたかどうか
  • 会社への事前申告・承認を得ていたかどうか
  • 今後の意向(継続するのか、やめるのか)

面談の内容は必ず記録に残してください。録音する場合は本人の同意を得ることが望ましいですが、少なくともメモを作成し、後日本人に内容を確認させることで証拠としての信頼性が高まります。この弁明の機会を与えずに処分を行うことは、手続き上の瑕疵(かし)として処分無効の根拠になり得ます。

テレワーク服務規律の整備

テレワーク中の副業問題を今後防ぐために最も効果的な対策は、テレワーク勤務規程の整備です。「テレワーク中に何がOKで何がNGか」を明文化することが、処分根拠の強化と社員への抑止力の両方につながります。

テレワーク規程に盛り込むべき服務事項

テレワーク規程には、少なくとも以下の7項目を盛り込むことを推奨します。

  • 勤務場所の制限(自宅・会社が承認した場所のみ可とする旨)
  • 業務専念義務の明示(業務時間中の副業・兼業就労の明示的禁止)
  • 勤怠管理の方法(始業・終業報告の手段、PCログの取得方針)
  • 情報セキュリティ遵守事項(画面・資料の管理、VPN接続ルール)
  • 連絡応答義務(業務時間中は応答できる状態を維持する義務)
  • 副業・兼業の届出・承認制(テレワーク中の副業規制を明確化)
  • 違反時の取扱い(懲戒規定との連動を明記)

厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(令和3年3月)は、テレワーク時の労働時間管理と服務規律整備の指針を示しています。規程整備の際は、このガイドラインを参照しながら自社の実態に合わせて条文を作ることが重要です。

既存の就業規則との整合性を確認する

テレワーク規程を新設する場合、既存の就業規則と矛盾が生じないよう確認が必要です。特に、副業・兼業の規定が就業規則本体にある場合は、テレワーク規程でその内容を「業務時間中は禁止」と補足する形で整合させてください。労働基準法第89条は、就業規則に服務規律を記載する義務を課していますが、テレワーク規程を「就業規則の附則・別規程」として位置付けると管理がしやすくなります。

また、規程を整備しても社員に周知されていなければ、労働契約法第7条の要件を満たさず、処分の根拠として使えません。書面配布・社内共有フォルダへの掲示・説明会の実施など、周知の記録を残すことが重要です。

「どこまで管理していいか」の線引き

テレワーク中の服務管理を強化する際、経営者や人事担当者が気になるのが「監視はどこまで許されるのか」という点です。過度な監視はハラスメントや労使トラブルの原因になる一方、何もしなければ服務規律が機能しません。

許容される管理手段と許容されない手段の違い

業務時間中の勤務状況を管理する手段として、一般的に許容されると考えられるものには、PCログイン・ログアウト記録の収集、業務システムへのアクセス記録の管理、定時報告(始業・終業の連絡)の義務化、業務上必要な範囲でのカメラ会議・オンラインミーティングの活用などがあります。

一方で、常時カメラで映像を録画・録音する、プライベートな通信を無断で傍受・閲覧するといった手段は、プライバシー権の侵害として問題になり得ます。社員が同意した範囲と方法で管理することが前提であり、その旨を規程や誓約書に明記しておくことが重要です。

中小企業での現実的な運用

専任人事がいない20〜50名規模の企業では、高度なIT監視ツールの導入が難しいケースも多いです。そうした場合でも、「業務時間中は1時間に1回チャットでの状況報告を義務付ける」「週次で業務報告書を提出させる」といったシンプルなルールを規程化するだけで、服務規律の実効性は大きく高まります。大切なのは「何かあったときに規程が根拠として機能する状態」を作っておくことです。

副業発覚のケース別・対応の分岐

副業発覚のケースは一律ではなく、状況によって取るべき対応が変わります。自社の状況に当てはめて判断の参考にしてください。

就業規則に副業禁止規定がない場合

副業禁止の規定がまったくない状態で懲戒処分を下すことは、原則として困難です。ただし、業務専念義務(民法第415条・雇用契約上の誠実義務)や競業避止義務の観点から、業務に著しい支障が出ている場合や同業他社での就労が判明している場合には、個別の事情によって対応の余地が生まれることもあります。まず現状を整理したうえで、社労士または弁護士に相談することを優先してください。

副業禁止規定はあるが「業務時間中」の明示がない場合

この場合、処分の根拠は弱いですが、ゼロではありません。就業規則に「職務専念義務」の条文があれば、それを業務時間中の副業就労への違反として主張できる可能性があります。ただし争われた場合のリスクは残るため、処分よりも先に本人への改善指導・書面による警告を行い、その記録を蓄積する対応が現実的です。並行して規程整備を急ぎましょう。

副業禁止規定も周知も整っている場合

規定・周知・実害・相当性の4要件が揃っているなら、懲戒処分を進める法的根拠が整っています。この場合でも、処分の重さは違反の内容・回数・業務への影響度に応じて判断することが重要です。初回の違反で業務への影響が軽微であれば、戒告や訓戒から始めて改善を求めるステップを踏むことが、後のトラブルを回避する観点から有効です。

まとめ

テレワーク中の副業発覚に対して懲戒処分を有効に行うには、就業規則の規定・周知・実害・処分の相当性という4要件を揃えることが前提です。規定の不備や周知漏れがある状態で処分を急ぐと、不当処分として争われるリスクがあります。発覚後の初動では、証拠の整理と本人への弁明機会の付与を先に行い、処分の重さは専門家に相談したうえで決定することが安全です。

また、再発防止に向けては、テレワーク勤務規程の整備が最も実効的な対策です。業務専念義務・副業規制・連絡応答義務・違反時の懲戒規定との連動を明文化し、社員に周知することで、処分根拠の強化と服務規律の実効性を同時に高められます。

「就業規則をどう整備すればいいかわからない」「今回の件をどう処理すべきか判断できない」という場合は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。専任人事者がいない中小企業の実態に合わせた就業規則整備・服務規律対応・労務リスクの整理を、実務に即した形でサポートしています。

よくある質問

Q. 副業禁止の規定はありますが、テレワーク中の副業を理由に懲戒解雇できますか?

A. 副業禁止規定があるだけで懲戒解雇が有効になるわけではありません。業務時間中の就労であったこと、会社業務に具体的な支障が生じたこと、処分の重さが違反の程度に見合っていること——これらの要件が揃って初めて解雇の有効性が認められます。初回違反で業務への影響が軽微な場合は、まず戒告・訓戒から始めるステップが法的リスクを低減します。

Q. テレワーク勤務規程がなくても、就業規則の副業禁止規定で対応できますか?

A. 就業規則の副業禁止規定で対応できるケースもありますが、「業務時間中の就労を禁止する」旨の明示がなければ、テレワーク時の副業を禁じる根拠として弱くなります。テレワーク勤務規程を別途整備し、業務専念義務と副業規制を明文化することで、処分根拠を強化することを推奨します。

Q. 副業が業務時間外だけであれば、処分できないのでしょうか?

A. 業務時間外の副業は原則として制限が難しく、完全禁止は労働者の職業選択の自由(憲法第22条)との関係から無効になる可能性があります。ただし、競業他社での就業・会社の機密情報の利用・会社の名誉・信用を損なう行為など、会社の正当な利益を侵害している場合には、制限・禁止の根拠となり得ます。個別の事情をもとに判断が必要です。

Q. テレワーク中の業務管理として、常時カメラで社員を監視することは許されますか?

A. 常時カメラによる監視は、社員のプライバシー権を侵害するリスクが高く、原則として推奨されません。管理手段としては、始業・終業報告の義務化・業務システムへのアクセスログ管理・定期的な業務報告といった、社員の同意と規程への明記に基づく方法が現実的かつ法的リスクの低い選択です。

Q. 副業発覚後、本人への確認面談でどんな点に気をつければいいですか?

A. 面談では、事実確認を目的とした聴取であることを伝え、一方的に断定・責め立てる形にならないよう注意してください。確認した内容は必ず記録に残し、できれば本人にも内容を確認させましょう。弁明の機会を与えずに処分することは手続き上の瑕疵となり、処分無効の原因になります。面談前に確認すべき事項のリストを準備しておくと、感情的な流れになることを防げます。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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