休職中のバイト発覚、規定なしでも取れる4つの対応策

休職中のバイト発覚、規定なしでも取れる4つの対応策 コンプライアンス
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「休職中にアルバイトをしている」——そんな情報が社内に入ってきたとき、多くの経営者・人事担当者がまず感じるのは「規定がないのに、何かできるのか?」という戸惑いです。就業規則に副業・兼業禁止の記載がなければ、注意すること自体が「不当だ」と言われてしまうのでは、と動けずにいるケースは少なくありません。しかし、規定の有無にかかわらず、企業が取るべき対応の道筋は存在します。この記事では、規定が不十分な状態でも踏み出せる4つの実務対応策を、法的根拠とともに解説します。

規定がなくても対応できる法的根拠がある

就業規則に明記がなくても、「休職中のアルバイト」を問題として取り上げる根拠は存在します。根拠となるのは、労働契約に付随する信義則(民法第1条第2項)と、休職制度そのものの趣旨です。

休職の目的と「信義則違反」の考え方

休職制度の本質は、「労務提供が困難な状態にある従業員を一時的に猶予する仕組み」です。休職中に別の会社でアルバイトをすることは、この趣旨に正面から反する行為です。明文規定がなくても、労働契約上の信義則に基づき、「休職の目的に反する行為はしない」という義務を従業員は負っていると解釈できます。裁判例においても、就業規則の副業禁止規定がない場合でも、信義則違反として使用者側の注意・指導を認めた事例は存在します。

厚生労働省のガイドラインと休職中の特例

厚生労働省が2018年に策定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、副業・兼業を原則として容認する方向を示しています。ただし、このガイドラインは「就業規則による制限・禁止を全否定するものではない」と明記されています。特に「療養を理由に休職している状態での他社就労」については、制限の合理性が認められやすい類型とされており、規定がなくても企業側の指導には一定の根拠があります。

「何もできない」と放置することの危険性

規定がないからと放置するのは、最もリスクの高い対応です。放置が続くと、会社が「黙認していた」と解釈される可能性があります。後になって処分しようとしても「なぜ今頃」と反論される余地を与えることになります。また、回復していない状態のまま放置から復職へ進んだ場合、別の労務問題が発生する可能性もあります。発覚した時点で、できる対応を速やかに始めることが重要です。

まず行うべき事実確認の方法と限界

処分より前に、事実確認のプロセスを丁寧に踏むことが不可欠です。事実を確認せずに処分を下すと、後の紛争で企業側が著しく不利な立場に置かれます。

本人へのヒアリングが基本の起点

最も適法かつ有効な確認方法は、本人への直接ヒアリングです。「アルバイトをしていると聞いたが事実か」を書面または面談で確認します。このとき、頭ごなしに責めるのではなく、「事実確認をしたい」というスタンスで臨むことが重要です。ただし、メンタル不調による休職者へのコンタクトは、主治医や産業医の意見を事前に確認した上で行うことが望ましい対応です。産業医が選任されていない企業(労働者数50名未満)の場合は、主治医に「連絡を取ることが療養の妨げにならないか」を確認する書面を送ることも一つの方法です。

公開情報(SNS等)の活用と注意点

本人が公開設定にしているSNSの投稿やブログを確認することは、一般的に違法とはなりません。しかし、それだけを根拠に処分を下すには証拠として弱く、「写真を誤解した」「別の人物だった」などの反論を受けた際に崩れるリスクがあります。公開情報は「事実確認のきっかけ」として位置づけ、あくまでヒアリングを経て事実を固めることが原則です。

第三者調査(探偵等)の利用リスク

私立探偵や調査会社を使った調査は、プライバシー侵害・不法行為となるリスクを伴います。慎重な判断が必要であり、少なくとも弁護士への事前相談なしに実施することは避けるべきです。中小企業の実務では、まずヒアリングで事実確認→本人の説明内容を記録→書面で注意という流れが最も現実的で安全です。

メンタル不調の休職者へ連絡するときの具体的な配慮

精神疾患を抱えた休職者に連絡すること自体は禁じられていませんが、連絡の方法・頻度・内容には細心の配慮が必要です。

連絡してよい、ただし「やり方」が重要

「メンタル不調だから一切連絡してはいけない」は誤解です。業務上必要な確認(休職期間の延長手続き、給付金の書類、今回のように休職の趣旨に関わる確認など)は行えます。問題になるのは、頻度が過剰・内容が責める口調・対応を急かす・複数人で迫るといった「方法」の部分です。

産業医・主治医を介した連絡の手順

連絡の前に、主治医宛の照会文書(連絡を取ることが病状に影響しないかの確認)を送付しておくと、後で「病状悪化を引き起こした」という反論を防ぐ記録になります。産業医が選任されている場合は、産業医を通じてコンタクトの可否・方法を確認してください。連絡手段は原則として書面(郵送またはメール)とし、返答を急かさない文面にすることが基本です。

記録を残すことで「ハラスメント」の主張を防ぐ

「何を・いつ・どのような内容で連絡したか」を記録として残しておくことが重要です。メールや書面で行えば自動的に記録が残ります。電話の場合は通話後に社内メモを作成し、日時・内容・相手の反応を記しておきます。こうした記録の積み重ねが、後に「圧力をかけられた」「ハラスメントだ」という主張への最も有効な反論材料になります。

規定なしでも取れる4つの対応策

規定が不十分な状態でも、段階的に踏める対応策があります。いきなり重い処分を下すのではなく、以下の順序で対応することがリスク管理の要点です。

対応の段階 具体的なアクション 規定なしでの可否
事実確認 本人へのヒアリング・書面での確認 可能
書面による注意 休職の趣旨を守るよう求める書面を交付 信義則に基づき可能
戒告・譴責 就業規則に懲戒規定があれば軽微な処分 規定次第(要確認)
より重い処分 降格・出勤停止・解雇等 規定不備の場合は高リスク

書面による注意——最初に取るべき対応

まず最初に行うべきは、「書面による注意」です。内容は「休職は労務提供ができない状態を会社が猶予する制度であること」「その趣旨に反して他社で就労することは、労働契約上の信義則に反する可能性があること」「今後は休職の趣旨に沿った行動をとるよう求める」という3点を明記します。この書面を交付・送付し、受領の記録を残すことで、「会社が問題として認識し、指導した事実」が残ります。

就業規則の懲戒規定を活用する

副業禁止の規定がなくても、就業規則に「会社の信頼を損なう行為」「労働契約の趣旨に反する行為」などの一般的な懲戒事由が記載されている場合は、それに基づく軽微な処分(戒告・譴責)が可能です。ただし、処分の重さは「違反の程度・回数・会社への影響」に比例して判断される必要があります。いきなり解雇を選択した場合、懲戒権の濫用(労働契約法第15条)として無効とされるリスクが高くなります。

規程整備と並行して対応を進める

今回の発覚を機に、休職制度の規程整備を並行して進めることが重要です。ただし、「発覚後に急いで規定を作り、遡及して処分する」ことは原則として認められません。規程整備はあくまで「今後のため」と位置づけ、今回の案件への対応は現時点で取れる根拠(信義則・既存の就業規則の懲戒規定)で進めます。

今後のリスクを防ぐ休職制度の最低限の整備ポイント

今回のような問題を再発させないために、休職制度に関する規程を整備することが経営上の優先課題です。最低限押さえておくべき項目は以下のとおりです。

休職規程に盛り込むべき核心的な項目

就業規則または休職規程に、次の項目を明記することが基本です。休職開始の要件(診断書の提出など)、休職期間の上限、休職中の給与・手当の取り扱い、休職中の副業・兼業の禁止または制限、復職の要件と手続き(主治医・産業医の意見書の提出など)、休職期間満了時の取り扱い(自動退職規定の有無)の6点が核となります。特に「休職中の副業・兼業禁止」を明記することで、今回のような問題が発生した際の対応の根拠が明確になります。

就業規則の改定手続きと留意点

就業規則を改定・新設する場合は、過半数労働組合または過半数代表者の意見を聴取し(労働基準法第90条)、労働基準監督署に届け出ることが必要です(常時10名以上の事業場)。また、労働者に不利益な変更となる場合は、合理的な理由がなければ効力が生じない点にも注意が必要です(労働契約法第10条)。専門家(社会保険労務士・弁護士)に改定内容を確認してもらうことを推奨します。

規程だけでなく「運用」を定める

規程を作るだけでなく、「誰が・いつ・どのように確認するか」という運用フローを定めることが実務上の肝です。たとえば、休職開始時に「休職中の行動指針」を書面で渡すことや、月1回の状況確認連絡のルールを設けることが、問題の早期発見と発覚時の対応根拠の両方につながります。

まとめ

休職中のアルバイト発覚は、規定がなくても対応できます。信義則と休職制度の趣旨を根拠に、まず書面による事実確認と注意を速やかに行うことがファーストアクションです。メンタル不調の休職者への連絡は「禁止」ではなく「配慮した方法で行う」もの。そして重い処分に進む前に、段階を踏んだ対応でリスクを管理することが重要です。今回の発覚を機に、休職規程の整備も並行して進めてください。

「何から手をつければよいかわからない」「今の対応が正しいか確認したい」という場合、ウェルセンス株式会社では休職・復職支援と人事労務の実務相談を一体的にサポートしています。個別の状況に合わせた対応の整理からご支援できますので、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 就業規則に副業禁止の規定がありません。それでも注意や指導はできますか?

A. できます。明文規定がなくても、休職制度の趣旨(労務提供が困難な状態の一時猶予)に反する行為として、労働契約上の信義則(民法第1条第2項)に基づく注意・指導を行うことは可能です。ただし、重い懲戒処分(解雇等)は規定の不備があると無効リスクが高くなるため、まずは書面による注意から段階的に対応することを推奨します。

Q. SNSでアルバイトをしている投稿を見つけました。これを証拠にして処分できますか?

A. 公開されているSNS投稿の確認は一般的に違法ではありませんが、それだけを根拠に処分を下すことは危険です。「別人だった」「状況を誤解した」などの反論に対して証拠として弱く、処分が無効とされるリスクがあります。SNS情報は「事実確認のきっかけ」と位置づけ、必ず本人へのヒアリングを経て事実を固めた上で対応してください。

Q. メンタル不調で休職している従業員に連絡を取っても、ハラスメントにはなりませんか?

A. 必要な業務上の連絡を取ること自体はハラスメントにはなりません。問題になるのは、頻度が過剰・内容が責める口調・返答を急かすといった「やり方」の部分です。連絡前に主治医への照会文書を送付して可否を確認し、連絡手段は書面(メール・郵送)を原則とし、日時・内容・相手の反応を記録として残すことで、後のトラブルを防げます。

Q. 今回の発覚を機に就業規則を整備したいのですが、急いで作って遡及して処分することはできますか?

A. 規程を新設・改定して、それを今回の案件に遡及して適用することは原則として認められません。今回の案件は、現時点で取れる根拠(信義則・既存の就業規則の懲戒規定)に基づいて対応し、新規程はあくまで「今後のルール」として位置づけてください。規程整備は今後のリスク防止のために急いで進める価値はありますが、今回の処分の根拠にはなりません。

Q. 産業医がいない場合、メンタル不調の休職者への対応はどうすればよいですか?

A. 産業医の選任義務がない従業員数50名未満の企業では、主治医を窓口にする方法が現実的です。「従業員の方に業務上の連絡をしたいが、療養の妨げにならないか」「連絡手段・頻度についてご意見を聞かせてほしい」という内容の照会文書を主治医宛に郵送することで、連絡の可否と方法についての医学的見解を得ることができます。この記録を残しておくことが、後の紛争対策として有効です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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