休職期間の昇給・昇格審査、3つの基準で公平に説明する方法

休職期間の昇給・昇格審査、3つの基準で公平に説明する方法 休職・復職対応
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「あの人、休んでいたのにまた昇格候補に入るの?」――そんな声が上がったとき、あなたはどう答えますか。休職期間をどう査定に扱うか、明確なルールがなければ、経営者も人事担当者も答えに詰まってしまいます。かといって「休んだのだからマイナスにする」と言い切ることもできず、判断を先送りにした結果、本人にも周囲にも不満が広がる――そのサイクルに悩む会社は少なくありません。この記事では、休職期間を昇給・昇格審査でどう扱うかを法的根拠とともに整理し、「誰にでも説明できる3つの基準」の作り方を解説します。

休職期間の査定算入は法律で決まっているのか

結論から言えば、休職の種類によって法的拘束力が大きく異なります。産休・育休・介護休業には不利益取り扱いを禁ずる法律が存在しますが、私傷病休職については直接の禁止規定がなく、会社の裁量が比較的広い領域です。

法律で保護されている休業の種類

産前産後休業については労働基準法第65条と男女雇用機会均等法が、育児休業については育児・介護休業法第10条が、それぞれ不利益取り扱いを明確に禁止しています。「育児休業を取得したことを理由として」昇給停止・降格・賞与削減などの不利益を与えることは違法です。介護休業についても同法第16条で同様の規定があります。

重要なのは、「算入しないこと(ノーカウント)」と「マイナス評価すること」は法的に意味が異なるという点です。育休期間を評価期間に含めず、昇格審査を翌年度に繰り延べることは厚生労働省の指針上も認められています。しかし「欠勤と同様に扱い、評価を下げる」ことは不利益取り扱いとして違法になりえます。

私傷病休職(メンタル不調含む)の法的位置づけ

私傷病による休職期間を昇給・昇格の査定に算入しないことを直接禁ずる法律は現時点では存在しません。ただし、精神障害や発達障害のある従業員が休職している場合は、障害者雇用促進法の「障害者であることを理由とした差別的取り扱いの禁止」が関連しうるため、一律に不利益扱いをすることはリスクを伴います。

就業規則に昇給・昇格の基準が定められている場合は、労働契約法第7条に基づきそれに従う義務が生じます。逆に言えば、就業規則に休職期間の扱いを明記しておくことが、会社側の説明可能な基準を作る最初の一手です。

休職理由別の取り扱い早見表

休業・休職の種類 法的制約 実務上の推奨扱い
産前産後休業 不利益取り扱い禁止(労基法65条・均等法) ノーカウントが基本
育児休業 不利益取り扱い禁止(育介法10条) ノーカウント原則
介護休業 不利益取り扱い禁止(育介法16条) ノーカウント原則
業務上災害(労災) 療養・休業中の解雇禁止(労基法19条)。昇格への直接規定はないが配慮必要 不利益扱いは高リスク
私傷病休職(メンタル含む) 直接の禁止規定なし 就業規則への明記と一貫運用が重要

「ノーカウント」と「マイナス評価」の違いを正しく理解する

この2つの違いを曖昧にしたまま運用すると、後々のトラブルのもとになります。ノーカウントとは評価期間から除外するだけで、それ以上の不利益を与えないアプローチです。マイナス評価とは、休職したことそのものを評価を下げる要因とすることであり、法的・感情的に問題が生じやすい扱いです。

ノーカウントが「公平」とみなされる理由

たとえば評価期間が1月から12月の1年間のうち、6月から12月まで休職していた社員がいるとします。この場合、実際に勤務・評価できた期間は1月から5月の5か月分しかありません。ノーカウント方式では「その5か月間の実績だけで判断する」か「審査を翌年度に繰り延べる」という処理をします。これは欠勤日数をマイナス点として加算するわけではなく、単純に「測定できない期間は測定しない」という論理です。合理性があり、他の社員への説明もしやすい方法です。

マイナス評価が引き起こすリスク

「休職があったから評価を1段階下げる」という運用は、休職した事実そのものへのペナルティです。産休・育休の場合は明確に違法ですが、私傷病休職であっても「精神障害を抱えた従業員を不利に扱った」と解釈されれば、障害者雇用促進法の文脈で問題になりえます。また、メンタルヘルス不調が業務に関連している場合(過重労働・ハラスメントなど)は、会社側にも一定の責任が生じるケースがあり、マイナス評価の正当性はさらに弱まります。

公平に説明できる3つの基準とは

休職期間の扱いを「誰にでも説明できる」水準にするには、「明文化」「一貫性」「復職後の評価期間の確保」という3つの基準が必要です。この3つを軸にルールを設計すれば、本人への説明も、周囲の社員への説明も、大幅に楽になります。

就業規則・昇格規程への明文化

まず最初に取り組むべきは、昇給・昇格規程に休職期間の扱いを書き込むことです。「休職期間は評価期間の算定に含めない」「3か月を超える休職が生じた場合、当該年度の昇格審査は翌年度に繰り延べる」などの文言を加えるだけで、判断の根拠が明確になります。就業規則に根拠がある説明と、口頭の裁量判断では、本人の納得感がまったく異なります。規程がない場合は、この機会に整備することを強く推奨します。

休職理由によらず統一基準で運用する

次に意識すべきは一貫性です。「Aさんの育休はノーカウントだったのに、Bさんのメンタル休職はマイナス扱いにした」という差が生じると、比較された瞬間に不公平感が爆発します。私傷病・育休・労災を問わず、休職期間の扱いは統一基準で運用することが社内の信頼を守ります。ただし、育休・産休については法律上の保護があるため「最低限これだけは守る」という前提を置いたうえで、他の休職もそれ以上に不利にならないよう設計することが現実的です。

実際の運用ルール作りで迷ったときや、すでに対応に差が出ているケースがあれば、人事労務の専門的なアドバイスが手助けになることがあります。

復職後に一定の評価期間を設けてから審査する

3つ目の基準は、復職後の実績をもって審査することです。「復職後6か月以上の勤務実績をもって昇格審査の対象とする」という規定は、本人にとっても「しっかり実績を積んでから評価してもらえる」という安心感につながります。また、周囲の社員から見ても「ちゃんと働いてから判断する」という透明性があり、不公平感を和らげる効果があります。復職直後に昇格させることへの懸念と、休職を理由に永続的に対象外にすることへのリスク、両方を回避できるのがこの基準の強みです。

本人への説明で気をつけるべきポイント

基準を整備しても、本人への伝え方を誤れば感情的なトラブルに発展します。「ルールに基づいた説明」と「本人の気持ちへの配慮」を両立させることが、この場面では特に重要です。

説明の前に確認すべき3点

説明の場を設ける前に、まず以下の3点を確認しておくと安心です。一点目は、就業規則・昇格規程に休職期間の扱いが明記されているかどうか。明記がない場合は今回の判断の根拠が弱くなります。二点目は、過去に同様のケースで別の扱いをしていないかどうか。一貫性のない前例があると「あのときと違う」と指摘されます。三点目は、本人が現在どの程度メンタル的に安定しているか。復職直後の不安定な時期に昇格審査の話を持ち出すことは、それ自体がストレス要因になりえます。

感情的になった場合の対応方針

説明の場で本人が感情的になった場合、その場で無理に合意を取ろうとしないことが鉄則です。「一度説明したことを持ち帰って考えていただく時間を設けます」という言い方で、時間を置くことを提案してください。また、産業医や外部の支援機関が関わっているケースでは、事前にその担当者と情報共有しておくと、本人の心理的安全性が高まります。説明の場には可能であれば2名以上で臨み、記録を残すことも後のトラブル防止に役立ちます。

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他の社員への公平感をどう担保するか

「休んでいた人が昇格するのはなぜ?」という声は、制度の透明性が低いほど大きくなります。休職者への配慮と、継続して働いた社員への公平性は対立するものではなく、明確な基準によって両立できます。

「ノーカウント」の論理を周知する

社内に向けて、「休職期間はプラスにもマイナスにもせず、単純に評価対象から外す」という原則を周知することが有効です。「休んだことへのペナルティがない」のではなく「評価できない期間は評価しない」という論理は、多くの社員にとって受け入れやすいものです。就業規則に明記された内容を入社時・昇格審査前に周知する機会を作ることで、「知らなかった」「不公平だ」という反応を最小化できます。

復職後の実績評価を見える化する

「休んでいた期間ではなく、復職後の実績で判断する」という原則を明示することで、周囲の納得感は格段に高まります。昇格審査の場で「復職後の〇か月の実績を根拠に判断した」と具体的に説明できる状態にしておくことが、社内の信頼維持につながります。評価基準そのものを変えるのではなく、「測定対象の期間を明確にする」という考え方で整理すると、説明がシンプルになります。

まとめ

休職期間の昇給・昇格審査における扱いは、産休・育休・介護休業については法律上の不利益取り扱い禁止が明確に存在し、私傷病休職については会社の裁量が広いものの、就業規則への明文化と一貫した運用が求められます。「誰にでも説明できる3つの基準」として、まず昇格規程への明文化、次に休職理由によらない統一基準での運用、そして復職後に一定の評価期間を設けてから審査することを本記事では紹介しました。これらの基準を整備することで、本人への説明も、周囲の社員への公平感の担保も、大幅に扱いやすくなります。

ただ、「うちの会社の就業規則にどう書けばいいか」「すでに対応に迷っているケースがある」という状況では、自社だけで判断を完結させようとすることで、かえってリスクが高まることもあります。ウェルセンス株式会社では、メンタルヘルス対応・休職復職支援・人事労務の課題を、20〜50名規模の成長企業向けにサポートしています。「基準を作りたいが何から手をつければいいかわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 育児休業期間を昇給の評価対象に含めないことは違法ですか?

A. 違法ではありません。厚生労働省の指針では、育休期間を評価期間に算入しない「ノーカウント」扱いは原則として認められています。ただし、「育休を取得したことを理由に評価を下げる」ことは育児・介護休業法第10条が禁ずる不利益取り扱いにあたるため、注意が必要です。ノーカウント(算入しない)とマイナス評価(評価を下げる)は法的に明確に異なります。

Q. メンタル不調による私傷病休職期間を昇格審査から除外しても問題ありませんか?

A. 私傷病休職期間を昇格審査に含めないこと自体を直接禁ずる法律はなく、就業規則に明記して一貫して運用するかぎり、原則として問題ありません。ただし、精神障害・発達障害のある従業員の場合は障害者雇用促進法の差別禁止規定が関連しうるため、「マイナス評価」とならないよう注意が必要です。「ノーカウントとして翌年度に審査を繰り延べる」という方針が実務上の安全策です。

Q. 就業規則に休職期間の扱いを書いていない場合、どう対応すればいいですか?

A. まず今後のケースに備えて就業規則・昇格規程を整備することを優先してください。現在進行中のケースについては、「ノーカウントとして扱う」という方向で判断し、その方針を本人に文書で説明しておくことがリスクを最小化します。過去に別の扱いをした前例がある場合は、一貫性の観点から整理が必要なため、専門家への相談を検討してください。

Q. 復職後どのくらいで昇格審査の対象に戻すのが妥当ですか?

A. 明確な法的基準はなく、会社の規程設計によります。実務上は「復職後3か月以上の安定した勤務実績」を基準とする会社が多い傾向にありますが、6か月とする会社もあります。重要なのは、規程にあらかじめ期間を明記しておくことです。「復職後〇か月の実績をもって審査対象とする」という基準は、本人にとっても見通しを持ちやすく、納得感につながります。

Q. 「休んでいた人が昇格するのは不公平」という社員の声にはどう答えればいいですか?

A. 「休職期間をプラスに評価したわけではなく、復職後の実績を評価した結果です」と説明することが基本です。評価の根拠が就業規則に明記されており、休職期間はノーカウントとして復職後の実績のみを評価したことを伝えることで、多くの場合は納得を得られます。「ルールに基づいて全員に同じ基準を適用している」という一貫性の担保が、この種の声への最も有効な回答です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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